ニゾラールが作用するメカニズムを徹底解説|対象疾患や使い分けについても紹介

「ニゾラールのクリームは何に効くの?」
「ニゾラールはどのように塗ればいい?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、真菌感染症に対する治療薬であるニゾラールについて徹底解説。
ニゾラールが効果を発揮する疾患や、クリームタイプとローションタイプの使い分けについても紹介します。
ニゾラールについて詳しく理解したい人に必見の内容です。
ぜひ最後までご覧ください。
ニゾラールとは真菌に対する塗り薬
ニゾラールとは真菌に対する塗り薬です。
そもそも真菌とはどのような病原体なのか、ニゾラールはどうやって働いているのか、以下で詳しく見ていきましょう。
真菌とは何か
感染症を引き起こす病原体と言えば、細菌やウイルスを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
確かに細菌やウイルスによる感染症は一般的ですが、真菌と呼ばれる病原体による感染症も少なくありません。
まずは、真菌と細菌やウイルスの違いを解説します。
真菌・細菌とウイルスを比較した時、最大の違いは自己増殖能の有無です。
自己増殖能とは、病原体自身が単独で増殖できるか否かを指しています。
真菌とほとんどの細菌には自己増殖能がある一方で、ウイルスには自己増殖能がありません。
続いて、真菌と細菌を比較していきましょう。
私たちは遺伝情報をDNAという形で保存していますが、病原体も同じようにDNAもしくはRNAとして保存しています。
真菌の場合、DNAもしくはRNAが核膜という膜で包まれており、この構造は核と呼ばれています。
一方、細菌の場合はDNAもしくはRNAがむき出しの状態です。
なお、真菌のように核を持っている生物を真核生物と言い、細菌のように核を持たない生物を原核生物と言います。
私たち人間も真核生物に属しています。
真菌により引き起こされる感染症が真菌感染症です。
真菌感染症は、病気が起こっている場所により以下の3つに分けられます。
- 表在性真菌症…皮膚や粘膜の表皮、爪、髪の毛に生じる感染症
- 深部皮膚真菌症…真皮(皮膚のなかでも表皮より深い場所)や皮下組織に生じる感染症、創傷などを介して生じる
- 深在性真菌症…肺や腸などの全身の臓器に生じる感染症、免疫機能が低下している人に生じやすい
このうち、ニゾラールは表在性真菌症を標的としています。
ニゾラールが作用するメカニズム
ニゾラールが真菌性の皮膚炎をどうやって治すのか理解するためには、真菌の特徴を知る必要があります。
ポイントは、「エルゴステロール」という成分です。
真菌の細胞は私たち人間の細胞と同様に、細胞膜という膜に包まれています。
相違点は、真菌の細胞膜がエルゴステロールを主成分としている点です。
そして、ニゾラールにはエルゴステロールの生合成を阻害する働きがあります。
エルゴステロールが生合成されなければ細胞膜を作れないため、真菌は増殖できません。
一方、人間の細胞膜にはエルゴステロールが含まれていないため、人間の細胞には悪影響を及ぼさないのです。
ニゾラールの4つの効果
ニゾラールが効果を発揮できる疾患は以下の4つです。
- 白癬
- 皮膚カンジダ症
- 癜風
- 脂漏性皮膚炎
それぞれの疾患について詳しく解説します。
①白癬
白癬とは、「白癬菌属」「表皮菌属」「小胞子菌属」という真菌により生じる真菌感染症です。
感染部位により分類され、足白癬・爪白癬・手白癬・体部白癬・股部白癬・頭部白癬などがあります。
最も多いのが足白癬であり、一般的には水虫と呼ばれています。
主に足の指の間に発生し、水ぶくれや強い痒みが特徴的です。
②皮膚カンジダ症
皮膚カンジダ症とはカンジダ属菌により生じる真菌感染症です。
陰股部・陰嚢・肛門周囲・腋窩・指間・爪囲などの皮膚や爪に生じます。
免疫機能が低下している人や抗菌薬を使用している人によく起こります。
赤い皮疹やただれなどの症状が特徴的です。
③癜風
癜風とはマラセチア属菌により生じる真菌感染症です。
胸部・背部・頚部・上腕などの体幹部において、多くの汗をかく夏によく生じます。
痒みがあまりない、褐色の皮疹が特徴的です。
④脂漏性皮膚炎
脂漏性皮膚炎とは皮脂の過剰分泌による皮膚炎であり、ニキビのような吹き出物が生じる場合があります。
よく生じる部位は頭部・顔面・腋窩です。
詳しい原因は解明されていませんが、マラセチア属真菌の関与が考えられています。
ニゾラールの2つのタイプ
ニゾラールにはクリームタイプとローションタイプがあります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
①ニゾラールクリーム
ニゾラールクリームは「ヤンセンファーマ」という製薬会社に製造されており、薬価は18.4円/gです。
白癬・皮膚カンジダ症・癜風に対しては1日1回、脂漏性皮膚炎に対しては1日2回患部に塗ります。
ニゾラールクリームの使い方はとても簡単です。
人差し指の第一関節まで絞り出すと、およそ0.5gのクリームが出てきます。
0.5gのクリームは両手の手のひらほどの範囲に広げられるので、目安としてください。
②ニゾラールローション
ニゾラールローションは「岩城製薬」という製薬会社に製造されており、薬価は22.1円/gです 。 クリームタイプと同様に、白癬・皮膚カンジダ症・癜風に対しては1日1回、脂漏性皮膚炎に対しては1日2回患部に塗ります。
ニゾラールローションの使い方は以下の通りです。
- キャップをしたまま容器をよく振る
- キャップを外して先端を手のひらに押し当てる
- 先端を押し当てながら容器の中央部を押し、薬液を出す
- 適当量の薬液を患部に塗る
最初にしっかり容器を振らないと、有効成分が出てこない可能性があるため気をつけましょう。
なお、ニゾラールローションは2022年4月1日に、ヤンセンファーマから岩城製薬へ製造販売業務が移管しています。
移管の際に「ニゾラールローションが販売中止になった」と噂が一部で流れましたが、実際に販売中止になったわけではありません。
クリームタイプとローションタイプの使い分け
ニゾラールのクリームタイプとローションタイプでは、塗った際の使用感が大きく異なります。
クリームタイプを塗るとどうしてもベトついてしまうため、頭部にはローションタイプが使われています。
皮膚への浸透力の違いも大きなポイントです。
ローションタイプの方がクリームタイプよりも浸透力が強いため、皮膚が厚い部分にはローションタイプが適しています。
一方、皮膚が浸潤している部分にはクリームタイプが推奨されます。
ニゾラールに関するQ&A
ニゾラールに関するよくあるQ&Aを紹介します。
気になる疑問をここで解消しましょう。
Q.ニゾラールを塗れば皮膚真菌症はどれくらいで治る?
皮膚真菌症と一口に言っても、治療期間は疾患やその重症度により大きく異なります。
主な疾患の大まかな治療期間は以下の通りです。
- 手・足白癬…約2ヵ月~半年
- 体部白癬…約1ヵ月
- 皮膚カンジダ症…約2~4週間
- 癜風…約2~4週間だが、再発するケースも少なくない
- 脂漏性皮膚炎…数年以上かかるケースが多い
実際にどれぐらいで治る見込みなのか知りたい場合は、遠慮せずに医師に尋ねてみましょう。
Q.ニゾラールのシャンプータイプはある?
海外にはニゾラールのシャンプーがありますが、日本国内では認可されていません。
入手したい場合は個人輸入する必要があります。
副作用が生じても国の救済制度は受けられないため、ニゾラールシャンプーの使用は自己責任となります。
Q.ニゾラールは陰部に塗っても大丈夫?
ニゾラールは陰部にも使用可能ですが、デリケートな部位であるため使う前には医師とよく相談しておきましょう。
まとめ:真菌感染症に対してニゾラールを適切に使おう
ニゾラールは、真菌の細胞に特有の成分を攻撃する治療薬です。
水虫や皮膚カンジダ症をはじめとする、様々な皮膚の真菌感染症に使われています。
ニゾラールにはクリームタイプとローションタイプがあり、それぞれ使用感や浸透力が異なります。
患部に合わせて適切に塗り、真菌感染症の治療に役立てましょう。