クロミッドで妊娠できる確率は?1周期の妊娠率や服用方法と妊娠率を上げるポイントを解説

クロミッドは妊娠率を上げる不妊治療薬として、1961年にアメリカのメリル社で開発されて以来、長い間使用されてきた薬剤です。
今回はクロミッドを服用した時の妊娠率や服用方法、また妊娠率を上げるために気を付けたい生活習慣などを解説します。
クロミッドについて不安や疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。
クロミッドとは?
排卵誘発剤のクロミッドは、医師の国家試験でも取り扱われるほど一般的な不妊治療薬の1つです。
一般名を「クロミフェンクエン酸塩」といい、排卵障害による不妊症に効果があるとされています。
まずはクロミッドの効果や副作用について知識を深めていきましょう。
クロミッドの効果とは
クロミッドは脳にある排卵に関わる部位に作用して性腺刺激ホルモンの分泌を促することで、卵胞の発育を促進し排卵を誘発する薬剤です。
特に排卵障害がある方や自然に近い形の体外受精を望む方に処方されることが多いです。
クロミッドで排卵を誘発すると、1回で複数の卵子を排卵する可能性が高まるため、双子や三つ子などの多胎妊娠となるケースもあります。
日本国内における多胎児の分娩頻度が約1%なのに対し、クロミッドを服用した場合の双子になる確率は約4%というデータが上がっています。
また、クロミッドは男性不妊症についても効果のある薬剤で、精巣を刺激するホルモンを増やして、男性ホルモンや精子形成を促す目的で処方されるケースもあります。
クロミッドの副作用
クロミッドには次のような副作用が報告されています。
- のぼせ
- 卵巣の腫れによる腹痛
- 目のかすみ
- 発疹
- 吐き気
- 疲労感
これらの他にも、子宮内膜が薄くなったり、経管粘液が減ったりするなどの副作用があります。
また、クロミッドを服用して妊娠した場合には、自然妊娠と比較して流産率が少し上がるとも言われています。
クロミッドの噂としてよく耳にするのが体重増加や乳がんのリスクですが、どちらもエビデンスが不十分であることから、クロミッドの副作用とはされていません。
もし、クロミッドを服用中に違和感がある場合には、早めにかかりつけ医に相談しましょう。
妊娠できる確率はクロミッドでどれくらい上がる?
ここからはクロミッドを服用するとどれくらい妊娠できる確率が上がるのかを解説していきます。
比較対象として生殖機能に問題のないケースの年齢ごとの自然妊娠率と、不妊患者がタイミング法で治療した際の妊娠率それぞれをまとめました。
年齢ごとの自然妊娠率
まずは年齢ごとの1周期あたりの自然妊娠率についてです。
この表は生殖機能に問題のない男女が排卵日に性行為を行った場合の自然妊娠率です。
年齢 | 自然妊娠率 |
---|---|
20代 | 25~30% |
30代前半 | 25~30% |
30代後半 | 18%前後 |
40代前半 | 5%前後 |
45歳以降 | 1%以下 |
20代~30代前半までは約25~30%の確率ですが、30代後半を迎えると妊娠率は下がります。
さらに40代前半になると5%の一桁台になり、45歳を過ぎるとほぼ0に近い確率まで下がります。
また、同様の条件下での1年以内に妊娠する確率は、20代では約100%なのに対し、30代後半になると約60%まで下がるというデータもあります。
クロミッドを使用した場合の妊娠率
不妊患者がタイミング法で治療を行う際は、まずは薬剤を使用しない自然周期から始め、効果が得られない場合にクロミッドを用いたクロミッド周期の治療へとステップアップしていくのが一般的です。
この時、自然周期のタイミング法の1周期の妊娠率が7.0%なのに対し、クロミッドの1周期あたりの妊娠率は12.1%と、自然周期によるタイミング法よりも妊娠率が高いというデータがあります。
さらに排卵障害のみが問題となっている患者さんでは6ヵ月の累計妊娠率が60~75%に達し、排卵している人でもクロミッドを内服することで約6%妊娠率がアップするなど、それぞれにおいて妊娠率の上昇がみられました。
これらのデータからも、クロミッドは不妊治療において有効であることが確認できます。
クロミッドはいつ飲むのが効果的?
クロミッドには特殊な服用ルールがあり、このルールを守ることが効果を発揮させるために重要です。
ここではクロミッドの一般的な服用方法と、効果的なタイミングについて解説します。
クロミッドの服用方法
クロミッドは飲み始めるタイミングが決められており、月経開始日(出血した日)から数えて5日目に当たる月経周期5日目から服用を開始し、1日1錠の内服を5日間続けます。
個人差はありますが、この方法でクロミッドを服用すると12~14日目頃に排卵が起き、超音波検査で卵胞の大きさを確認して18~20mm以上となっていればタイミング法を行うという流れです。
ただし、クロミッドが効きにくい場合や反対に効きすぎる場合には少し方法を変えて服用します。
クロミッドが効きにくく卵胞の発育が弱い場合には、さらに1日1錠の服用を5日間続けます。
それでも反応が弱い時には消退出血で最初の状態に戻し、同じ方法で1日2錠に薬剤を増量して5日間服用を続けるか、1日1錠を10日間に期間を延長して服用する可能性もあります。
反対にクロミッドが効きすぎて卵胞が2つ以上に成熟した場合は、母子にリスクのある多胎妊娠を避けるためにも、性行為を見送る判断をする可能性があります。
さらに次回以降、服用期間を約3日に短縮する方法を取るなどの対応を行います。
どの方法も一般的な服用例ですので、実際に服用される際は医師からの指示に従うようにしてください。
クロミッドはいつ飲む?
クロミッドの服用時間について医師からの指示がなければ、ご自身が飲みやすいタイミングで服用します。
できるだけ毎日同じ時間帯に飲むことと、飲み忘れを防ぐことを考慮すると、朝食後などに決めて食事と一緒に薬剤を準備するとよいかもしれません。
また、日中に副作用が気になって仕事に集中できないなどの問題がある方は、就寝前に服用するなどの工夫をすると、少しは不快を感じにくくなるかもしれません。
ただし、副作用については必ず医師に相談して問題ないことを確認してから、服用を続けるようにしてください。
クロミッド服用にプラスして妊娠率を上げるポイント
不妊治療には様々な薬剤や治療法が確立されていますが、生活習慣を見直すことも妊娠率を上げるためには大切なポイントです。
妊娠しやすい身体を目指し、少しずつ生活習慣を整えていきましょう。
食生活を整える
妊娠率を上げるためには、食事の次のような点に気をつけましょう。
- タンパク質をしっかりとる
- ビタミンD・ビタミンE・鉄分・葉酸をとる
- アルコールは控える
ホルモンを作る材料となるタンパク質は妊娠に欠かせない栄養素の1つです。
成人1日当たりの摂取目安量は体重1kgにつき1~1.5gとされ、体重50kgであれば50~70gのタンパク質を摂取する必要があります。
鶏むね肉100g中のタンパク質は21.3g、納豆1パック8.3gなので、動物性と植物性のタンパク質をバランスよく食べるためには、1日3食意識して摂取する必要があります。
さらに、ビタミンDは卵子の着床率をアップさせて流産率を下げる、ビタミンEと鉄分は卵子や子宮内膜の改善、葉酸は胎児の神経系の先天性異常を防ぐなどの作用があるので、こちらも積極的に取り入れましょう。
また、アルコールは妊娠率を下げる可能性が示唆されているため、できるだけ控えることをおすすめします。
体重に注意する
痩せている人や肥満の人よりも、標準体重の人の方が妊娠率が高いと言われています。
理由は痩せていると女性ホルモンが不安定になり、肥満で体脂肪率が高いと卵巣や子宮が圧迫されて血流が悪くなるためです。
このように体重管理は妊婦さんだけのものではなく、妊娠しやすい身体を作るために重要なのです。
適度に身体を動かし、良質な食事を三食とって健康的な身体づくりに努めていきましょう。
睡眠時間を確保する
睡眠時間が少ないとホルモンバランスが崩れ、排卵の時期がずれたり、必要なホルモンが分泌されなくなってしまったりします。
さらに起きている時間が長い分、脳が血液や栄養を必要とするため、子宮や卵巣に供給される量が減ってしまって良い卵子が作られにくくなるなどの弊害があります。
妊娠率を上げるためには約8時間の睡眠が適正と言われているため、意識して睡眠時間を確保していきましょう。
クロミッドでよくある疑問
ここからはクロミッドを服用する際によくある疑問に回答していきます。
クロミッドを使っても排卵しないのはなぜか?
クロミッドを使用すると60~90%の方に排卵が見られますが、エストロゲン不足や高プロラクチン血症の方には排卵が起きない場合があります。
また、クロミッドは長期間使用すると妊娠率が下がるというデータもあるため、3周期行っても妊娠できない時には治療を中止し、別の治療法へと移行する必要があります。
クロミッドを服用中に性行為をしても大丈夫か?
クロミッドの服用中は医師から性行為のタイミングを指導されますが、それ以外の時に性行為をしても特に問題はありません。
ただし、クロミッドの服用により多胎妊娠になる可能性が高まるため、リスクがある場合や望まない場合には超音波検査で卵胞の状態を確認した後に性行為を行うなどの対策が必要となります。
クロミッドを服用して子宮内膜が薄くなるとどうなるか?
子宮内膜が薄くなると妊娠率が低下する傾向があります。
クロミッドの副作用でも子宮内膜が薄くなることがありますが、1周期目で薄くなることはほとんどなく、約5周期から見られるようになります。
また、子宮内膜の厚さが妊娠率に与える影響はそれほど大きくはなく、子宮内膜が薄くても妊娠する方はいます。
それでも気になる方は子宮内膜の質を改善するビタミンEや鉄分を意識的に摂取するなどの対策を行うとよいでしょう。
クロミッドと妊娠率を上げる生活習慣で治療していこう
排卵誘発剤のクロミッドは排卵障害の方の妊娠率を上げる薬剤で、「月経周期5日目から服用を開始」などの飲み方に独特なルールがあるのが特徴です。
副作用で体重増加や乳がんなどのリスクが上がるなどの噂がありますが、どちらもエビデンスが不十分とされています。
また、クロミッドは長期間服用すると逆に妊娠率を下げてしまうため、短期間で集中して治療する必要があります。
そのため、クロミッド服用にプラスして妊娠しやすい身体づくりで妊娠率をさらにアップさせることが重要です。
クロミッドや不妊治療の悩みは一人で抱えず、パートナーや医療機関に相談しましょう。