慢性的な肌のかゆみや赤みを伴い、日本で年々増加しつつあるアトピー性皮膚炎。
子どもは特に発症しやすいと言われていますが、実は乳幼児の頃から保湿する習慣をつけることで、発症リスクが下がることがわかっています。
乳幼児の肌でも保湿があると言われている医療用医薬品として、ヒルドイドが挙げられます。
ヒルドイドを処方してもらい正しい方法で使用することで、肌トラブルの軽減が期待できるでしょう。
この記事では乳幼児の保湿の重要性やヒルドイドを使用する時の注意点などについてお話しします。
(※ヒルドイドは必ず医師や薬剤師の指示どおりに使用してください)
アトピー性皮膚炎の患者数の推移
厚生労働省の傷病別年次推移表によると、アトピー性皮膚炎の患者数は年々増加しています。
1999年では44,300人であったのが2020年では53,600人と、10年間で9,000人近く増えているのです。
アレルギー性皮膚炎とは、かゆみや赤みを伴う慢性的な皮膚の炎症のことです。
肌の乾燥やバリア機能が弱い状態、アレルゲン(ダニやほこり、食べ物など)による刺激、ストレスによる免疫低下などによって、皮膚にアレルギー反応が生じます。
アレルギー皮膚炎の患者数が増えてきている原因は、大気汚染などによってアレルゲンと接する環境が増えてきているからです。
また、アレルギー性皮膚炎は乳幼児や小児期に特に多く、加齢とともに減少することもわかっています。
そのため、特に子どもが小さいうちは発症しないように気をつけるべきでしょう。
実はある研究により、乳幼児の時期から発症率を抑えられる方法が解明されたのです。
乳幼児の保湿がアトピー性皮膚炎の発症にもたらす効果
新生児からの肌の保湿が、アトピー性皮膚炎の予防に効果があることがわかっています。
とある国内の研究では、アトピー性皮膚炎を発症したことがある家族の新生児に対して「毎日保湿をする群」と「毎日保湿をしない群」にわけて、生後32週までの様子が確認されました。
それぞれのアトピー性皮膚炎の発症を確認したところ「毎日保湿をする群」は発症リスクが3割以上減ることが明らかになったのです。
乳幼児の肌は成人より乾燥しやすく、バリア機能もまだ未熟です。
保湿剤でバリア機能を十分につくることで、外からアレルゲンによる刺激を防げることがわかっています。
保湿剤を手に入れる方法は?
乳幼児の時期から使える保湿剤を入手するためには、専用の保湿剤を購入するか、小児科に受診して外用薬を処方してもらう方法があります。
小児科で保湿のために処方される外用薬として多いのが、ヘパリン類似物質の「ヒルドイド」です。
これらの保湿剤を手に入れる方法を詳しくみていきましょう。
市販のベビー用の保湿剤を買う
ベビー用の保湿剤はドラッグストアやベビー用品店で購入できます。
ベビー用の保湿剤は様々なメーカーから販売されており、種類もローションやオイル、クリームなど幅広いので選ぶのに迷うことでしょう。
メーカーや種類のどれがいいのかは一概には言えませんが、防腐剤が少ない商品を選ぶことがおすすめです。
防腐剤はまれに皮膚の炎症を起こす可能性があると言われています。
市販されている保湿剤のなかには、試供品が提供されている物も多いので、乳幼児に合う商品を継続して使ってみましょう。
ヒルドイドを処方してもらう
かかりつけの小児科を受診し、ヒルドイドを処方してもらいましょう。
ヒルドイドは低刺激な外用薬で乳幼児に使用しても問題なく、皮膚の保湿やアトピー性皮膚炎の治療などを目的に処方されることもあります。
ヒルドイドを乳幼児の全身に塗る習慣をつけることで、アトピー性皮膚炎のリスクを抑えられるでしょう。
ヒルドイドは先発薬のほか、ビーソフテンクリームやビーソフテンローションなどのジェネリック医薬品も開発されており、選べる薬剤の幅も広いです。
それでは、ヒルドイドにはどんな効果や種類があるのか、次で詳しく解説していきます。
ヒルドイドはどんな外用薬?
ヒルドイドの存在を知っても「ヒルドイドは何に効くのか?」「クリームやローションはあるか?」など、様々な疑問を持ちますよね。
ヒルドイドの効果や種類をそれぞれ見ていきましょう。
ヒルドイドの効果や作用は?
ヒルドイドには皮膚の保湿や血行促進などの働きがあります。
皮膚の保湿
ヒルドイドに含まれるヘパリン類似物質は、皮膚の細胞に水分子を引きよせて浸透させ、保湿力を高める作用があります。
刺激も弱く、どの年代が使用しても保湿効果が発揮されるので、皮膚の乾燥によって起こりやすいアトピー性皮膚炎やニキビなどの治療薬としても使われやすいのです。
血行促進
ヘパリン類似物質は、血液を固まりにくくして流れを良くする効果があります。
塗った箇所の血のめぐりが良くなるため、けがで腫れた状態や筋肉痛、腱鞘炎などにも効くと言われています。
ヒルドイドの種類は?
実はヒルドイドには軟膏やクリーム、ローション、フォームの4つの種類があるのです。
それぞれの特徴について見ていきましょう。
軟膏・クリーム
軟膏やクリームは油成分が多く伸びは少ないですが、しっとりとした使用感があり、密着性が高いです。
口のまわりの発疹や脇の下のあせもなど、一部肌が荒れている部分などに適しているでしょう。
ローション
ローションタイプは乳液のような伸びやすいタイプで、さっぱりとした使用感があります。
軟膏やクリームより密着性は劣りますが、手のひらで塗り広げやすいので、全身に塗るのに適しています。
フォーム
フォームは泡状のスプレーがでるタイプです。
4つのなかでは最も伸びが良くさっぱりしているので、全身に塗るのはもちろん、夏の暑い時期に使用するのにも向いています。
(※高温にすると破裂するおそれがあるため、温度が40度以上になる場所(夏場の車内や直射日光の当たる場所など)には保管しないようにしましょう)
ヒルドイドの注意点は?
一時期、ヒルドイドよる顔の副作用に対し「ヒルドイドを使用するのはやめたほうがいい」なんて噂が流れました。
また、ヒルドイドは医療用医薬品にも関わらず、美容クリームのようにSNSなどで扱われ、関連のある学会や製薬会社が注意喚起を出した事例もあります。
このように、ヒルドイドの使用にはいくつか気をつけるべき点があります。
使用する前に知っておくべき内容をいくつかお話しします。
美容目的で使用するものではない
ヒルドイドは肌を保湿する効果がありますが、美容目的で使用されるものではなく、子どもの肌の保湿や病気の治療のために処方される医療用医薬品です。
2014年頃から美容目的による処方が増えたことをきっかけに、2017年に日本皮膚科学会や製薬会社からも注意喚起がでています。
人によっては副作用がでたり、肌に合わなかったりする可能性もあるので、処方された人だけが使用するようにしましょう。
まれに副作用がでる
ヒルドイドを塗った後は皮膚が赤くなる、かゆくなる、発疹がでるなどの副作用が起こる可能性があります。
副作用がみられる確率は、使用者の0.1~5%未満です。
このような症状がでた場合は、塗るのを中止して医師や薬剤師に相談しましょう。
また、一時期ヒルドイドに対して「顔に塗ると後悔する」「顔がたるむ」という噂がまわったそうです。
この説には医学的根拠はありませんが、この噂はヒルドイドがダメな理由や、やめた方がいい理由としてインターネット上にでまわりました。
実際、顔に塗ってもいいですし、たるんだりするような副作用はありません。
出血性血液疾患には使用できない
ヒルドイドは出血しやすい血液の疾患(血友病や血小板減少症、紫班病など)の病気がある方は使用できません。
ヒルドイドには血流を促進する作用があるため、その影響で出血を助長することもあるのです。
出血しやすい病気にかかっている方は、処方してもらう時に医師に相談するようにしましょう。
塗ってはいけない場所がある
ヒルドイドを塗ってはいけない場所は皮膚のただれや傷口、眼や口の粘膜などです。
眼に入った場合は水で洗い流し、それでも異常を感じるようであれば医師や薬剤師に相談しましょう。
また、子どもが口に入れたりすることのないように、手の届かない場所に置くといいでしょう。
正しい保湿はどうやってすればいい?
ヒルドイドによる保湿はどのようにすればいいのでしょうか。
乳幼児の保湿は、肌が最も乾燥しやすい入浴後に行うようにしましょう。
保湿する手順についてお話ししていきます。
(※実際のヒルドイドの使用量は医師や薬剤師の指示に従いましょう)
- ヒルドイドを扱う前に塗る人の手をきれいにあらいましょう。
- 入浴後に全身の水分をふきとった後、皮膚の乾燥が進まないようにできるだけ早くヒルドイドを塗ります。
ヒルドイドを皮膚に乗せるように、優しく塗り広げましょう。 - 口や眼の粘膜は避け、足の付け根ややおしりの穴のまわりまで忘れずに塗りましょう。
皮膚にすりこんだり薄く伸ばしたりするのは控えてください。
また、入浴以外でも以下のタイミングでヒルドイドをこまめに塗ると、より皮膚トラブルを防げるでしょう。
汗を多くかいた時
夏場で汗を多くかいた時は、シャワーを浴びた後にヒルドイドで保湿をしましょう。
汗をかいた状態で放置すると、汗疹になる可能性が高まります。
よだれで口まわりに湿疹ができた時
ぬらしたタオルなどで口まわりの汚れやよだれをふき取った後に、ヒルドイドで保湿をしましょう。
よだれや食べ物の接触で起こりやすい湿疹や赤みなどの肌トラブルを防げます。
日焼け止めや虫よけスプレーを使用する時
ヒルドイドで肌を保湿してから、日焼け止め、虫よけの順番で塗りましょう。
ヒルドイドを先に塗ることで日焼け止めや虫よけからの肌の刺激を防げます。
また、日焼け止めと虫よけスプレーを使用した後は、お風呂で必ず落とすようにしましょう。
まとめ
アトピー性皮膚炎などの肌トラブルを防ぐためには、乳幼児からの保湿の習慣が重要です。
ぜひ毎日の入浴後に、保湿効果のあるヒルドイドを使ってみてください。
ヒルドイドは処方された人だけが利用し、美容目的で使用しないようにしましょう。