高血圧の治療において、「オルメテック」のような降圧薬を飲み続けることに不安や疑問を感じていませんか? 「血圧が安定しているし、薬をやめても大丈夫なのでは…」と思うこともあるかもしれません。
しかし、自己判断での服用中止は大変危険です。
本記事では、高血圧がもたらす身体へのリスクを理解するとともに、代表的な血圧の薬剤である「オルメテック」との上手な付き合い方や、減薬や服用中止を考える際のポイントについて詳しく解説します。
日本人にとって、「高血圧」はとても身近な病気です。
では、血圧が高いとどうしていけないのでしょうか?
まずは、そのリスクについて正しく理解していきましょう。
高血圧が身体に与える悪影響
血管は本来、弾力性がありしなやかな状態です。
しかし、高血圧状態が長く続くと、血管の壁に常に強い圧力がかかった状態となります。
そして、血管の壁はその圧力に対応して、次第に厚く硬く変化していきます。
これが高血圧による動脈硬化です。
高血圧そのものには、痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
怖いのは、高血圧が続くことによる合併症です。
血管は全身に張り巡らされており、高血圧による動脈硬化が進行すると、身体のあちこちで生死やQOLに関わる重大な合併症を引き起こすリスクが高まるのです。
高血圧による主な合併症
部位 | 疾患例 |
---|---|
脳 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血 |
心臓 | 狭心症、心筋梗塞 |
腎臓 | 腎硬化症、腎不全 |
目 | 眼底出血 |
足 | 閉塞性動脈硬化症、壊疽 |
高血圧の定義と原因
診察室で血圧をくり返し測定し、最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧と診断されます。
高血圧の原因ははっきりと特定できないことが多いですが、加齢、体質など遺伝的な要因、生活習慣の大きく3つに起因すると考えられています。
加齢
血管が老化すると弾力性が失われ、血液の流れが悪くなって血圧が高くなりがちです。
また、女性は閉経後のホルモンバランスの変化によっても血圧が上がりやすくなります。
遺伝的な要因
体質が遺伝子し、両親ともに高血圧症である子どもは約50%が、両親のどちらかが高血圧症の場合は約30%が高血圧症になるという報告があります。
生活習慣
以下の生活習慣が高血圧の発症に繋がると言われています。
- 塩分の摂り過ぎ
- 肥満
- 過度の飲酒
- 運動不足
- ストレス
- 喫煙
その他にホルモン分泌異常や腎臓疾患、薬剤の副作用、睡眠時無呼吸症候群など、原因が明らかなタイプの高血圧症もあります。
高血圧に処方される「オルメテック」は何の薬剤か
高血圧と診断されると、生活指導に加えて血圧を下げる薬剤「降圧薬」が処方される場合があります。
降圧薬には様々な種類の薬剤がありますが、中でも、第一三共株式会社から販売されている「オルメテックOD錠20mg(通称:オルメテック)」がよく処方されています。
「オルメテック」の効果
「オルメテック」は、「オルメサルタン メドキソミル」を主成分とする降圧薬です。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)に分類され、血管を収縮させるアンジオテンシンIIという物質の作用をブロックすることで、血管を拡張させ、血圧を下げる効果を持ちます。
降圧剤の強さを一概に比較することは難しいですが、「オルメテック」は同じARBの降圧薬グループの中でも、その降圧効果が高いとされる薬剤です。
「オルメテック」の降圧効果は投与後1週間で発現し、4~8週間で最大効果に達することが臨床試験で確認されています。
即効性があるものではなく、効果が現れるまでに日数が必要なため、継続して使用することが大切です。
「オルメテック」を飲むタイミング
「オルメテック」は処方された用量を1日1回服用します。
1日の中での服用タイミングに特に定めはありません。
かつては、血圧の薬剤は夜に服用することで朝の血圧上昇を抑制し、心血管イベントの予防に効果的かもしれないという考え方もあったようですが、最新の研究結果によると、服用する時間帯によって心血管イベントの発生率や死亡リスクに有意な差はないとされています。
「オルメテック」を朝食後に飲むべきか寝る前に飲むべきかを比較した研究もあり、その研究では両者に差はなかったと報告されています。
「オルメテック」の副作用
主な副作用として、ふらつきやめまい、立ちくらみといった低血圧の症状が報告されています。
血圧が下がりすぎるとどうなるかを想定して、高所での作業や自動車の運転など、危険を伴う機械の操作には注意する必要があります。
また、頭重感、咳、眠気、軟便などの報告もあります。
このような症状に気づいたら、担当の医師または薬剤師に相談してください。
「オルメテック」のジェネリック
先発品である「オルメテック」と同じ「オルメサルタン」を有効成分とするジェネリック医薬品は、多数販売されています。
一般的なジェネリック医薬品の場合、有効成分である「オルメサルタン」に違いはありませんが、成分の仕入れ先や製造工程、添加物が異なる場合があります。
ただし、第一三共エスファ株式会社が販売する『オルメサルタンOD錠「DSEP」』は、オーソライズド・ジェネリックというジェネリック医薬品です。
オーソライズド・ジェネリックとは、原薬、添加物および製法などが先発品と同一のジェネリックや、特許使用の許可を得て開発された、いわば先発医薬品メーカーお墨付きのジェネリックです。
また、先発品である「オルメテック」は2024年現在、口腔内崩壊錠であるOD錠しか販売されていませんが、ジェネリックには錠剤タイプのものも販売されています。
販売中止となった「オルメテック」もあるけど大丈夫?
もともと、「オルメテック」は第一三共株式会社によって2004年に錠剤タイプのものが開発され、製造販売承認されていました。
そして、その後2017年に「オルメテック」の錠剤タイプは販売中止となっています。
「オルメテック錠」の販売中止の理由は、メーカーからの発表資料では「諸事情により」と記載があり、正確なことは分かりません。
効果や安全性に問題があった場合は、その旨が厚生労働省に報告されるので、その点は心配しなくても大丈夫です。
おそらく、「オルメテック錠」の特許が2017年に切れることにより、多くのジェネリック医薬品が販売されるため、それに備えて、まだ特許の残っているOD錠にメーカーが一本化した戦略なのではないかと予想できます。
なお、2024年現在は、OD錠タイプのジェネリックも販売されています。
降圧薬はどのくらいの血圧から必要か
血圧がどれくらい高さから投薬治療を開始すべきか、多くの議論がされていますが、日本の高血圧治療ガイドラインの指針を紹介します。
60歳未満の成人で軽症高血圧(140~159/90~99 mmHg)の方の場合、何らかのリスク要因を抱えていなければ、まずは生活習慣の改善を指導し、6ヵ月間様子を観察することとしています。
その後、140/90 mmHg 以上が続くならば降圧薬が開始されます。
中等症高血圧(160~179/100~109 mmHg)の方で、リスク要因や臓器障害がなければ生活習慣の修正で3ヵ月間観察し、それでも 160/100mmHg 以上が続くならば降圧薬の開始が勧められています。
重症高血圧(180/110 mmHg以上)では、直ちに生活習慣の修正とともに降圧薬を開始することとされています。
高血圧のお薬はやめられない!?
「高血圧のお薬は、一度飲み始めると一生飲まなくてはいけない」と思われている方は多いかと思います。
これは、半分正解で、半分誤りです。
まずは、半分正解という意味を解説します。
「オルメテック」などの降圧剤は、慢性疾患である高血圧を根本的に“治す”ことはできません。
降圧剤を飲んでいる間は血圧を下げることができますが、飲むのをやめると血圧はまた高くなってしまいます。
そのため、血圧をコントロールするためには、服用を継続する必要があるのです。
次に、半分誤りという意味を解説します。
高血圧治療では、投薬のほかに食事や運動といった生活習慣の改善も指導されます。
医師の指示に従い、服薬と生活習慣の改善を継続したことにより血圧が正常化し、その状態を維持している方の中には、高血圧以外にお持ちの糖尿病や慢性腎疾患、その他のリスク要因の状況にもよりますが、医師が薬剤の減量や中止を検討することがあります。
その場合は、血圧の状況をよく確認しながら、少しずつ薬剤を減らしていくことが多いです。
自己判断で高血圧の薬をストップするのは危険!
血圧の薬剤の減量や中止ができる場合もあると解説しましたが、それを自己判断で行うことは大変危険ですので、絶対にやめましょう。
医師は患者さんが薬剤の服用を中止しても生活習慣の改善を続けられそうか、生活習慣の改善だけで安定した血圧を継続できる全身状態なのかを総合的に判断して、薬剤の減量や休薬、中止の指示を出しています。
そして、その後の血圧の変化や全身状態の変化についても慎重に確認し診断する必要があります。
「オルメテック」をはじめとする降圧剤は、その服用を止めると、血圧が急上昇するリスクが高まります。
これは「リバウンド効果」と呼ばれ、脳卒中や心筋梗塞といった重大な合併症を引き起こす恐れがあります。
自己判断で高血圧の薬剤をストップする前に、服薬について少しでも不安なことがあれば、まずは医師に相談するようにしましょう。
高血圧の薬は「予防薬」と考えよう
慢性疾患である高血圧は、適切な治療と生活習慣の改善によって管理できますが、現代医療で完治はできません。
長く薬剤を飲み続けていると、煩わしいと感じる時や、不安を感じることもあるでしょう。
そんな時は、ひとりで迷わず医師や薬剤師にその気持ちを相談してみてください。
「オルメテック」をはじめとする高血圧の薬剤を、生死に関わる重大な合併症の「予防薬」と考え、うまく付き合っていきましょう。