高尿酸血症治療剤「ザイロリック錠100」の販売中止の理由と他の尿酸値を下げる薬に迫る!

高尿酸血症治療剤として多くの人に飲まれていた「ザイロリック錠100」が販売中止となり、多くの患者さんや医療従事者の方の混乱を招いたのは記憶に新しいでしょう。
今回は「ザイロリック錠100」の販売中止を受けての変化やザイロリックに変わる尿酸値を下げる薬剤にフォーカスしていきます。
「ザイロリック錠100」とは
まずは「ザイロリック錠100」の効果や副作用について簡単に確認していきましょう。
「ザイロリック錠100」の効果
ザイロリックは尿酸値を下げる薬剤で、痛風や高尿酸血症の治療に使用されてきました。
ザイロリックは1956年にイギリスのグラクソ・スミスクライン社が発見し、日本国内では1969年から「ザイロリック錠100」の販売が開始されました。
その後、2002年に「ザイロリック錠50」の販売が始まり、多くの患者さんに処方されてきました。
ここで尿酸について簡単に触れておきます。
尿酸はプリン体という身体や臓器を動かすエネルギー物質が分解された時にできる物質で、体内に一時的に溜まった後、尿や便とともに排泄されます。
この時、プリン体を多く含むビールや魚卵などを過剰摂取し、尿酸値が高い状態が続いて身体の限度を超えると関節に尿酸の結晶が溜まって痛風などの症状を引き起こすのです。
ザイロリックは、プリン体を尿酸へと代謝させるキサンチンオキシダーゼという酵素の働きを抑制し、尿酸値を下げる効果があります。
このような作用がある高尿酸血症治療剤をキサンチンオキシダーゼ阻害薬といい、「ザイロリック錠100」はその代表となる薬剤でした。
「ザイロリック錠100」の副作用
「ザイロリック錠100」は、中毒性表皮壊死融解症や皮膚粘膜眼症候群、はく脱性皮膚炎等の重篤な皮膚障害又は過敏性血管炎などの重大な副作用が起こる可能性がある薬剤です。
重大な副作用の初期症状には以下のようなものがあり、医師や薬剤師も慎重に処方してきました。
- 発熱
- 発疹
- のどの痛み
- 倦怠感
- 食欲不振 など
「ザイロリック錠100」は長年飲み続けられてきた尿酸値を下げる薬剤ですが、副作用が多いことが問題となっていたことも事実です。
「ザイロリック錠100」が販売中止になった理由とは?
1969年より日本で使用されてきた「ザイロリック錠100」は、2022年8月に安定性試験の溶出試験において規格を下回る結果が認められたため販売中止となり、この問題が解決するまで出荷を停止となりました。
この時「ザイロリック錠50」は前述した問題の対象ではなかったため販売中止とならなかったものの、代替需要の増加にともなう在庫の消尽を理由に、同じ年の12月一時出荷停止となっています。
この2つの事案を受けて、高尿酸血症治療剤の代替薬への需要が高まりをみせました。
ザイロリック以外に尿酸値を下げる薬剤はあるか?
販売中止となったザイロリックの代わりとなる尿酸値を下げる薬剤について知見を広げていきましょう。
尿酸値を下げる薬剤の種類
尿酸値を下げる薬剤には、尿酸生成抑制薬と尿酸排泄促進薬の2種類があります。
ザイロリックのように尿酸の生成を抑制する薬を尿酸生成抑制薬、尿酸の排泄を促すベンズブロマロンを主成分とした薬剤を尿酸排泄促進薬といい、多くの商品が販売されています。
薬剤の種類 | 一般名(商品名) |
---|---|
尿酸生成抑制薬 | アロプリノール(ザイロリック) フェブリク(フェブキソスタット) トピロキソスタット(トピロリック) |
尿酸排泄促進薬 | ベンズブロマロン(ユリノ-ム) プロベネシド(ベネシット錠) ドチヌラド(ユリス) |
ここに挙げた商品はそれぞれ有効成分が異なり、効果や副作用にも違いがあります。
患者さんの状態や病気の症状などを総合的に診て、医師は適切な薬剤を処方しています。
ザイロリックとフェブリクの違いとは?
尿酸生成抑制薬の1つであるフェブリクは、ザイロリックの代替薬として処方されることの多い薬剤です。
フェブリクはフェブキソスタットを主成分とした商品、ザイロリックはアロプリノールを主成分とした商品のため、副作用や効果に違いがあります。
どちらも尿酸の合成を抑制して尿酸値を下げる薬剤なのですが、ザイロリックでは腎機能が低下していると血中濃度が高くなって副作用が出やすくなる一方、フェブリクでは腎機能が低下している患者さんでも通常量を使用できます。
さらに、フェブリクは1日1回の服用でザイロリックよりも尿酸値を下げる効果も高いため、腎機能が低下してきた患者さんや尿酸値が下がりにくい患者さんが処方変更するケースも増えています。
痛風発作時の薬剤と対応方法の注意点
尿酸値が高い状態が続いて限界値を超えると、痛風となり痛風発作時には強い痛みが起こります。
ここからは高尿酸血症の方が恐れる痛風と痛風発作時の薬剤について、掘り下げて解説します。
痛風とは
痛風は、尿酸値が高い状態が続いて血液に溶け切れなかった尿酸の結晶が足の親指などの関節に溜まった結果、腫れと強い痛みが起こる病気です。
「風が吹いただけで痛い」という名前の由来どおり、痛風発作が起きると2~3日は歩けないほどの激しい痛みに襲われるのが特徴です。
痛風発作時に飲むべき薬剤・飲んではいけない薬剤は?
実は痛風発作時には飲んではいけない薬剤があるのはご存知でしょうか。
高尿酸血症や痛風に関する薬剤は大きく分けて、尿酸値を下げる薬剤と痛風発作治療薬の2種類に分けられます。
薬剤の種類 | 薬剤の例 |
---|---|
尿酸値を下げる薬剤 | 尿酸生成抑制薬 尿酸排泄促進薬 |
痛風発作治療薬 | 非ステロイド性抗炎症薬 副腎皮質ステロイド |
この表にある尿酸値を下げる薬剤は、痛風発作時には原則飲みません。
痛風発作時に尿酸値を下げる薬剤を飲むと、血液中の尿酸を外に出す作用により、関節内に尿酸の結晶が余計に溜まりやすくなるという理由からです。
そのため、痛風発作時には痛風発作治療薬を使って痛みの原因となる炎症を抑え、痛みが治まってから尿酸値を下げていくという2段階治療を行うのが一般的です。
尿酸値を下げる薬剤も痛風発作治療薬も痛風に関する薬剤ですが、このように飲むべきタイミングに違いがある点には十分注意しましょう。
高尿酸血症や痛風は市販薬で治るか?
まず、これまで紹介した尿酸値を下げる尿酸生成抑制薬や尿酸排泄促進薬は、作用が強力で副作用のリスクが高いため、市販薬としては販売されていません。
これらの薬剤は医療機関でのみ処方され、医師・薬剤師の指示通り、用法用量を守って服用することが大切です。
一方、足の親指などの関節が腫れて激痛が走る痛風発作時に痛みを和らげる目的で使用する痛風発作治療薬は市販薬として購入することが可能ですが、使用できる成分は限られているため注意が必要です。
例えば、非ステロイド性抗炎症薬の仲間であるアスピリンは尿酸値に影響を与えて症状を悪化させる恐れがあるため、痛風発作時には使用できません。
市販で購入する際は、ロキソプロフェンやイブプロフェンを選ぶようにしましょう。
これら薬剤は通販でも購入することが可能なので、痛くて歩けないような場合や時間がなくて買いに行けない場合には利用してみてはいかがでしょうか。
また、使用する際は添付文書にしっかり目を通し、不明点があれば薬剤師に相談してください。
もし、非ステロイド性抗炎症薬でも症状が緩和されない場合には、副腎皮質ステロイドの内服や注射も検討されます。
ただし、ステロイドの注射はもちろん、内服薬も市販されていないため、医師に処方してもらう必要があります。
高尿酸血症や痛風の予防・対処法
これまで薬剤について説明してきましたが、高尿酸血症や痛風は食習慣や生活習慣の乱れが主な原因のため、日々の生活を整えることにより予防・改善が期待できます。
すでに高尿酸血症や痛風と診断された場合でも、薬剤の治療に加えて生活を改善することで薬剤の量を減らしたり、なくしたりすることも可能です。
この機会に生活習慣を見直してみましょう。
プリン体やカロリーの高い食品は控える
プリン体が尿酸のもととなるため、プリン体が多い食品を控えることは尿酸値を下げることに繋がります。
以下の食品にはプリン体が多く含まれているため、食べる量や頻度を減らすとよいでしょう。
- レバー類
- 白子
- 赤身の魚
- 肉類
肉や魚、特に内臓にはプリン体が非常に多く含まれているので、食べ過ぎないよう気をつけてください。
また、カロリーの取り過ぎも痛風を引き起こすリスクを上げるため、食べ過ぎないことも大切です。
野菜やキノコなどプリン体が少なく、カロリーも低い食品を食事の中心とすることをおすすめします。
飲酒量を減らす
アルコールは体内のエネルギーの分解を促進してプリン体を作り、尿酸値を上げる作用があります。
さらに、腎臓の機能を低下させ、身体の外へ尿酸を出しにくい状態をつくってしまうため、飲む量・頻度を減らすことが大切です。
プリン体の多いビールばかりに目が行きがちですが、どのお酒でも身体に悪影響を与えることに変わりありません。
できるだけ禁酒し、尿酸値を上げないように注意しましょう。
水分をしっかりとる
尿酸は尿から排出されるため、水分をしっかりとることは尿酸値を下げることに繋がります。
目安は1日に1.5~2Lほどですが、尿酸値が上がりやすくなるジュースや甘味料が入った飲み物は避けましょう。
水やお茶など糖分が含まれていない飲み物をしっかり摂取してください。
早めに医療機関へ相談する
痛風発作時はもちろんですが、健康診断で尿酸値の異常が見られた時には、早めに医療機関を受診しましょう。
高尿酸血症になると糖尿病や脂質異常症、慢性腎臓病との合併症に繋がるリスクが高まります。
違和感や数値の異常がある場合には放置せず、早めに治療を開始することが大切です。
尿酸値を下げる薬剤は医師に相談しよう
尿酸値を下げる薬剤は副作用の問題から市販薬として販売されていないため、医師に処方してもらう必要があります。
長年、高尿酸血症治療剤として使用されてきた「ザイロリック100」が販売中止となったことにより、今後は代替薬として需要が高まったフェブリクなどの薬剤の活躍が見込まれます。
しかしながら、高尿酸血症や痛風など尿酸に関する病は生活習慣が大きく関わっていることも事実です。
薬剤の力を借りながら、できるだけ生活を整え、尿酸値の適正を目指していきましょう。