「アダパレンは毛穴にどんな効果があり、どうやってニキビに効くの?」
「アダパレンにはひどい副作用がある?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、尋常性ざ瘡(ニキビ)が発生するメカニズムや治療薬であるアダパレンが作用するメカニズムを徹底解説。
アダパレンの詳細な使い方や副作用についても説明します。
本記事の後半では、尋常性ざ瘡を予防するための生活習慣についても紹介しています。
尋常性ざ瘡に関する悩みがある方は、ぜひ最後までご覧ください。
アダパレンは尋常性ざ瘡(ニキビ)に対する外用薬
アダパレンとは、レチノールと似た作用を持ち、尋常性ざ瘡(いわゆるニキビ)に対して用いられる外用薬です。
スイスの製薬会社であるガルデルマ社が開発し、2008年10月に日本で認可されました。
アダパレンの登場以降も、尋常性ざ瘡に対する様々な外用薬が開発されています。
しかし、アダパレンは今なお皮膚科医から頻繁に処方されており、尋常性ざ瘡治療の中心とも言える存在です。
尋常性ざ瘡が発生するメカニズム
尋常性ざ瘡は、10~30歳代の思春期~青年期に多く発生し、生じやすい部位は顔面・胸部・背部です。
特に、顔に発生した尋常性ざ瘡に悩んでいる人は少なくないでしょう。
まずは、尋常性ざ瘡が発生するメカニズムについて見ていきましょう。
- 皮脂の分泌亢進
- 毛漏斗部の角化による閉塞
- アクネ桿菌の増加に伴う炎症
以上3つの段階に分けて詳しく解説します。
①皮脂の分泌亢進
尋常性ざ瘡の根本的な原因となるのが、思春期に分泌されやすい「アンドロゲン」というホルモンです。
アンドロゲンは男性ホルモンとも呼ばれますが、女性でも分泌されています。
アンドロゲンの分泌量が増加すると、その作用により皮脂の分泌が亢進。
皮脂は毛包内に貯留するとともに、「アクネ桿菌」などの細菌を増殖させてしまいます。
②毛漏斗部の角化による閉塞
皮脂の分泌亢進により増殖したアクネ桿菌は、「リパーゼ」という物質を産生します。
リパーゼの働きは、皮脂中の中性脂肪を「遊離脂肪酸」という状態に分解することです。
遊離脂肪酸は、皮膚の表面にある「毛漏斗部上皮」という場所を刺激し、角化という反応を進行させます。
ここで、角化について少し説明しましょう。
まず、私たちの皮膚は以下の4層から形成されています。
- 基底層
- 有棘層
- 顆粒層
- 角層
皮膚の細胞は成熟しながら、基底層→有棘層→顆粒層→角層の順番で上層へ移動します。
そして、最終的には垢となって脱落します。
この過程を角化というのです。
話を尋常性ざ瘡の発生メカニズムに戻しましょう。
角化が進行した毛漏斗部では、角栓という塊が形成され、毛包を閉塞します。
そして、出口が無くなった毛包内では皮脂や角化物質が充満してしまいます。
③アクネ桿菌の増加に伴う炎症
毛包内で皮脂や角化物質が充満すると、アクネ桿菌などの細菌の増殖がさらに進行します。
増殖したアクネ桿菌は「好中球遊走因子」という物質を産生し、好中球という免疫機能に深く関わっている細胞を呼び寄せます。
そして、好中球が放出する活性酸素などの物質の作用により炎症が引き起こされ、毛包の壁が破壊されるのです。
また、毛包壁の破壊には遊離脂肪酸などの物質も関わっています。
その結果、炎症は周囲にまで広がってしまいます。
アダパレンが作用するメカニズム
アダパレンには、毛漏斗部での角化を抑制する働きがあります。
その結果、角層が薄くなり角栓が消失し、皮脂や角化物質の充満を防げるのです。
その結果、アクネ桿菌のさらなる増殖や毛包壁の破壊を阻止できます。
このようなメカニズムで、アダパレンは尋常性ざ瘡に対して効果を発揮しているのです。
尋常性ざ瘡に対する治療の流れ
尋常性ざ瘡の炎症が強い時期(急性炎症期)には、アダパレンとともに抗菌薬の外用・内服を行います。
抗菌薬を使うのは最大で約3ヵ月です。
炎症が落ち着いた後でも、皮脂の分泌は亢進しており再発のリスクが高い状態です。
そこで、生活習慣の改善により皮脂の貯留を抑えていきます。
具体的な改善内容は以下の通りです。
- 規則正しい生活を送る
- 1日2回洗顔する(過度の洗顔はしない)
- 刺激の強い化粧品を使わない
なお、尋常性ざ瘡を予防するための生活習慣については、本記事の後半で詳しく紹介しております。
症状が落ち着いている時の維持療法として、アダパレンを使い続ける場合もあります。
その他、「過酸化ベンゾイル」というアクネ桿菌を殺菌する薬剤もよく使われています。
アダパレンの使い方
アダパレンは1日1回、就寝前の洗顔後に塗布する必要があります。
まずは、洗顔料を使ってやさしく顔を洗いましょう。
洗顔後は清潔なタオルなどで水分を拭き取ってください。
アダパレンは、尋常性ざ瘡ができやすい箇所全体に塗っていきます。
顔全体に使用する場合、目安となるクリームの量は約0.5g(人差し指の第一関節まで)です。
また、翌朝も洗顔をしてアダパレンを洗い流しましょう。
アダパレンを使用するうえでの主な注意点は以下の通りです。
- 治療開始3ヵ月以内に症状が改善しなければ中止する
- 湿疹や傷がある箇所や粘膜に近い箇所には塗らない
- 皮膚に刺激を与える化粧品や石?を使わない
- 外出時は日焼け止めや日傘を使用して紫外線を防ぐ
- 他の塗り薬と併用したい際は医師に相談する
これらの注意点に気をつけて、アダパレンを安全に使いましょう。
アダパレンの副作用
アダパレンの使用時によくみられる副作用として以下が挙げられます。
()内の数字は発生頻度です。
- 皮膚乾燥(56.1%)
- 皮膚不快感(47.6%)
- 皮膚剥脱(33.5%)
- 紅斑(21.9%)
- 痒み(13.2%)
また、発生する頻度は0.1~5%ではあるものの、以下のような副作用が生じる恐れもあります。
- 単純ヘルペス(痛みや痒みを伴う水ぶくれなど)
- 肝機能障害(全身倦怠感や食欲低下、吐き気、黄疸など)
- 血中コレステロール増加(自覚症状はほとんどないが、放置すると動脈硬化の原因になる)
何らかの副作用に気付いたら、悪化させないためにも早めに医療機関を受診しましょう。
尋常性ざ瘡を予防するための生活習慣
尋常性ざ瘡を予防するために、意識したい生活習慣は以下の通りです。
- スキンケアを丁寧に行う
- 肌に触れるものを清潔に保つ
- 紫外線対策をする
- 室内を乾燥させない
- 十分な睡眠時間を確保する
- 栄養バランスの良い食事を摂る
それぞれについて見ていきましょう。
①スキンケアを丁寧に行う
洗顔する際のポイントは、しっかりと泡立ててやさしく洗うことです。
洗顔後に水を拭き取る時も、皮膚をこすらずに水分を吸収しましょう。
また、適度な保湿も忘れてはいけません。
皮膚が乾燥すると外敵からのバリア機能が低下してしまうので、尋常性ざ瘡の原因になり得ます。
②肌に触れるものを清潔に保つ
肌に触れるものが清潔に保たれていないと、皮膚に炎症を起こして尋常性ざ瘡の原因になり得ます。
具体的には、以下のものを常に清潔に保つよう意識しましょう。
- 手
- タオル
- カミソリ
- 枕カバー
- シーツ
③紫外線対策をする
紫外線をたくさん浴びてしまうと、以下のようなメカニズムで尋常性ざ瘡を引き起こします。
- 皮脂を酸化させて炎症を起こりやすくする
- 皮膚が厚く/硬くなり皮脂が詰まりやすくなる
外出する際は日焼け止めや日傘などを使い、万全な紫外線対策を行いましょう。
④室内を乾燥させない
室内が乾燥すると皮膚も乾燥してしまいます。
その結果、皮膚を外敵から守るバリア機能が低下して、尋常性ざ瘡の原因となり得るのです。
特に、乾燥しやすい冬には注意が必要です。
加湿器を利用するなどして、皮膚を乾燥させないように気を付けましょう。
⑤良質な睡眠時間を確保する
尋常性ざ瘡を予防するためには、良質な睡眠時間を十分に確保する必要があります。
なぜなら、睡眠不足では以下のようになってしまうからです。
- 成長ホルモンの分泌が少なくなり、角化のサイクルが乱れて皮脂が詰まりやすくなる
- 免疫力が落ち皮膚のバリア機能が低下する
良質な睡眠をとるためには、寝る前に湯船に浸かって温まったり、ストレッチしたりするのがおすすめです。
また、スマートフォンやタブレットの閲覧を控えましょう。
⑥栄養バランスの良い食事を摂る
栄養バランスの良い食事も尋常性ざ瘡の予防には欠かせません。
1日3食を規則正しく摂り、ビタミンをはじめとする必要な栄養素をきちんと摂りましょう。
また、油分の多い食事は皮脂の過剰な分泌に繋がります。
揚げ物を食べ過ぎないように気を付けましょう。
アダパレンに関するQ&A
アダパレンに関してよくある質問をまとめました。
ここで疑問を解消しましょう。
Q.アダパレンは市販されている?
アダパレンは医療用医薬品であるため、ドラッグストアや通販サイトなどでは市販されていません。
Q.アダパレンのゲルで効果が出るまでどれぐらいかかる?
個人差がありますが、基本的には約1~2ヵ月です。
Q. アダパレンはニキビ跡に対して効果がある?
ニキビ跡に対しては効果がありません。
Q.アダパレンを使うと皮が剥けるのはなぜ?
アダパレンの作用により角化が抑制され角質層が薄くなり、新しい細胞と早く入れ替わるようになるからです。
Q.アダパレンとディフェリン/ベピオの違いは?
アダパレンとディフェリンは、いずれもアダパレンを有効成分とする治療薬であり、効果に違いはありません。
一方、ベピオは有効成分として過酸化ベンゾイルを含んでおり、アダパレンと効果が異なります。
まとめ:アダパレンで尋常性ざ瘡を治療しよう
アダパレンは皮膚の角化を抑制することで、尋常性ざ瘡を治療できる外用薬です。
なかなか治らない尋常性ざ瘡ができた時は医療機関を受診し、アダパレンを処方してもらいましょう。
尋常性ざ瘡を予防するためには、生活習慣の改善も欠かせません。
丁寧なスキンケアや万全な紫外線対策など、簡単にできることから始めましょう。