「抗ヒスタミン薬ってどんな薬？」
「アレルギー性疾患にはどんな病気があるの？」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。

本記事では、Ⅰ型アレルギーが発生するメカニズムを通し、ヒスタミンという物質について徹底解説。
抗ヒスタミン薬の第一世代と第二世代の違いや、主なアレルギー性疾患についても紹介します。

本記事を読めば、Ⅰ型アレルギーや抗ヒスタミン薬についてはよくわかります。
興味がある人は、ぜひ最後までご覧ください。

ヒスタミンはⅠ型アレルギーに関与する物質

抗ヒスタミン薬とは、その名の通り「ヒスタミン」という物質の働きを阻害する薬剤です。
ヒスタミンは、「Ⅰ型アレルギー」というアレルギー反応に大きく関与しています。

Ⅰ型アレルギーは、「感作」と「誘発」という2つの反応から成り立っています。
Ⅰ型アレルギーが発生するメカニズムを通して、ヒスタミンがどのような物質であるのか見ていきましょう。

第1段階：感作

私たちの身体には、異物から身を守るための免疫機能が備わっています。
感染症などを防ぐため免疫機能はなくてはならないシステムですが、時として暴走してしまうケースがあります。
本来は病的でない異物に過剰反応して私たちの身体を傷つけてしまう、これこそがⅠ型アレルギーなのです。

Ⅰ型アレルギーに大きく関わっている細胞が、「Th2細胞」・「B細胞」・「マスト細胞」です。
外から何らかの異物(アレルゲン)が体内に侵入すると、まずTh2細胞が反応します。

なお、代表的なアレルゲンは以下の通りです。

• 食物
• 花粉
• カビ
• ダニ
• ホコリ

アレルゲンの侵入を感知したTh2細胞は、「IL-4」・「IL-13」などの物質を放出し、B細胞に対して働きかけます。
そして、Th2細胞からの刺激を受けたB細胞は、「形質細胞」という状態に変化します。

形質細胞の働きは、侵入してきたアレルゲンに特異的な「IgE」という抗体の産生です。
IgEには、アレルゲンが再度侵入してきた際に捕まえる作用があります。
そんなIgEは、マスト細胞の表面にある「Fc受容体」という部位に結合して待機することになります。

第2段階：誘発

感作されている状態でアレルゲンが再度侵入してくると、第2段階である誘発のスタートです。
侵入してきたアレルゲンは、マスト細胞のFc受容体で待機している複数のIgEに捕まえられます。

アレルゲンが捕まると、IgEが結合しているマスト細胞に刺激が伝わります。
そして、ヒスタミンや「ロイコトリエン」などの、「ケミカルメディエーター」と呼ばれる物質がマスト細胞から放出されるのです。

放出されたヒスタミンは、全身の幅広い組織に存在する「ヒスタミン受容体」という部位に結合します。
その結果、様々なアレルギー症状が引き起こされます(詳しくは後述)。
つまり、ヒスタミンとはⅠ型アレルギーを生じさせている、まさに張本人なのです。

抗ヒスタミン薬はH1受容体をブロックする

ヒスタミン受容体と一口で言っても、機能が異なる以下の4つが存在します。
それぞれの主な作用は以下の通りです。

上表からもわかる通り、アレルギー症状はヒスタミンがH1受容体に結合することで引き起こされています。
ここからは、抗ヒスタミン薬=H1受容体拮抗薬として解説していきます。

抗ヒスタミン薬の2つの世代

抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、治療対象の疾患や副作用などが大きく異なります。
それぞれについて見ていきましょう。

第一世代抗ヒスタミン薬

第一世代抗ヒスタミン薬として、代表的な薬剤は以下の通りです。

• クロルフェニラミン
• ジフェンヒドラミン

これらの第一世代抗ヒスタミン薬は、H1受容体拮抗作用に加えて制吐作用も有しています。
そのため、症状として嘔吐がある以下の疾患に使用されています。

• 乗り物酔い
• メニエール病(めまいが反復し、発作時に嘔吐・耳鳴・難聴などが生じる疾患)

一方、第一世代抗ヒスタミン薬には様々な副作用が報告されています。
代表的なものは以下の通りです。

• 鎮静
• 眠気
• めまい
• 口渇
• 眼圧上昇
• 尿閉(尿が出なくなる)
• 便秘

これらの副作用を踏まえ、以下の疾患を抱えている人は第一世代抗ヒスタミン薬が使えません。

• 緑内障(視力低下や視野障害がみられ、眼圧の急上昇により眼痛・頭痛などが生じる疾患)
• 前立腺肥大症(前立腺という臓器が大きくなり、尿道を圧迫して排尿障害が生じる疾患)

第二世代抗ヒスタミン薬

第二世代抗ヒスタミン薬として、代表的な薬剤は以下の通りです。

• ケトチフェン
• オキサトミド
• フェキソフェナジン
• オロパタジン
• ロラタジン
• レボセチリジン
• ベポタスチン
• エピナスチン
• エバスチン
• デスロラタジン
• ビラスチン
• ルパタジン

これらの第二世代抗ヒスタミン薬は、H1受容体拮抗作用に加えてアレルギー性炎症抑制作用や、ケミカルメディエーターの遊離抑制作用も有しています。
そのため、以下のようなアレルギー性疾患に対して広く使われています(各疾患の詳細は後述)。

• 蕁麻疹
• アトピー性皮膚炎
• アレルギー性鼻炎
• アレルギー性結膜炎

また、第二世代抗ヒスタミン薬では、第一世代抗ヒスタミン薬の副作用が大幅に抑えられています。
ただし、副作用が全く生じないというわけではないので、使用する前には添付文書を確認しましょう。

代表的な4つのアレルギー性疾患

先ほども紹介した通り、第二世代抗ヒスタミン薬は以下のようなアレルギー性疾患に対して効果を発揮します。

• 蕁麻疹
• アトピー性皮膚炎
• アレルギー性鼻炎
• アレルギー性結膜炎

それぞれの疾患について見ていきましょう。

①蕁麻疹

私たちの皮膚は表面から見て、表皮・真皮・皮下組織の3層より成り立っています。
このうち、マスト細胞がいるのが真皮です。

アレルゲンやストレス、機械的な接触や温度変化により刺激を受けたマスト細胞は、真皮内でヒスタミンを放出します。
そして、放出されたヒスタミンは、真皮内の血管や神経に位置するH1受容体に結合するのです。

ヒスタミンから刺激を受けた血管は拡張し、成分が表皮と真皮の間に漏れ出します。
その結果生じるのが、赤くくっきりとした皮膚の盛り上がりです。
また、ヒスタミンから刺激を受けた神経は、強い痒みを引き起こします。

以上のメカニズムで生じた皮膚症状は、数時間～24時間で消失します。
ただし、マスト細胞を刺激した原因については特定できないケースが多いです。

②アトピー性皮膚炎

蕁麻疹と同様に、アトピー性皮膚炎もアレルギーにより皮膚症状が生じる疾患です。
しかし、アトピー性皮膚炎では症状が慢性的に持続します。

アレルギー疾患の家族歴や既往歴があったり、IgEを産生しやすい遺伝子タイプであったりすることを、「アトピー素因」と言います。
アトピー素因がある人にアレルゲンが侵入すると、マスト細胞が刺激されヒスタミンなどのケミカルメディエーターを放出。
そして、皮膚に炎症反応と強い痒みが引き起こされます。

強い痒みを感じると、人はどうしても痒い箇所をかいてしまうものです。
その刺激により、異物から身を守るための皮膚バリア機能が低下します。
その結果、アレルゲンの侵入や炎症がさらに起こりやすくなり、悪循環が形成されてしまうのです。

③アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は、症状が出ている時期から通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎に大別されます。

季節性アレルギー性鼻炎とはいわゆる花粉症のことであり、悩んでいる方も少なくないでしょう。
それぞれでよくみられるアレルゲンは以下の通りです。

アレルゲンが鼻粘膜に付着すると、刺激を受けたマスト細胞がヒスタミンやロイコトリエンといったケミカルメディエーターを放出します。
それぞれの主な作用は以下の通りです。

④アレルギー性結膜炎

皮膚や鼻だけでなく、眼にもアレルギー症状は起こります。
中でも、代表的な疾患がアレルギー性結膜炎です。
なお、結膜とは瞼の裏側と眼球の白目(強膜)を覆っている粘膜です。

アレルゲンによる刺激を受けたマスト細胞が放出するヒスタミンやロイコトリエンは、眼の毛細血管を拡張して結膜を充血させます。

また、顔面の感覚を司る神経の「三叉神経」を刺激し、眼の痒みを引き起こします。
痒みにより目をこすった結果、流涙(涙が溢れてくる状態)や眼痛などの症状が生じるケースも少なくありません。

なお、アレルギー性鼻炎と同様に、アレルギー性結膜炎も通年性と季節性に大別されます。
加えて、アレルギー性鼻炎との合併例が多いことも報告されています。

まとめ：抗ヒスタミン薬でアレルギー性疾患を治療しよう。

マスト細胞から放出されるヒスタミンは、様々なアレルギー症状を引き起こします。
そんなヒスタミンの作用を阻害するのが、H1受容体への結合をブロックする抗ヒスタミン薬です。

抗ヒスタミン薬には第一世代と第二世代があり、アレルギー性疾患に対しては主に第二世代が使われています。
第二世代抗ヒスタミン薬をうまく使い、蕁麻疹やアトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎を治療しましょう。