心不全治療薬一覧公開!利尿剤や点滴について解説します

心不全は、心臓が十分な血液を全身に送り出すことができなくなる状態です。
この疾患は慢性的であり、治療には複数の薬物療法が必要になります。
そのため、長い付き合いをしながら生きて行かなくてはなりません。
この記事では、心不全治療薬について詳しく説明し、各薬の使い分けや点滴治療、利尿剤の役割と種類などを解説していきます。
心不全治療薬の種類と使い分け
心不全の治療には多くの薬剤が使用されます。
以下は心不全治療薬の一覧とその使い分けについてです。
心臓を保護する薬剤
心不全の悪化を遅らせる薬剤の中でも、心不全で過剰に分泌されているホルモンのバランスを調節する薬剤は以下の通りです。
- ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)
- レニベース(エナラプリルマレイン酸塩)
- ロンゲス(リシノプリル水和物)
- ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)
- ブロプレス(カンデサルタン・シレキセチル)
- ARNI(アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬)
- エンレスト(サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
- アルダクトン(スピロノラクトン)
- セララ(エプレレノン)
心臓を休ませる薬剤
心不全の悪化を遅らせるためには、心臓を休ませる薬剤の処方も有効です。
心拍数が高くなりすぎる状態を押さえ、無理をさせないようにするのが以下の薬剤です。
- β遮断薬
- メインテート(ビソプロロールフマル酸塩)
- αβ遮断薬
- アーチスト(カルベジロール)
- HCNチャネル遮断薬
- コララン(イバブラジン塩酸塩)
心臓の働きを助ける薬剤
心臓や血管の働きを調節し、心不全の悪化を防ぐ薬剤はこちら。
- sGC刺激薬(可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬)
- ベリキューボ(ベルイシグアト)
併存症のリスクを減らす薬剤
心臓を保護したり、入院を防ぐ役割を持つのが以下の薬剤です。
- SGLT2阻害薬
- フォシーガ(ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物)
- ジャディアンス(エンパグリフロジン)
むくみをとる薬剤
心臓にかかる負担は、身体に溜まった水分を外に出すと減ります。
そのため、むくみをとる薬剤が処方されることもあります。
- 利尿薬
- フルイトラン(トリクロルメチアジド)
- ベハイド(ベンチルヒドロクロロチアジド)
- トリテレン(トリアムテレン)
- ラシックス(フロセミド)
- ヒドロクロロチアジド(ヒドロクロロチアジド)
- ダイアート(アゾセミド)
- サムスカ(トルバプタン)
血管を拡げる薬剤
血管を拡げることでも、心臓にかかる負担は減らせます。
- ペルサンチン(ジピリダモール)
心臓が収縮する力を強める薬剤
心臓が収縮する力を強め、全身に血液を送り出すポンプ機能を助けてくれる薬剤もあります。
- 強心薬
- ネオフィリン(アミノフィリン水和物)
- ジゴシン(ジゴキシン)
- モノフィリン(プロキシフィリン)
- ラニラピッド(メチルジゴキシン)
- カルグート(デノパミン)
- ピモベンダン(ピモベンダン)
不整脈を予防する薬剤
心不全では、不整脈による動悸・めまいなどの症状や突然死を防ぐ薬剤も処方されることがあります。
- アンカロン(アミオダロン塩酸塩)
他にも、患者さんの症状によって使われる薬剤はありますが、代表的なものは上記の通りになります。
どんな薬剤にどんな役割があるのか、医師や薬剤師が説明してくれるので、不安であればしっかり説明を求めましょう。
心不全の利尿剤にはどんなものがあるか
利尿薬が処方されたら、医師の指示に従って開始時期や調整をしましょう。
注意しなければならないのは、自分の意志で、治ったからと服用方法を変えないことです。
治ったと思っても再発することはありますし、薬剤を中止したことで、むしろ悪化してしまうケースもあります。
心不全に使われる利尿薬は、上記でもご紹介した通り多くあります。
フルイトラン(トリクロルメチアジド)やベハイド(ベンチルヒドロクロロチアジド)、トリテレン(トリアムテレン)、ラシックス(フロセミド)などですね。
通常は、患者さんの状態に合わせて利尿剤が選ばれ、低用量から服用します。
その後、尿量や体重減少、症状の改善を確認しながら用量を調整しますが、この調整の仕方もいつまで服用するかも、医師の指示に従うことになります。
利尿剤を使っている間は、定期的に血液検査を行い、電解質バランスや腎機能を確認します。
症状が安定したら、最低限の有効用量に調整することもあります。
心不全の4つの薬剤とは?
心不全治療に関して、「fantastic four」と呼ばれる4つの薬剤があります。
なんだか薬剤らしからぬ派手なネーミングですが、この4つは以下の通りです。
- β遮断薬
- MRA
- ARNI
- SGLT2阻害薬
これからの心不全治療の中心となるであろうという意味です。
最新の心不全治療薬は?
心不全治療は日々進化しており、新薬や新しい治療法が続々と登場しています。
今回は、その中でも心不全治療の新薬として登場した、エンレスト(サクビトリルバルサルタン)をご紹介しましょう。
エンレストは、2020年8月26日に、慢性心不全に対する新薬として発売されました。
ネプリライシン阻害薬であるサクビトリルとARBであるバルサルタンの2つの成分が、心不全の治療に効果を発揮します。
サクビトリルには利尿作用や血管拡張作用があるため、体液量を減少させることができます。
その結果、心負荷が軽減します。
一方バルサルタンには、血管拡張作用、血圧低下作用があり、こちらも心不全の症状を軽くしてくれます。
フロセミド点滴
心不全には、点滴が行われる場合もあります。
例えば、フロセミド点滴はループ利尿剤であり、即効性があります。
「すぐ治る」わけではありませんが、「すぐ効く」ため緊急時に浮腫を迅速に減少させられます。
ただ、緊急時に使われるものなので、症状が落ち着いている場合などには通常使用しません。
心不全でも長生きできるか
心不全は、完治する病気ではありません。
時間をかけて悪化していく病気です。
しかし、長生きできないかと言えばそうでもありません。
治療をしていれば症状をコントロールできるため、心不全になった人が一概に短命だとは言えないのです。
「心不全は薬剤で治るか」という疑問も、上記の理由により、あくまで薬剤で症状を多少コントロールできはするものの、完治は難しいです。
心不全の治療には、長期的な管理が必要です。
定期的な医師の診察を受け、薬剤の効果や副作用をモニタリングしていくことになります。
また、生活習慣の改善も大切です。
食事管理に関しては、塩分摂取を控え、バランスの取れた食事を心がけるようにしましょう。
運動においては、適度な運動を行い、体力を維持することが大切です。
薬剤の継続の重要性も大きいです。
医師の指示に従い、処方された薬剤を継続して服用しましょう。
自己判断で中止しないように注意が必要です。
早期発見と治療も心不全の治療におけるポイントで、薬物療法、定期検診で症状をコントロールしていきます。
心不全患者が日常生活で気を付けるべきこと
心不全は慢性的な疾患であり、日常生活において注意を払うべきこともあります。
いわゆる健康体でいるために必要なことですが、今一度確認しておきましょう。
1. 食事管理
塩分摂取を減らせば、体内で水分が保持されることを防げます。
心臓への負担を軽減するために、利尿剤などが使われているのでしたね。
体内に水分があることが心臓の負担になるため、塩分は控えめにすると良いでしょう。
加工食品や外食は塩分が多いことがあるため、なるべく自炊を心がけ、低ナトリウムの調味料を使用するようにしてみてください。
バランスの取れた食事も大切です。
野菜・果物・全粒穀物・低脂肪のタンパク質源を中心に、バランスの取れた食事を心がけましょう。
カリウムやマグネシウムなどのミネラルも重要です。
2. 体重管理
体重の増加は体内の水分が増えているサインです。
毎日同じ時間に体重を測定し、急激な増加があれば医師に相談しましょう。
3. 適度な運動
無理のない範囲での適度な運動は、心機能を維持し、全体的な健康を向上させてくれます。
ウォーキングや軽いエアロビクスなどを日課に取り入れると良いでしょう。
ただし、運動中に息切れや胸痛を感じた場合はすぐに中止し、医師に相談してください。
4. 水分管理
医師から指示された水分摂取量を守りましょう。
水分の取りすぎは、体内の水分量を増加させ、心臓に負担をかけます。
5. ストレス管理
ストレスは心臓に悪影響を及ぼすため、リラクゼーション法(深呼吸や瞑想、ヨガなど)を取り入れ、精神的な負担を軽減するよう努めましょう。
質の良い睡眠を確保することも、ストレス管理には大切です。
6. 禁煙・禁酒
喫煙は心血管系に悪影響を与え、心不全を悪化させるため、完全に禁煙する必要があります。
また、過度の飲酒も心不全を悪化させる可能性があるため、医師の指示に従い、飲酒量を制限するか、禁酒することが望ましいです。
まとめ
心不全治療には多くの薬物療法があります。
各薬の使い分けや最新の治療法については、医師に聞いてみましょう。
利尿剤やACE阻害薬、ARBなどの多岐にわたる治療薬があり、それぞれの役割と使い方を理解することで、心不全患者でも生活の質を大きく向上させられます。
また、継続的な治療と生活習慣の改善により、心不全でも長生きすることが可能です。
医師との連携を取って地道に治療を続けることが、心不全治療の成功の鍵となります。