日常生活の中で、自分を表現する手段としてのヘアスタイル。
どんな髪の毛型を選ぶかは個性を反映する重要ポイントですが、ヘアスタイルが髪の毛や頭皮に与える影響について、あまり深く考えたことがない人も多いのではないでしょうか。
近年、ジョンズ・ホプキンス大学の研究により、特定のヘアスタイルが「牽引性脱毛症」と呼ばれる状態を引き起こす可能性があることが明らかになりました。
この研究は、19の関連研究を分析し、ヘアスタイルによる毛包へのダメージがどのように起きるのかを詳しく探ったものです。
以下では、この研究結果を元に、リスクの高いヘアスタイルとその対策について掘り下げていきます。
牽引性脱毛症とは?
まずは牽引性脱毛症について知っておきましょう。
この症状は、毛根が長期間にわたり引っ張られることでダメージを受け、最終的に毛包が弱まり、髪の毛が抜けてしまう状態を指します。
特に黒人女性に多いとされていますが、性別や人種を問わず誰にでも起こり得る問題です。
この現象が起こる原因は、一方向に持続的な張力がかかることにあります。
この張力が毛包にダメージを与え、時間の経過とともに抜け毛が進行してしまうのです。
牽引性脱毛症は一時的な抜け毛とは異なり、毛包そのものが弱まることで慢性的な脱毛を引き起こす点が特徴です。
初期段階では、髪の毛の生え際が薄くなる程度で済むことがありますが、進行すると完全に毛根が機能を失い、永久的に髪の毛が生えなくなることもあります。
牽引性脱毛症の診断と治療
牽引性脱毛症の診断は、主に症状とスタイリング習慣の聞き取りから行われます。
早く発見できれば、毛根に大きなダメージが及ぶ前に改善できます。
まずは、以下のような初期症状がないか確認してみましょう。
- 生え際や頭頂部の薄毛
- 頭皮の炎症や赤み
治療法としては、牽引性脱毛症が進行していない場合、スタイリング習慣を見直すだけで症状が改善することがあります。
さらに、以下の治療が有効とされています。
- ステロイド外用薬
- 炎症を抑えるための局所治療
- 毛根を活性化させる育毛剤
ジョンズ・ホプキンス大学が定めるヘアスタイルのリスク
研究では、一般的なヘアスタイルやスタイリングの手法をリスクの程度に応じて低リスク、中リスク、高リスクの3つに分類したそうです。
以下で、リスク別にヘアスタイルを紹介していきます。
牽引性脱毛症のリスクが高いヘアスタイル
高リスクのヘアスタイルには、以下のようなものが含まれます。
おしゃれなヘアスタイルもあるのですが、脱毛症が気になるなら避けたいところです。
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きついポニーテールやおだんご
髪の毛を引っ張り続けることで、頭皮や毛根に過剰な負担がかかります。 -
編み込み、ドレッドヘア、ウィーブ、エクステンション
一方向に張力がかかり続けるスタイルで、毛包にダメージを与えやすいです。
化学的な処理が施された髪の毛でこれらのヘアスタイルにすると、髪の毛の切れや抜け毛が増加するリスクが高まります。 -
化学的にストレートにした髪の毛
化学薬品によって髪の毛の内部構造が変化し、切れやすくなる傾向があります。
その状態でさらにエクステンションなどを加えると、ダメージが蓄積していきます。 -
重みのあるエクステ
髪の毛に接着するタイプのエクステは、取り外す際にも髪の毛を傷める原因となる場合があります。
牽引性脱毛症のリスクが中くらいのヘアスタイル
中リスクのヘアスタイルは高リスクほどの影響はないものの、依然として注意が必要です。
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熱によるスタイリングが必要なヘアスタイル全般
ヘアアイロンやドライヤーを頻繁に使用することで毛幹が弱まり、その後のスタイリングによって脱毛が進行する可能性があります。 -
化学処理を施したパーマやウィッグ
クリップや接着剤で固定する際に使用される化学物質が毛根に負担をかけることがあります。
牽引性脱毛症のリスクが低いヘアスタイル
一方、リスクが低いとされるヘアスタイルもあります。
脱毛症が気になる場合は、以下のヘアスタイルをおすすめします。
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髪の毛を引っ張らないゆるいスタイル
ゆるいお団子ヘアや髪の毛を垂らしたスタイルは、毛包に過度な張力を与えません。 -
ナチュラルな髪の毛型
髪の毛を自然な形に保つことで、余計なダメージを防げます。
髪の毛と頭皮を守るための具体的な対策
牽引性脱毛症のリスクを軽減するためには、以下のような方法を取り入れることが推奨されています。
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定期的なスタイルチェンジ
毎日アップスタイルを続けるのではなく、髪の毛型を変えることで毛包の負担を分散させます。 -
適切なケア
編み込みやエクステンションは6~8週間ごとに外し、毛包が回復できる時間を作りましょう。 -
髪の毛へのストレスを避ける
スタイリング製品やアイロンの使用頻度を減らし、髪の毛への熱や化学的な負荷を軽減します。
牽引性脱毛症を目立たなくする方法
牽引性脱毛症が見た目に影響を及ぼす場合、自信を失ってしまうことも少なくありません。
ですが、適切な対策を取ることで、脱毛部分を目立たなくし、自分らしいスタイルを維持することができます。
ここからは、牽引性脱毛症を隠すための工夫をご紹介します。
日常生活で簡単にできることなので、良かったら試してみてください。
ヘアスタイルの工夫
まずは、ボリューム感のあるヘアスタイルを試してみてはいかがでしょう。
脱毛部分を目立たなくするには、髪の毛全体のボリュームを増やすスタイルがなじみます。
具体的には、以下のヘアスタイルがおすすめです。
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レイヤーカット
髪の毛に段をつけることで自然なボリュームが生まれます。 -
カールやウェーブ
パーマやヘアアイロンを使って髪の毛に動きをつけることで、薄毛部分をカモフラージュできます。
分け目を変える
分け目を固定していると、その部分の地肌が目立ちやすくなります。
定期的に分け目を変えることで、薄毛が目立ちにくくなるだけでなく、毛根への負担も軽減されます。
ヘアアクセサリーを活用する
ヘアアクセサリーを活用すれば、脱毛症を隠せるだけでなく、デザイン性の高いおしゃれも楽しめます。
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ヘアバンドやターバン
ヘアバンドやターバンは、額や頭頂部の脱毛部分を隠すのにおすすめです。
カラフルなデザインを選ぶと、ファッションアイテムとしても楽しむことができます。 -
スカーフや帽子
スカーフを使ったヘアアレンジや帽子は、薄毛部分を完全に隠せる便利なアイテムです。
夏場には紫外線対策、冬場には防寒対策にもなり、一石二鳥です。 -
ヘアクリップやバレッタ
髪の毛をまとめる際に使用するクリップやバレッタを工夫することで、薄毛部分を自然に隠すことができます。
ヘアケア製品の利用
ヘアケア製品も、うまく使えば脱毛部分が目立たなくなります。
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カバーリングスプレー
頭皮に色をつけるスプレーは、簡単に地肌を目立たなくする手段として人気です。
髪の毛色に合わせたカラーを選ぶことで、自然な仕上がりが期待できます。 -
ボリュームアップシャンプーとトリートメント
髪の毛をふんわりと仕上げる製品を使用することで、全体的な髪の毛のボリュームを増し、脱毛部分を目立たなくできます。 -
ファイバーパウダー
脱毛部分に直接振りかけることで、髪の毛があるように見せるアイテムです。
即効性があり、外出時など急ぎの場面で便利です。
ウィッグやエクステンションの活用
少しコツがいりますが、ウィッグやエクステなら派手なおしゃれもできます。
普段自分がしないヘアスタイルをあえて選ぶのも楽しいでしょう。
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部分ウィッグ
脱毛部分だけをカバーする部分ウィッグは、自然な見た目を維持しつつ薄毛を隠す方法としておすすめです。
装着が簡単で、日常生活でも使いやすいです。 -
フルウィッグ
脱毛の範囲が広い場合は、フルウィッグが最適です。
最近では軽量で通気性の良い製品も多く、長時間の着用でも快適さを保てます。
ただし、髪の毛を引っ張るような装着方法は避けましょう。 -
エクステンション
髪の毛にエクステを加えることで、ボリュームを増やし、脱毛部分を隠すことができます。
ただし、エクステの重みがさらに毛根に負担をかける可能性があるため、使用期間や装着方法には注意が必要です。
日常生活での注意点
では、牽引性脱毛症の症状を和らげるために、髪の毛に直接働きかける以外の方法も知っておきましょう。
日頃からできることには、何があるのでしょうか。
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ストレス管理
ストレスは脱毛を悪化させる要因の一つです。
リラックスできる時間を確保し、適度な運動や趣味に取り組むことで、心身の健康を保ちましょう。 -
バランスの良い食事
健康的な髪の毛を維持するには、たんぱく質やビタミン、ミネラルを十分に摂取することが大切です。 -
頭皮ケア
頭皮のマッサージや保湿ケアを行うことで血行を促進し、髪の毛の健康を支える環境を整えられます。
まとめ
ヘアスタイルを楽しむことは大切ですが、髪の毛と頭皮の健康も同時に考える必要があります。
日常的なケアと正しいスタイリングを心がけることで、髪の毛の健康を守りながら個性を表現していくことがポイントです。
髪の毛が少なくなってしまってはヘアスタイルも楽しめないので、ダメージを与えないように注意しましょう。
大切なのは、自分に合ったスタイルやケア方法を見つけ、無理なく実践することです。
髪の毛の見た目を工夫することで、外見だけでなく内面的な自信も取り戻せるはずです。
この記事を参考に、自分の髪の毛に優しいヘアスタイルを探してみてはいかがでしょうか。