利尿薬フロセミドの効果や副作用は？ダイエット効果の真相と利尿薬の種類

適用部位

心臓

悩みや症状

血圧

薬効分類

利尿薬

利尿薬フロセミドとは

フロセミドはループ利尿薬に分類され、主に尿の量を増やす作用を持つ薬剤です。
しかしながら、利尿薬は尿量を増やす以外の効果も持っており、その効果は種類によって異なることはご存知でしょうか。

ここではまず、フロセミドの作用機序と効果、副作用について詳しく解説していきます。

利尿薬とは

利尿薬は尿の量を増やし、体内の不要な水分を排出する働きを促す作用を持つ薬剤です。

例えば、心不全などが原因となり心臓のポンプ機能が低下すると全身の血流が悪化して腎臓に運ばれる血液の量が減少し、尿が作られにくくなります。
尿による水分の排出が減ることによって体内の水分量が増加するため、心臓の負担はさらに重くなるという悪循環を繰り返し症状は悪化していきます。

このような時に尿の排出を促して体内の不要な水分を排出し、心臓への負担を軽減するために利尿薬は使用されます。
また、尿とともに塩分も排出されることから、利尿薬は高血圧の患者さんにも使用されています。

これら利尿薬は作用機序により「ループ利尿薬」「サイアザイド系利尿薬」「カリウム保持性利尿薬」「バソプレシンV2受容体阻害薬」などに分類されており、利尿作用や降圧作用の強さに違いがあります。

利尿薬フロセミドの効果

フロセミドは、利尿作用が強く、即効性に優れているループ利尿薬という種類に属する利尿薬です。
ループ利尿薬は、腎臓の尿細管にあるヘンレループと呼ばれる尿に含まれる水分を血管内に再吸収する器官の働きを抑制することで、尿量を増やして体内の余分な水分を排出していきます。

フロセミドの利尿作用は、むくみの改善や降圧、心臓への負担軽減などの効果があることから、高血圧症やうっ血性心不全の治療に使用されることがあります。
さらに月経前緊張症や尿路結石排出促進にも適応があります。

利尿薬フロセミドの剤型と用法用量

ループ利尿薬のフロセミドを主成分とする薬剤には「フロセミド顆粒4％EMEC」などの散剤や「フロセミド錠10mgNP」を始めとする錠剤に加え、「ラシックス」などの注射薬などの剤型があります。

例えば、フロセミド錠10mgNPは1日1回40～80mgを毎日、または1日おきに服用していきます。
ただし、腎機能不全の時にはさらに多くの量を使用するケースがあることも覚えておくとよいでしょう。

利尿薬フロセミドの副作用・禁忌

利尿薬フロセミドは、低カリウム血症や低ナトリウム血症、白血球減少、好酸球増加、溶血性貧血などの副作用が起きる可能性があります。

さらに重大な副作用としてアナフィラキシーショックや間質性肺炎、間質性腎炎、難聴なども報告されているので注意してください。
使用中に倦怠感や発熱、血圧低下、尿量減少などの症状が現れた時には、重大な副作用が起きている可能性があるので速やかに医療機関を受診しましょう。

また、フロセミドは妊娠初期の安全性が確認されていないことから妊婦は相対禁止です。
新生児は動脈管開存のリスクや電解質のバランスが崩れることがあり、高齢者も低ナトリウム血症や低カリウム血症を引き起こす可能性が高いことから慎重投与が必要とされています。

そのため、服用の必要があるとされた時には少量から使用を開始し、全身症状を確認しながら慎重に治療していく方法が取られるケースが多いです。

他にも腎機能障害がある患者さんは血中濃度が上昇する恐れが、肝機能障害がある患者さんは肝性脳症を引き起こす可能性があるため、体調に注意しながら服用していきましょう。

フロセミドとの飲み合わせでは、低ナトリウム血症を引き起こす可能性があることから、デスモプレシン酢酸塩水和物との併用が禁忌となっています。
また、降圧薬やACE阻害剤、ジギタリス製剤を始めとする様々な薬剤に影響を与えるため、他の薬剤を服用する必要がある時には必ず医師や薬剤師に相談してください。

利尿薬フロセミドのダイエット効果の真相/h2>

高血圧や心不全の治療で使用される利尿薬フロセミドが、本来とは異なるダイエット目的で使用されていることが一部のSNSで話題となっています。

SNSの投稿によると「フロセミドを服用すると体内の水分が減って顔や身体がスッキリする」という噂が流れているようですが、医薬品である利尿薬を自己判断で使用することは重大な副作用を引き起こすリスクも高まり、非常に危険な行為と言えます。

体内の水分が排出されることで一時的には体重が減ったり、スッキリしたように感じたりするかもしれませんが、水分を取れば元通りになるため?せる効果はありません。
本来の目的と違う形で医薬品を使用することは大変危険なので、フロセミドをダイエット目的で絶対に使用しないようにしてください。

フロセミド以外の利尿薬の種類

これまでフロセミドを中心に解説してきましたが、フロセミド以外にも作用機序や特徴が異なる様々な利尿薬が存在しています。
ここではフロセミド以外の利尿薬について、種類ごとに分類して紹介していきます。

ループ利尿薬

フロセミドと同じループ利尿薬にも「アゾセミド」や「トラセミド」といった主成分が異なる薬剤があります。

他の種類の利尿薬と比較して利尿作用が強いループ利尿薬の中でも、効果がマイルドで長時間効くとされているのがアゾセミド、即効性があるのがフロセミド、最も利尿作用が強いのがトラセミドで、トラセミドの利尿作用はフロセミドの10～30倍とも言われるほどです。

アゾセミドの先発薬はダイアード錠60mgとダイアード錠30mgで、ジェネリック医薬品にはアゾセミド錠30mg「JG」やアゾセミド錠60mg「JG」などの錠剤があります。
トラセミドの先発薬にはルプラック錠4mgとルプラック錠8mgがあり、ジェネリック医薬品としてトラセミド錠4mg「KO」やトラセミド錠8mg「KO」などが販売されています。

サイアザイド系利尿薬

主に高血圧の治療で使用されることの多いサイアザイド系利尿薬は、サイアザイド系利尿薬とサイアザイド類似利尿薬にさらに分類され、化学構造式の中のサイアザイド骨格の有無によって分けられています。

サイアザイド系利尿薬よりもサイアザイド類似利尿薬の方が血圧を下げる効果があるというデータや心臓病や脳卒中を予防するエビデンスがあるため、サイアザイド類似利尿薬を優先して選択する医師もいます。

サイアザイドは腎臓の遠位尿細管に作用し、ナトリウムの再吸収を阻害して利尿作用を促す働きを持つ成分です。
再吸収を阻害してナトリウムを排出するため、塩分摂取の影響で高血圧になっている方に効果が出やすいと考えられています。

また、サイアザイド類似利尿薬よりもカリウムの排出作用は弱いことから、低カリウム血症の副作用リスクも比較的少ないとされています。

国内で処方できるサイアザイド類似利尿薬はインダパミドを主成分としたナトリックスで、ナトリックス錠1とナトリックス錠2という製品があります。
インダパミドに換算して通常1日1回2mgを朝食後に服用するのが基準ですが、副作用の懸念から少量から使用して様子を確認するケースもあります。

また、急性腎不全や無尿の方、妊婦は使用禁止とされ、高齢者には慎重投与が必要です。

カリウム保持性利尿薬

カリウム保持性利尿薬はカリウムの排出を抑える特徴がある利尿薬ですが、他の種類よりも利尿作用は弱いのが特徴です。
また、副腎皮質ホルモンのアルドステロンの尿細管における作用を抑制してナトリウムと水分の再吸収を阻害する効果を持つため、ループ利尿薬と併用されることもあります。

カリウム保持性利尿薬にはアルダクトンAというスピロノラクトンを主成分とした薬剤や、トリアムテレンを主成分としたトリテレンという利尿薬が販売されています。
アルダクトンAは原発性アルドステロン症の治療にも使用されることもあります。

バソプレシンV2受容体阻害薬

バソプレシンV2受容体阻害薬は、これまで解説した利尿薬とは作用が異なる特徴を持ちます。
抗利尿ホルモンのバソプレシンがバソプレシンV2受容体に作用して血管内に水分を再吸収するのを、バソプレシンV2受容体に拮抗して阻害することで利尿作用を示すのがバソプレシンV2受容体阻害薬です。

低カリウム血症などのリスクが少ない一方で、バソプレシンV2受容体阻害薬は利尿作用が強いことから、脱水症状や高ナトリウム血症などを引き起こす恐れがあるため注意が必要とされています。
他にも吐き気や下痢などの消化器症状、頭痛やめまいなどの神経症状の副作用を引き起こすこともあります。

利尿薬フロセミドは利尿作用が強い薬

フロセミドはループ利尿薬に分類され、他の種類と比較しても強い利尿作用を持つ薬剤です。
排尿を促し体内の余分な水分を排出する作用により、血圧を下げたりむくみを改善したりする効果がある他、心臓への負担を軽減する効果もあることから心不全の治療に使用されることもあります。

副作用には低カリウム血症や低ナトリウム血症、白血球減少、好酸球増加、溶血性貧血などが現れる恐れがあるため、高齢者が使用する際には特に注意が必要と言えます。

一部のSNSで「利尿薬であるフロセミドにダイエット効果がある」という噂が流れた時期がありましたが、フロセミドを本来の目的と違う使い方をすることは副作用のリスクを高めるため大変危険です。
医薬品は必ず用法用量を守って正しく使うようにしましょう。