「BCGってどんなワクチン?」
「結核を発症するとどんな症状が出るの?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、BCGの特徴や接種時期、副反応について徹底解説。
BCGが予防効果を持つ結核についても、発症様式や症状などを詳しく紹介します。
本記事を読めば、BCGや結核について理解を深められます。
興味がある人はぜひ最後までご覧ください。
BCGは結核に対するワクチン
BCGとは、結核に対する予防効果を持つワクチンです。
以下の観点から解説していきます。
- 特徴
- 接種時期
- 副反応
- コッホ現象
それぞれについて見ていきましょう。
①特徴
ワクチンは、接種する病原体の違いから以下の3タイプに分類されます。
- 弱毒生ワクチン
- 不活化ワクチン
- トキソイド
以上のうち、BCGは弱毒生ワクチンに該当します。
弱毒生ワクチンとは、様々な方法で病原体の病原性を弱めたものです。
BCGでは、「ウシ型結核菌」という病原体を弱毒化しています。
病原体を殺菌・不活化した不活化ワクチンや、細菌の毒素を無毒化したトキソイドとは異なり、弱毒生ワクチンには感染性が残っています。
弱毒生ワクチンのメリットは、他のワクチンと比べて免疫が長期間継続する点です。
ヒトが病原体に対して獲得する免疫には、「液性免疫」と「細胞性免疫」の2種類があり、弱毒生ワクチンでは両方を獲得できます。
BCGの場合、結核の発症を70~80%予防する効果が10~15年持続します。
(※液性免疫…抗体が中心となる免疫反応/細胞性免疫…リンパ球の一種であるT細胞が中心となる免疫反応)
弱毒生ワクチンのデメリットは、他のワクチンと比べて副反応を起こしやすい点です。
また、免疫不全患者や妊婦は接種を受けられません。
BCGの場合、結核の既往がある人も禁忌となります。
そのため、接種時には結核に関連した症状の有無や、家族内に結核患者がいるかどうかを確認されます。
②接種時期
予防接種は、予防接種法に定められている勧奨接種と、受ける側の任意で行われる任意接種に分類されます。
勧奨接種はさらに、接種時期が決められている定期接種と、流行防止を目的として緊急的に実施される臨時接種に分けられます。
このうち、BCGは定期接種に該当しており、生後1歳に至るまでに1回接種する必要があります。
なお、標準的接種期間は生後5~8ヵ月とされているので、特に理由がなければこの期間に接種すると良いでしょう。
③副反応
副反応とは、ワクチンの接種を原因として発生した、健康上の何らかの問題のことです。
つまり、ワクチンとの因果関係が認められているもののみが、副反応に該当するのです。
なお、似ている言葉に「副作用」がありますが、こちらは一般的にワクチン以外の医薬品に対して用いられています。
BCGの接種による、主な副反応は以下の通りです。
症状 | 説明 |
---|---|
接種部位の発赤・化膿 | 接種後10~20日頃から発赤・腫脹や化膿がみられ、1ヵ月頃にピークを迎える(正常な反応) |
リンパ節腫脹 | リンパ節が腫れる(腋窩に多い) |
皮膚結核様病変 | 皮膚結核(詳細は後述)のような症状が生じる |
全身性BCG感染症 | 接種した病原体が全身に広がり、粟粒結核(詳細は後述)のような病変を形成する(免疫不全患者に多い) |
アナフィラキシー反応 | 生命を脅かすほどの、急激なアレルギー反応 (めまい、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下、失神など) |
④コッホ現象
先ほどの見出しで、接種部位の発赤・化膿という副反応を紹介しました。
記載の通り、接種後10~20日頃からみられた場合は正常ですが、同様の反応が接種後1~7日の間にみられた場合は異常です。
この異常はコッホ現象と呼ばれており、結核に既に感染している可能性が考えられます。
そのため、速やかに「ツベルクリン反応検査(ツ反)」を受けなければなりません。
結核とは?
ここからは、結核がどのような疾患であるのかについて、以下の観点から解説していきます。
- 結核菌について
- 感染経路
- 発症様式
- 症状
- 肺外結核
- 粟粒結核
- 治療と副作用
それぞれについて見ていきましょう。
①結核菌について
多くの細菌は、「グラム陽性菌」or「グラム陰性菌」のいずれかに該当します。
しかし、結核を引き起こす病原体である結核菌が分類されるのは、「抗酸菌」という特殊な細菌群です。
抗酸菌は、一般的な細菌にはない特徴をいくつか持っています。
代表例は以下の通りです。
- 特殊な細胞壁(細菌を取り囲む壁)を持つ
- マクロファージ(免疫に関わる細胞)に貪食(細胞内に取り込む)されても、内部で生き延び増殖する
- 酸素の存在下でのみ増殖する
以上のような性質を有しているため、結核菌に対しては一般的な抗菌薬が効果を発揮しないのです。
②感染経路
病原体の感染方法には、以下のように様々な種類があります。
感染経路 | 説明 |
---|---|
飛沫感染 | 病原体を含む飛沫を吸い込んで感染 |
空気感染(飛沫核感染) | 空気中に漂う飛沫核(飛沫の水分が蒸発したもの)により感染 |
接触感染 | 感染源に接触して感染(経皮感染、経口感染、性行為感染など) |
媒介物感染 | 汚染物を介して感染(食中毒、医療従事者の針刺し事故など) |
母子感染 | 妊娠・分娩・授乳を通じて、母体から胎児・新生児に感染 |
以上のうち、結核菌は空気感染により感染します。
③発症様式
結核において、「感染」と「発症」は区別して考えなければなりません。
- 感染…病原体が体内に侵入し増殖すること
- 発症…病原体により何らかの症状が生じること
結核菌に曝露した人を100人とすると、結核を発症する人数は以下の通りです。
状態 | 定義 | 補足事項 | 人数 |
---|---|---|---|
初感染 | 結核菌が肺に定着する | 肺に「初期変化群」と呼ばれる異常を形成する | 30人 |
一次結核症 | 初感染に続き発症する | 結核菌の吸入から6ヵ月~2年で発症しやすい | 1.5人 |
二次結核症 | 一次結核症を発症せず自然治癒した後、免疫能低下時に発症する | 数年~数十年後に起こる リスク因子はHIV感染、免疫抑制剤の使用、血液透析、糖尿病など | 1.5人 |
一方、結核菌に曝露した100人のうち70人は感染しません。
また、初感染したが一次結核症を発症しなかった28.5人のうち、27人は生涯発症しません。
④症状
一次結核症では、主に以下のような症状がみられます。
- 発熱
- 2週間以上続く咳
- 痰
上記の症状に加えて、二次結核症では以下のような症状がみられます。
- 盗汗(寝汗)
- 全身倦怠感
- 体重減少
初期には風邪と似ているものの、症状が比較的長期間続き、全身症状も現れる点が特徴です。
⑤肺外結核
肺で増殖した結核菌が、病巣からリンパ管を経由して血流に入り、全身の様々な臓器に病巣を形成することがあります。
このように、結核菌が肺外に進展して病変を形成したものを、肺外結核と言います。
具体的には以下の通りです。
疾患名 | 説明 |
---|---|
結核性髄膜炎 | 2~4週間の経過で、発熱・頭痛・嘔吐・意識障害などが生じる |
皮膚結核 | 尋常性狼瘡(赤褐色や黄褐色の小結節、有棘細胞癌の発生母地となる)・皮膚腺病(無痛性の結節として発症し、増大して膿瘍を形成する)などが生じる |
リンパ節結核 | 頸部リンパ節によく発生する 腫れているものの、痛みや熱感に乏しい |
結核性胸膜炎 | 肺外結核の中で最多 発熱や胸痛などが生じる |
尿路結核 | 血管を通って腎臓へ到達した後、尿路を通って尿管・膀胱へと進展する 頻尿などが生じる |
骨・関節結核 | 骨では脊椎、関節では股関節・膝関節によく起こる 痛みがあるものの程度は低い |
腸結核 | 十二指腸から大腸まで病変を形成し得る 腹痛・下痢・血便などが生じる |
性器結核 | 男性では精巣や前立腺が侵される 女性では卵管や子宮内膜が侵され、不妊・下腹部痛・月経異常などの原因となる |
⑥粟粒結核
粟粒結核とは、大量の結核菌が血流に乗って全身に広がり、2つ以上の臓器に粟粒大(2~3mm)の結節を多数形成する病態です。
小児や高齢者、免疫不全患者によく起こります。
粟粒結核でみられる症状は主に以下の通りです。
- 発熱
- 頭痛
- 倦怠感
- 食欲不振
- 咳
- 息切れ
- 痰
- 意識障害
胸部レントゲンで異常が見つからない場合が少なくないため、診断が遅れるケースもしばしばある病態です。
⑦治療と副作用
結核菌に対しては一般的な抗菌薬が無効であるため、抗結核薬が使用されます。
具体的には、以下の薬剤による4剤併用療法が行われます。
- リファンピシン(RFP)
- イソニアジド(INH)
- ピラジナミド(PZA)
- エタンブトール(EB)orストレプトマイシン(SM)
ただし、80歳以上の患者さんや重症肝障害の患者さんに対してはピラジナミドを投与できないため、その他の3剤で治療を行います。
抗結核薬の使用により、以下のような副作用が生じる場合があります。
抗結核薬 | 主な副作用 |
---|---|
リファンピシン | 肝機能障害 |
イソニアジド | 肝機能障害、末梢神経障害 |
ピラジナミド | 肝機能障害、高尿酸血症 |
エタンブトール | 視神経障害 |
ストレプトマイシン | 内耳神経障害、腎障害 |
まとめ:BCGで結核を予防しよう
BCGとは、結核に対して予防効果を持つ弱毒生ワクチンです。
生後1歳に至るまでに1回接種することで、結核の発症を70~80%予防する効果が10~15年持続します。
抗酸菌に分類される結核菌は空気感染により感染し、発熱や2週間以上続く咳の他、全身倦怠感や体重減少などを引き起こします。
また、全身の各臓器に広がって肺外結核や粟粒結核を発症する恐れも。
BCGを忘れずに定期接種し、結核の発症を予防しましょう。