「低用量ピルはどうやって妊娠を防いでいるの？」
「低用量ピルの効果にはどんなものがある？」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか？

本記事では、低用量ピルが持つ避妊効果のメカニズムや避妊以外に得られる効果を徹底解説。
低用量ピルの5つの種類や、気をつけるべき副作用も紹介します。

低用量ピルに関して多くの人が疑問に感じるQ＆Aもあり、必見の内容です。
ぜひ最後までご覧ください。

低用量ピルが妊娠を防ぐメカニズム

低用量ピルには、「エストロゲン」と「プロゲステロン」という、2種類の女性ホルモンが含まれています。
これらのホルモンは、実際に女性の体内で作られているものであり、決して特別な成分というわけではありません。

低用量ピルは、次のようなメカニズムで妊娠を防いでいます。

• 排卵の抑制
• 子宮頸管粘液の変化
• 子宮内膜の変化

それぞれのメカニズムを詳しく解説します。

排卵の抑制

はじめに、正常なメカニズムから解説しましょう。
私たちの脳内には、ホルモンバランスを調整している「視床下部」という部位があります。
視床下部は司令塔のような存在で、女性ホルモンだけでなく、体内の様々なホルモンバランスを調整しているのです。

視床下部からは、「GnRH」というホルモンが分泌され、同じく脳内にある「下垂体」という部位に届きます。
GnRHに刺激された下垂体の働きは、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)の分泌です。
その結果、卵胞の成熟や排卵が発生します。

ここで、低用量ピルを服用している場合に話しを戻しましょう。
低用量ピルに含まれているエストロゲンやプロゲステロンには、視床下部からのGnRH分泌を抑制する働きがあります。
医学的にはこの抑制作用を、ネガティブフィードバックと呼んでいます。

GnRH分泌が抑制されると、下垂体の働きも弱まるため、卵胞刺激ホルモンや黄体化ホルモンの分泌も減少。
その結果、卵胞の成熟や排卵が起こりにくくなり、妊娠が成立しにくくなります。

子宮頸管粘液の変化

子宮頸管には粘液がありますが、粘り気が常に一定であるわけではありません。
プロゲステロンの作用により粘り気がより強くなります。

粘液の粘り気が強くなると、精子の子宮への侵入が難しくなります。
その結果、受精が起こりにくくなり、妊娠が成立しにくくなります。

子宮内膜の変化

本来、月経後しばらくの間はエストロゲンが多く分泌されており、プロゲステロンはあまり分泌されていません。
エストロゲンがほとんどの状態では、子宮内膜が増殖していきます。

しかし、低用量ピルにはプロゲステロンが含まれているため、エストロゲンがほとんどの状態にはなり得ません。
そのため、子宮内膜の増殖は抑制され薄い状態に保たれます。
その結果、受精卵が着床するための環境が整わず、妊娠が成立しにくくなります。

低用量ピルの服用で得られる避妊以外の効果4選

避妊目的で使用する人が多い低用量ピルですが、避妊以外にもいくつかの効果があります。
主な効果として、以下の4つを紹介します。

• 生理痛・月経前症候群の改善
• 生理期間の調整
• 肌の改善
• 卵巣癌・子宮体癌の発生リスク低下

それぞれの効果について紹介します。

生理痛・月経前症候群の改善

生理痛の原因は、プロスタグランジンという物質の放出や子宮の収縮運動と考えられています。
低用量ピルの服用によりこれらを抑制できるため、生理痛を改善できます。

月経前症候群の主な原因は、生理に伴うホルモンバランスの急激な変化です。
低用量ピルによりホルモンバランスをコントロールすれば、月経前の倦怠感やイライラ、頭痛などの症状も抑えられます。

生理期間の調整

低用量ピルには休薬期間があり、エストロゲン・プロゲステロンの濃度が下がります。
ホルモンレベルが下がった結果、子宮内膜が剥がれ落ちて生理が始まります。

休薬期間を調整すれば、生理の開始時期を調整可能です。
大事な用事と被っていたら生理を遅らせるなどの工夫もできます。

肌の改善

低用量ピルには、皮脂の過剰分泌を引き起こす男性ホルモンの影響を抑える働きがあります。
そのため、ニキビや肌荒れの改善が期待できます。

なお、低用量ピルを飲み始めた当初には肌荒れを起こす可能性があります。
服用を継続すると次第に改善していくケースが多いですが、もし改善が見られなければ一度医師と相談すると良いでしょう。

卵巣癌・子宮体癌の発生リスク低下

低用量ピルに含まれるホルモンの影響で、排卵が抑制されます。
排卵が抑えられると卵巣の負担が軽減するため、卵巣癌の発生リスクが下がるのです。

低用量ピルには、子宮内膜の増殖を抑制する効果もあります。
子宮内膜の厚さは子宮体癌の発生と関係しているため、子宮体癌の発生リスクも下がります。

低用量ピルの5つの種類

低用量ピルは、次の5種類に分類できます。

• 第一世代(ノルエチステロン)
• 第二世代(レボノルゲストレル)
• 第三世代(デソゲストレル)
• 第四世代(ドロスピレノン)
• ミニピル

以下でそれぞれについて解説します。

第一世代(ノルエチステロン)

第一世代のノルエチステロンは、月経困難症のコントロールに優れ、出血量を抑えやすい点が特徴です。
代表的な商品として、シンフェーズやフリウェルLD、ルナベルLDなどがあります。

副作用として、吐き気や頭痛が起こりやすい傾向にあります。
症状が強い場合は、他のピルへの変更を検討しましょう。

第二世代(レボノルゲストレル)

第二世代のレボノルゲストレルは、不正出血が起こりにくく、生理周期を整えやすい点が特徴です。
生理痛を改善する効果も高いため、痛みに悩んでいる人におすすめできます。

代表的な商品として、トリキュラーやラベルフィーユなどがあります。

第三世代(デソゲストレル)

第三世代のデソゲストレルは、男性ホルモンの作用を抑制する働きが強い点が特徴です。
ニキビや多毛症の治療に効果が期待できます。

代表的な商品として、マーベロンやファボワールなどがあります。

第四世代(ドロスピレノン)

第四世代のドロスピレノンは、超低用量ピルとも言われており、浮腫などの副作用を起こしにくい点が特徴です。
月経前症候群(PMS)の症状緩和にも効果があります。

代表的な商品として、ヤーズやヤーズフレックスなどがあります。

ミニピル

ミニピルは、他の低用量ピルとは異なりエストロゲンが含まれていません。
そのため、授乳中の女性やエストロゲンに過敏な人に適しています。

代表的な商品として、ノルレボなどがあります。
注意点として、他のピルと比較して避妊効果がやや低いとされています。

低用量ピルのデメリット

低用量ピルのデメリットとしていくつかの副作用があります。
一般的な副作用と重篤な副作用に関して解説します。

一般的な副作用

低用量ピルの一般的な副作用として、以下の症状が挙げられます。

• 不正出血
• 吐き気
• 頭痛
• 乳房の張り
• むくみ
• 体重増加

これらの副作用は、服用を始めた当初に起こりやすいです。
時間の経過や慣れとともに、症状は軽快していく傾向にあります。

重篤な副作用

発生する確率はかなり低いものの、血栓症となる可能性があります。
原因は、低用量ピルに含まれるエストロゲンの凝固作用です。
血液が固まりやすくなった結果、血の塊である血栓が生じます。

血栓は血流に乗って全身を巡り、狭い血管を塞いでしまう可能性があります。
血栓ができた結果起こり得る疾患として、以下が考えられます。

• 深部静脈血栓症(DVT)：脚の静脈に血栓が生じ、痛みや腫れを引き起こします。
• 肺塞栓症(PE)：脚の静脈に生じた血栓が血流に乗って肺まで到達し、肺の血管を塞いだ結果発生します。
  胸の痛みや息切れなどを引き起こします。
• 心筋梗塞：心臓に酸素や栄養を供給している動脈が、血栓により塞がれることで発生します。
  胸の強い痛みや圧迫感などを引き起こします。
• 脳梗塞：脳内の血管が血栓により塞がれることで発生します。
  詰まった場所により、麻痺や言語障害、視覚障害など様々な症状を引き起こします。

繰り返しになりますが、血栓症が発生する可能性はかなり低いので、過度に心配する必要はありません。
ただし、以下の要因を抱えている人はリスクが高いので、十分に気をつける必要があります。

• 高齢
• 喫煙
• 高血圧
• 肥満
• 長時間の移動

血栓症を起こさないためには、十分な量の水分摂取と適度な運動を心がけましょう。
万が一、以上のような症状が発生した場合は、すぐに医療機関を受診してください。

低用量ピルを服用しても避妊効果がなくなるケース

低用量ピルを服用しても避妊効果がなくなるケースとして、最も考えられるのが飲み忘れです。
飲み忘れから24時間以上が経過すると、避妊効果が弱まる可能性があります。

他に飲んでいる薬剤との相互作用も、低用量ピルが効かない理由として考えられます。
一部の抗てんかん薬や抗結核薬、HIV治療薬には注意が必要です。

その他、ピルの服用後3時間以内に下痢や嘔吐をした場合も、体内に吸収されなくなるため避妊効果が弱まってしまいます。

低用量ピルに関するQ＆A

低用量ピルに関して、よくあるQ＆Aを5つ紹介します。

Q.低用量ピルの値段はいくらくらい？

ブランドなどにも左右されますが、相場は1ヵ月間で約2,000円～5,000円です。
なお、月経困難症や子宮内膜症などのケースでは保険適用となり、負担が大きく軽減されます。

Q.低用量ピルを飲んだらいつから性行為していい？

低用量ピルを飲み始めたタイミングに左右されます。

• 生理初日～生理開始後5日以内に飲み始めた場合：飲み始めた日から避妊効果が期待できますが、安全のために追加の避妊方法の使用が推奨されます。
• 生理以外のタイミングで飲み始めた場合：飲み始めてから7日間は完全な避妊効果を期待できないため、追加の避妊方法を使用しなければなりません。

Q.低用量ピルを飲んでいても性行為で妊娠する確率は？

低用量ピルを飲んでいても性行為で妊娠する確率は、1％未満と考えられています。
ただし、正しく服用できていなければ、低用量ピルを飲んでいても十分妊娠する可能性があるでしょう。

Q.低用量ピルを飲んでいたらゴムをしなくてもいい？

低用量ピルを飲んでいたら避妊効果は十分高いですが、性感染症は防げません。
クラミジアや梅毒などへの感染を防ぐためには、コンドームを付けた方が良いでしょう。

Q.低用量ピルとゴムではどっちが妊娠しにくい？

低用量ピルを正しく服用すれば99%以上の避妊効果がある一方で、コンドームの避妊効果はおよそ85%と考えられています。
確実に避妊したいならば、低用量ピルの使用が推奨されます。

まとめ

低用量ピルにはエストロゲン・プロゲステロンが含まれており、複数のメカニズムを通して妊娠を防いでいます。
生理痛や月経前症候群を軽減できたり、生理期間を調整できたりする点もメリットです。

低用量ピルには様々な種類があり、それぞれ効果に違いがあります。
副作用や飲み忘れなどに十分注意しつつ、自分に合った低用量ピルを活用しましょう。