皆さんは、顔のスキンケアには自信がある方ですか?
しっかりと美容製品を使って過ごしていても、実はまだ十分なケアはできていないかもしれません。
2024年1月19日に「Eco-Environment & Health誌」に掲載された新しい研究で、マスク生活や、化粧品に含まれている成分が肌に悪い影響を与えていることがわかったのです。
今回は、この研究の内容と、改善策について考えていきましょう。
化粧品に含まれている「メチルパラベン」とは?
肌は人間の最大の器官であり、外部からの影響を直接受ける非常に敏感な部分です。
ここでまず注目したいのは、その肌ケアでよく使う化粧品やスキンケア製品に広く使われている防腐剤、「メチルパラベン」です。
チェコの研究によると、市販されているパーソナルケア製品の72%にこの物質が含まれているとのこと。
メチルパラベンは抗菌性を持つため製品の保存期間を延ばす目的で使用されますが、皮膚に蓄積すると老化や酸化ストレスを引き起こす可能性があります。
また、メチルパラベンは皮膚細胞に影響を与えるだけでなく、重要な保護機能をも阻害することが研究で確認されました。
例えば、正常な皮膚細胞であるケラチノサイトに対して脂質過酸化を引き起こし、酸化損傷のリスクを高めることがわかっています。
これが長期間続けば、肌の炎症や早期老化に繋がる可能性が否定できません。
マスク着用による低酸素環境と皮膚への影響
COVID-19のパンデミックをきっかけに、マスクの着用が日常生活の一部となりました。
欧米ではもともとマスクをしない生活が一般的ですが、日本はコロナ禍の前からマスクを使う人が多かったですよね。
しかし、マスクにより顔の皮膚が低酸素環境にさらされる状況が生まれています。
この状態が続くと、肌の代謝機能や厚みが変化し、肌の健康に悪影響を及ぼす可能性があるのです。
具体的には、マスクによって酸素供給が制限されると、肌細胞が正常な機能を維持するのが難しくなり、炎症反応が加速することがわかっています。
加えて、この低酸素環境下ではメチルパラベンによる悪影響がより強く現れることも明らかになっています。
酸化ストレスの増加や肌の保護機能の低下が同時に進行するため、皮膚への負担は想像以上に大きくなるのです。
研究が示す低酸素とメチルパラベンの相乗効果
中国の南開大学で行われた研究では、低酸素環境とメチルパラベンが皮膚に及ぼす影響を詳しく解析しました。
この研究では、皮膚細胞とマウスモデルを使用して、次のような結果が得られました。
脂質過酸化の悪化
低酸素状態では、メチルパラベン曝露による脂質過酸化が強まります。
細胞膜が破壊されやすくなるため、皮膚のバリア機能が低下します。
プリン代謝経路への干渉
低酸素環境下では、細胞のエネルギー代謝が乱れ、肌の代謝サイクルに悪影響を与えることが観察されました。
炎症リスクの増加
メチルパラベン誘発性の酸化ストレスは、低酸素環境においてさらに強まり、皮膚炎や赤みなどの症状を引き起こす可能性が高まります。
これらの結果から、低酸素環境とメチルパラベンが相互に作用し、肌の健康に対して深刻なリスクをもたらすことがわかりました。
重要な遺伝子とその役割
研究では、低酸素とメチルパラベンの相乗効果に関与する重要な遺伝子も複数特定されました。
これには、以下のような遺伝子が含まれます。
CAT(カタラーゼ)
酸化ストレスを軽減する役割を果たしますが、メチルパラベンにさらされることによりその活性が抑制されることがあります。
PPARG(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体ガンマ)
脂肪細胞の代謝を調整しますが、これが阻害されると皮膚の保護機能が低下します。
MMP2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)
皮膚の再生プロセスに関与していますが、過剰に活性化すると皮膚の老化を加速させる恐れがあります。
これらの遺伝子の働きに基づく研究は、今後のスキンケア製品の改良や肌トラブルの予防策を考えるうえで重要な鍵となるでしょう。
スキンケア製品の選択と日常の工夫
こうした研究結果を踏まえると、肌の健康を維持するために私たちができることは多くあります。
例えば、メチルパラベンを含まない製品を選ぶ、肌にやさしい成分が配合された製品を使用するなどが挙げられます。
また、マスクの着用時間を短縮し、肌を新鮮な空気にさらす時間を意識的に作ることもおすすめです。
風邪や花粉症などの症状が強い時には必要な場合もありますが、仕事中8時間完全密閉であるなら、トイレに行った時などにマスクを外す、人が少ない時は意識して外すなど、工夫してみてはいかがでしょうか。
さらに、肌の保湿や紫外線対策といった基本的なスキンケアを怠らないことが、肌のバリア機能を維持するための第一歩となるでしょう。
「パラベンフリー製品」の見分け方
メチルパラベンを含まない化粧品を選ぶなら、「パラベンフリー製品」を狙いましょう。
パラベンは石油由来の合成防腐剤で、今回の研究を語る上での重要な成分メチルパラベンの他にも、「プロピルパラベン」など様々な種類があります。
パラベンフリーの製品を選ぶ際には、成分表示をしっかり確認しましょう。
全成分表を読み解くのは難しいかもしれませんが、「パラベン」が含まれていないかを確認するだけでも大きな一歩です。
化粧品の成分表示を見ると、全成分の後半部分に「〇〇パラベン」と記載されているものがあります。
これらは防腐剤として配合されており、商品の品質を保つ役割を果たしています。
しかし、その安全性については今回の研究の通りで、疑問を持つべきかもしれません。
1980年に旧厚生省がアレルギー性のある成分として指定したリスト「旧表示指定成分」にも含まれており、気になる方は注意が必要です。
パラベンの使用規定と影響
法律では、化粧品に使用されるパラベンの濃度は1%以下に制限されています。
例えば、100gの化粧水に対して1gまで使用可能です。
一見すると少ないように思えますが、日常的に使用する化粧品が複数ある場合、その累積効果について考慮する必要があります。
1回あたりの使用量は微量でも、化粧水、乳液、クリームなど、複数のアイテムにパラベンが含まれていることを忘れてはいけません。
長期間にわたる使用が肌に与える影響について、慎重に検討する必要があります。
「無添加」なら安心?
「無添加化粧品」という言葉は安心感を与える響きがありますよね。
しかし、この言葉の定義は意外にあいまいです。
無添加化粧品とは、旧厚生省がリスト化した「旧表示指定成分」を含まない製品を指します。
しかし、このリストに含まれていない合成成分は使用可能であるため、「合成成分フリー」とは限りません。
例えば、パラベンフリーをうたう製品を選んでも絶対安心とは限りません。
それに代わる防腐剤として「フェノキシエタノール」が使用されている場合があるからです。
フェノキシエタノールは旧表示指定成分には含まれていないため「無添加」とされますが、これも石油由来の成分であり、肌への影響がゼロではありません。
「フェノキシエタノール」も避けた方がベター
フェノキシエタノールはパラベンに代わる防腐剤として、無添加化粧品や自然派化粧品で広く使用されています。
しかし、この成分も石油から合成されており、化粧品への配合濃度はパラベンと同じく1%以内に制限されています。
肌への影響についてはパラベンとほぼ同等と考えられるため、「無添加=安全」という単純な図式は成り立ちません。
フェノキシエタノールが含まれている製品を選ぶ際にも、その使用頻度や肌質に合っているかを慎重に判断する必要があります。
JOCAマークとオーガニックコスメの選び方
天然成分にこだわりたい方におすすめなのが、「JOCAマーク」を取得したオーガニックコスメです。
JOCA(日本オーガニックコスメ協会)は、完全合成成分フリーかつ天然成分100%の基準を設けています。
この基準はヨーロッパの認証基準よりも厳格とされています。
天然成分100%の化粧品は、防腐剤や乳化剤も植物由来のものを使用しており、石油由来の成分が一切含まれていません。
代わりに、「グレープフルーツ種子エキス」や「ゆず種子エキス」などが天然の防腐剤として利用されています。
また、クリームなどには「ダイコン根発酵液」なども使われています。
日本の化粧品製造技術は世界的にも評価が高く、オーガニックコスメの分野でもその技術が活かされています。
天然成分を使用した防腐剤や乳化剤の開発が進んでおり、信頼性の高い製品も多くあるのです。
まとめ
この研究は、マスクの着用とメチルパラベンを含む製品の使用が肌に与える影響について、私たちに重要な警鐘を鳴らすものです。
肌の健康を守るためには、日常生活の中で使用する製品や習慣について、一歩踏み込んで考える必要があるでしょう。
これを機に日々のスキンケアを見直し、肌に優しい行動を心がけることが、健康的な肌を保つ秘訣になるはずです。