日焼けでニキビは治る?TikTokで流行るもニキビ治療効果は「期待薄」な上「リスクあり」

最近、TikTokで「日焼けでニキビが治る」という投稿が話題になっているのをご存知でしょうか。
確かに日光浴は気持ちが良いものですが、医学的な観点からみると非常に危険な行為かもしれないのです。
今回は、このトレンドの背景にある科学的な事実と、実際の危険性について詳しく見ていきましょう。
ソーシャルメディアで広がる危険な「日焼けハック」
TikTokをはじめとするソーシャルメディアでは、様々な美容法が日々シェアされています。
中でも最近注目を集めているのが「日焼けでニキビが治る」という投稿です。
投稿者たちは、自然の日光を浴びたり、日焼けサロンに通ったりすることで、ニキビが改善したと主張しています。
実は、光を使った治療法自体は医療の現場でも実際に行われています。
光線療法と呼ばれるこの治療法は、特に乾癬や湿疹といった皮膚疾患の治療に効果があることが知られています。
しかし、これはあくまでも医療機関で行われる治療であり、日光浴とは全く異なるものなのです。
「日焼けニキビ治療説」の科学的根拠を検証
2023年に行われた大規模な研究では、約2万人を対象に過去6年間の紫外線曝露量とニキビの関係が調査されました。
この研究では、1日約1時間の穏やかな紫外線に当たると、若い成人の中等度から重度のニキビのリスクを下げる可能性が示されました。
この情報が独り歩きし、日光浴をすればニキビが治ると過剰に反応してしまったのでしょう。
しかし、この研究にはいくつかの注意点があります。
まず、参加者が実際に浴びた紫外線量は直接測定されていません。
研究者たちは、参加者の居住地域の気象データから推測した値を使用しています。
さらに重要なのは、紫外線曝露による悪影響が考慮されていないという点です。
実験室レベルでの研究では、紫外線B波(UVB)にニキビの原因菌を殺す効果があることが示されています。
しかし、これはあくまでも培養された細胞での実験結果であり、実際の人体での効果は確認されていません。
むしろ多くの研究者たちは、紫外線の危険性を考えるとこの程度の効果では治療法として推奨できないと結論付けています。
皮膚がんリスクという重大な代償
日焼けの最も深刻な問題は、皮膚がんのリスクを著しく高めることです。
研究によると、子ども時代や思春期に一度でも水疱ができるほどの重度の日焼けを経験すると、生涯にわたって皮膚がんのリスクが2倍になるとされています。
また、紫外線は皮膚が早くから老化する主な原因でもあります。
紫外線は皮膚のコラーゲンとエラスチンを破壊し、シワやたるみを引き起こします。
このダメージは蓄積性で、若いうちから日光浴をしすぎると、将来的な肌の老化を加速させる原因となります。
実践的な紫外線対策のポイント
日光を100%避けることは現実的ではありませんが、対策をすればリスクを最小限に抑えることができます。
まず、外出時には必ずSPF30以上の日焼け止めを使用しましょう。
水泳や運動で汗をかいた後は、必ず塗り直すようにしてください。
また、日差しの強い午前10時から午後4時の間は、できるだけ日陰を利用するようにしましょう。
外出しなければならない場合は、つばの広い帽子や紫外線カット機能付きのサングラスなどを活用してみてください。
医学的に効果が実証されているニキビ治療法
ニキビには、より安全で効果的な治療選択肢が既にあります。
市販薬から処方薬まで、様々な治療法が確立されているのです。
特に重度のニキビには、抗炎症作用のある抗生物質やイソトレチノインといった処方薬が効果的です。
イソトレチノインは皮脂の分泌を抑制し、ニキビの原因となる細菌の増殖を防ぐ効果があります。
ある研究では、4ヵ月の使用で85%もの改善が報告されています。
薬剤があるのに日光浴でニキビを治そうと考えるのは、それが無料だからかもしれません。
病院へ行くのも薬剤を買うのもお金がかかるため、ニキビが出やすい若い年代はSNSの「うまい話」に飛びついてしまうのではないでしょうか。
治療薬使用時の注意点
ただし、これらの治療薬を使用する場合は、日光との関係に注意が必要です。
イソトレチノインやテトラサイクリン系抗生物質には光感作作用があり、日光に当たることで皮膚のダメージが増大する可能性があります。
実際、テトラサイクリン系抗生物質を服用しているニキビ患者の20~40%が光感作を経験したという報告もあります。
このため、これらの薬剤を使用している場合は念入りな紫外線対策が必要になります。
本当に悩んでいるなら医療機関へ相談しよう
現在の治療に満足できない場合でも、安易に日光浴や日焼けサロンに頼るのは危険です。
むしろ、医療専門家に相談し、自分に合った治療法を見つける方が安心です。
医師は患者さんの肌の状態や生活習慣を考慮した上で、最適な治療プランを提案してくれるはずです。
ニキビご時で病院へ行くのは大げさだと考える人もいるかもしれませんが、人が何にどれほど悩むかには差があります。
皮膚科に頼れば、もっとも正しい治療法を示してくれるでしょう。
日光は1日どれくらい浴びればいいの?
シミやしわ、皮膚へのリスクを考えると、日光は避けた方がよいと言われます。
しかし、日に当たるとビタミンDが生成されたり、幸せホルモンが出たりします。
朝日を浴びれば体内時計が整って、夜に自然に眠たくなるメリットもあります。
つまり、日光は「ほどほど」に浴びるべきという結論が出ます。
では、具体的にはどれくらい浴びれば健康的なのでしょうか。
日光浴によるビタミンD生成には、地域や季節によって必要な時間が異なります。
例えば夏の場合、午前9時頃であれば札幌で約7分、つくばで約6分、那覇で約9分の日光浴で、1日の推奨量の一部を確保できます。
しかし、冬になると必要時間は大幅に増加し、特に北海道など高緯度地域では、同じ量のビタミンD生成に数時間を要することもあります。
このため、午前9時頃の場合、札幌では497分も日光を浴びる必要があります。
このように、地域や季節、時間によって必要な日光浴の時間が大幅に変わるため、おすすめは夏には意識せず、冬には30分以上日に当たると良いと考えておけばよいでしょう。
ビタミンDは不足しがち
私たちの体内でビタミンDを生成するためには、日光に含まれる紫外線が不可欠です。
しかし、現代の生活様式では、室内で過ごす時間が長くなりがちです。
厚生労働省の調査によると、成人の平均ビタミンD摂取量は、男性で7.9μg、女性で6.5μgと、推奨される目安量8.5μgを下回っている状況です。
日光ではなく食事から栄養を取る方法もありますが、ビタミンDを含む食品は意外と限られています。
主な供給源は魚類やキノコ類で、例えばサケ1切れ(約80g)に25.6μg、イワシの丸干し1尾(30g)に15.0μg含まれています。
しかし、毎日これらの食品を十分な量摂取し続けるのは現実的ではありません。
日光浴の効果的な方法
効果的な日光浴のために、いくつか重要なポイントを押さえておきましょう。
まず、窓ガラス越しの日光浴は避けるべきです。
ガラスはビタミンD生成に必要なUVB波を遮断してしまうため、期待する効果は得られません。
また、意外に知られていませんが、手のひらや足の裏だけの日光浴でも十分な効果が得られます。
これらの部位はメラニン色素が少なく、ビタミンD生成にはおすすめの場所なのです。
日焼け止めの影響について
日焼け止めは、ビタミンD生成に大きな影響を与えます。
SPF30の日焼け止めを使用すると、ビタミンD生成量は通常の5%以下まで低下するとされています。
これは、日焼け止めが防ぐ紫外線の波長と、ビタミンD生成に必要な波長が重なっているためです。
また、服を着用したままでは、当然ながらビタミンD生成の効率は低下します。
しかし、手首や足首など、部分的な露出でも一定の効果は期待できます。
効率的なビタミンD生成を目指すなら半袖や半ズボンなどがおすすめですが、シミやしわが気になる場合もありますよね。
そんな時は、顔には日焼け止めを塗り、腕や足の一部のみ日焼けを塗らずに日に当てるなど、工夫してみてはいかがでしょうか。
日光浴がもたらす健康効果
適切な日光浴には、ビタミンD生成以外にも様々なメリットがあります。
例えば、セロトニンの分泌を促進し、精神状態が安定することが知られています。
セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、不足するとうつ病や不眠などの原因となる可能性があります。
また、ビタミンDは、カルシウムの吸収を促進する栄養素でもあります。
適切な量のビタミンDがないと、せっかく摂取したカルシウムも効率よく利用されません。
特に高齢者や成長期の子どもたちにとって、骨の健康維持のために重要な要素となります。
ビタミンDには免疫系の調整機能もあり、様々な感染症やアレルギー症状を軽減してくれることもあります。
日光浴と運動の組み合わせ
日光浴は、散歩やジョギング、庭仕事など、日常的な外出の機会を利用することで、自然に取り入れることができます。
大切なのは、日光浴のメリットとデメリットを理解した上で、自分に適した方法を見つけることです。
時間帯や季節、肌質などを考慮しながら適度な日光浴を日常生活に取り入れることで、より健康的な生活を送ることができるでしょう。
まとめ
TikTokで広がる「日焼けニキビ治療」は、科学的根拠が不十分なだけでなく、重大な健康リスクをもたらす可能性があるとのことでした。
ニキビ治療には、既に効果が実証された安全な方法があります。
安易なソーシャルメディアのトレンドに流されず、必要に応じて医療専門家に相談することが、長期的な肌の健康を守る最善の方法と言えるでしょう。
皮膚がんのリスクを考えると、一時的なニキビ改善のために危険な日焼けを選ぶのは、あまりにも大きな代償かもしれませんね。