海外の性教育は本当に進んでいる？イングランドの調査から見える課題と若者たちの声

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数字が示す学生の性知識不足

イングランドの16～18歳の学生931人を対象にした調査によると、生徒たちは性と生殖に関する基礎的な知識が不足していることがわかったそうです。
例えば、月経周期について授業で学んでいるにもかかわらず、半数の生徒が排卵日について正確な知識を持っていませんでした。

さらに驚くべきことに、子宮内膜症や多嚢胞性卵巣症候群（PCOS）といった女性特有の健康問題について学んだことがある生徒は3%未満でした。
また、更年期について教わった生徒もわずか約10%にとどまっています。

加齢と生殖能力の関係についても、興味深い結果が出ています。
70%以上の生徒が女性の卵子の質と量が年齢とともに低下することを知っていた一方で、男性の精子についても同様の影響があることを理解していた生徒は約50%でした。

学校よりインターネットで学ぶ若者

調査では、生徒たちが学校の授業で扱われない健康課題について、どのように情報を得ているかも明らかになりました。
多くの生徒が、PCOSや子宮内膜症、更年期障害、流産、中絶などについて、自主的に調べていると答えています。

情報源として最も多かったのは、ソーシャルメディアやインターネットでした。
手軽にアクセスできる反面、誤った情報に触れるリスクもあります。
実際、多くの生徒が信頼性の低い情報源からの情報に頼らざるを得ない状況に置かれています。

学校での性教育の質についても、生徒たちの評価は厳しいものでした。
70%の生徒が「少し」しか性教育を受けていないと回答し、「良い」または「非常に良い」と評価したのはわずか30%でした。

生徒たちが希望する保健の授業とは？

ある生徒は次のように語っています。
「私たちは、安全な性行為の方法と生理について何度も繰り返し学校で教わっただけです。確かにそれらは大切なことですが、知っておくべきことのごく一部に過ぎません」

多くの生徒が、より広い知識が学べるカリキュラムを求めていると言います。
具体的には、流産や中絶、自慰行為、性や生殖に関する医療サービスへのアクセス方法などについて、もっと学びたいと考えています。

また、性に対する肯定的な側面にも目を向けるべきだという意見も多く聞かれたそうです。
現状の性教育では、性行為の否定的な側面が強調されすぎているという指摘です。
生徒たちは、恐怖心をあおるのではなく、正直で偏見のない教育を望んでいました。

実際、大人になってから「もっと早く知っておけばよかった」と思うことは多々あるでしょう。
健康に関する知識はその代表です。

例えば、ピルは避妊薬として認識されていることが多いですが、生理痛を楽にする、生理回数を減らして健康になることを知らない人は多いです。
しかし、知っていたら人生を変えられた方もいるのではないでしょうか。

現在は、「将来悩んだら、その時に自分で考えてね」と突き放す性教育になっています。

教育現場での取り組みと今後の課題

この調査結果を受けて、研究チームは教育リソースの開発に着手しました。
教師向けの教材や情報リーフレット、不妊治療に関する教育ポスターなどを作成し、より包括的な性教育を目指しています。

イングランドの教育省も、この問題に対する取り組みを始めています。
人間関係と性教育（RSE）のカリキュラムの見直しを提案し、子宮内膜症やPCOS、月経過多などの健康課題を新たに追加することを検討しています。

日本の性教育は今どうなっている？

では、今の学校の保健の授業で行う性教育はどうなっているのでしょうか。
十分と言えるのでしょうか。
既に世界では性教育を「生涯の健康管理」の一環として捉え、幼い頃から体系的な教育を行っています。

一方、日本の性教育は大きな転換期を迎えています。
2023年度から始まった「生命の安全教育」は、性暴力防止に焦点を当てた新しい取り組みですが、その内容や実施方法には様々な課題が残されています。

世界の性教育との大きな隔たり

先ほどのイングランドの調査結果と比較すると、日本の性教育の特徴が見えてきます。
イングランドでは生殖に関する健康問題の教育が不十分だと指摘される一方、日本国内ではそれ以前の基礎的な性教育さえ十分に行われていない状況です。

特に、日本の性教育における「はどめ規定」は、教育現場に大きな制約を課しています。
性行為や妊娠の経過を取り扱わないという制限があるため、生徒たちが正確な知識を得る機会を奪っているとも言えます。

一方、イギリスでは5歳から体系的な性教育が始まり、フィンランドでは1970年代から性教育が必修化されています。
これらの国では、性を生涯の健康管理の一部として捉え、医学的な知識から人権教育まで、幅広いテーマを扱っています。

それでも、上記のイングランドの学生の声によると、まだまだ性教育が十分でないとのことですから、日本は世界でも「圧倒的に」遅れていると言えるでしょう。

デジタル時代における新たな課題

日本で「生命の安全教育」が導入された背景には、SNSによる性被害の増加があります。
2020年には過去10年で最多となる2,082件の被害が報告され、その約4割が自撮り画像に関連する被害でした。

この状況は、先のイングランドの調査で見られた「若者がインターネットやSNSで情報を得ている」という実態と重なります。
しかし、日本の場合は情報収集だけでなく、実際の被害に結びつくケースが増えているのです。

スマートフォンの普及により、小学生でもSNSにアクセスできる環境が当たり前となった今、性教育にはデジタル時代特有のリスク教育も含める必要があるのではないでしょうか。

包括的な性教育の必要性

「生命の安全教育」は性暴力防止という重要な目的を持っていますが、それだけでは十分とは言えません。
イングランドの調査で明らかになったように、若者たちは生殖に関する健康問題や性の肯定的な側面についても学ぶ必要があります。

例えば、子宮内膜症やPCOSといった健康課題は、日本でも多くの女性が抱える問題です。
これらの情報を早く知ることで、適切な医療機関への受診ができるようになるでしょう。

また、性の多様性やジェンダー平等についての教育も重要です。
フィンランドの例にあるように、これらのテーマは未就学児から段階的に学ぶこともできます。

昔から進歩しない日本の性教育をどう改善するか

日本の性教育が直面している最大の課題は、包括的なアプローチの欠如です。
「はどめ規定」による制限は確かにありますが、文部科学省は必要性があれば関連内容を教えることは可能としています。

ただし、実際の教育現場では、様々な配慮事項があるためにハードルが高くなっています。
児童の発達段階への配慮、学校全体での共通理解、保護者や地域の理解、集団指導と個別指導の区別など、考慮すべき点が多岐にわたります。

これらの課題を克服するためには、以下のような取り組みが必要ではないでしょうか。

教育者向けの研修プログラムの開発
保護者や地域社会との対話の促進
発達段階に応じた教材の充実
デジタル時代に対応したリスク教育の強化
医療専門家との連携による健康教育の充実

性教育は、「生命の安全教育」の導入により新たな一歩を踏み出しました。
しかし、世界の先進的な性教育と比較すると、まだまだ改善の余地があります。

これからの性教育には、単なる知識の伝達ではなく、生涯にわたる健康管理の基礎として、また、人権や多様性の理解を深めるための重要な機会として、より身近に感じられるようなアプローチが必要です。

幼少期からの性教育のメリット

思春期に性教育を受けると、どうしても恥ずかしさや照れくささ、気まずさを感じてしまいます。
であれば、他国を見習って幼少期から性教育をするのはどうでしょうか。
この教育で得られるメリットについて考えてみましょう。

自己肯定感と身体的自尊心の育成

幼少期から適切な性教育をすれば、子どもたちの自己肯定感を高めるそうです。
自分の身体について正しい知識を得ることで、子どもたちは自分の身体を大切にする意識を自然に身につけていきます。

例えば、身体の部位を医学的な正しい名称で学べば、自分の身体を恥ずかしがったり、否定的に捉えたりすることなく、自然な一部として受け入れる態度を育てることに繋がります。

また、子どもたちは早い段階から「自分の身体は自分のもの」という概念を理解することができます。
これは将来的な健康管理の基礎となるだけでなく、不適切な接触から自分を守る力にもなります。

健康的な人間関係の構築

幼い頃から他者との適切な距離感や境界線について学ぶと、健全な人間関係を築く上で重要な基礎となります。
子どもたちは以下のような概念を段階的に学んでいけるでしょう。

自分と他者の境界線の認識
相手の気持ちや権利の尊重
適切なコミュニケーション方法
「No」と言える勇気
助けを求める方法

これらの学びは、将来的な対人関係全般にプラスの影響を与えます。
特に思春期以降の恋愛関係において、相手を尊重し、自分も尊重される関係性を築く基礎となります。

性暴力予防への効果

幼少期からの性教育は、性暴力の予防に大きな効果があることが様々な研究で示されています。
特に、デジタル時代におけるSNSでの性被害予防には、早期からの教育が効果的です。

子どもたちは自分の身体や画像を大切にする意識を持つことで、オンライン上での危険から自分を守る力を身につけられるのです。

まとめ

イングランドの調査結果から、現代の性教育には大きな課題があることが明らかになりました。
生徒たちは、より幅広い実践的な性教育を求めています。

にもかかわらず、大人が渋ることで生徒の身を危険にさらしているのが現状です。
生涯にわたる健康管理という視点で考えれば、主要5科目よりよほど教えなければいけないことではないでしょうか。
教育現場が教えられないなら、外部から性教育のプロを学校が雇うなど、新たな方法を考えた方が早いかもしれません。

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