子供専門のリハビリプログラムで2歳児が初めて腕を動かせるように!

今回ご紹介する記事は、子ども専門のリハビリサービスです。
子どもと言っても、今回は2歳児のリハビリについてです。
イギリス、ロンドン南東部に住む2歳のイザベラ・ドミンゲスちゃんは、生まれた時に脳に損傷を受け、左半身が麻痺する「片麻痺」を患っていました。
そのため、左腕や左手の動きが著しく制限され、彼女の日常生活は大きな制約を受けていました。
しかし、エヴェリーナ・ロンドン小児病院が提供する「REACH」と呼ばれる革新的なリハビリプログラムのおかげで、イザベラちゃんの人生は大きく変わったのです。
イザベラちゃんと彼女の家族の挑戦
イザベラちゃんは妊娠26週目で誕生し、いわゆる未熟児として生まれました。
その結果、脳の一部に損傷を受け、左半身の筋力が低下し、ほとんど動かない状態でした。
特に、左腕と左手は全く動かすことができず、日常生活での基本的な動作すら難しい状況だったのです。
彼女の母親、シャネルさんは、「娘が左腕を動かせるようになるとは全く想像していませんでした。治療を受ける前は、ただ無力感しかありませんでした」と当時の心境を語っています。
イザベラちゃんが成長する中で、他の子どもたちと同じように遊んだり、自立した生活を送ることができるようになるかどうかは、シャネルさんにとって大きな不安要素でした。
そのため、エヴェリーナ・ロンドン小児病院のREACHリハビリテーションプログラムを紹介された時、彼女は一筋の希望を見いだしたそうです。
このプログラムは、片麻痺を患う子どもたちを対象に、日常生活での腕や手の使い方を改善するための集中的なリハビリサービスです。
イザベラちゃんにとっても、このリハビリが大きな変化の場となりました。
REACHプログラムとは?
今回イザベラちゃんが受けたREACHプログラムは、イギリス初の片麻痺を持つ子どもたちに特化したリハビリテーションサービスで、エヴェリーナ・ロンドン小児病院のアン・ゴードン博士によって設立されました。
このプログラムは、生後6ヵ月から16歳までの子どもたちを対象に、特に腕や手の機能改善に焦点を当てた集中治療を提供しています。
片麻痺とは?
片麻痺は、身体の片側に運動障害が現れる状態で、特に手や腕の動きが不自由になるため、日常生活において必要な作業や、自分のやりたいことが思うようにできなくなることが多いです。
そしてこのような片麻痺は、脳性麻痺や後天的な脳の損傷(脳卒中など)が原因で発生するとのこと。
片麻痺の影響を受ける子どもたちは、自分の身体が思うように動かせず、日常生活や学校生活での活動に大きな制約が生じることがあります。
プログラムの目的
このプログラムの目指すところは、子どもたちが日常生活で自分の腕や手をより上手に使えるようになることです。
REACHでは、専門のセラピストが個別に治療計画を立て、子ども一人ひとりのニーズに応じた支援を行います。
さらに、親や家族、そして地元のセラピストと連携し、治療の一貫性を保ちながら進めていきます。
対象となる子どもたち
REACHサービスは、ロンドン、ケント、サリー、サセックスなどの南部地域に住む子どもや若者を対象にしています。
この地域に住んでいる人は、専門家からのアドバイスや相談を受けることができ、必要に応じて集中的なリハビリテーションプログラムを受けることも可能です。
専門家が一人ひとりの状態を詳しくチェックし、それに基づいて最適なリハビリ方法を提案してくれるのです。
しかし、REACHサービスの場合、対象地域外に住んでいても、1回限りの相談やアドバイスを受けることができるそうです。
その際には、地元でサポートを行っているセラピストが一緒に参加するよう声かけが行われており、地域を問わず包括的なケアを受けることが可能です。
REACHサービスの内容
REACHサービスでは、一人ひとりの患者さんの状態に合わせたリハビリテーションプログラムを組み立てます。
初回の評価では、子どもや若者の片麻痺の状態を専門家が細かく確認し、その上で最適な治療方針を立てます。
場合によっては、1回の相談のみで十分なアドバイスを得られることもありますが、より専門的なケアが必要な場合には、継続的な治療が提案されるとのことです。
プログラムの期間は6週間で、週に5回、子どもたちはセラピストとの対面セッションを受けるとともに、家庭でのバーチャルセッションも行います。
家族と一緒に進めるリハビリ
REACHサービスの特徴のひとつは、家族のサポートを重視している点です。
子どもや若者が自宅でも治療を継続できるよう、家族がリハビリの方法を理解し、適切な支援を行えるように指導やサポートを行っています。
これにより、家庭でも効果的なリハビリが進められ、日常生活の中で少しずつ改善を図ることが可能になります。
このように、REACHサービスは専門家による継続的なケアと家族の協力を組み合わせた総合的なリハビリテーションプログラムを提供しており、片麻痺による運動障害を抱える子どもたちがより良い生活を送れるようサポートしています。
イザベラちゃんの劇的な変化
イザベラちゃんはこのREACHプログラムを2回受け、左腕と左手の動きが大きく改善しました。
彼女の母親、シャネルさんは「イザベラは以前とはまるで別人です。
水筒から自分で飲んだり、ナイフとフォークを使って食事をすることができるようになりました」と、その変化について語っています。
彼女はさらに、イザベラちゃんが他の子どもたちと公園で遊んだり、弟のサニーくんと一緒に遊べるようになったと述べています。
以前は、バランスを崩して転ぶことを心配していたため、遊び場で過ごすことも制限していたとのことですが、今では安心して遊ばせられると言います。
イザベラちゃんの腕の動きはまだ完全ではなく、今後もサポートが必要です。
しかし、彼女の麻痺が改善したことは家族にとっても大きな喜びであり、未来への希望を感じさせるものでした。
母親の感謝とチームのサポート
シャネルさんは、REACHプログラムのチームに対して深い感謝の意を表しています。
彼女は「チームの皆さんは本当に素晴らしかったです。イザベラがリハビリを楽しめるように、彼らはいつも楽しい方法でセッションを進めてくれました。彼女にとってはただの遊びの時間のようで、リハビリをしているとは思わなかったのです」と述べています。
イザベラちゃんは、セラピストが用意した特別な遊具を使って自然と左腕を使うように促され、動きを改善していきました。
さらに、シャネルさんは自宅でのリハビリについても大いにサポートを受けました。
バーチャルセッションを通じて、家でどのようにイザベラちゃんに腕を使わせるか、どんなおもちゃがリハビリに適しているかなど、具体的なアドバイスを得ることができました。
チームは、クリスマスや誕生日のプレゼントの選び方までサポートしてくれたと言います。
アン・ゴードン博士の見解
REACHプログラムを設立したアン・ゴードン博士は、「手や腕の機能改善には集中的な治療が最も効果的です。
私たちはこのプログラムを通じて、子どもたちが楽しくリハビリに取り組めるように工夫しています。
楽しむことが、最も効果的にスキルを向上させる方法です」と述べています。
博士はさらに、治療を家族と地域のセラピストとの連携で進めることの重要性を強調しています。
プログラムの成功には、子どもが家庭でも継続的にリハビリを続けることが不可欠であり、親やセラピストの協力が欠かせないと説明しています。
REACHプログラムの今後の展望
イザベラちゃんのような子どもたちにとって、REACHプログラムはまさに希望の光です。
このリハビリプログラムは、今後も多くの子どもたちにとって、腕や手の機能を取り戻すための貴重なサポートとなることでしょう。
また、地域のセラピスト向けのワークショップやアドバイス提供など、治療の普及にも力を入れており、さらなる発展が期待されています。
片麻痺にはリハビリでの治療しかないの?
今回は子どもの片麻痺の治療法のひとつとしてリハビリをご紹介しましたが、大人の片麻痺の場合もリハビリが主な治療法となります。
例えば脳梗塞の後遺症による片麻痺の場合、改善には、やはりリハビリテーションが非常に重要だそうです。
しかし、リハビリと一口に言っても、理学療法、作業療法、言語療法など複数の種類があり、それぞれが異なる角度から患者さんの回復をサポートしています。
理学療法
理学療法では、筋肉を強化し、身体の動きをスムーズにするためのトレーニングが行われます。
筋肉のバランスを取り戻し、動作のパターンを再構築することが主な目的です。
この方法は、麻痺がある部分の筋力を向上させ、全体的な運動機能を改善する役割を果たします。
作業療法
作業療法は、日常生活に必要な基本的な動作を再習得するためのサポートを行います。
例えば、衣服を着る、食事をするなど、生活を維持するための動作をトレーニングすることが中心となります。
この療法により、患者さんが自分で生活を管理できるようになります。
言語療法
言語療法では、話す、聞く、読む、書くといった言語機能を回復するためのトレーニングを行います。
脳の損傷によって言語に関連する能力が低下した場合、この療法が有効であり、コミュニケーション能力の向上を目指します。
運動療法
運動療法もまた、片麻痺の改善に効果的な手段です。
特に脳卒中後の運動能力の低下に対しては、歩行トレーニングやエルゴメーターを使った有酸素運動、バランストレーニングなどが効果的です。
これらのエクササイズにより、持久力や筋力、バランス感覚が改善し、リハビリと組み合わせることでさらなる効果が期待できます。
外科的治療
重度の片麻痺には、リハビリだけではなく、脳神経外科的な治療が必要となることがあります。
脳出血や脳腫瘍、脳動脈瘤などが原因の場合、外科手術によって片麻痺の症状を軽減することが可能です。
ただし、手術には一定のリスクが伴うため、患者さんの症状や状態を十分に考慮し、適切な判断が求められます。
まとめ
病気に対する治療法は様々で、薬剤や手術で対処する場合もあれば、今回のようにリハビリで大きく機能を改善できるケースもあります。
もし、イザベラちゃんがREACHプログラムを紹介されていなかったらどうなっていたでしょう。
病気や病院と言うと高齢者をイメージする方は多いかもしれませんが、子どもの病気に対する治療法ももっと広まれば良いですね。