アリスキレン

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カナアリスキレン
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英語名Aliskiren
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化学式C30H53N3O6
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分子量551.7583 g/mol
アリスキレンの作用機序
アリスキレンは、高血圧治療薬の中でも比較的新しい薬です。
従来の高血圧治療薬とは異なるメカニズムで働くため、注目を集めています。
直接的にレニン阻害薬として機能し、血圧を下げる効果があります。
アリスキレンは、レニン-アンジオテンシン系(RAS)という血圧調整システムの最初の段階で作用します。
レニンという酵素の働きを抑えることで、血圧上昇を引き起こす一連の反応を防ぐのです。
レニンは通常、アンジオテンシノーゲンをアンジオテンシンIに変換します。
アリスキレンはこの過程を阻害することで、結果的にアンジオテンシンIIの産生を減らします。
アンジオテンシンIIは強力な血管収縮作用を持つため、その産生を抑えることで血圧が下がります。
アリスキレンは、ACE阻害薬やARBなど、他のRAS阻害薬とは異なる点がいくつかあります。
例えば、アリスキレンはRASの最上流で作用するため、理論上はより完全にRASを抑制できる可能性があります。
また、アリスキレンは長時間作用型の薬剤で、1日1回の服用で24時間以上効果が持続します。
そのため、夜間や早朝の血圧上昇(モーニングサージ)も抑制できる可能性があります。
服用上の注意点と副作用
アリスキレンは通常、1日1回服用しますが、グレープフルーツジュースと一緒に服用すると、薬の血中濃度が上昇する可能性があるので避けましょう。
妊娠中や妊娠の可能性がある場合は、アリスキレンを使用してはいけません。
胎児に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
また、授乳中の使用についても医師と相談が必要です。
腎機能障害や肝機能障害のある人は、アリスキレンの使用に特に注意が必要です。
これらの状態では、薬の代謝や排泄に影響が出る可能性があるからです。
すべての薬には副作用のリスクがありますが、アリスキレンも例外ではありません。
比較的よくみられる副作用としては、下痢、めまい、頭痛などがあります。
まれに、重度のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こることもあります。
顔や喉の腫れ、呼吸困難、発疹などの症状が現れた場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
他の薬との相互作用
アリスキレンは他の薬と相互作用を起こす可能性があります。
特に、他のRAS阻害薬(ACE阻害薬やARB)との併用は避けるべきです。
併用すると、低血圧や腎機能障害、高カリウム血症のリスクが高まる可能性があるからです。
また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)との併用も注意が必要です。
NSAIDsはアリスキレンの降圧効果を弱める可能性があります。
利尿薬やカリウム保持性利尿薬との併用も、高カリウム血症のリスクを高める可能性があるので、医師の厳重な管理下で行う必要があります。
よくあるご質問(FAQ)
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質問:アリスキレンの作用機序は何ですか?回答:
アリスキレンは、酵素(レニン)に作用することにより血圧を下げる薬剤です。
血圧上昇に重要な働きをする物質に、アンジオテンシンがあります。
レニンはアンジオテンシンの産生を促す働きがあるため、レニンを阻害することでアリスキレンは血圧を低下させます。
このような作用機序により、アリスキレンは高血圧の治療薬として使用されています。 -
質問:アリスキレンの商品名は何ですか?回答:
アリスキレンは薬剤の成分名であり、アリスキレンを含む商品名は「ラジレス」です。
ラジレスは、株式会社オーシャンパシフィックが製造販売している高血圧症の治療薬です。
ラジレスには、ラジレス錠150mgの1種類のみです。
なお、2014年3月24日に、ノバルティスファーマ株式会社がアリスキレンを配合した高血圧症治療薬「ラジムロ配合錠」の承認を取得しましたが、世界的にアリスキレンの処方量が減少していることなどを背景に、翌25日に発売の中止を発表しています。
つまり、2024年6月時点で、日本国内ではアリスキレンを含む薬剤はラジレスのみということになります。 -
質問:アリスキレンの特徴は何ですか?回答:
アリスキレンの特徴は次のとおりです。
・レニンという血圧調整に働く酵素を阻害する新しいタイプの医薬品です。
・体内での持続性が高いため、1日1回の服用で十分な血圧管理が可能です。
・食事の影響を受けやすいため、毎日決まった時間に服用する必要があります。
アリスキレンには、以上のような特徴があります。 -
質問:アリスキレンは糖尿病でも服用できますか?回答:
アリスキレンは糖尿病の方でも服用が可能です。
しかし、次のような医薬品をすでに服用している糖尿病の患者さんは、アリスキレンを使用できません。
・イトラコナゾール、シクロスポリン
・アンジオテンシン変換酵素阻害またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤
・サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物
このような医薬品を服用中の方は、アリスキレンを使用しないでください。 -
質問:アリスキレンの禁忌は何ですか?回答:
アリスキレンには、次のような禁忌があります。
・アリスキレンを飲んでアレルギーが出たことのある方
・妊婦や妊娠している可能性のある方
・イトラコナゾール、シクロスポリンを使用中の方
・アンジオテンシン変換酵素阻害剤またはアンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤を使用している糖尿病の方
・サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物を使用中の糖尿病の方
このような方は、アリスキレンを使用しないでください。 -
質問:アリスキレンは臨床適用されていますか?回答:
日本国内では、2009年からアリスキレンが臨床現場で使用されています。
アリスキレンを有効成分とする薬剤には「ラジレス錠150mg」がありますが、この薬剤は2009年7月7日に使用が認められました。
高血圧症の治療薬として、アリスキレンは10年以上にわたり、長く使用され続けています。 -
質問:アリスキレンはどのような作用機序で高血圧の治療に使われますか?回答:
アリスキレンは、血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンの生成を促進する酵素「レニン」の働きを抑えることで、血圧を下げる作用を持ちます。
このような作用機序により、アリスキレンは高血圧の治療薬として用いられています。 -
質問:アリスキレンは他の薬剤との相互作用が懸念されますか?回答:
アリスキレンは、次のような医薬品との相互作用が懸念されます。
・イトラコナゾール、シクロスポリン:P糖タンパク質という物質によって、アリスキレンは体の外に排泄されます。
そのため、同じくP糖タンパク質によって排泄される以上のお薬を併用すると、アリスキレンの血中濃度が上がるおそれがあります。
・アンジオテンシン変換酵素阻害剤、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗剤、サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物:アリスキレンの作用が増強されることにより、低血圧や脳卒中、腎機能障害、高カリウム血症のリスク増加が報告されています。
このような医薬品はリスクが高いため、アリスキレンとの併用が禁止されています。 -
質問:アリスキレンを服用中にアルコールを摂取することは避けるべきですか?回答:
アリスキレンを服用中にアルコールを控えるべきかは特に定められていません。ただし、アリスキレンは血圧を下げる薬剤です。
そのため、アルコールとアリスキレンの効果により、めまいやふらつきが現れやすくなることがあります。
アリスキレンを服用中は、適度な飲酒を心がけてください。 -
質問:アリスキレンの長期服用で注意すべき点はありますか?回答:
1年間の長期服用でも、アリスキレンは効果や安全性に問題がないことが試験で示されています。
ただし、すべての人に効果があったり、副作用がまったく起こらなかったりするわけではありません。
アリスキレンの効果には個人差があり、腎機能障害のような重大な副作用を起こすことが知られています。
アリスキレンを長期で服用する場合は、定期的に医師の診察を受けてください。 -
質問:アリスキレンは肝臓や腎臓に影響を与える可能性がありますか?回答:
重大な副作用として、アリスキレンは腎機能に障害を与えることがあり、慢性腎不全が悪化した例も報告されています。
腎機能の障害が起こると、尿量が減る、むくみ、だるさなどの症状が主に現れます。
また、肝臓に関する重大な副作用はありませんが、肝機能の異常や、肝臓の酵素が血液検査で上昇する副作用が報告されています。
尿量が減る、むくみ、だるさなどの症状を自覚した場合は、すぐに医師に相談してください。 -
質問:アリスキレンは心臓病や脳卒中のリスクを低減する効果がありますか?回答:
アリスキレンは、高血圧の治療に使用される薬剤です。
高血圧は心臓病や脳卒中のリスク因子となるため、アリスキレンの服用でこれらのリスクを低減する効果が期待できます。
ただし、アリスキレン単独で心臓病や脳卒中を直接予防するわけではありません。 -
質問:アリスキレンは心臓血管系の健康にどのような影響を与えますか?回答:
アリスキレンは、高血圧の治療に使用される薬剤です。
そのため、血圧を下げることで、間接的に心臓血管系の健康を保つことに貢献します。
高血圧は心臓病や脳卒中のリスクを高めるため、アリスキレンによる血圧の低下は、心臓病や脳卒中のリスクを低減する可能性があります。
ただし、アリスキレン単独で心臓病や脳卒中を直接治療・予防できるわけではありません。
心臓血管系の病気をお持ちの方は、医師の指示に従って適切な治療を受けてください。 -
質問:アリスキレンの効果が不十分な場合、増加量は可能ですか?回答:
アリスキレンの効果が不十分な場合、増量は可能です。
アリスキレンを有効成分とする高血圧症治療薬「ラジレス錠」の添付文書には、「効果が不十分な場合、300mgまで増量することができる」と記載されています。
ラジレス錠は150mgのみが認められているため、増量する場合は2錠が上限です。
このように、アリスキレンは増量が可能ですが、増量により思わぬ副作用が生じることもあります。
アリスキレンの効果が感じられない場合は、自己判断での増量は避け、必ず医師に相談してください。 -
質問:アリスキレンは血糖値影響がありますか?回答:
アリスキレンは、直接的に血糖値に影響を与える薬剤ではありません。
しかし、ある研究において、アリスキレンには糖尿病によって傷んだ腎臓の保護に役立つ効果がある可能性が示されています。
ただし、この研究結果は限定的であり、アリスキレンが糖尿病の治療薬として使用されることはありません。 -
質問:アリスキレンを服用中に気をつけるべき症状にはどのようなものがありますか?回答:
アリスキレンは血圧を下げる効果があるため、めまいやふらつきが現れることがあります。
そのため、高い所での作業や運転中などは十分に注意してください。
また、次のような重大な副作用が報告されています。
・血管浮腫:喉がつまる感じ、息苦しい、声が出にくい、急な腫れ(唇・まぶた・舌・口の中・顔・首)
・アナフィラキシー:全身のかゆみ、じんましん、喉のかゆみ、ふらつき、動悸、息苦しい
・高カリウム血症:体のしびれ、体に力が入らない、吐き気、嘔吐、下痢、お腹が張る
・腎機能障害:尿量が減る、むくみ、体がだるい
このような症状が現れた場合は、すぐに医師に相談してください。 -
質問:アリスキレンの服用を中止する際の注意点はありますか?回答:
アリスキレンの服用を自己判断で急に中止したり、量を減らしたりすると、症状が悪化することがあります。
継続して薬剤の効果を得るためには、医師の指示どおりに飲み続けることが重要です。
体調が良くなったと感じても自己判断で服用を中止することは避け、必ず医師に相談しましょう。 -
質問:アリスキレンは妊娠中や授乳期の服用は控えるべきですか?回答:
妊娠中はアリスキレンを使用できませんが、授乳中はお母さんの健康状態と母乳のメリット、どちらを重視するかによります。
アリスキレンと似た作用の薬剤を服用した妊婦さんにおいて、胎児の奇形や死亡が報告されています。
そのため、妊娠中や妊娠の可能性がある人は、アリスキレンの服用を控えることとされています。
一方で、授乳中の服用は医師の判断によります。
母乳はお子さんにとって大切な栄養源のため、お母さんの健康状態に問題がなければ、薬剤を止めて授乳を行うこともあります。このように、アリスキレンは基本的に、妊娠中や授乳中の服用はできない薬剤です。
服用中に妊娠が発覚した場合は、直ちに医師に相談してください。 -
質問:アリスキレンの服用を忘れた場合、どのように対処すべきですか?回答:
アリスキレンを飲み忘れた場合は、決して2回分を一度に飲まず、次の食事の際に飲んでください。
2回分を一度に飲むと、めまいやふらつきが現れることがあります。
アリスキレンは1日1回、決まった時間に飲む薬剤です。
朝、昼、夕食の食前か食後、どの時間に飲むかを決めたら、基本的に変えないことをおすすめします。
飲み忘れた場合でも、食前か食後かは決めた通りに飲まなくてはいけません。
例えば、昼食の後に飲むと決めている場合に飲み忘れてしまった時は、その日の夕食の後に1回分を服用してください。 -
質問:アリスキレンの費用対効果はどのようなものですか?回答:
アリスキレンの費用対効果は、使用する患者さんの状態などによって異なると考えられます。
アリスキレンは直接的レニン阻害薬という、他にはない作用機序の高血圧症治療薬です。
他の高血圧症治療薬で血圧が下がらなかったり、副作用で使用できなかったりした方にとって、アリスキレンが効果を示した場合は費用対効果が高いと言えます。
しかし、すべての方にアリスキレンが効果を示すわけではありません。
アリスキレンが効かなかったり、副作用が出てしまったりした方にとっては、アリスキレンの費用対効果は低くなります。
このように、効果や副作用の有無、患者さんの状態によって、アリスキレンの費用対効果は異なります。