めまいは頭がふらついたり、目が回ったりして身体のバランスが保てなくなる症状です。
ふわふわやぐるぐる、くらくらなどのめまいの感じ方には個人差がありますが、耳や脳、全身の病気が関わっているケースもあります。
今回はめまいの治療薬であるベタヒスチンメシル酸塩の即効性を中心に、効果や注意点を解説していきます。
さらにめまいの種類と薬剤以外の改善方法についても紹介していきます。
ベタヒスチンメシル酸塩の効果と即効性
ベタヒスチンメシル酸塩が主成分の薬剤には先発品のメリスロン錠に加え、ジェネリック医薬品として複数の製薬株式会社がベタヒスチンメシル酸塩錠という名前の薬剤を製造しています。
ベタヒスチンメシル酸塩の剤型はどれも錠剤で、成分の含有量から6mgと12mgの2種類に分かれています。
ベタヒスチンメシル酸塩の効果
ベタヒスチンメシル酸塩は内耳循環改善薬に分類され、内耳にリンパ液が溜まってむくむことが原因となるメニエール病などのめまいや、むくみが蝸牛に影響を与えることで起こる難聴や耳鳴りなどに対して投与することで、血流を増加させて症状を改善する効果があります。
ベタヒスチンメシル酸塩の即効性
薬剤は身体に吸収されて血中濃度が高くなることで効果を発揮します。
個人差はありますが、ベタヒスチンメシル酸塩は服用後、約30分~2時間で効果が出始めると言われています。
また、メニエール病の場合には繰り返すめまいを落ち着かせるためにも、タヒスチンメシル酸塩を約1~3ヵ月飲み続けるとよいでしょう。
ベタヒスチンメシル酸塩の注意点
ベタヒスチンメシル酸塩は比較的安全性が高い薬剤ですが、薬剤には副作用があるので、用法用量を守ることはもちろん、飲み合わせなどに注意する必要があります。
ベタヒスチンメシル酸塩錠は1回6mg錠または12mg錠を1日3回食後に服用し、間隔を4時間以上あけるようにします。
用量は年齢や症状によって増減されることはありますが勝手な判断で増減せず、飲み忘れてしまった時には1回分だけ服用して複数回分をまとめて飲むことのないようにしましょう。
これはベタヒスチンメシル酸塩で起こる可能性がある吐き気や発疹、過敏症などの副作用を避けるためです。
また、ベタヒスチンメシル酸塩の構造や作用がヒスタミンと類似していることから、身体に様々な影響を及ぼすことが懸念されている点にも注意が必要です。
例えば、ヒスタミンH2受容体が刺激されることにより胃酸過多となって胃壁がただれたり、潰瘍が起きたりすることがあります。
また、ヒスタミンH1受容体に作用することで気管支を収縮させたり、褐色細胞腫がヒスタミンの影響を受けて血圧が上昇したりする可能性もあります。
これらのことから、消化性潰瘍や気管支喘息、褐色細胞腫などの疾患がある場合には慎重に使用していく必要があります。
また、飲み合わせに必要な薬剤はありませんが、思いがけない副作用を防ぐためにも、併用したい薬剤がある場合には医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
めまいの種類と病院へ行くべき症状
ここまで主にメニエール病に効果を示すベタヒスチンメシル酸塩について解説してきましたが、めまいには様々な原因があり、重大な病気が隠れているケースもあります。
多くのめまいは少し経つと症状が落ち着いてきますが、めまいが長く続いたり他の症状を伴ったりする場合には、速やかに病院を受診しましょう。
浮動性めまい
ふわふわした感覚やゆらゆら揺れているような感覚が特徴的な浮動性めまいは、脳に異常がある時に起こるめまいで、高血圧やうつ病が原因となることがあります。
ただし、ろれつが回らなかったり、手足がしびれたりする症状を伴う時には、脳腫瘍や脳梗塞、脳血栓などの重大な病気が影響している可能性があるため、すぐに医療機関を受診してください。
回転性めまい
視界がぐるぐる回るような回転性のめまいは内耳・視覚・筋肉のバランスが崩れるなどの主に耳に異常がある時に起こります。
メニエール病も回転性のめまいが起こる病気で、耳鳴りや難聴などの症状が現れるケースもあります。
他にも耳石がはがれ落ちて後半規管に入ることで起きる良性発作性頭位めまい症や、内耳と脳をつなぐ前庭神経にウイルスが入ることで起こる前庭神経炎でも回転性のめまいが起こります。
失神性めまい
立ち上がった時にくらっとしたり、目の前が真っ暗になったりするような感覚になるめまいを失神性めまいと言い、これには立ち眩みも含まれます。
このような失神性めまいが起こる原因には、起立性調節障害や低血圧、不整脈などの病気があるかもしれません。
起立性調節障害は自律神経の乱れによって、朝起きられなかったり、立っていると気持ちが悪くなって倒れてしまったりする病気です。
起立性調節障害の治療では血圧を上げる薬剤などが使用されますが、めまいに対してはベタヒスチンメシル酸塩を併用する場合もあります。
めまいの対処法と治療法
めまいには様々な種類や原因がありますが、原因が特定できないケースも約4割あるため、まずは対症療法を行いながら原因を探していきます。
ここでは、めまいが起こった時の対処法や一般的な治療法を紹介していきます。
めまいが起きた時の対処法
めまいが起きたら、まずは転倒によるケガを防ぐためにその場で座ったり横になったりして安静にします。
この時頭をできるだけ低くした体制をとるとよいでしょう。
さらに視覚や聴覚による脳への刺激を抑制するために、周りを暗く音を小さくします。
そして、めまいが落ち着いてきたら、ゆっくり立ち上がります。
この時、急に起き上がったり頭を動かしたりするのは危険なので避けてください。
もし、いつまで経ってもめまいが治らないような場合には、他の重大な病気を患っている可能性もあるので、速やかに医師の診断を受けてください。
めまいの治療法
医療機関における一般的なめまいの治療は、めまいと同時に起きている症状と総合的に判断しながら、それに合った検査や治療を行います。
良性発作性頭位めまい症の疑いがある時には、フレンツェル眼鏡や赤外線CCDカメラで眼振検査を行います。
そして、良性発作性頭位めまい症と診断された後は、身体を動かして三半規管に入ってしまった耳石を元の位置に戻していきます。
この耳石置換法は即効性があり、約7割の方で治療後すぐに症状が改善するという報告もある治療法です。
一方、脳の病気が疑われる時にはCTやMRIで検査を行い、異常が見つかった時にはすぐにそれぞれの病気に合った治療を開始していきます。
また、ストレスや緊張が原因となる心因性のめまいには、筋弛緩剤や安定剤を使用した治療を行うこともあります。
薬以外のめまい改善方法
めまいは再発するケースも多いため、薬剤に頼るだけでなくめまいを改善するために日常生活を整えていくことが大切です。
少しずつできることから始めて改善していきましょう。
平衡トレーニングを取り入れる
平衡トレーニングはバランスを司る小脳や三半規管を鍛える運動で、日々続けていくことでめまいの改善が期待できます。
最初は目と両手を使って行う小脳のトレーニングを紹介します。
- 利き手と逆の人差し指を顎に当てて、顎が動かないように固定する
- 利き手を前に伸ばして親指を立てる
- 利き手を左右に動かして目で親指の爪を追いかける
もう1つの三半規管のトレーニングは次のように行います。
- 利き手を前に伸ばし親指を立てる
- 首を左右に振りながら親指の爪から目が離れないようにする
小脳のトレーニングがうまくできない場合は動体視力や小脳の機能が低下している可能性があり、三半規管のトレーニングが難しい場合は三半規管の機能機能が衰えているかもしれません。
平衡感覚を養ってめまいを改善するためにも、これら2つのトレーニングを朝晩毎日行って鍛えていきましょう。
寝返り体操をする
特に良性発作性頭位めまい症が疑われる場合には、朝晩に寝返り体操を取り入れるのも1つの方法です。
寝返り体操は、それぞれの動作を10秒ずつゆっくりと時間をかけて行います。
- 仰向け姿勢になる
- 頭だけを動かして右を向く
- 仰向け姿勢に戻る
- 頭だけを動かして左を向く
- 仰向け姿勢に戻る
この寝返り体操を行うことで、めまいが起こる頻度を下げることが期待できます。
生活習慣を整える
睡眠や運動などに注意して生活習慣を整えることで自律神経がバランスを取り戻し、めまいが起こりにくくなります。
また、毎日に楽しみを見つけてストレスを解消していくことも心や身体の健康に大切です。
一方で気を付けたいのが、塩分や水分、喫煙です。
塩分や水分を摂りすぎると身体がむくむためにメニエール病を発症しやすくなり、喫煙は血管を収縮させる作用があるため血流を悪くしてしまいます。
めまいを引き起こさないためにも、塩分・水分・喫煙には気を付けていきましょう。
ベタヒスチンメシル酸塩はメニエール病に対して即効性が高い薬
ベタヒスチンメシル酸塩は内耳にリンパ液が溜まってむくむことが原因となるメニエール病などのめまいなどを改善する内耳循環改善薬に分類される薬剤です。
ベタヒスチンメシル酸塩には即効性があり、服用後約30分~2時間で効果が出始めるとされています。
しかしながら、めまいの原因は様々で、場合によっては脳梗塞や脳血栓など一刻を争うような病気が隠れている可能性も考えられます。
少し休んでもめまいが続いたり、何度も繰り返したりする時には、できるだけ早く医療機関を受診してください。
診断の結果により大きな病気が関連していないことが分かれば、治療を受けながら日常生活を整え、めまいの改善が期待できる体操を取り入れていくとよいでしょう。
様々な方法を取り入れながら、めまいを治療していきましょう。