カルバマゼピンは脳内神経の過剰な興奮を抑える作用を持つ薬剤で、てんかんや躁病、三叉神経痛などの治療に使用されています。
様々な病気の治療に使われていますが、カルバマゼピンは他の薬剤ではなかなか見られない副作用を起こすことがあるため、「怖い」と感じる方もいらっしゃるようです。
今回はカルバマゼピンの音程変化や体重増加などの副作用を中心に解説していきます。
また、カルバマゼピンの副作用のリスクを上げないための注意事項についてもお話していきますので、薬剤に不安を感じている方は参考にしてください。
カルバマゼピンとは
カルバマゼピンは1957年にノバルティス社によって合成された後、1963年にイギリスとスイスで抗てんかん薬として販売されたのを経て、1966年に日本で使用されるようになった抗てんかん薬で、現在でも第一選択薬として活用されています。
カルバマゼピンが主成分の先発品にサンファーマのテグレトール、後発品に協和薬品工業や藤永製薬のカルバマゼピンという商品が販売されています。
製薬株式会社 | 製品名 |
---|---|
サンファーマ | テグレトール錠100mg、テグレトール錠200mg、テグレトール顆粒50% |
協和薬品工業 | カルバマゼピン顆粒50%「アメル」、カルバマゼピン100mg「アメル」、カルバマゼピン錠200mg「アメル」 |
藤永製薬 | カルバマゼピン錠100mg「フジナガ」、カルバマゼピン200mg「フジナガ」、カルバマゼピン顆粒50%「フジナガ」 |
カルバマゼピンは脳の過剰な興奮によって引き起こされる様々な病気の治療に使用されている一方で、副作用や禁忌などの注意事項が多いという側面もあります。
カルバマゼピンの効果
カルバマゼピンは主にてんかんや躁病、三叉神経痛などを改善する目的で使用される薬剤です。
てんかんは意識が途切れたり、手足が硬くなって全身がガクガク痙攣したりする病気で、躁病は気分が高揚して口数が多くなり、自信過剰になって思いがけない行動をしたりする症状が現れる病気です。
三叉神経痛は顔面に電気が走るような痛みを引き起こす病気で、これら病気はどれも脳が関係しています。
脳内には多くの神経細胞が興奮することで信号が伝わって神経伝達が行われています。
この時、興奮性の信号に関連するカルシウムイオンやナトリウムイオンと、抑制性の信号に関連する塩化物イオンがバランスを取っているのが通常ですが、興奮性の作用を持つイオンが過剰に作用してしまうと、てんかんや躁病、三叉神経痛などの症状を発症します。
カルバマゼピンには神経細胞のナトリウムチャンネルを阻害して、細胞内にナトリウムイオンが作用するのを抑える働きがあります。
これにより、脳の過剰な興奮によって引き起こされるてんかんや躁病、三叉神経痛などを改善させます。
カルバマゼピンの副作用
カルバマゼピンの副作用には、次のようなものが報告されています。
- 眠気、倦怠感、めまい、ふらつき
- 発疹、かゆみ
- 喉の痛み、貧血
- 発熱、眼の充血、唇や口内の荒れ
- 発熱、リンパの腫れ
- 食欲不振、黄疸
- 失神、徐脈
- 音程変化
- 体重増加
これらの副作用は、中毒性表皮壊死融解症や皮膚粘膜眼症候群、重症薬疹、急性汎発性発疹性膿疱症、肝機能障害、うっ血性心不全などの重篤な病気の初期症状の可能性があるので、違和感が現れた時には医師や薬剤師に速やかに相談してください。
また、カルバマゼピンの特徴的な副作用に音程変化があります。
音程変化の症状の多くは、ピアノやチャイムなどの音が半音から1音低く聞こえるというもので、特に絶対音感を持つ方が音程の変化を不快に感じて相談するケースがほとんどです。
音程変化の副作用は、4歳~42歳の女性に多く、その数は男性の約2倍ともされ、カルバマゼピンの服用を開始して数時間~2週間以内に現れると言われています。
そして、カルバマゼピンの体重増加に関する副作用は、それほど深刻になる必要はないでしょう。
カルバマゼピンは臨床試験で体重増加が確認されていますが、その割合は0.8%と少数であるうえに、反対に0.5%の被験者の体重が減少しています。
さらに、デパケンを始めとする抗てんかん薬の多くの薬剤で見られる食欲亢進の副作用は現れないことからも、太るリスクはそう高くないと言えるでしょう。
カルバマゼピン服用の注意事項
カルバマゼピンは脳の興奮によって引き起こされる多種多様な病気を治療する薬剤であり、てんかんの第一選択薬です。
しかしながら、カルバマゼピンは治療域と中毒域が近いうえに、使用方法を守らないと重篤な副作用を招く恐れがあります。
ここで解説する注意事項を守って、カルバマゼピンを正しく使っていきましょう。
中毒症状に注意する
カルバマゼピンの飲み始めや薬剤を増量した時には、中毒症状と呼ばれる副作用が現れる可能性があるため注意が必要です。
まず、カルバマゼピンを急激に増量した時には、服用後1~3時間ほどで急性中毒症状を引き起こし、震えや痙攣、意識障害などが現れることがあります。
そのため、薬剤の飲み始めは体調に問題がないか十分気を付け、その後も勝手に増量するようなことはしないでください。
また、カルバマゼピンを長期服用して成分の血中濃度が高くなる状態が続くと慢性中毒症状を引き起こし、眠気やめまい、吐き気などの副作用を引き起こすことがあります。
てんかんの治療は長期になるケースが多いので、日々体調を確認しながら使用していきましょう。
離脱症状に注意する
カルバマゼピンは急激に減量したり、服用を急に止めたりすると離脱症状が現れます。
てんかんの悪化や、てんかんの痙攣発作が長時間続いてしまう重責発作を招く危険性があるため、薬剤を勝手に中止したり、減量したりするのは絶対に止めてください。
副作用が気になる時にも自己判断で中止せず、医師に相談することが離脱症状を引き起こさない大切なポイントと言えるでしょう。
飲み合わせに注意する
様々な薬剤と相互作用を起こしやすいカルバマゼピンは、効果が強まって副作用が出やすくなったり、反対に効果が弱くなってしまったりすることがあるので飲み合わせに注意が必要です。
併用禁止とされている薬剤には、抗真菌薬やC型慢性肝炎治療薬、抗コロナウイルス薬、肺高血圧症治療薬、抗エイズウイルス薬、抗マラリア薬、抗血栓薬などがあります。
血中濃度の上昇や減少などが起き、薬剤の種類によっては血中濃度が急激に上昇して中毒症状を引き起こすものもあります。
カルバマゼピンを服用中に他の薬剤を併用したい時には、必ず医師や薬剤師に問題ないことを確認してから使用するようにしましょう。
また、食べ物との飲み合わせについても注意が必要なものがあります。
グレープフルーツはカルバマゼピンの血中濃度が上昇して副作用が出やすくなるため、アルコールも副作用が強まる可能性があるので控えましょう。
さらに、カルバマゼピンの作用を弱める恐れがあるため、セントジョーンズワートが含まれたお茶やサプリメントなども避けるようにしてください。
服用禁止に注意する
カルバマゼピンは持病や飲んでいる薬剤の種類によっては、使用を禁止されているケースもあります。
特に重篤な血液障害や第2度以上の房室ブロック、ポルフィリン症、高度徐脈がある方や、飲み合わせで禁止されている薬剤を服用中の方はカルバマゼピンを使用できません。
また、肝機能や腎機能に障害がある方、高齢者、虚弱者はカルバマゼピンを慎重に使用する必要があり、眼圧亢進や脱力発作、甲状腺機能低下症などの複数の症状で使用に注意が必要とされています。
カルバマゼピンの副作用が起きた時の対応方法
カルバマゼピンは治療域と中毒域が近い薬剤であることもあり、注意して服用していたとしても体調などによっては副作用が起きてしまうケースもあります。
副作用が起きた時の対応方法を紹介しますので、困った時に活用してください。
医師や薬剤師に相談する
カルバマゼピンを服用中に副作用が現れた時には、医師や薬剤師に相談することを最優先に行いましょう。
副作用の症状を改善させるために薬剤を中断すればよいと思うかもしれませんが、薬剤や副作用の種類によっては薬剤を中止することでさらに大きなデメリットを生むこともあります。
このような理由からも、正しい対処法を医師や薬剤師に判断してもらうのがよいでしょう。
副作用について相談する時には、服用している薬剤の種類や量、飲んでいる期間に加え、どのような症状が出たかを伝えられるようにまとめておくことが大切です。
薬の相談窓口を利用する
休日や夜間などで医師や薬剤師に相談するのが難しい時には、薬剤の相談窓口を利用するのも1つの手段です。
独立行政法人の医薬品医療機器総合機構のインターネットサイトでは都道府県別の電話相談窓口が紹介されているので、困った時には利用してみましょう。
カルバマゼピンの使用で副作用が起きた時には医師や薬剤師に相談しよう
脳内神経の過剰な興奮を抑える作用を持つカルバマゼピンはてんかんの第一選択薬であり、躁病や三叉神経痛などの治療にも使用されている薬剤です。
しかしながら、治療域と中毒域が近いことで中毒症状が起きたり、薬剤を急に中断することで離脱症状が起きたりする性質があるのに加え、特徴的な副作用が現れることがあるため、怖いと感じている方もいらっしゃるようです。
特に音程変化という音が半音から1音低く聞こえる副作用は、絶対音感を持っている方にとって辛い症状と言えるでしょう。
カルバマゼピンの副作用を予防するためには勝手に増量や減量、中断などをせず、飲み合わせに注意しながら用法用量を守って正しく服用することが大切です。
万が一、副作用の症状が現れた時には、医師や薬剤師に相談して指示を仰ぐようにしましょう。