緊急時に入手しやすいように!モーニングアフターピルが一部薬局で試験販売実施中

性行為の途中でコンドームが破れてしまった、緩んだコンドームから精液が漏れてしまったかも…など、気をつけていても避妊に失敗したという経験談はよく聞きます。
また、あってはならないことですが、同意なくコンドームを使用せずに性行為を行われてしまう性被害など、女性が望まない妊娠に怯える機会は決して他人事ではありません。
そこで、本記事では望まない妊娠を防ぐ一つの手段として知っておきたい「モーニングアフターピル(緊急避妊薬)」について紹介するとともに、2023年11月より実施されている一部薬局でのモーニングアフターピルを診察なしで購入できる試験販売について詳しく解説していきます。
自身の身を守る大切な知識として、ぜひ参考にしてください。
モーニングアフターピルとは
モーニングアフターピルとは、避妊に失敗したあるいは避妊をしなかった性行為後に飲む緊急避妊薬のことで、アフターピルとも呼ばれています。
俗称として「ゴムが破れた時のピル」とも聞いたことがあるかもしれません。
日本で認可されている緊急避妊薬は2品目あり、「ノルレボ」「レボノルゲストレル(ノルレボのジェネリック医薬品)」という薬剤です。
どちらの薬剤もレボノルゲストレルという黄体ホルモンの一種が有効成分です。
「排卵を抑制して受精卵を作らせないこと」と「受精卵を子宮内膜で着床させないこと」の主にこの2つの働きによって妊娠を防ぐ効果があります。
そのため、レボノルゲストレルは既に受精卵が着床した後に服用しても避妊効果は期待できません。
性行為後、72時間以内の服用で高い避妊効果
モーニングアフターピルであるレボノルゲストレルは、性行為後服用が早ければ早いほど効果が高いため、できるだけ早く服用することが重要です。
性行為後72時間以内に服用することで妊娠阻止率は約8割であると言われており、性行為後24時間以内の服用であれば妊娠阻止率はさらに高まります。
性行為後5日目に飲んでも効果はあるのか?
性行為後72時間を超えてからの服用の場合、効果は大きく落ち込んでしまいますが、効果が全く得られないわけではありません。
また、国内では承認されていませんが、性行為後120時間(5日)以内の服用で、高い妊娠阻止効果が見込める「エラ(ウリプリスタル)」というWHO推奨の緊急避妊薬もあります。
妊娠の可能性について不安がある場合は、迷わず産婦人科に相談してみてください。
モーニングアフターピルの入手方法
2024年現在、緊急避妊薬を手に入れるには次の3通りの方法があります。
- 対面診療
- オンライン診療
- 一部薬局での試験販売
ここでは、それぞれの詳しいアクセス方法や入手までの流れを解説します。
前述のとおり、緊急避妊薬はできるだけ早く服用することが効果に大きな影響を与えるため、ご自身がアクセスしやすい医療機関または薬局を見つけるための参考にしてください。
対面診療
産婦人科を受診し、処方箋を発行してもらいます。
その処方箋をもとに、院内処方またはお近くの薬局で処方してもらいます。
実際に医療機関へ足を運ぶ必要がありますが、早く、確実に入手できます。
ただし、地方などでは産婦人科にアクセスしづらい、夜間や休日は診療を行っていない医療機関が多いなどの問題があります。
緊急避妊について対面診療が可能な医療機関の都道府県別一覧を厚生労働省が公開していますので、下記のサイトも参考にしてみてください。
オンライン診療
2019年より、産婦人科医又は厚生労働省が指定する研修を受講した医師が、初診からオンライン診療を行い、緊急避妊薬を処方することができるようになりました。
医療機関へ直接足を運ぶ必要がなく、ご自宅など好きな場所からオンラインで診療を受けると、医療機関からお近くの薬局へ処方箋情報が送られます。
患者さんはその薬局へ来局し、緊急避妊薬を処方してもらうか、郵送にて薬剤を受け取ることができます。
週末や年末年始、お盆などの長期休暇中も診察を行ってくれる場合もあり、時間や場所を問わずに診察・処方を受けられるのが利点です。
一部薬局での試験販売
2024年現在、日本国内では緊急避妊薬はOTC薬として販売されておらず、医師の処方箋が必要な医療用医薬品です。
しかし、海外ではOTC薬として販売されている国が多く、日本でも迅速性が求められる緊急避妊薬のOTC化の必要性の声は専門家からも多く上がっています。
そんな中、厚生労働省の検討会が医師の処方がなくても適正に販売できるか、一部の薬局(全国で145薬局)で試験的に販売する調査研究が2023年11月28日から実施されています。
この調査研究に参加することで、医師の診療を受けずに薬局で緊急避妊薬を入手できます。
調査研究への参加方法や試験販売を実施している薬局については、下記の日本薬剤師会HPをご確認ください。
モーニングアフターピルは保険適応外
緊急避妊薬はいずれの入手方法であっても保険適応外の自費となります。
値段は約6,000円~20,000円ですが、自由診療となるため医療機関や薬局によって値段が異なります。
また、夜間や休日診療では加算がある場合もあります。
モーニングアフターピルを使う際に気をつけたいポイント
モーニングアフターピルは希望しない妊娠を防ぐために有効な薬剤ですが、万能というわけではありません。
使用する際に気をつけたいポイントについて簡単にまとめました。
副作用
主な副作用として、不正子宮出血や吐き気、けん怠感、疲労、下腹部痛、頭痛、めまい、乳房圧痛、眠気、月経の遅延などが報告されています。
このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
水またはぬるま湯で服用すること
薬剤の吸収や代謝への影響を避けるために、基本的に薬剤は水またはぬるま湯で服用しましょう。
さらに、こんな飲み物を一緒に飲んでも大丈夫?という、モーニングアフターピル使用時によく聞かれる飲料に関する疑問にお答えします。
Q.コーヒーは一緒に飲める?
A.コーヒーを数杯なら飲んでも大丈夫です。
カフェインは摂り過ぎると、下痢や吐き気を起こす可能性があります。
コーヒーの場合の1日の摂取量は、大人でマグカップ3杯が目安で、摂り過ぎには注意しましょう。
Q.アルコールを飲むと避妊効果が薄れるか?
A.お酒を飲むことで、緊急避妊薬の副作用である「吐き気」の症状が強くでることがあります。
緊急避妊薬を服用して2時間以内に嘔吐してしまうと、避妊効果が得られない可能性があります。
その場合、医師の判断によっては再度服用する必要が出てきます。
緊急避妊薬を服用後、何時間でお酒が飲めるかというと、24時間以上経過してからが望ましいです。
Q.グレープフルーツ果汁を飲んでしまったがどうすればいいか?
A.グレープフルーツに含まれているフラノクマリンという成分が薬剤を代謝するための酵素の働きを阻害するため、様々な医薬品と相互作用が出やすいとされています。
もし、緊急避妊薬の使用前後でグレープフルーツ果汁を飲んでいる場合は、医師または薬剤師に申告し、指示に従うようにしましょう。
タバコ
喫煙者でも緊急避妊薬の使用は可能です。
ただし、服用後は妊娠していないことを確認するまで喫煙を控えることをおすすめするクリニックもあります。
タバコの何がダメかと言うと、タバコの煙に含まれる一酸化炭素やニコチンによって胎児が低酸素状態になり、流産や早産、低出生体重児の出産、乳幼児突然死症候群(SIDS)などの危険が高まると報告されています。
また、喫煙によって血管が収縮して血流が悪くなるため、胎児への酸素や栄養の供給が阻害され、発育不全に繋がる可能性もあります。
服用後、性行為はいつからできるか
緊急避妊薬を飲んだ後は、次の生理が来るのを確認するまで性行為を控えましょう。
緊急避妊薬を飲んだ後は薬剤の働きにより排卵が遅れている可能性があり、次の生理の前に性行為が行われると妊娠する危険が高くなるからです。
モーニングアフターピルで性感染症は予防できない
緊急避妊薬には妊娠を防ぐ効果がありますが、性感染症を防ぐ効果はありません。
したがって、緊急避妊薬を使用するような状況になった場合は、併せて性感染症の検査を行ってもらうこともおすすめします。
また、「モーニングアフターピルを飲むからゴムはしなくていいか」と安易に考えることも大変危険です。
性感染症を予防するためにはコンドームが必須です。
低用量ピルなど他の避妊方法を行っていても、妊娠を望まない性行為を行う場合は必ずコンドームを装着して行うようにしましょう。
モーニングアフターピルは低用量ピルで代用できる?
モーニングアフターピルも低用量ピルも、避妊効果のある薬剤ですが、モーニングアフターピルを低用量ピルで代用はできません。
その理由は、モーニングアフターピルと低用量ピルの避妊効果が期待できる服用方法の違いにあります。
モーニングアフターピルであるレボノルゲストレルは、緊急避妊を目的とした薬剤で、性行為後72時間以内に1錠服用することで避妊効果を発揮します。
一方、黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2種類の女性ホルモンを合わせてできた薬剤である低用量ピルは、毎日継続的に服用することで排卵を抑え、長期的な避妊効果を発揮します。
したがって、避妊に失敗した後に低用量ピルを新たに服用したり、多めに服用したりしても、妊娠阻止効果はありません。
緊急時、モーニングアフターピルがもっと入手しやすくなるように
本記事でご紹介したように、緊急避妊薬が効果を発揮するには時間的なリミットがあります。
そのため、緊急時により入手しやすい環境の整備が望まれています。
一方で、入手しやすい環境があると、悪用や乱用、薬剤を安全に使用するための指導が十分であるかなどの懸念があります。
現在、緊急避妊薬を医師の処方箋がなくても購入できるようにする「OTC販売」を検討するために、一部薬局での試験販売が実施されていますが、私たち使用者も緊急避妊薬について正しい知識を持つことが重要です。
妊娠は人生を大きく左右する一大事です。
もし、意図しない妊娠の可能性や避妊できているか不安に思ったら、迷わずすぐに産婦人科に相談してみましょう。