排石促進薬は、身体の中にできた尿路結石を排出する作用を持つ薬剤です。
中でもウロカルンは結石の排出を促すだけでなく、結石を溶かしたり大きくなるのを防いだりする効果があります。
今回は尿路結石の治療で使用される排石促進薬ウロカルンの効果や副作用・併用禁忌などを中心に、尿路結石で使用される他の薬剤も解説していきます。
併せて、ウロカルンが販売中止となった意外な理由も紹介していきます。
尿路結石とは
排石促進薬の話を始める前に、まずは尿路結石という病気について知っておきましょう。
ここでは尿路結石ができる原因や症状、治療法を紹介していきます。
尿路結石の原因と症状
尿は腎臓で作られ、尿管から膀胱、尿道を通って排泄されます。
これら尿の通り道を尿路と言い、尿路にできる結石を尿路結石と呼びます。
結石は尿に含まれるカルシウム・マグネシウム・尿酸などの成分が結晶化したものですが、結石ができる原因について詳しくは分かっていません。
しかしながら、水分摂取量が少なかったり汗をよくかいたりする方、糖分や塩分を頻?に摂取する方などは発症するリスクが高いとされています。
また、ステロイド薬を使用していたり、尿路に疾患を抱えていたりする場合も尿路結石になりやすいと言われています。
尿路結石の症状は血尿や激しい痛みが背中から脇腹、腹部にかけて起こり、数日から数十日と続きます。
尿路結石の中でも最も痛みが強いのが、細くなっている部分が3か所もある尿管にできる結石で、冷や汗や吐き気などが現れることもあるほどです。
これまで尿路結石は中年以降の男性に多い病気でしたが、近年女性や若年層の患者さんも増加しています。
生涯で尿路結石にかかる確率も半世紀前と比較するとおよそ2倍に増えており、中年以降の男性と閉経後の女性は特に注意が必要です。
尿路結石の検査と治療
尿路結石の治療は結石のサイズによって方法が異なるため、まずは検査をして結石のサイズや位置などを調べます。
触診・尿検査・血液検査・X線検査・超音波検査などの検査を行い、結石と身体の状態を確認します。
検査後は結石のサイズに合わせた治療に移ります。
5mm以下の結石であれば、薬物療法と水分摂取や運動などを生活療法で自然に結石が排出されるのを待ちます。
5㎜~1cmの結石では薬物療法と砕石治療のどちらを取り入れるか検討し、1cm以上の結石の場合には自然排出できる大きさになるまで砕く砕石治療を用います。
薬物療法で使用される薬剤には尿道の痙攣を抑制して痛みを緩和させる鎮痙薬、尿管を広げて結石を排出しやすくする排石促進薬などを使用していきます。
排石促進薬ウロカルンとは
尿路結石の薬物療法で使用される排石促進薬にウロカルンという製品があります。
ここではウロカルンの効果や副作用、販売中止となった理由について解説していきます。
ウロカルンの原料ウラジロガシとは
排石促進薬ウロカルンの原料であるウラジロガシは、日本の本州・四国・九州・沖縄を始めとする温帯地域に生息しているブナ科の植物です。
高さ20mになることもある常緑の高木であるウラジロガシは葉の裏面が白色をしていることから、このような名前で呼ばれています。
ウラジロガシは日本国内では古くから「体の石を追い出す薬」と言われており、お茶にして飲むことで身体の石に関する悩みの改善や予防を期待していました。
そして現在、ウラジロガシの葉や小枝の成分はウロカルンに配合され、排石促進薬として活用されています。
ウロカルンの効果
排石促進薬であるウロカルンには、尿路結石を溶かす作用や結石が大きくなるのを防ぐ作用があります。
さらにウロカルンが持つ抗炎症作用と利尿作用も後押しして、尿路結石の排出を促進させています。
また、砕石治療によって砕かれた結石におけるウロカルンの排石効果は早くて約4週間後とされていますが、2mm以下の結石では約8日、2~4mmで約12日、4mm以上であれば約22日で排出されたというデータもあります。
ウロカルンの用法用量
ウロカルンは通常1回2錠、1日3回を服用していきます。
排石促進効果のあるウロカルンですが、1969年に販売されたカプセル剤はサイズが大きく飲みにくかったため、小型化されて現在の錠剤に改良されました。
また、ウロカルンは結石が排出するのを目的として服用しますが、先天性の代謝異常があったり、高血圧や糖尿病など結石ができやすい持病があったりする場合には、再発予防のために服用を続けるケースもあります。
ウロカルンの副作用と併用禁忌
ウロカルンの副作用としてお腹の膨満感や不快感などの胃腸症状があります。
もし発疹や発赤、かゆみなどの皮膚症状などが現れた場合には、服用を中止してすぐに医師に相談しましょう。
ウロカルンの併用禁忌とされている薬剤は特にありませんが、他の薬剤を一緒に飲みたい時には念のため医師や薬剤師に相談してください。
ウロカルンが販売中止となった理由
ウロカルン錠は2024年2月に限定出荷となり、2024年6月にはウロカルン錠225mgPTP500錠が供給停止となりました。
このような事態の原因は、2023年の降水量不足によってウラジロガシが生育不良となったため、原料であるウラジロガシの葉を確保できなかったことにあります。
ウロカルン自体に不具合などの問題があったわけではありませんが、手に入りにくい状況が続き、いつ解除されるかも不明のため、代替薬への変更を検討する必要も出てくる可能性があります。
ウロカルン以外の排尿促進薬と尿路結石で使用される薬
ウロカルンの他にも尿路結石の治療で使われる薬剤は複数あります。
ここではウロカルンと同じような排石を促す作用のある薬剤や他の目的で使われる薬剤を紹介していきます。
排石促進薬
結石を体外へ排出する作用を持つ排石促進薬はウロカルンの他、猪苓湯、ラシックス、イソバイドなどの薬剤があり、ウロカルンの代替薬として使用されることもあります。
猪苓湯はカッセキ、タクシャ、チョレイなどの生薬を主成分とした利尿作用のある漢方薬です。
排尿困難や排尿痛、残尿感を改善する作用があるとされていますが、尿量を増やす働きによって排石を促す効果もあります。
ラシックスはフロセミドを主成分とするループ利尿薬ですが、尿路結石の排出促進効果もある薬剤です。
体内の過剰な水分を尿で排泄させる働きによって、尿管にある結石を外に排出させます。
ラシックスにはアナフィラキシーや血小板減少、低カリウム血症などの重大な副作用を引き起こしたり、相互作用によって影響を受ける薬剤が複数あったりするので、使用の際には医師に確認することが大切です。
イソバイドは血漿浸透圧を高めることで、脳圧降下作用や利尿作用、眼圧降下作用などを示す薬剤です。
脳腫瘍などが原因となる脳圧降下や緑内障の眼圧降下の治療に使われる他、尿路結石時の利尿作用を促進させて結石を体外に排出する効果もあります。
イソバイドもアナフィラキシーなどの重大な副作用や飲み合わせに問題がある薬剤があるので、不安がある時は医師に相談するようにしましょう。
鎮痙剤
鎮痙剤は尿管の痙攣を一時的に止めて痛みを和らげる薬剤で、芍薬甘草湯、ブスコパンやセスデンなど様々な種類があります。
芍薬甘草湯はシャクヤクとカンゾウが主成分の漢方薬で、急に起こる筋肉の痙攣を伴う痛みの治療に使用される薬剤です。
内臓の痙攣に対しても効果があることから、尿路結石の痛みの改善にも選択されることがあります。
一方、ブスコパンやセスデンは抗コリン薬といって副交感神経を活性化させるアセチルコリンの働きを抑えて、消化管の過剰な運動による痛みや痙攣などを抑える作用があります。
そのため、尿路結石だけでなく、胃炎や胃潰瘍、胆のう疾患などによる痙攣や痛みも抑える効果もあります。
ブスコパン、セスデンのどちらの薬剤も口渇や頭痛、心悸亢進などの副作用に加えて、他の抗コリン作用を持つ薬剤との併用には注意が必要とされています。
また、心疾患がある方や排尿障害がある方、麻痺性イレウスなどの病気を患っている方は使用禁止です。
さらに、痙攣剤は緑内障や前立腺肥大の方は禁止されているうえに、長期使用すると結石の排出が遅れるため注意が必要とされています。
結石予防薬
尿路結石の再発を防止するために結石予防薬を飲み続けるケースもあります。
結石予防薬は様々な種類があり、作用が異なるのが特徴です。
高尿酸血症治療薬であるフェブリクやザイロリックは、結石の原因となる血中の尿酸を下げる効果があり、シスチン尿症治療薬のチオラは腎結石の原因となるシスチンやリジンなどが尿中に排出されるのを抑制する効果を持つ薬剤です。
また、ウラリットを始めとする尿pH改善薬は尿をアルカリ性に傾けて結石をできにくくしたり、溶かしたりする作用があります。
他にもシュウ酸結石を予防する酸化マグネシウムのマグミット、尿量を増加させるサイアザイド系利尿薬のフルイトランなどを選択するケースもあります。
排石促進薬ウロカルンで早めに尿路結石を治療しよう
尿路結石は尿の通り道である腎臓から尿道までにできる結石のことで、強い痛みを伴うのが特徴です。
尿路結石の治療方法は結石のサイズによって異なりますが、多くの場合で選択されるのが薬剤を使用した薬物療法です。
尿路結石の治療で使用される排石促進薬のウロカルンはウラジロガシという植物の葉を主原料としており、結石の排出を促す作用の他、結石が大きくなるのを防いだり、溶かしたりする効果もあります。
また、尿路結石の治療にはウロカルン以外の排石促進薬や、痛みを抑える鎮痛剤、結石の再発を抑制する結石予防薬などもあります。
結石の疑いがある時には、症状が悪化する前に早めに治療を開始しましょう。