皆さんは、低フォドマップをご存じですか？
過敏性腸症候群（IBS）に悩む多くの人々にとって、力となる可能性を秘めている食事法が低フォドマップです。

しかし、最近の海外の研究結果が、信じられてきた治療法の効果に疑問を投げかけています。
この記事では、IBSに対する低フォドマップ食の有効性について、最新の海外の見解を探ります。

従来の常識を覆す可能性のあるこの新たな視点は、患者さんや医療従事者にとってどのような意味を持つのでしょうか。

低フォドマップとは？

過敏性腸症候群でお悩みの方や、お腹が弱い方は、低フォドマップを試してみてはいかがでしょうか。
まずは、その低フォドマップが何か、具体的に紹介していきます。

過敏性腸症候群の人にとって良くない食べ物とは？

低フォドマップ食は、過敏性腸症候群（IBS）などの消化器系の問題を抱える人々にとって、症状の軽減や生活の質の向上をもたらす可能性のある食事療法です。

「FODMAP」とは、

Fermentable（発酵性）
Oligosaccharides（オリゴ糖）
Disaccharides（2糖類）
Monosaccharides（単糖類）
and
Polyols（ポリオール：ソルビトール、マンニトール、キシリトール）

上記の頭文字を取った略語で、腸内で発酵しやすい特定の種類の炭水化物を指します。
これらの成分は、小腸で十分に消化・吸収されずに大腸まで到達し、腸内細菌によって発酵されることで、ガスの産生や水分の蓄積を引き起こします。
その結果、腹痛や膨満感、下痢、便秘などのIBS症状を悪化させる可能性があるのです。

特に、上記の特徴が濃い食べ物を「高フォドマップ」と呼んだりします。
以下の食べ物がそうです。

低フォドマップ食の主な目的は、上記のようなお腹の不快な症状を引き起こす可能性のある高フォドマップ食品を一時的に制限することで、消化器系の負担を軽減し、症状の改善を図ることです。

ただし、この食事療法は決して永続的なものではありませんし、効果に個人差があります。
具体的には、以下のような食品は低フォドマップで、お腹の不快な症状が出にくいとされています。

低フォドマップ食の実践方法

低フォドマップ食を実践する際は、以下のステップを踏むことが一般的です。

1. 除去期
   FODMAPを多く含む食品をすべて食事から除外します。
   この期間は通常約6週間で、この間、症状の変化を注意深く観察し、記録することが重要です。

2. 再導入期
   症状が改善したら、FODMAPを含む食品を一種類ずつ慎重に再導入していきます。
   この過程で、どの食品が症状の引き金となるかを特定します。

3. 維持期
   再導入期で特定された問題食品を避けつつ、許容できる食品を中心とした食生活を続けます。
   この段階では、栄養バランスを考慮しながら、できるだけバランスの取れた食事をします。

低フォドマップ食の実践上の注意点

FODMAPを多く含む食品と低FODMAP食品を見分けるのは、初めのうちは難しいかもしれません。
以下で紹介するような、信頼できる情報源や専門家のアドバイスを活用し、適切な食品選択ができるようにしましょう。

また、栄養バランスにも注意しましょう。
低フォドマップ食は一時的に多くの食品を制限するため、栄養不足のリスクがあります。
バランスの取れた食事を維持するために、代替食品の選択や、必要に応じてサプリメントの使用を検討するのも良いかもしれません。

低フォドマップ食の効果は個人差が大きいため、自分の身体に合わせてカスタマイズしていくことも重要です。
症状や反応を細かく記録し、それに基づいて調整を行っていきましょう。

低フォドマップ食は、一度にすべての制限を導入するのではなく、段階的に実施することも可能です。
時間がかかるデメリットはありますが、その分ストレスを減らせるので、妥協せずに自分に合わない食品を特定しやすくなります。

また、低フォドマップ食単独ですべてのIBS症状が改善するわけではありません。
ストレス管理や運動療法、薬物療法など、他の治療アプローチとの組み合わせを検討しましょう。

低フォドマップ食品を簡単に判別できるアプリが登場！

過敏性腸症候群（IBS）や他の消化器系の問題で低フォドマップ食を実践している方々にとって、日々の食事選択は大きな課題となります。

どの食品が安全で、どれを避けるべきか、常に頭を悩ませることになるでしょう。
しかし、そんな悩みを解決する強力なツールが存在します。
それが、モナシュ大学（Monash大学）が開発したFODMAPアプリです。

モナシュ大学のアプリの主な特徴

モナシュ大学は、FODMAPの食事法を最初に開発した研究チームとして知られています。
彼らの長年の研究と臨床経験に基づいて作られたこのアプリは、低フォドマップ食を実践する人々にとって、まさに必携のツールと言えるでしょう。

このアプリの特徴について、以下で見ていきましょう。

食品ガイドが細かく役立つ

アプリの最大の特徴は、食品のFODMAP含有量に関する細かい情報を提供していることです。
簡単に食品を検索し、それが低FODMAPか高FODMAPかを即座に確認できます。
買い物や外食時の食品選びが格段に簡単になりますね。

食品は以下のカテゴリーに分類されています。

• 低FODMAP（安全に摂取可能）
• 中程度FODMAP（摂取量に注意が必要）
• 高FODMAP（避けるべき）

また、各食品の適切な摂取量も示されており、どのくらいまで安全に食べられるかを知ることができます。

80以上の低FODMAPレシピ

食事制限があると、毎日の食事が単調になりがちです。
しかし、このアプリには80以上の美味しい低FODMAPレシピが収録されています。
これらのレシピを活用することで、制限があっても変化に富んだ、楽しい食生活を送れるでしょう。

レシピには以下のような特徴があります。

• 栄養バランスが考慮されている
• 調理手順が詳しく記載されている
• 使用する食材のFODMAP含有量が明確に示されている

アプリは直感的に使えるよう設計されており、デジタルに詳しくない人でも簡単に操作できます。
食品検索やレシピ閲覧、ガイドブックの参照など、必要な情報に素早くアクセスできるようになっています。

低フォドマップ食への疑問：消化器専門医Dr. Chutkanの見解

過敏性腸症候群（IBS）などの治療法として広く知られる低フォドマップ食。
しかし、この食事療法に対して疑問を投げかける声も上がっています。
アメリカの著名な消化器専門医であるDr. Robynne Chutkanは、低フォドマップ食に否定的な立場を取っています。

彼女の見解と、最新の研究結果について紹介します。

プレバイオティクス補充療法vs低フォドマップ食の結果

最近の4週間にわたる研究では、プレバイオティクスのサプリメントと地中海式食事を組み合わせた療法と、プラセボのサプリメントと低フォドマップ食を組み合わせた療法の効果が比較されました。

この研究では、糞便中の腸内細菌叢の構成、腸内ガスの産生、そして消化器症状が測定されました。

研究結果は以下の通りでした。

1. 4週間後、両グループとも消化器症状の改善が見られました。
2. しかし、腸内細菌叢の改善が有意に見られたのはプレバイオティクスグループのみでした。
3. 驚くべきことに、低フォドマップ食グループでは病原菌関連バクテリアの増加が観察されました。
4. 介入終了2週間後、プレバイオティクスグループでは症状改善が持続していましたが、低フォドマップ食グループではその効果が持続しませんでした。

Dr. Chutkanの見解

20年以上の臨床経験を持つDr. Chutkanは、機能性消化器障害の患者さんに対しても、低フォドマップ食を推奨していません。

その理由は以下の通りです。

1. 低フォドマップ食は本来、IBSの診断ツールとして開発されたものであり、治療食ではありません。
2. 症状を緩和する効果はあるものの、根本的な原因を治療するものではありません。
3. むしろ、腸内細菌叢から有益な細菌を減少させてしまう可能性があり、機能性消化器障害の治療において望ましくない結果です。

Dr. Chutkanは、腸内細菌叢を改善し、機能性消化器障害を根本から治療するための食事ガイドラインとして、「Veleo食」を提唱しています。
これは彼女の著書「The Microbiome Solution」（2015年）で詳しく説明されています。

研究結果の解釈に関する注意点

この研究結果は興味深いものですが、注意点もあります。

1. プレバイオティクスは、サプリメントよりも食品から摂取する方がより効果的であると考えられています。
2. 地中海式食事を「プラセボ」と呼ぶのは適切ではないかもしれません。
   この食事法は植物性の高繊維食品が豊富で、有益な腸内細菌の成長を促し、多くの健康上の利点が報告されています。
3. 研究で観察された変化が、プレバイオティクスのサプリメントによるものなのか、地中海式食事によるものなのか、あるいはその両方の組み合わせによるものなのかは、さらなる研究が必要です。

まとめ

低フォドマップの効果には個人差があります。
実際、ネット上でもたくさんの体験談がありますが、効果がある人、ない人、よくわからなかった人など様々です。

専門家でさえ肯定派と否定派に分かれるので、この記事で紹介した方法で試してみて、まずは自分に合うか確かめてみてはいかがでしょうか。