「腸活」という言葉が指し示すように、私たちの腸は健康と深い結びつきがあることが分かってきました。
そして、腸内環境に大きな影響を与えるのが、善玉菌を始めとする腸内細菌です。
今回は腸内の環境を整える乳酸菌製剤の種類と特徴について解説していきます。
「毎日飲み続けても大丈夫なの?」「副作用はあるの?」など乳酸菌製剤に対する疑問を解消したい方はぜひご覧ください。
腸と腸内細菌
「乳酸菌製剤は腸に良い」という話を耳にすることがあっても、その理由まで理解している方は少ないかもしれません。
ここではまず腸と腸内細菌の関係について紹介していきます。
腸の働き
十二指腸から肛門までを腸と言い、大きく小腸と大腸に分類されます。
小腸が食べ物を消化・吸収するのに対し、大腸は水分やミネラルを吸収して便を作る働きがあります。
小腸に比べて大腸は腸内細菌の影響を受けやすく、悪玉菌が食べ物のカスを腐敗させたり、アンモニアなどを作り出したりして、大腸がんや潰瘍性大腸炎、大腸ポリープなどの病気を引き起こします。
さらに大腸は脳の機能や肌などにも関係しているため、大腸を良い環境に保つことが健康寿命を延ばすことにも繋がると考えられています。
腸内細菌とは
人間の腸内には約1000種類の細菌が生息しており、その数は100兆個とも言われるほどです。
細菌によって身体に良い影響を与えたり、反対に悪い影響を与えて病気を引き起こしたりするため、できるだけ腸に悪い影響を与える菌を増やさないことが大切です。
腸内には「善玉菌」と呼ばれる腸に良い影響を与える細菌と、「悪玉菌」と呼ばれる悪い影響を与える細菌の他に、そのどちらにでもなり得る「日和見菌」が存在しています。
これら腸内細菌のバランスは、善玉菌20%・悪玉菌10%・日和見菌70%が理想の割合と言われています。
善玉菌
善玉菌には乳酸菌やビフィズス菌などがおり、消化・吸収を助けたり、免疫力を活性化させたりする働きをして、私たちの健康維持や若々しく過ごすために力を貸してくれています。
腸内が無菌状態だった胎児は、生まれた後に母乳などを飲むことでビフィズス菌が増殖していきます。
赤ちゃんの便が臭くないのは善玉菌であるビフィズス菌が優位であるからと言えます。
悪玉菌
悪玉菌にはブドウ菌やウェルシュ菌、有毒株の大腸菌などがおり、腸内を腐敗させたり、ガスを発生させたりします。
さらには細菌毒素や発がん物質を作り出すとされ、様々な病気を引き起こす原因とも言えます。
悪玉菌は年を取るにつれて増える傾向にあり、特に若い頃には少なかったウェルシュ菌などが多くなってくるというデータがあります。
腸内を悪玉菌に支配されないためには、できるだけ善玉菌を増やして腸内環境を良好に保つことが大切と言えるでしょう。
日和見菌
普段、日和見菌は腸内にいても問題を起こさないのですが、体調を崩したり、悪玉菌が増殖したりすると、悪玉菌の味方となって日和見菌感染症を発症させるなど、腸に悪影響を与えることがあります。
そのため、腸内環境を良好に保つためにも、できるだけ善玉菌優位の状況を作り出すことが大切と言えます。
日和見菌の代表的な菌には、バクテロイデスや無毒株の大腸菌、連鎖球菌などがいます。
腸内細菌と乳酸菌製剤
善玉菌優位の良好な腸内環境を作り出すためには、バランスの取れた食事や休息、適度な運動などを生活に取り入れていくことが重要ですが、それに加えて乳酸菌製剤を使用して積極的に乳酸菌を取り入れていくとより効果的です。
乳酸菌製剤は乳酸菌などの腸内で善玉菌となる生菌が配合された薬剤です。
乳酸菌製剤には様々な種類があり、その作用も配合された菌ごとに少しずつ異なります。
また、腸内細菌は個人ごとにパターンの違いがあり、薬剤の種類によって効きやすさの差があるとも言われています。
乳酸菌製剤は毎日飲み続けても大丈夫?
薬剤には副作用や耐性などの問題があるため、長期的に使用することに不安を感じる方もいるのではないでしょうか。
ここでは乳酸菌製剤の長期服用や副作用に関して解説していきます。
乳酸菌製剤は毎日飲むと効果が持続する
乳酸菌製剤を毎日継続して飲むことは、腸内を善玉菌優位の良い状態を保つために有効な手段です。
乳酸菌製剤は長期間使用しても一般的には安全とされていることから、腸内に乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を定着させるためにも、毎日服用を続けるとよいでしょう。
ただし、飲み続けていても腸内が良くなるような兆しがなかったり、逆に体調が悪くなってしまったりするようなことがあれば、服用を中止して医師や薬剤師に相談するようにしてください。
乳酸菌製剤の副作用
乳酸菌製剤は重篤な副作用を引き起こすリスクが低い安全性の高い薬剤と言われていますが、腹痛や吐き気、膨満感などの消化器症状、発疹やかゆみなどの皮膚症状が報告されています。
安全性が高いと言っても乳酸菌製剤は薬剤の一種ですので、大量に摂取するようなことはやめ、用法用量を守ることが大切です。
また、乳酸菌製剤の副作用だと思っていた症状は、実は別の病気が隠れていることが原因である可能性もあります。
効果を感じにくかったり、違和感があったりする時には医療機関を受診するようにしましょう。
乳酸菌製剤を毎日飲み続けるメリット
腸内環境を改善したいのであれば、乳酸菌製剤は毎日飲み続ける方が効果を得られやすいとされています。
一体、乳酸菌製剤を毎日飲み続けるとどんなメリットがあるのでしょうか。
ここでは主なメリットを3つ紹介していきます。
便通を良くする
乳酸菌製剤を服用することで腸内が酸性になって善玉菌が増えると、腸の運動を活発化させて大腸に刺激を与えます。
運動が活発化すると腸が伸縮を繰り返し、便を肛門へ押し出し便通を促します。
逆に便が腸内に留まる状態が長くなってしまうと悪玉菌が増えて、腸の動きは低下してしまいます。
腸の動きが低下すれば、さらに便は出にくくなるという悪循環を繰り返して、便秘は慢性化していきます。
下剤を使って便を押し出す方法もありますが、下剤には即効性がある反面、癖になりやすいものもあるので注意が必要です。
下剤に頼らない排便を目指すのであれば、乳酸菌製剤を使用して腸内環境を整えることが大切と言えるでしょう。
免疫力を高める
ウイルスや細菌などの病原体から身体を守る免疫機能を司る免疫細胞の7割は腸に集まっており、腸内環境の良し悪しが免疫に大きな影響を与えています。
腸壁のパイエル板の中にあるT細胞やB細胞、樹状細胞などの主な免疫細胞が、体内に侵入してきた病原体を排除する働きがあるため、腸内環境が良好であれば免疫機能がしっかり作用するという仕組みです。
このように腸は食べ物を消化・吸収するだけでなく、免疫力にも大きく関わっています。
乳酸菌製剤で腸内環境を整え、毎日を健やかに過ごしていきましょう。
カンジダ症の予防
カンジダ症は身体に住み着いている日和見菌のカンジダが免疫機能の低下などによって増殖して発症する日和見感染症です。
カンジダ菌は腸を始めとする消化器や膣などの生殖器などに常在しているため、様々な場所でカンジダ症を引き起こす可能性があります。
腸の粘膜に発症するカンジダ症を腸管カンジダ症と言い、吐き気や下痢、血便などを引き起こし、悪化すると体内に異物が流れ込み炎症を起こすケースもあります。
乳酸菌にはこのカンジダ菌の増殖を抑えて、カンジダ症の発症を予防する効果が期待されています。
乳酸菌のカンジダ菌に対する作用は腸内だけに留まらず、膣で発症する膣カンジダ症にも作用すると言われています。
このように乳酸菌を増やすことは、腸以外の健康にも一役買っているのです。
善玉菌の種類と特徴
ここまで乳酸菌製剤を中心に解説してきましたが、乳酸菌以外にも様々な善玉菌が存在し、その特徴も異なります。
乳酸菌とそれ以外の主な善玉菌について、特徴や主な商品名を紹介していきます。
乳酸菌
乳酸菌は別名ラクトミンとも呼ばれる善玉菌で、主に小腸から大腸にかけて増殖する細菌です。
通性嫌気性菌に分類され、乳酸を生成したり、増殖したりする能力が高いと言われています。
乳酸菌が配合された商品には、ビオスミン配合剤やレベニンS散などがあります。
乳酸菌製剤を毎日飲み続けることで腸内環境を少しずつ整えていきます。
ビフィズス菌
ビフィズス菌は乳酸や酢酸を作り出す善玉菌で腸内環境を整える働きをします。
主に大腸に常在しており、刺激して腸の運動を促していく作用もあります。
ビフィズス菌はビオフェルミン錠やラックビー錠などに配合されており、毎日飲み続けることでより高い効果が得られるとされています。
酪酸菌
酪酸菌は芽胞という強い膜に覆われている偏性嫌気性菌で、胃酸や様々な抗菌薬に対して抵抗性を示す細菌です。
このような特徴があるため、抗菌薬の副作用の下痢を和らげるために処方されることもあります。
酪酸菌はミヤBM細粒やビオスリー配合散などの商品に配合されています。
こちらも毎日飲み続けることで、効果が得られやすいと言われています。
乳酸菌製剤は毎日飲むと効果が得られやすい
腸内には善玉菌・悪玉菌・日和見菌などの多種多様な細菌が生息しており、そのバランスを保ちながら腸内環境に影響を与えていますが、年を取るごとに悪玉菌優位になって様々な病気を引き起こすリスクも高まっていきます。
このような理由からも、できるだけ食事や睡眠、適度な運動など生活習慣を整えて善玉菌を増やしていくことが重要となります。
また、正しい生活習慣に加えて、乳酸菌製剤を使用することは腸内環境の改善に大いに役立ちます。
乳酸菌製剤は安全性が高く、毎日飲むことで効果が得られやすくなります。
日々の生活に乳酸菌製剤を取り入れる腸活を始めてみてはいかがでしょうか。