関節リウマチの痛みは、日々の生活に大きな影響を与える辛いものです。
関節の腫れやこわばりに苦しみ、鎮痛剤に頼ることで何とか症状を和らげたいと感じる方も多いでしょう。
しかし、鎮痛剤を毎日飲んでも問題ないのか、気になるところです。
そこで本記事では、関節リウマチの辛い痛みに対する鎮痛剤の使い方や、そのリスクについてわかりやすく解説しながら、薬剤以外で痛みを和らげる方法もご紹介いたします。
痛みと上手に付き合いながら、安心して治療を続けるためのヒントを一緒に探っていきましょう。
関節リウマチ、なぜ強い痛みが生じるの?
関節リウマチは、免疫の働きに異常が生じることにより、誤って自分自身の細胞や組織を攻撃してしまう病気です。
これにより炎症が起こり、関節の腫れや痛みとなって現れてきます。
さらに炎症が続くと軟骨や骨が破壊され、腫れや痛みも悪化してしまいます。
痛みは慢性的で、特に朝に強く現れることが多く、関節を動かさなくても痛みが生じるのが、他の関節の病気と異なる点です。
関節リウマチの原因は、遺伝的要因や細菌・ウイルスの感染などが考えられていますが、まだよくわかっていません。
関節リウマチの治療法
近年の関節リウマチ治療は、薬剤を使った治療(薬物療法)が中心です。
そこへ、関節の動きを維持して筋力を保つためのリハビリテーションや、関節置換や修復のための手術などを必要に応じて組み合わせて治療を行います。
関節リウマチに使用される薬剤は、「抗リウマチ薬」、「副腎皮質ステロイド」、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」に大きく分類されます。
このうち、関節リウマチを主体となって治療する薬剤が、メトトレキサートや生物学的製剤なども含めて、大意での「抗リウマチ薬」です。
リウマチの免疫異常を調節・抑制することで関節の炎症を抑え、症状を軽減し、関節破壊の進行を防ぎます。
これに対して、鎮痛剤として痛みや炎症を抑える補助的な治療に用いられる薬剤が、「副腎皮質ステロイド」と「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」です。
例えば、痛み止めで有名なロキソニンはNSAIDsの一種で、関節リウマチの辛い痛みを抑える目的には効きますが、根本原因であるリウマチの免疫異常には働かないので、関節リウマチ自体には効かないということです。
「副腎皮質ステロイド」と「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」は抗リウマチ薬と併用の上、必要最小量を短期間で使用することが一般的です。
関節リウマチ治療薬一覧
分類 | 薬剤の種類 | 例 |
---|---|---|
リウマチを治療するための薬 | 抗リウマチ薬 | メトトレキサート、生物学的製剤、JAK阻害薬 など |
痛みや炎症を抑える薬 (補助的な治療) | 副腎皮質ステロイド (ステロイド薬) | プレドニゾロン など |
非ステロイド性抗炎症薬 (NSAIDs) | ロキソプロフェン、セレコキシブ など |
痛み止めの使い方
リウマチでとにかく辛いのが、関節の痛みです。
抗リウマチ薬で根本治療をしながらも、今ある痛みを和らげるには、痛み止めをうまく使っていきましょう。
関節リウマチの痛み止めには、一般的には消炎鎮痛剤である非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が処方されます。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の特徴別治療薬まとめ
NSAIDsと呼ばれる消炎鎮痛剤は、現在20種類以上が処方されています。
関節リウマチの痛み止めとして処方される代表的なものを、特徴別に一覧にまとめました。
種類 | 商品名(成分名) | 特徴 |
---|---|---|
抗炎症作用の強い薬剤 | バファリン(アスピリン)、ボルタレン(ジクロフェナク)、インダシン(インドメタシン)、ナイキサン(ナプロキセン) |
炎症を強力に抑える反面、胃腸障害などの副作用が起こりやすい場合があります。 副作用を防ぐために、胃薬を併用すること、決められた量以上は飲まない、などの注意点は必ず守りましょう。 |
プロドラッグタイプの薬 | ロキソニン(ロキソプロフェン)、クリノリル(スリンダク) |
肝臓で代謝を受けてからはじめて効果が現れるタイプの薬剤です。 そのため、胃の粘液への影響は、他の非ステロイド性抗炎症薬より少なく、腎臓への影響も少ないと考えられています。 |
長時間作用型の薬剤 | フルカム(アンピロキシカム)、レリフェン(ナブメトン)、モービック(メロキシカム) | 効果の持続時間が24時間以上あり、1日1回の服用ですみます。 |
COX-2選択的阻害薬 | セレコックス(セレコキシブ)、ハイペン(エトドラク) |
痛みや腫れ、発熱を起こすもとになる物質を産生する酵素を選択的に抑えます。 そのため、副作用が少ない薬剤です。 |
口から飲まないタイプの外用薬 | ボルタレン坐剤(ジクロフェナク)、フェルデン坐剤(ピロキシカム) |
肛門から入れて直腸で吸収されるタイプの薬剤です。 胃に直接作用せず、吸収が早いため、痛み止め効果が出るのも早いです。 |
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は毎日飲んでも大丈夫?
抗リウマチ薬の効果が表れるまでの間、辛い痛みや炎症をコントロールするためにNSAIDsは欠かせない薬剤です。
しかし副作用の観点から、毎日続けて飲むことには慎重な対応が必要でもあります。
まず、NSAIDsは胃や腸の粘膜に負担をかけやすく、長期間使用することにより胃潰瘍や消化管出血などの消化器系トラブルを引き起こす可能性があります。
また、腎臓や心臓にも負担をかけることがあり、高齢者や心臓病、腎臓病の既往がある方は特に注意してください。
NSAIDsを長期間にわたって毎日服用する場合は、医師と相談しながら、定期的な検査やモニタリングを受けることが重要です。
場合によっては、胃を守る薬剤(胃粘膜保護薬)を併用したり、カロナール(アセトアミノフェン)などの軽めの痛み止めに変更したりすることがあります。
痛み止めを毎日飲み続ける必要がある場合は、必ず医師の指導に従いましょう。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の中でも副作用が少ないもの
痛み止めの中でも、COX-2選択的阻害薬であるセレコックス(セレコキシブ)は潰瘍などの消化器系トラブルを起こしづらいと言われています。
その理由を理解するためには、COX(シクロオキシゲナーゼ)という酵素の役割がポイントとなります。
COXという酵素は主に2種類あり、COX-1が胃や腸の粘膜を守ったり、腎臓の血流を保ったりするなど、身体の正常な機能に関与しています。
一方、COX-2は炎症や痛みが起こる際に主に活性化される酵素で、これが痛みや腫れの原因となります。
従来のNSAIDsはCOX-1とCOX-2の両方を阻害するため、痛みや炎症は抑えられますが、同時にCOX-1の働きも抑えられてしまい、胃腸障害や腎機能障害といった副作用が出やすくなります。
一方、セレコキシブはCOX-2だけを阻害することで、炎症を抑えつつもCOX-1の働きを保つため、胃腸や腎臓への負担が少なく、消化管出血などの副作用が出にくいとされています。
関節リウマチのように、長期間、毎日痛み止めを飲まなくてはならない方にとっては、セレコキシブは画期的な痛み止めとして重宝されています。
市販薬の痛み止めを使っても大丈夫?
バファリン(アスピリン)やロキソニン(ロキソプロフェン)は、薬局でも購入できる痛み止めです。
急な痛みに対して、かかりつけの医師に処方された痛み止めがない場合、市販の痛み止めを使っても大丈夫ですが、購入時に薬剤師に相談するようにしましょう。
また、今後の治療計画に重要な情報となりますので、かかりつけの医師に市販の痛み止めを使ったことを必ず伝えるようにもしてください。
市販薬の痛み止めであっても、NSAIDsには先に解説したような副作用のリスクが処方薬と同様にあります。
自己判断で市販薬のロキソニンなどを毎日飲み続けることは危険ですので、避けてください。
ロキソニンやセレコックスなどの痛み止めが効かない場合
ロキソニンやセレコックスでは治まらないような強い痛みや腫れの時には、プレドニゾロンなどのステロイド薬を数日間だけ使ったりもします。
ステロイドは身体の炎症を抑えるのに高い効果と即効性がありますが、リウマチ自体を治療はできません。
したがって、やはりステロイドもあくまで痛みが強くて日常生活が送れない場合の補助的治療薬として使用されます。
ステロイドを長く使っていると、骨粗しょう症や糖尿病、肺炎などの感染症になりやすくなるという副作用がありますので、必ず医師の指導に従って使用するようにしましょう。
痛み止めを飲む以外で痛みをとる方法
腫れや痛みが強い時は、関節を温めることで痛みやこわばりを和らげることができる場合があります。
ホットパック(保温性のあるゲルを厚手の布地に包んだもの)もしくは、タオルや毛布などに温水を吸収させて、痛む関節を温めてあげましょう。
お風呂にゆっくり入り、お湯で手足を温めて筋肉をほぐしてあげるのも効果的です。
ただし、関節が腫れて熱を持っている場合には冷やしたほうが良いことがあります。
関節の中で強い炎症が起きている場合は、冷やして炎症を和らげる、抗炎症作用のある湿布を貼るなどが効果的です。
痛みがひどい時はどうしたらいいか
リウマチになると、関節が固まってしまうことや寝たきりになってしまうことを恐れ、痛みがあっても頑張って関節を動かそうとされる方が多いです。
しかし、炎症が残っている時点では、むやみに動かさない「安静にする」ことも大切です。
痛みを我慢して頑張ってしまうと、炎症が悪化し、逆効果になる場合があるからです。
リウマチは長く付き合っていく必要がある病気です。
頑張り過ぎず、リハビリ運動は、リウマチの痛みや腫れがない調子の良い日に行いましょう。
関節リウマチは治療期間も長く、一生付き合っていかなければならない病気です。
痛みと向き合うのはとても辛く、不安な気持ちも大きくなるでしょう。
決して一人で抱え込まず、専門の医師や薬剤師に相談しながら治療を行っていきましょう。
適切な治療とサポートを受けることで、その負担を少しでも軽くすることができますよ。
この記事も、少しでも皆さんの痛みや不安を軽くする手助けになれば幸いです。