ドキセピンの成分画像
  • カナ
    ドキセピン
  • 英語名
    Doxepin HCL
  • 化学式
    C19H21NO
  • 分子量
    279.376 g/mol

ドキセピンの作用と効果

ドキセピンは、うつ病や不安障害の治療に用いられる三環系抗うつ薬の一種で、長年にわたり多くの患者の治療に使われてきました。
脳内の神経伝達物質のバランスを調整することで、様々な精神症状に効果を発揮します。

ドキセピンの主な作用は、脳内のセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害することです。
これらの神経伝達物質は、気分や情動の調整に深く関わっています。
ドキセピンがこれらの物質の量を増やすことで、うつ症状や不安感が和らぎ、心の安定につながります。

具体的な効果としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 気分の改善:落ち込みや悲しみ、絶望感などのうつ症状が軽減します。

  • 不安の軽減:漠然とした不安感や社会不安などが和らぎます。

  • 睡眠の改善:不眠症状が改善し、質の良い睡眠が得られやすくなります。

  • 食欲の回復:うつ病に伴う食欲不振が改善することがあります。

  • 痛みの緩和:一部の慢性痛に対しても効果があることが知られています。

ドキセピンは特に強い鎮静作用を持つことが特徴で、不安や不眠に悩む患者に有効です。
就寝前に服用することで入眠を助け、睡眠の質を向上させる効果が期待できます。

服用を始めてからしばらくは、定期的に医師の診察を受け、効果や副作用の有無をチェックすることが大切です。
症状が改善しても、自己判断で急に服用を中止せず、必ず医師と相談しながら徐々に減量していきましょう。

副作用と注意点

ドキセピンは患者に効果をもたらす一方で、様々な副作用が報告されています。
主な副作用には以下のようなものがあります。

抗コリン作用による副作用

  • 口渇
  • 便秘
  • 排尿困難
  • 目のかすみ

中枢神経系への影響

  • 眠気
  • めまい
  • 集中力低下

心血管系への影響

  • 起立性低血圧
  • 頻脈

その他

  • 体重増加
  • 性機能障害
  • 発汗増加

これらの副作用の多くは、服用を続けるうちに軽減することが多いです。

ドキセピンの特徴と他の抗うつ薬との違い

ドキセピンは三環系抗うつ薬の中でも特に強い鎮静作用を持つことが特徴です。
このため、不安や不眠を伴ううつ病の患者に特に効果的です。
一方で、日中の眠気や集中力低下などの副作用も起こりやすいという面があります。

新しい世代の抗うつ薬であるSSRIやSNRIと比較すると、ドキセピンは副作用の面でやや劣りますが、効果の面では劣らないとされています。
特に、SSRIやSNRIで十分な効果が得られなかった患者に対して、ドキセピンが効果を示すことがあります。

ドキセピンの適切な使用のために

ドキセピンを含む抗うつ薬の使用には、医師との連携が欠かせません。
治療を始める前に、以下の点について医師とよく話し合いましょう。

  • 現在の症状の詳細
  • これまでの治療歴
  • 他に服用している薬や健康食品
  • アレルギーの有無
  • 生活習慣や仕事の状況

また、治療中も定期的に診察を受け、効果や副作用について伝えることも大切です。
症状の変化や気になる副作用があれば、速やかに医師に相談しましょう。

よくあるご質問(FAQ)

  • 質問:
    ドキセピンはどのような効果がある薬ですか?
    回答:

    ドキセピン(Doxepin)は、三環系抗うつ薬の一つで、うつ病、不安障害、慢性蕁麻疹、睡眠障害などの治療に用いられます。
    この薬はセロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、H1ヒスタミン受容体の強力なアンタゴニスト(拮抗剤)としても働きます。
    そのため、アトピー性皮膚炎や慢性苔癬によるかゆみにはクリームとしても使用されます。

  • 質問:
    ドキセピンは日本で承認されていますか?
    回答:

    ドキセピンは日本では未承認であり販売されていませんが、アメリカでは1969年に承認されており、後発医薬品も存在します。
    日本で承認されている三環系抗うつ薬には、イミプラミン(先発医薬品名:トフラニール)、アミトリプチリン(先発医薬品名:トリプタノール)、ノルトリプチリン(先発医薬品名:ノリトレン)、トリミプラミン(先発医薬品名:スルモンチール)、クロミプラミン(先発医薬品名:アナフラニール)、アモキサピン(先発医薬品名:アモキサピン)、ロフェプラミン(先発医薬品名:アンプリット)、ドスレピン(先発医薬品名:プロチアデン)があります。

  • 質問:
    ドキセピンの商品名は何ですか?
    回答:

    ドキセピンは日本国内では未承認ですが、米国ではブランド名としてSILENOR(R)(Currax Pharmaceuticals LLC)やZONALON(R)(Mylan Pharmaceuticals)として販売されています。
    さらに後発品として、DOXEPINが様々は製薬会社から発売されています。

  • 質問:
    ドキセピン何世代の抗ヒスタミン薬ですか?
    回答:

    ドキセピンは第一世代の抗ヒスタミン薬であり、三環系抗うつ薬でもあります。
    ドキセピンは脳への影響が大きく、蕁麻疹への抗ヒスタミン薬の代替としての使用は推奨されません。
    ただし、アトピー性皮膚炎や慢性苔癬によるかゆみにはクリームとして使用される場合があります。

  • 質問:
    ドキセピンは不眠症に効果がありますか?
    回答:

    低用量のドキセピンは睡眠導入に効果的で、Somaxon社は不眠症治療薬としての特許を取得しています。
    臨床試験では、ドキセピンの3mgおよび6mgが睡眠維持の指標であるWASO(客観的中途覚醒時間)を改善し、総睡眠時間を延長することが確認されています。
    入眠潜時の短縮効果は6mgでのみ確認されています。

  • 質問:
    ドキセピンの副作用は何がありますか?
    回答:

    一般的な副作用には眠気、口渇、便秘、吐き気、かすみ目などがあります。
    重大な副作用には自殺念慮、躁病、尿閉などがあり、急に投与量を減らすと離脱症候群を引き起こすことがあります。
    この症候群には、精神的症状として落ち着きがなくなる、イライラする、不安、集中力低下、注意障害、幻覚、興奮状態などが含まれます。
    また、身体的症状には頭痛、めまい、しびれ、耳鳴り、吐き気、発汗、感覚過敏、知覚異常、けいれん、便秘や下痢、食欲不振などがあります。

  • 質問:
    ドキセピンの適切な投与量はどれくらいですか?
    回答:

    睡眠導入目的でドキセピンを使用する場合は3mg,6mgが推奨されています。
    睡眠維持障害に適応があり、乱用傾向がないことが特徴です。
    半減期は15.3時間です。

  • 質問:
    ドキセピンの作用機序は何ですか?
    回答:

    三環系抗うつ薬は、セロトニンおよびノルアドレナリンの再取り込みを阻害し、これらの神経伝達物質の機能を高めることで抗うつ効果を発揮します。
    しかし、ヒスタミン受容体を阻害することで眠気が生じ、ムスカリン受容体を阻害することで口渇や便秘が、α1アドレナリン受容体を阻害することで血圧低下やふらつきが副作用として現れることがあります。

  • 質問:
    ドキセピンを服用する際の注意点は何ですか?
    回答:

    ドキセピン使用時の注意点として、意識の喪失、興奮、呼吸数の低下、けいれん、筋肉の硬直、口の乾燥が見られることがあります。
    また、行動や気分の変化、自殺念慮が現れることもあります。
    服用中は車の運転や集中力を要する作業を避け、急に薬の服用を中止すると離脱症候群が出現する可能性があります。
    いずれの場合も、内服を中断したい場合は医師に相談することが重要です。

  • 質問:
    ドキセピンと他の抗うつ薬との違いは何ですか?
    回答:

    ドキセピンの特長は、第3級アミン三環系抗うつ薬に属しますが、その代謝物は第2級アミン三環系抗うつ薬として作用する点です。
    第3級アミンと第2級アミンの三環系抗うつ薬の違いは、これらがどのぐらい神経伝達物質の受容体やトランスポーターに結びつくかということです。
    第3級アミンは比較的強く作用し、セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みをしっかりと抑制しますが、第2級アミンはその作用が少し弱く、副作用も比較的少ない傾向があります。
    一方で、ドキセピンの様な三環系抗うつ薬は、他の抗うつ薬、特にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)などの新しい抗うつ薬とは異なり、副作用のリスクが高いとされています。
    これらの新しい薬剤は、より特異的に作用し、一般的に副作用が少ないとされており、ドキセピンとは使用感や安全性に違いがあります。

  • 質問:
    ドキセピンの効果が現れるまでの時間はどれくらいですか?
    回答:

    抗うつ薬は効果が出始めるまでに2週間以上かかることがあります。
    これは、抗うつ薬が脳内で神経伝達物質のレベルを上げると、脳細胞がその変化に反応して、神経伝達物質の放出を抑えるためです。
    特に、シナプス前受容体(5HT1A受容体やα2受容体)というシステムが関与しており、これを解除するには少なくとも2週間の服用が必要です。

  • 質問:
    ドキセピンの薬価はどれくらいですか?
    回答:

    ドキセピンは日本国内では未承認で、販売していませんが、1969年にアメリカで医療薬として承認され、現在も使用されています。
    ドキセピンの価格は、2019年時点で英国の国民保健サービスで1ヵ月分が少なくとも100ポンド、米国では約23米ドルです。

  • 質問:
    ドキセピンの効果が持続する期間はどれくらいですか?
    回答:

    抗うつ薬の効果を実感する時期には個人差があり、アンケートによると、2週間以内に効果を感じる人は16%に過ぎず、約40%の人が1~2ヵ月かかるとしています。
    また、効果を実感するまでの時間や持続する時間には差があるため、自分に合った治療法について主治医と相談することが大切です。

  • 質問:
    ドキセピンを飲み忘れた場合、どう対処すればいいですか?
    回答:

    抗うつ薬を飲み忘れた場合、次の服用までに時間があるならすぐに服用し、次の服用時間が近い場合は1回分を飛ばすのが一般的です。
    服用の間隔を調整する場合の目安は、1日3回で4時間以上、1日2回で5時間以上、1日1回で8時間以上です。
    抗うつ薬は食事の影響を受けにくいため、食後でなくても服用できます。

  • 質問:
    ドキセピンの服用を中止する際の注意点は何ですか?
    回答:

    ドキセピンを服用中止する際は、自己判断で中止せず、必ず主治医に相談しましょう。
    抗うつ薬の服用を忘れると、離脱症状が出る可能性があります。
    離脱症状には、めまい、頭痛、吐き気、だるさ、しびれ、耳鳴り、イライラ、不安、不眠などがあります。

  • 質問:
    ドキセピンの長期使用による影響は何ですか?
    回答:

    ドキセピンは抗うつ剤として長期的に使用されますが、中枢神経を刺激することがあり、不安や焦燥感、イライラが急に増すことがあります。
    特に双極性障害の方では、軽躁状態が誘発されることがあります。
    また、若年層や希死念慮が強い方では、精神状態が異常になることがあります。
    さらに、抗うつ剤が心臓の電気活動に影響を与え、致死的な不整脈のリスクが増すことがあるため、注意が必要です。

  • 質問:
    ドキセピンと併用すべきでない薬物は何ですか?
    回答:

    グレープフルーツの果肉に含まれる成分が薬の代謝を阻害し、血中濃度が上昇するため、薬が効きすぎることがあります。
    また、チーズやワイン、ビール、そらまめに含まれるチラミンの分解が妨げられ、チラミン中毒(顔面紅潮、頭痛、急激な血圧上昇など)が起こる可能性があります。
    アルコールも薬の吸収や代謝に影響を与え、血中濃度が大きく変動するため、服用中のアルコールは避けましょう。

  • 質問:
    ドキセピンは不安障害の治療に効果がありますか?
    回答:

    ドキセピンは三環系抗うつ薬で、不安障害の治療に効果があります。
    また、片頭痛予防、緊張型頭痛予防、神経障害性疼痛の治療にも使われ、痛みや不安、焦燥を伴ううつ病にも使用されます。

  • 質問:
    ドキセピンは薬物乱用に対する依存性がありますか?
    回答:

    ドキセピンは依存性がないと言われていますが、服用を忘れたり、服用を中止したりすると、めまいや頭痛、吐き気、不安、不眠などの離脱症状が現れることがあります。
    そのため、薬の効果が薄れていると感じたり、量を自分で増やしたくなった場合は、依存の可能性があるため注意が必要です。
    依存の症状が現れた場合は、主治医に相談することが重要です。

  • 質問:
    ドキセピンはどのように処方されますか?
    回答:

    ドキセピンは三環系抗うつ薬の一つで、うつ病性障害、不安障害、慢性蕁麻疹、睡眠障害の治療に用いられます。
    日本国内では処方されておらず、1969年にアメリカで医療薬として承認されています。
    アメリカでは後発医薬品として入手可能です。