「脂漏性皮膚炎ってどんな病気?」
「頭皮や顔面にできた脂漏性皮膚炎はどうやって治すの?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、脂漏性皮膚炎が発生するメカニズムやその治し方について徹底解説。
脂漏性皮膚炎と食事との関連についても紹介しています。
本記事を読めば、脂漏性皮膚炎に対する理解を深められます。
脂漏性皮膚炎に悩んでいる方や興味がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
脂漏性皮膚炎とは?
脂漏性皮膚炎とは、皮脂の分泌が多い頭部や顔面、腋窩などに、鱗屑(皮が剥けてカサカサした状態)や痂皮(かさぶた)、紅斑(赤み)などが生じる疾患です。
乳児と、思春期~40歳の男性によく発生します。
脂漏性皮膚炎について、年代別に詳しく見ていきましょう。
乳児型の脂漏性皮膚炎
乳児型の脂漏性皮膚炎は生後2~4週頃から発生し、1歳頃までに自然と治るケースが多いです。
黄色調の痂皮や紅斑がよくみられます。
なお、生後2週~数ヵ月の乳児は様々な原因で皮膚病変を起こしやすいです。
代表的な疾患は脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎ですが、稀に遺伝性・先天性疾患が原因の可能性があります。
気になる乳児湿疹を見つけた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
成人型の脂漏性皮膚炎
成人型の脂漏性皮膚炎の特徴は、症状が慢性的に経過して再発しやすい点です。
そのため、長期間にわたって症状に悩み続ける人も少なくありません。
成人型の脂漏性皮膚炎では、鱗屑と紅斑が主な症状として現れます。
頭部に発生した軽症例の場合は、いわゆるフケ症を呈するケースが多いです。
脂漏性皮膚炎が発生するメカニズム
脂漏性皮膚炎が発生する根本的な原因は不明ですが、皮脂の分泌異常と「マラセチア属」という真菌の関与が考えられています。
そのメカニズムについて詳しく見ていきましょう。
私たちの皮脂の中には、「トリグリセライド」という物質が含まれています。
このトリグリセライドを分解するのが、マラセチア属という真菌です。
真菌とは、細菌やウイルスなどと同じように、様々な疾患を引き起こす病原体の一群を指します。
トリグリセライドがマラセチア属に分解されてできたものが、「遊離脂肪酸」という物質です。
遊離脂肪酸は皮膚に作用し、表面に位置している「角化細胞」を刺激します。
刺激を受けた角化細胞は、炎症性サイトカインと呼ばれる「IL-6」や「IL-8」などの物質を放出します。
そして、これらのサイトカインの働きにより、脂漏性皮膚炎の症状が生じているのです。
脂漏性皮膚炎になりやすいのはどんな人か
以下の人は脂漏性皮膚炎になりやすいことが分かっています。
- 男性
- パーキンソン病患者
- AIDS患者
これらの人が脂漏性皮膚炎になりやすい理由は、発生するメカニズムと深く関係しています。
男性ホルモンであるアンドロゲンには、皮脂分泌を亢進する作用があります。
そのため、男性は女性と比較して脂漏性皮膚炎になりやすいです。
パーキンソン病患者では自律神経系に異常をきたしやすいです。
そのため、皮脂分泌が亢進して脂漏性皮膚炎を合併しやすいことが分かっています。
AIDS患者では体内の免疫システムが機能していません。
そのため、マラセチア属が過剰に増殖しやすく、脂漏性皮膚炎になりやすいのです。
脂漏性皮膚炎の治療法
脂漏性皮膚炎の治療では、主に以下の3つが行われています。
- 石けん/シャンプーによる洗顔/洗髪で清潔に保つ
- ステロイド外用薬
- マラセチア属に対する抗真菌薬
ステロイド外用薬とマラセチア属に対する抗真菌薬を、併用するケースも少なくありません。
それぞれの治療法について詳しく解説します。
①石けん/シャンプーによる洗顔/洗髪で清潔に保つ
洗顔・洗髪は脂漏性皮膚炎に対する治療の基本です。
いずれも、刺激をあまり与えない点がポイントです。
洗顔では、以下の点に気を付けましょう。
- 洗顔料をしっかり泡立ててマッサージするように洗う
- 約38度のぬるま湯ですすぎ残しがないように流す
- 洗顔後はすぐに化粧水などで保湿し皮脂の分泌を抑える
洗髪では、以下の点に気を付けましょう。
- シャンプーは低刺激性のものを選ぶ
- 回数は1日1回とし洗い過ぎない
- 爪を使わずに指の腹を使って優しく洗う
- たくさんのお湯でしっかりと流す
以上のポイントを意識して顔や頭を清潔に保ちましょう。
②ステロイド外用薬
他の多くの皮膚疾患と同様に、脂漏性皮膚炎に対してもステロイド外用薬は使われます。
ステロイドには炎症性サイトカインの放出を抑制する作用があるため、皮膚の炎症を抑えられるのです。
ただし、ステロイド外用薬にはいくつかの副作用が報告されています。
長期間かつ多量の使用を続けた場合に、考えられる主な症状は以下の通りです。
- 皮膚萎縮
- 酒さ様皮膚炎(赤ら顔)
- 易感染性(感染性にかかりやすい)
- 多毛
- ざ瘡(ニキビ)
これらの副作用を起こさないためにも、ステロイド外用薬の使用に対しては慎重になる必要があります。
幸い、脂漏性皮膚炎はステロイド外用薬が他の皮膚疾患と比べて効きやすいので、副作用が生じるケースは少ないでしょう。
③マラセチア属に対する抗真菌薬
「脂漏性皮膚炎が発生するメカニズム」の見出しでも説明した通り、脂漏性皮膚炎の発生にはマラセチア属が関与しています。
マラセチア属を除去するために使われているのが、抗真菌薬である「ケトコナゾール」です。
ここで、ケトコナゾールが作用するメカニズムを少し見ていきましょう。
マラセチア属をはじめとする真菌は、細胞膜という膜に覆われています。
細胞膜を構成する成分は、脂質の一種である「エルゴステロール」です。
そして、ケトコナゾールにはエルゴステロールの合成を阻害する働きがあります。
このようなメカニズムで、ケトコナゾールは抗真菌作用を発揮しているのです。
なお、人間の細胞にも細胞膜は存在しますが、私たちの細胞膜はコレステロールから構成されているため問題ありません。
脂漏性皮膚炎と食事の関係
脂漏性皮膚炎と食事は密接に関係しています。
脂漏性皮膚炎とならないために控えた方が良い食品や積極的に食べた方が良い食品について紹介します。
控えた方が良い食品
控えた方が良いものは、脂質が多く含まれており、皮脂の分泌量を増やしてしまう食品です。
具体的な食品として以下が挙げられます。
- 揚げ物
- ファーストフード
- スナック菓子
- ケーキ
- バター
- マヨネーズ
以上の商品を食べてはいけないというわけではありません。
しかし、これらの食品の食べ過ぎは脂漏性皮膚炎の原因となるので、摂取量には十分に注意しましょう。
また、脂質の吸収率は夜に高いことが分かっています。
就寝前には可能な限り、脂質の多い食品を食べないようにしましょう。
積極的に食べた方が良い食品
積極的に食べた方が良いものは、ビタミンを豊富に含んでいる食品です。
特に摂取したいビタミンとその理由は以下の通りです。
- ビタミンA…皮膚の細胞の正常化に関係している
- ビタミンB2…皮膚の健康維持を助ける
- ビタミンB6…皮膚炎を予防する
- ビタミンC…抗酸化作用があり炎症を抑える
これらのビタミンが豊富に含まれている食品は以下の通りです。
ビタミン | 食品 |
---|---|
A | 牛や豚の肝臓、ウナギなど |
B2 | 卵や納豆、乳製品など |
B6 | マグロやカツオ、バナナ、レバーなど |
C | ブロッコリーやパセリなど |
脂漏性皮膚炎を予防するために何を食べた方がいいのか迷ったら、これらの食品を積極的に食べましょう。
脂漏性皮膚炎に関するQ&A
脂漏性皮膚炎に関してよくある質問を紹介します。
ここで疑問を解消しましょう。
Q1.脂漏性皮膚炎をセルフチェックする方法は?
以下のような症状があるかどうかを確認しましょう。
- 皮膚に赤みがある
- 皮膚がぽろぽろ剥ける
- 細かいフケが多く出る
これらの症状が出る場合は、脂漏性皮膚炎の可能性があるので一度医療機関を受診してみましょう。
インターネットで検索し、脂漏性皮膚炎の実際の画像・写真と見比べてみてもいいかもしれません。
Q2.脂漏性皮膚炎に効く市販薬はある?
脂漏性皮膚炎に対して市販薬で対処したい場合はステロイド外用薬を使用しましょう。
症状が軽い場合は、市販されている弱いステロイド外用薬でも効果が期待できます。
市販薬を使用しても治らない場合は、さらなる悪化を防ぐためにも医療機関を受診しましょう。
また、抗真菌薬であるケトコナゾールを含んだ市販薬はありません。
まとめ:脂漏性皮膚炎をステロイド外用薬や抗真菌薬で治療しよう
脂漏性皮膚炎は、皮脂の分泌が多い部位に様々な皮膚症状が生じる疾患です。
根本的な原因は解明されていないものの、皮脂の分泌異常とマラセチア属の関与が考えられています。
脂漏性皮膚炎の治療では、洗顔・洗髪で清潔に保つことに加え、ステロイド外用薬や抗真菌薬が使われます。
食事面にも気を付けつつ、うまく薬剤を使って脂漏性皮膚炎を治療しましょう。