タバコの依存度はとても高いため、禁煙は多くの人にとって人生最大の挑戦の一つでしょう。
しかし、病院の適切なサポートがあれば、厳しくても乗り越えることができるかもしれませんよ?
今回は、イギリスの国民保健サービス(NHS)の支援を受けて禁煙に成功した、一人の母親の体験談をご紹介します。
また、日本の無料禁煙サポートもいくつかご紹介しますので、参考にしてみてくださいね。
家族の習慣から始まった喫煙生活
南ロンドンのランベス地区に住むサラ・ジクさん(30)は、16歳でタバコを吸い始めました。
彼女の出身地であるポーランドでは、喫煙が広く浸透しているそうです。
「家族全員が喫煙者で、82歳の祖母までタバコを吸っています」とサラさんは当時を振り返ります。
若くして始めた喫煙は、やがて1日20本という重度の依存症へと発展していきました。
販売アシスタントとして働きながら学位取得を目指すサラさんにとって、タバコは日常生活の一部となっていました。
母親になることがきっかけで
転機が訪れたのは妊娠がわかった時でした。
2019年に長男を、そして2023年に長女を妊娠したサラさんは、ガイズ・アンド・セント・トーマス・タバコ依存症治療サービスの門を叩きました。
妊娠中は禁煙に成功したものの、出産後にまた喫煙習慣が戻ってしまうという課題に直面したそうです。
「朝目覚めると真っ先にタバコが欲しくなりました。特に試験前などのストレスがかかる場面では、強い衝動に襲われました」とサラさんは当時の苦しみを語ります。
三度目の正直で掴んだ成功
2023年9月、サラさんは3回目となる禁煙チャレンジを決意します。
今回は、より包括的なアプローチで臨みました。
NHSが提供する無料の支援プログラムには、週1回の健康診断、ニコチン置換療法、パッチやガムの提供、さらには電子タバコ(ベイプ)の選択肢まで含まれていました。
特に、専属の禁煙アドバイザーであるジュディスさんの存在は、サラさんにとって大きな支えとなったようです。
「ジュディスは本当に親身になってサポートしてくれました。私が困った時は、いつも新しい解決策を提案してくれました」と、感謝の言葉を語ります。
目に見える変化を実感
禁煙の成功で、サラさんの日常生活に大きな変化をもたらしました。
以前は水泳をしても2周も泳げないほど体力が低下していましたが、今では子どもたちと走り回っても息切れすることはないそうです。
「タバコのことを考える時間が減り、その分、家族との時間を大切にできるようになりました。階段を上るのも楽になり、身体が軽くなったのを実感しています」と、サラさんは目を輝かせながら話します。
禁煙成功のカギは継続的なサポート
タバコ依存症治療サービスのアシスタントプロジェクトマネージャー、キャサリン・キロンデ氏によると、28日間禁煙を継続できれば、完全な禁煙に成功する確率が5倍に上がるとのことです。
「私たちのサービスは、一人一人に合わせたアプローチを提供しています。禁煙への欲求に打ち勝つためのアドバイスはもちろん、継続的なモチベーション維持のためのサポートも行っています」とキロンデ氏は説明します。
希望を持って前に進む
サラさんは今、自身の経験を共有することで、同じような状況にある人々に希望を与えたいと考えているそうです。
「禁煙は決して簡単ではありませんでした。でも、本当にやりたいと思い、適切なサポートがあれば、必ず達成できます」と、力強いメッセージを発信しています。
この事例は、サポートと本人の強い意志があれば、長年の喫煙習慣からも解放されるという希望を示してくれていますよね。
NHSの無料禁煙支援サービスは、今も多くの人々の新しい人生のスタートを後押ししているそうです。
日本でも広がる無料禁煙サポート
上記のように、イギリスでは国を挙げて禁煙を後押しするサポートがありましたが、実は日本でも充実した支援制度が整っていることをご存じでしょうか。
健康保険組合を通じて、禁煙治療費用の全額補助を受けられる可能性や、無料電話相談ができるところもあります。
全額補助の「禁煙治療費補助金制度」
例えば、SCSK健康保険組合では、禁煙外来での治療費を全額補助する制度を設けています。
この制度は、20歳以上の被保険者・被扶養者が対象で、保険診療による禁煙治療を完了した場合に適用されます。
補助金の支給は年度内1回までとされていますが、治療にかかった費用が全額補助されるため、経済的な負担を気にせず禁煙にチャレンジできます。
ただし、2025年3月31日までに治療を開始する必要があるとのことです。
禁煙治療の具体的な流れ
禁煙外来での治療は、通常12週間のプログラムで進められます。
まず、禁煙治療に対応している医療機関を探すところから始まります。
オンライン診療は補助対象外となっているため、実際に通院できる医療機関を選びましょう。
治療は医師の指導のもと、5回の通院と服薬による包括的なアプローチで進められます。
治療費と処方薬代の領収書、診療明細書は必ず保管しておいてください。
補助金申請の手続き
治療が終了したら、医師から「禁煙外来治療終了証明書」を受け取ります。
その後、原則として2ヵ月以内に必要書類を健康保険組合に提出します。
必要な書類は以下の通りです。
- 禁煙治療費用補助金請求書
- 治療費・処方薬代の領収書と診療明細書(原本)
- 禁煙外来治療終了証明書
書類の提出から約4ヵ月後に、指定された口座に補助金が支給されるとのことです。
保険診療適用の条件
禁煙治療を保険診療で受けるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
主な条件は以下の通りです。
- ニコチン依存症診断テストで5点以上であること
- 1日の平均喫煙本数×喫煙年数が200以上(35歳未満は除外)
- 1ヵ月以内に禁煙を始める意思があること
- 禁煙治療について文書での同意があること
注意点とアドバイス
補助金を受けるにあたって注意点があります。
まず、治療開始から申請まで、同じ健康保険組合に継続して加入していなければなりません。
また、治療を途中で中断した場合や、禁煙補助剤を個人で購入した場合は補助対象外となります。
さらに、禁煙外来での治療は途中での転院ができないため、最初に選ぶ医療機関は慎重に検討する必要があります。
治療費の領収書に禁煙外来以外の診療費が含まれている場合は、その分は除外されて補助金が支給されます。
このように、日本の医療保険制度を通じた禁煙支援は、経済的な負担を軽減しながら、専門家による適切なサポートを受けられる仕組みとなっています。
禁煙を考えている方は、ぜひ自分が加入している健康保険組合に問い合わせてみることをおすすめします。
電話で気軽に相談できる禁煙サポート「クイットライン」
禁煙を決意しても、一人で乗り越えるのは簡単ではありません。
そんな時、いつでも気軽に相談できる心強い味方が「クイットライン」です。
これは電話による無料の禁煙相談サービスで、世界的にも注目されている支援システムです。
世界に広がるクイットライン
韓国、中国、タイ、台湾、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなど、アジア太平洋地域の多くの国々ですでに導入されているクイットラインは、その効果が科学的にも実証されています。
2013年の研究によると、複数回の電話でのサポートを受けた方は、1回だけの相談と比べて禁煙成功率が1.4倍も高くなったそうです。
誰でも利用できる利点
クイットラインの大きな魅力は、その手軽さにあります。
禁煙治療の方法がわからない方、時間や費用の都合で医療機関に通えない方、保険適用の条件を満たさない方など、様々な事情を抱えた方々が利用できます。
また、自力での禁煙を目指す方のバックアップとしても活用されています。
日本での現状と今後の展望
日本国内では2013年度から、がん診療連携拠点病院(397施設)に「たばこ相談員」を配置する取り組みが始まりました。
ただし、まだ一般の喫煙者への十分なサービス提供には至っていないのが現状です。
今後は、これらの拠点病院を中心に、より効率的なクイットラインシステムの構築が期待されています。
サービス提供の具体的な形
健康診断や医療機関での受診時に、医師や保健指導者からクイットラインの紹介を受けられます。
サービスは主に以下の2つの形があります。
- 受動的サービス:利用者からの相談や問い合わせに対応
- 能動的サービス:定期的なフォローアップ電話による継続的支援
相談内容は多岐にわたり、禁煙実行のためのカウンセリング、禁煙外来の紹介、禁煙補助薬の案内などが含まれます。
電話だけでなく、ウェブサイトやメールでの支援も検討されているとのことです。
期待される効果
クイットラインの導入により、以下のような効果が期待されています。
- より多くの方が禁煙に挑戦するきっかけとなる
- 継続的な支援により禁煙成功率が向上する
- 医療機関や健康診断との連携により、より確実な禁煙支援が可能になる
- 地域全体の禁煙率向上に繋がる
まとめ
サラさんの物語は、禁煙を考えている多くの人々にとって、大きな励みとなることでしょう。
日本でも、禁煙を希望する方にとって、時間や場所を問わず利用できる心強いサポートシステムがあります。
無料なのも嬉しいですね。
禁煙に悩む方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
専門のカウンセラーが、あなたの禁煙への一歩を支援してくれるはずです。