ケタスという薬剤の主成分であるイブジラストは気管支喘息の治療に加えて、めまい、アレルギー性結膜炎の改善にも使用される薬剤です。
一見関連性のなさそうに感じる気管支喘息とめまい、アレルギー性結膜炎になぜ、イブジラストは効果を示すのでしょうか。
今回はイブジラストが主成分のケタスの効果や副作用、薬剤の種類を解説します。
さらにそれぞれの疾患におけるケタスの代替薬となる薬剤についても紹介していきます。
イブジラストが主成分のケタスとは
イブジラストが主成分のケタスにはケタスカプセル10mgというカプセル剤と、ケタス点眼液0.01%の点眼薬の2種類があります。
ここではそれぞれの薬剤について紹介していきます。
ケタスカプセル10mg
ケタスは気管支喘息の治療や、脳梗塞や脳出血の後遺症で起こるめまいやしびれなどを改善する作用を持つ薬剤です。
ここではケタスカプセル10mgの効果や副作用について解説していきます。
ケタスカプセル10mgの効果
ケタスの主成分であるイブジラストは、体内で脳血管拡張や抗血小板作用の働きがあるため、脳の血流が良くなり脳が活性化してめまいなどの症状を改善します。
さらに脳に問題がある場合の耳鳴りについても、同様に改善が期待できるとされています。
さらにイブジラストは、気管支の平滑筋を緩める働きをするcAMPやcGMPホスホジエステラーゼを分解してしまうホスホジエステラーゼを阻害する作用を持つため、ホスホジエステラーゼ阻害薬と呼ばれることもあります。
つまり、イブジラストは気管支の平滑筋を緩める働きをするcAMPやcGMPの分解を防ぎ、気道の炎症や気道攣縮を抑制して、気管支喘息を改善させるのです。
このように、めまい・気管支喘息と一見関連性のないような病気であっても、体内におけるイブジラストの作用により、改善が見込めるのです。
ケタスカプセル10mgの用法・用量
ケタスカプセル10mgは脳梗塞などの後遺症で起こるめまいの治療で使用する場合と、気管支喘息で使用する場合で用法用量が異なるので注意が必要です。
めまいの治療ではイブジラストに換算して成人で1回10mgを1日3回服用し、気管支喘息の治療においてはイブジラストに換算して成人で1回10mgを1日2回服用します。
症状や体質によって処方される量は異なりますが、めまいに関しては12週間服用しても効果が得られない時には使用を中止します。
ケタスカプセル10mgの副作用
ケタスカプセル10mgの主な副作用には発疹やかゆみなどの皮膚症状、頭痛や不眠などの精神神経系症状、食欲不振や吐き気などの消化器症状が現れることがあります。
ごく稀に血小板の減少や肝機能障害を引き起こす可能性があるため、倦怠感や発熱、黄疸などが見られた時には速やかに医療機関を受診してください。
また、副作用の懸念から頭蓋内の出血が続いている方の使用は禁止、肝臓に障害がある方や長期ステロイド療法を受けている方、脳梗塞の急性期にある方は注意して使用する必要があります。
妊婦や子ども、高齢者も体調に問題がないことを確認しながら使用するようにしましょう。
ケタスカプセル10mg保管上の注意点
ケタスカプセル10mgは室温で保管する薬剤ですが、気温が高くなる夏場には注意が必要です。
ケタスカプセル10mgの主成分であるイブジラストの融点は54~58℃であることから、その温度帯に近くなる真夏の車内での保管は製品の品質に悪影響が出る恐れがあります。
このような理由があるため、ケタスカプセル10mgは1~30℃の温度下での室温保管を心掛けてください。
ケタス点眼液0.01%
イブジラストはアレルギー性結膜炎の治療にも使用されることがある成分です。
ここではイブジラストが主成分のケタス点眼液0.01%の効果や副作用を紹介していきます。
ケタス点眼液0.01%の効果
Ⅰ~Ⅳ型の4種類に分類されるアレルギーの中で、イブジラストはIgEやIgGが関与するⅠ型アレルギーの反応を抑えたり、炎症細胞を落ち着かせたりする作用があります。
Ⅰ型アレルギーに分類される主な疾患には気管支喘息やアトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがあり、中でもケタス点眼液0.01%は花粉症などによるアレルギー性結膜炎の治療に使用します。
ケタス点眼液0.01%の用法用量
ケタス点眼液0.01%は、1回1~2滴を朝・昼・夕・就寝前の1日4回点眼します。
ケタス点眼液0.01%を始めとする目薬の使用上の注意点は次の通りです。
- 汚染を避けるためにも容器の先が目に触れないように注意する
- 周りに流れてしまった点眼液は異物が入る可能性があるため目に入れない
- 点眼後はまばたきせずに約1~5分軽く目を閉じる
- 効果は変わらないので多用せず用量を守って点眼する
十分な効果を得るためにも、正しい方法で点眼しましょう。
ケタス点眼液0.01%の副作用
ケタス点眼液0.01%の副作用では眼が沁みたり、異物感が現れたりするなどの目の症状が現れることがあります。
このような理由からも、過敏症の方の使用は禁止、妊婦や授乳婦、0~14歳の小児等は注意して使用してください。
イブジラストの代替薬
イブジラストを主成分とするケタスカプセル10mgとケタス点眼液0.01%は先発薬で、現在後発品はありません。
そのため、ケタスが販売中止となったり、他の薬剤に変更を希望したりする場合には、異なる有効成分が配合された代替薬を選択するようになります。
脳梗塞や脳出血の後遺症で起こるめまいの場合
脳梗塞などの後遺症によるめまいの改善には、脳循環改善薬であるサアミオンやセロクラールなどがケタスカプセルの代替薬として選択されます。
サアミオンはニセルゴリンが主成分の先発薬でサアミオン錠5mgとサアミオン散1%が、後発品には複数の製薬会社でニセルゴリン錠5mgとニセルゴリン細粒1%が製造されています。
ニセルゴリンは脳血管を拡張し脳血流の増加や、抗血小板作用によって脳の血液循環を改善する効果があります。
副作用には食欲不振などの胃腸症状などの他に、耳鳴りを引き起こす恐れがあります。
また、脳内の血流が良くなるため、頭蓋内で出血が見られる場合は使用できません。
セロクラールはイフェンプロジル酒石酸塩を主成分とする先発薬でセロクラール錠10mgやセロクラール錠20mgが、後発品としては複数の製薬会社からイフェンプロジル酒石酸塩錠10mgとイフェンプロジル酒石酸塩錠20mgが販売されています。
イフェンプロジル酒石酸塩の効果はニセルゴリンとほぼ同じですが、副作用では吐き気などの消化器症状の他、口の渇きや動悸、貧血などが現れることがあります。
そのため、心悸亢進や低血圧の方は注意して使用する必要があります。
また、イブジラストやニセルゴリンと同様に頭蓋内に出血がある場合には使用禁止です。
気管支喘息の場合
ケタスカプセルは気管支喘息の治療薬としては抗アレルギー薬のメディエーター遊離抑制薬に分類されており、同じメディエーター遊離抑制薬の薬剤にはベミラストン錠やベミラストンドライシロップ、ロメット錠、タザレストカプセルなどがあります。
ただし、気管支喘息の治療薬は吸入ステロイド薬や気管支拡張薬、他の抗アレルギー薬など種類も多種多様であり、その効果や副作用はそれぞれ異なることから、他の薬剤に変更する時には医師や薬剤に相談していくことが大切と言えるでしょう。
アレルギー性結膜炎の場合
ケタス点眼液0.01%は抗アレルギー薬であり、花粉症やアレルギー性結膜炎などの眼のかゆみを改善する薬剤です。
ケタス点眼液0.01%の後発品はないため、代替薬は他の有効成分が使われている薬剤を選択する必要があります。
抗アレルギー薬の点眼液には、アレジオンやパタノール、リボスチン、リザベンがあり、それぞれ特徴は異なります。
アレジオン点眼液はエピナスチンを主成分とした点眼薬で、体内のヒスタミンの働きを阻害してアレルギー反応を抑える作用がありますが、副作用として目に沁みたり充血したりする恐れがあります。
パタノールは有効成分オロパタジンが、リボスチンはレボカバスチンが、アレジオンと同じくヒスタミンの働きを阻害してアレルギー反応を抑制します。
パタノールの主な副作用は目の痛みや角膜炎が現れることがあるのに加え、ALTや ASTが上昇したり、めまいを引き起こしたりするため、妊婦の使用は相対禁止です。
リボスチンの副作用も目の症状の他に、稀にアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるので注意してください。
リザベンは主成分のトラニラストがアレルギー反応を引き起こす化学伝達物質を妨げることでアレルギー反応を抑える点眼薬です。
リザベンの副作用は結膜充血や眼刺激感などの目の症状が見られる可能性があります。
それぞれ副作用や禁忌、飲み合わせの注意点が異なるので、説明書を確認してから選択するようにしましょう。
ケタスの主成分イブジラストはめまい・気管支喘息・アレルギー性結膜炎を改善する効果がある
イブジラストを主成分としたケタスという薬剤には、脳血管を拡張して脳の血流を促進させる作用や、気管を広げたりアレルギー反応を抑えたりする作用があります。
ケタスには脳梗塞などの後遺症によるめまいや気管支喘息の改善に効果を示すケタスカプセル10mgという内服薬と、アレルギー性結膜炎を抑えるケタス点眼液0.01%という外用薬の2種類の製品があります。
ケタスカプセルもケタス点眼液も先発薬ですが、イブジラストを含む後発品は存在しないため、代替薬を探す際には他の成分の薬剤を選択するしか方法はありません。
薬剤を変更する時には医師や薬剤師に相談したり、説明書をよく確認したりして選んでください。