ゾニサミドはてんかんの治療薬に使用されている主成分の1つで、成分と同じ名前の「ゾニサミド」や「エクセグラン」などが各社から販売されています。
さらにゾニサミドにはドーパミン神経細胞を保護する効果もあることから、パーキンソン病の治療薬としても使用されるようになりました。
今回はゾニサミドの先発薬や後発品の薬剤の種類や効果、副作用、薬価などの紹介に加え、てんかんの治療薬とパーキンソン病治療薬としてのゾニサミドの違いについても解説していきます。
ゾニサミドとは
ゾニサミドはてんかん発作を抑える効果と、パーキンソン病の症状を改善する効果を持つ成分です。
ここではゾニサミドがパーキンソン病の治療にも使用されるようになった歴史と、その作用機序について紹介していきます。
ゾニサミドとパーキンソン病
ゾニサミドは住友ファーマが1974年に合成した成分で、これを主成分としたてんかん治療薬エクセグランを1989年に販売しました。
それ以降、てんかんの治療薬として使用されてきましたが、2000年にけいれん発作を起こしたパーキンソン病の患者さんにゾニサミドを投与したところ、けいれん発作だけでなくパーキンソン病の症状改善が見られたことを受けて、パーキンソン病への研究が行われるようになりました。
そして、2015年にパーキンソン病治療薬であるトレリーフが販売され、2018年にはレビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムでの保険適用が開始されました。
ゾニサミドの作用機序
ゾニサミドは電位依存性ナトリウムイオンチャネルと、T型カルシウムチャネルを阻害して、脳神経に過剰に送られるシグナルによって起こるけいれんや意識障害などのてんかん発作を防ぐ効果があります。
パーキンソン病に対する作用機序は明らかになってないものが多いものの、ゾニサミドにはモノアミン酸化酵素Bと、T型カルシウムチャネルを阻害することで、ドーパミン神経細胞を保護して運動能力を正常に保つ効果があるとされています。
てんかんとパーキンソン病で使用されるゾニサミドの違い
てんかん治療薬として使用されるゾニサミドと、パーキンソン病治療薬として使用されるゾニサミドの大きな違いは用量です。
例えば、てんかん治療では通常成人は1日に100~400mgを使用するのに対し、パーキンソン病治療では1日25mgを使用していきます。
そのため、それぞれの病気で使用する製品が異なり、様々な種類のゾニサミドを主成分とした商品が販売されています。
てんかん治療薬ゾニサミドの先発薬・後発品と薬価
てんかん治療薬のゾニサミドには、先発薬や後発品として様々な商品が販売されています。
ここではそれぞれの商品の特徴や薬価を紹介していきます。
先発薬:エクセグラン
住友ファーマが販売しているエクセグランは、ゾニサミドを主成分としたてんかん治療の先発薬で、エクセグラン錠100mgの錠剤と散剤のエクセグラン散20%の2種類の剤型があります。
てんかんの混合発作や全般てんかん異型小発作、強直発作、部分てんかんジャクソン型発作、自律神経発作を始めとする様々なてんかん発作の治療に使用されます。
主な副作用には眠気や無気力、食欲不振などがあり、ごく稀に血小板減少や中毒性表皮壊死融解症などを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
また、これら副作用の観点から重篤な肝機能障害を抱えている方や高齢者については慎重に使用していきます。
また、抗てんかん薬やカルバマゼピンなどと併用するとゾニサミドの血中濃度が上昇したり、三環系抗うつ薬や四環系抗うつ薬などと併用すると高血圧や失神を引き起こして最悪の場合死亡したりすることがあるため注意してください。
薬価はエクセグラン錠100mg1錠あたり16.8円、エクセグラン散20%は1gあたり33.4円で、後発品と比較するとやや高い価格となっています。
後発品:ゾニサミド
ゾニサミドを主成分としたゾニサミドは、エクセグランの後発品として協和薬品工業と寿製薬から販売されている商品です。
協和薬品工業からは錠剤のゾニサミド錠100mg「アメル」と散剤のゾニサミド散20%「アメル」、寿製薬からは錠剤のゾニサミド錠100mgEX「KO」が販売されています。
エクセグラン同様、全般てんかんや部分てんかん、てんかんの混合発作などに効果を示し、副作用も眠気や自発性低下、精神活動緩慢化などがあり、重篤な副作用や禁忌についてもほぼ同じであると言えます。
薬価はゾニサミド錠100mg「アメル」とゾニサミド錠100mgEX「KO」が1錠あたり11.7円、ゾニサミド散20%「アメル」が1gあたり25.6円となっており、先発薬のエクセグランと比較すると安価です。
パーキンソン病治療薬ゾニサミドの先発薬・後発品と薬価
てんかん治療とは用量が異なるパーキンソン病治療薬として販売されているゾニサミドにも多様な種類があり、その数はゾニサミドを主成分としたてんかん治療薬の数倍もの商品が展開されています。
ここではパーキンソン病治療薬のゾニサミドの先発薬・後発品の薬剤の特徴や薬価を紹介していきます。
先発薬:トレリーフ
トレリーフは住友ファーマが販売しているゾニサミドが主成分のパーキンソン病治療薬です。
口腔内で崩壊するのが特徴的な剤型のトレリーフOD錠25mgやトレリーフOD錠50mgがあり、パーキンソン病やレビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムの治療に使用されています。
トレリーフはレボドパ作用増強薬として、レボドパと一緒に使用することでドーパミンの放出を促進してレボドパの効果を強くしたり、長くしたりする作用がある他、脳内でドーパミンを分解するモノアミン酸化酵素を阻害してドーパミン量の減少を防ぐ作用があると考えられています。
このような理由から、パーキンソン病の治療においてはレボドパと併用するのがトレリーフの一般的な使い方です。
トレリーフの副作用には眠気や抑うつ、めまいなどの精神症状、食欲不振や吐き気などの消化器症状などに加え、ごく稀に悪性症候群を引き起こす可能性があります。
特に思い当たる節がなく、高熱が出たり、脈が早くなったりする症状が現れた時には、すぐに医師や薬剤師に相談してください。
これらの副作用のリスクから妊婦、新生児は使用禁止、重篤な肝機能障害がある方や高齢者、授乳婦などは慎重に使用するようにしてください。
また、抗てんかん薬やフェノバルビタールなどはトレリーフの血中濃度が上昇する可能性が、三環系抗うつ剤や四環系うつ剤は高血圧や失神、不全収縮などを引き起こして最悪の場合死亡する恐れがあるため、注意してください。
他にも併用によって影響を与える薬剤が多数あるため、トレリーフと他の薬剤を併用する前に必ず医師に相談しましょう。
トレリーフの薬価は、トレリーフOD錠25mgが1錠あたり684.1円、トレリーフOD錠50mgが1錠あたり1021.4円と、てんかん治療薬のエクセグランと比較すると高価であると言えます。
後発品:ゾニサミド
ゾニサミドを主成分としたパーキンソン病治療薬の後発品として、各社からゾニサミドという名前のOD錠が販売されています。
製薬会社 | 製品名 |
---|---|
住友ファーマプロモ | ゾニサミドOD錠25mgTRE「SMPP」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「SMPP」 |
日医工 | ゾニサミドOD錠25mgTRE「日医工」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「日医工」 |
日本ケミファ | ゾニサミドOD錠25mgTRE「ケミファ」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「ケミファ」 |
サンド | ゾニサミドOD錠25mgTRE「サンド」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「サンド」 |
第一三共エスファ | ゾニサミドOD錠25mgTRE「DSEP」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「DSEP」 |
フェルゼンファーマ | ゾニサミドOD錠25mgTRE「フェルゼン」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「フェルゼン」 |
沢井製薬 | ゾニサミドOD錠25mgTRE「サワイ」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「サワイ」 |
ダイト | ゾニサミドOD錠25mgTRE「ダイト」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「ダイト」 |
寿製薬 | ゾニサミドOD錠25mgTRE「KO」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「KO」 |
ニプロ | ゾニサミドOD錠25mgTRE「ニプロ」 ゾニサミドOD錠50mgTRE「ニプロ」 |
一部を挙げただけでもこれだけの商品数があり、現在15社がゾニサミドのパーキンソン病治療薬を販売しています。
適応はトレリーフと同じくパーキンソン病とレビー小体型認知症に伴うパーキンソニズムであり、副作用や禁忌、他の薬剤との併用に関してもトレリーフ同様になっています。
薬価に関してはどの会社も同じで、25mgのOD錠は1錠あたり321.3円、50mgのOD錠は1錠あたり482円です。
先発薬のトレリーフと比較するとおよそ半分の価格であるため、費用面が気になる方にとっては心強い味方であると言えるでしょう。
ゾニサミドの先発薬はエクセグランとトレリーフ
ゾニサミドはてんかん治療として開発されましたが、パーキンソン病にも効果を示すことが分かってからはパーキンソン病治療薬としても使用されるようになりました。
ゾニサミドを主成分としたてんかん治療の先発薬はエクセグランであり、エクセグラン錠100mgの錠剤と散剤のエクセグラン散20%の2種類があります。
パーキンソン病治療の先発薬はトレリーフと言い、トレリーフOD錠25mgとトレリーフOD錠50mgの2種類が販売されています。
どちらも後発品が開発されており、特にゾニサミドのてんかん治療薬においては薬価が先発薬の半分ほどです。
薬剤を選択する際には視野を広く持ち、様々な角度から検討していくとよいでしょう。