2024年7月4日、海外の医療ニュースサイトで驚きの出来事が報じられました!
それは、生まれた時から心臓よりも大きな腫瘍を持っていた赤ちゃんが、医師たちの奮闘によって予想を覆し、奇跡的に命をつないだという話です。
この記事では、ロンドンにあるエヴェリーナ小児病院の医療チームがどのようにしてこの命を救ったのか、その詳細をご紹介します。
結節性硬化症複合体とは?
大きな腫瘍を持って生まれた赤ちゃんの病名は、「結節性硬化症複合体(Tuberous Sclerosis Complex:TSC)」というものでした。
結節性硬化症複合体は、遺伝子の変異によって引き起こされる病気です。
脳や皮膚だけでなく、心臓や腎臓、肺など、重要な臓器に腫瘍が形成されることがあります。
腫瘍は通常は良性で、がん化することはほとんどありませんが、場合によっては重篤な合併症を引き起こすこともあります。
発症の原因と遺伝的背景
結節性硬化症複合体は、TSC1またはTSC2と呼ばれる2つの遺伝子のいずれかに変異が生じることによって発症します。
この変異は、親から受け継ぐ場合と、新たに発生する突然変異として発症する場合があります。
親が結節性硬化症を持っている場合、その子どもが発症する確率は50%とされていますが、実際には多くのケースで新たに突然変異が発生し、親に病気がないにもかかわらず発症することが多いそうです。
結節性硬化症複合体の発生率は約6,000人に1人とされており、比較的まれな疾患です。
主な症状
結節性硬化症複合体の症状は、軽度から重度まで非常に幅広く、個人差が大きいと言います。
脳に腫瘍ができると、てんかん発作や知的障害、自閉症スペクトラム障害などの神経症状が現れます。
特に乳幼児期には「点頭てんかん」と呼ばれる特有の発作が最初の症状として現れることがあり、この発作が結節性硬化症の早期発見の手がかりとなることもあります。
皮膚症状としては、葉の形をした淡い斑点(葉状白斑)が乳幼児期に見られることが多く、これが結節性硬化症を疑うきっかけになることがあります。
また、オレンジの皮のような凹凸のある「シャグリンパッチ」と呼ばれる皮膚病変や、顔に血管線維腫と呼ばれる赤い腫瘤が現れることもあります。
さらに、小児期から成人期にかけて、爪の周りに線維腫ができることもあります。
その他の臓器にも影響が出ることがあり、例えば心臓には出生前から横紋筋腫という良性の腫瘍が見られることがあり、これが新生児期に心不全を引き起こす場合もあります。
今回、イギリスで報じられた赤ちゃんの例はこれに当たる可能性があります。
この腫瘍は通常、時間とともに縮小し、問題を引き起こすことは少なくなるそうです。
腎臓にも腫瘍や嚢胞ができることがあり、高血圧や血尿を引き起こすことがあります。
また、青年期の女子では肺にリンパ脈管筋腫症と呼ばれる病変が現れることもあるとのことです。
診断と検査方法
結節性硬化症複合体の診断は、診断基準に基づいて行われます。
これには、身体診察、画像検査(MRIや超音波)、遺伝子検査などが含まれます。
例えば、皮膚の病変やてんかん発作、発達の遅れなどが診断の手がかりとなります。
また、遺伝子検査を行うことで、TSC1またはTSC2の変異が確認されれば、診断が確定します。
今回の赤ちゃんのような一部のケースでは、出生前の超音波検査で心臓や脳に腫瘍が見つかり、結節性硬化症複合体が疑われることもあります。
特に、家族歴がある場合には、出生前診断や遺伝カウンセリングが推奨されています。
治療法と生活への影響
結節性硬化症複合体の治療は、主に症状の緩和と合併症の管理を目的としています。
てんかん発作に対しては抗てんかん薬が使用されますが、薬剤の効果が不十分な場合には外科手術で腫瘍の切除が検討されます。
その他、腎臓や肺の腫瘍に対しては手術が行われることもあります。
新しい治療法として、シロリムスやエベロリムスといった薬剤が注目されています。
これらの薬剤は、腫瘍の縮小やてんかん発作の軽減に効果があるとされ、一部の患者さんで脳や皮膚の腫瘍が小さくなったり、顔面の病変が改善したりすることが報告されています。
また、日常生活においては、定期的な医療モニタリングが必要とのこと。
新しい症状が現れる可能性があるため、生涯にわたるフォローアップが重要です。
結節性硬化症複合体で生まれたアメリアちゃんの成長
物語の主人公はアメリアちゃん。
彼女は生まれつき結節性硬化症複合体を抱えており、妊娠中のスキャンで心臓に大きな腫瘍が見つかりました。
そこから彼女と、彼女の母親の戦いが始まります。
母親ウィータさんの苦悩
母親のウィータさんと家族は頻繁に検査を繰り返し、そのたびにアメリアちゃんの成長とともに腫瘍が拡大していることを目の当たりにしてきたそうです。
「妊娠中は火曜日にスキャン、金曜日に血液検査を受けるのが日課になっていました。悲しいことに、腫瘍が増殖して大きくなっていると何度も言われ、毎回悪い知らせばかりでした」と語るウィータさん。
ご家族は、「次の検査ではもしかしたら腫瘍が小さくなっているかも…!」という期待をしていたかもしれません。
しかし、妊娠36週で早産となった時、レモン大の大きな腫瘍に比べると、アメリアちゃんの心臓はクルミほどの大きさだったそうです。
1歳で開胸手術3回
特に注目すべき点は、心臓のすぐ横にレモン大の腫瘍があり、その大きさが彼女の心臓自体を圧迫していたことです。
この状態では、出産後も生き続けることが難しいのではないかと医師たちは心配していましたが、アメリアちゃんはその予想を裏切り、驚きの生命力を見せたのです。
彼女は生まれてすぐ、エヴェリーナ小児病院の新生児集中治療室に運ばれ、そこで数ヵ月間化学療法を受けて、腫瘍を縮小できないかと医師が奮闘しました。
腫瘍の影響でアメリアちゃんの心臓弁は損傷し、1歳の時点で開胸手術が3回必要になりました。
最初の2回の手術は、損傷した心臓弁を修復・交換するもので、3回目の手術ではペースメーカーが取り付けられました。
エヴェリーナ病院の医療チームは、アメリアちゃんの心臓に対する腫瘍の影響が非常に大きく、彼女の命を救うためにこれ以上ない努力を尽くしました。
小児心臓専門医のアーロン・ベル氏は、アメリアちゃんの病状がどれほど深刻であったかを振り返り、通常、結節性硬化症を持つ子どもは年間に約6人ほどだが、アメリアちゃんの腫瘍はこれまでに見た中でも最大級だったと語っています。
それにもかかわらず、彼女は生まれた瞬間から医療チームを驚かせるほどの回復力を見せました。
腎細胞癌の手術の成功
アメリアちゃんの物語はここで終わりません。
彼女の病気は腫瘍が身体の他の部位にも発生する可能性があり、実際、昨年には腎臓に腫瘍が見つかり、腎細胞癌を発症しました。
このため、8月に部分的な腎臓切除手術が行われ、腫瘍とともに腎臓の一部が切除されました。
この手術は、エヴェリーナ小児病院の泌尿器科顧問医パンカジ・ミストラ氏が中心となって行われ、腫瘍外科医や他の専門チームとの協力によって成功を収めました。
ミストラ医師によれば、アメリアちゃんの手術は専門チームの努力の結晶であり、彼女の腎臓にできた腫瘍は小さな子どもには非常に珍しいものでした。
それでも手術は無事に終わり、アメリアちゃんは順調に回復を続けています。
言うことを聞かない元気いっぱいの4歳に!
現在、4歳になったアメリアちゃんは元気いっぱい!
彼女は非常に強い心の持ち主であり、母親であるウィータさんは彼女を「私のヒーロー」だと、以下のように語っています。
「アメリアは今4歳で、言うことを聞かないおかしな小さな猿(a crazy little monkey)に成長しました。彼女はとても強い性格の、私の素晴らしい小さなヒーローです。アメリアの世話をしてくれたチームはみんな素晴らしいです。彼女が生きているのはエヴェリーナ・ロンドンのおかげです」
ちなみに、「アメリア」という名前の由来についても、母親のウィータさんの話の中に答えがありました。
「スキャンを続けるうちに、アメリアの病状がいかに深刻であるかが分かりました。腫瘍が多数あり、1つは肺を圧迫し、もう1つは心臓の僧帽弁にありました。私たちは、戦士を意味するアメリアという名前に決めました。そして、彼女はその名前にふさわしい生き方をしてきました。」
彼女にピッタリの名前ですね!
彼女が今日も元気で過ごしているのは、エヴェリーナ小児病院の医療チームの献身的なサポートと、彼女自身の生命力のおかげでしょう。
まとめ
この物語を通して、医療の進歩と人間の生命力の強さを改めて感じることができます。
アメリアちゃんのように、非常に厳しい状況に直面しても、それを乗り越える力があるという希望を与えてくれる話ではないでしょうか。
今後も彼女はエヴェリーナ小児病院の各専門チームによる定期的な診察を受けながら、さらなる成長を遂げていくことでしょう。
秋には学校に通う準備も進んでいるそうです!彼女の未来には多くの可能性が広がっているんですね。