「ビジュアルスノウ症候群」とは？海外の最新マインドフルネス治療を解説！

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皆さんは、「ビジュアルスノウ症候群」という病気をご存じでしょうか。
この病気は、視界にチラチラと光りのようなものが見える病気で、今のところ治療がありません。

しかし、今回ご紹介するのは、ガイ・アンド・セント・トーマス病院とムーアフィールド眼科病院の共同チームが行った最新の治療法を探る研究です。
どのような方法が効果的なのか、実際に最新治療を受けた患者さんはどうだったのか、詳しくご紹介していきます。

ビジュアルスノウ症候群とは？

ビジュアルスノウ症候群（Sisual Snow Syndrome: VSS）は、視界に白や黒、あるいは透明や色のついた点が絶え間なくチラチラと見える神経疾患です。

日本語では「降雪視症候群」と言います。
この現象は、古いテレビのノイズやスノードームの中を覗いているような感覚に近く、脳が視覚情報を処理する方法に影響を与えます。

症状は非常に不快で、偏頭痛や耳鳴りを伴うことが多く、現在のところ効果的な治療法がないため、多くの患者さんが苦しんでいます。

原因は現在も不明

ビジュアルスノウは突然発症することがあり、特定のリスク要因が明確でないため、自分には関係ないと思っている方も多いかもしれません。
しかし、誰にでも起こりうる可能性があり、症状に気づかないまま放置してしまうと、症状が悪化する可能性もあります。

この症状の原因は現在も不明ですが、脳の異常な興奮が関与している可能性が高いとされています。
MRI検査では脳の血流増加が確認されており、異常な電気信号が視覚に影響を与えると考えられています。

ただし、診断が難しい病気であるため、目の症状だけで自己判断するのは避けるべきです。

ビジュアルスノウ症候群と飛蚊症の違い

この症候群は、飛蚊症と間違われやすいものです。
飛蚊症は目の硝子体に混濁が生じ、蚊のような小さな物体が視界に浮かぶように見える症状ですが、ビジュアルスノウはそれとは異なります。

光がチカチカしたり、視界全体に砂嵐のような模様が現れたりすることがあり、この状態が長期間続くことが特徴です。

さらに、光に対して過敏になり、夜間の視力が低下することも報告されています。
患者さんの中には、この症状が一生続くと考えると、日常生活や精神的に大きな影響を受ける方もいるようです。

卓球選手の水谷隼さんも経験

実は、ビジュアルスノウ症候群は卓球選手の水谷隼さんも経験しているそうです。
金メダルを獲得した東京オリンピックの後、彼はこの症状に悩まされ、現役を引退する決断をしたと言われています。

この病気の辛さを考えると、多くの人が水谷選手の決断に納得できるのではないでしょうか。

ビジュアルスノウ症候群を知る医師が少ないため、診断がつかない患者さんも多く、治療法の確立に至っていないのが現状です。
しかし、水谷選手の公表によりこの病気への関心が高まり、今後の診断や治療法の進展が期待されています。

ビジュアルスノウ症候群の新たな治療研究

2023年11月22日、ビジュアルスノウ症候群に対する新たな治療法を探る画期的な研究が発表されました。
この研究は、ガイ・アンド・セント・トーマス病院とムーアフィールド眼科病院の共同チームによって行われており、特に注目されるのは、マインドフルネスに基づく認知療法（MBCT）の効果を検証するという点です。

一般的なマインドフルネスとは

今回の治療法のキーワードとなるのはマインドフルネスです。
一般的にマインドフルネスとは、過去や未来にとらわれず、現在の瞬間に意識を集中させることで、自分の心身や周囲の状況をありのままに観察する状態を指します。

この状態を意識的に作り出すことで、心の静けさやバランスを保つ効果が期待できるのです。
マインドフルネスは仏教の瞑想に由来していますが、現代では健康法や心理療法として幅広く活用されています。

マインドフルネスを実践する方法としては、瞑想が一般的です。
瞑想を継続的に行うことで、意識的に現在に集中する力を養い、その効果を高めていくことができます。

ただし、マインドフルネスを過度に行うと、精神的に不安定になる場合もあります。
これは「禅病」や「魔境」と呼ばれ、瞑想による精神の過負荷が原因です。
そのため、適度なバランスを保ちながら実践することが重要です。

マインドフルネスの主なメリットとして、ストレスの軽減や脳の疲労回復、集中力や創造力の向上が挙げられます。
ストレスに対する耐性が高まり、生産性や幸福感も向上します。

また、自律神経のバランスを整える効果もあり、心身のリラクゼーションが促進されると言われています。
実際、うつ病や不安障害などの治療にもマインドフルネスが取り入れられており、医療分野でもその有効性が認められています。

今回は、そのビジュアルスノウ症候群バージョンをご紹介するというわけです。

2019年から続く研究を改良

ビジュアルスノウ症候群は視覚に影響を与える神経疾患で、視覚に関わる脳のネットワークに問題が生じることで発症します。

2019年にスイ・ウォン博士は、マインドフルネスの集中的なトレーニングによって、脳の経路を訓練し、ビジュアルスノウ症候群を改善できる可能性があるという仮説を立てました。
この仮説は、過去の研究でマインドフルネスが脳の経路に変化を与えることが示された成果に基づいています。

2022年に完了した小規模な研究で使用したのは、マインドフルネス認知療法（MBCT）のカスタマイズ版プログラムだったとのことです。

マインドフルネス認知療法（MBCT）とは？

マインドフルネス認知療法（MBCT）は2002年に開発された8週間のプログラムで、元々はうつ病の再発を防ぐために作られたものです。

このプログラムをビジュアルスノウ症候群に合わせて調整したものを「MBCT-vision」と呼び、その有効性を検証するための研究結果は「Journal of Neuro-Ophthalmology」に近々掲載される予定です。

MBCT-visionでは、参加者は8週間にわたって週に1回グループで集まり、マインドフルネスや認知スキルを学びます。
また、自宅練習も行います。

MBCT-visionで学ぶ内容

MBCT-visionでは、マインドフルネスと認知スキルが中心となります。
マインドフルネスとは、現在の経験に対して穏やかに注意を向けるものです。
これにより、脳のネットワークに変化をもたらすことができるという研究結果も出ています。

また、認知スキルでは、私たちの思考や感情、行動がどのように相互作用しているかを探り、1つの側面に前向きな変化が起きた際に、他の領域にどのような影響を与えるかを考察します。

眼科医、神経科医、患者さんのタッグで挑戦

今回の研究には、眼科医や神経科医、そしてこれまでマインドフルネスに取り組んだことのないビジュアルスノウ症候群の患者さんが参加しています。
参加者は機能的MRIスキャンを通じて、視覚ネットワークの変化が症状にどのような影響を与えるかを検証しています。

このスキャンは、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ神経学研究所で実施されており、NHS（イギリスの国民保健サービス）全体の協力のもとで行われている点も、この研究の大きな特徴です。

ポイントは「脳の視覚処理経路の修正」

今回の研究では、ビジュアルスノウ症候群の患者さんに対してマインドフルネスを取り入れた認知療法が症状の緩和に役立つかどうかを調査しています。
このアプローチは、脳の視覚ネットワークに働きかけることで、症状を軽減する可能性があるとされています。

研究の主導者であるスイ・ウォン博士は、このマインドフルネスを「脳トレーニング」の一種と表現し、脳の視覚処理経路を修正することで、ビジュアルスノウの原因となる静的なイメージを減少させられるかどうかを探っています。

マインドフルネス療法を受けた患者さんの感想

この症状を抱える患者さんの一人である29歳のアイラ・コリンズさんは、2018年にビジュアルスノウ症候群を発症しました。
彼女は、視界に突然ノイズが現れるようになり、次第に飛蚊症や残像、閃光、視覚の揺れといった他の症状も発現したと言います。
症状が進行するにつれ、視力を失う恐怖に襲われたアイラさんは、ウォン博士の研究に参加し、8週間にわたるマインドフルネス療法を受けることを決意しました。

彼女は治療について、次のように述べています。
「最初は効果があるのか半信半疑でしたが、約2ヵ月経つ頃には視覚症状の強さが明らかに緩和されました。ウォン博士は、この症状に苦しむ人々を救おうとする情熱を持った素晴らしい医師です。」彼女の体験は、多くのビジュアルスノウ患者にとって希望となるものになりました。

ビジュアルスノウ症候群は、まだ十分に理解されていない疾患であり、特にその原因や治療法に関する研究は非常に限られています。
今回の研究は、ビジュアルスノウに悩む患者さんにとって重要な一歩であり、マインドフルネスを使ったアプローチが症状改善のカギを握るかもしれません。

マインドフルネスは、心の平穏を保つためのトレーニングとして広く知られていますが、視覚系に対してもポジティブな影響を与える可能性が示唆されています。