スーッとした清涼感が心地良いメントールは多種多様な外用薬に配合されている馴染み深い成分ですが、メントール入りの製品を使うと発疹や赤みなどの症状が起きてしまうことがあります。
今回はメントールについて知識を掘り下げ、メントールを使用すると何かしらの症状が起きてしまうメントールアレルギーについて解説します。
メントール入りの外用薬を使用すると肌荒れが起きてしまう方は、もしかするとメントールアレルギーなのかもしれません。
メントールとメントール系外用薬
様々な外用薬に使用されるメントールですが、どのような成分なのかご存知でしょうか。
まずはメントールとメントールが使用されている商品について、軽く触れていきます。
メントールとは
英語で「Menthol」と表記するメントールはメンソールとも呼ばれることがある、ハッカやミントに含まれている成分の1つです。
メントールには光学異性体があり、l-メントールは清涼感のある香りがする一方で、分子構造が鏡に写したように異なるd-メントールはかび臭いにおいがします。
天然成分のものはすべてl-メントールですが、人工的にメントールを合成するとl-体とd-体が同じだけできるのが特徴です。
少ない材料で効率よくl-メントールを作り出すために、現在一方だけを作る技術の開発が進んでいます。
メントールの効果
スーッとした清涼感と香りが特徴的なメントールには、以下のような作用があります。
- 冷感刺激
- 麻痺作用
- 抗炎症作用
- 防虫・忌避効果
- 抗菌作用
メントールを肌に塗るとスーッとした冷たい感覚が得られますが、メントール自体に皮膚を冷やす効果があるわけではなく、皮膚にあるセンサーがメントールに作用し、温度を下げた時と同じ反応をするためであると考えられています。
また、メントールには皮膚を麻痺させる効果があるため、かゆみや軽い炎症を抑える目的で使用されることがあります。
例えば、虫刺されのかゆみ止めにメントールが配合されているのも、冷感刺激や麻痺作用、抗炎症作用があるためです。
メントールアレルギーとは
アレルギーとは、免疫学的な機序によって身体に何らかの症状が引き起こされる病気です。
スギ花粉やダニ、卵や牛乳などのアレルギーが有名ですが、これはそれら物質が身体に入ることで免疫が過剰に反応するために起こります。
アレルギー反応を起こす物質には個人差があり、メントールについても特に問題なく使用できる人もいれば、アレルギー反応を引き起こしてしまう人もいるのです。
メントールアレルギーとはどんなもの?
メントールアレルギーとは、メントール成分が含まれた製品を使用・食用することで起こるアレルギー反応で、ミントアレルギーやハッカアレルギーと呼ぶこともあります。
ミントやハッカなどのハーブ類は自然派志向の方に人気の高く、身体に良いイメージを持っている方も多いかもしれませんが、実はハーブによってアレルギー反応を起こすケースは決して少なくありません。
ハーブの中でも香りの強いミント、カモミール、ラベンダーを始め、料理にも使われることの多いバジルやセージなどが原因となることもあります。
メントールアレルギーの症状
メントールアレルギーが起こる仕組みは食品のアレルギーと似ています。
メントールアレルギーの方がメントール系外用薬を使用すると皮膚が赤くなったり、痒くなったりする皮膚症状の他、くしゃみや鼻水などの呼吸器症状、消化不良などの胃腸障害、重篤な症状としてはアナフィラキシーショック反応が現れる可能性もあります。
また、喘息の患者さんは非ステロイド性抗炎症薬などを服用するとアスピリン喘息を引き起こす危険性があるのですが、このアスピリン喘息はミントが使われている歯磨き粉や化粧品などの外用薬、ガムや飴などの食品によっても発症する可能性があるため注意が必要です。
もし、メントール成分が配合された製品を使用・食用して体調に異変が起きた時には身体に合わない可能性があるため、速やかに医療機関を受診しましょう。
メントール系外用薬の種類
メントール系外用薬には様々な種類があり、多種多様な商品が販売されています。
例えば、メントールのスーッとした香りを苦手とする虫が多いことを利用した虫よけスプレー、冷感刺激や抗菌作用を利用した歯磨き粉、シャンプー、リップなどの化粧品、冷感刺激と抗炎症を目的とした湿布薬などがあります。
これらはメントールの作用を活かし、使用感や効果を高める工夫がされている製品ですが、万が一アレルギー反応が起きた場合には速やかに使用を中止して、医療機関を受診してください。
また、冷感刺激やかゆみを抑えるメントールの効果は一時的なものであり、抗炎症作用も他の医薬品と比較すると少ないうえに、化膿している患部にメントールを使用すると痛みが起きて症状が悪化するデメリットもあります。
そのため、市販ではメントール系外用薬の商品は多く販売されているものの、医療機関でメントールが配合された外用薬が処方されることはほとんどないのが現状です。
使用感が強く感じられるため市販薬では様々な製品にメントールが配合されていますが、デメリットやアレルギーなども含めた選択が重要であると言えるでしょう。
メントールアレルギー検査方法
メントールアレルギーなどハーブで起こるアレルギーの検査は次のような方法で行われます。
- 症状や生活習慣のヒアリング
- スキンテストや血液検査の実施
- アレルギー対策の指導
アレルギーの疑いがある時には、まず患者さんの症状や生活習慣についてのヒアリングを行い、何がアレルギーの原因となっているのか見当をつけていきます。
通常アレルギーの検査は物質や成分ごとに行い原因を特定していくため、メントールのアレルギー検査をした時にはメントールについての反応しか分かりません。
患者さんに起きているアレルギー反応も他に原因がある可能性も考えられるため、丁寧に確認していきます。
アレルゲンの見当がついたら、いよいよ検査を行います。
メントールを含めたハーブアレルギーでは、主にスキンテストと血液検査が行われます。
スキンテストは腕の内側などにハーブエキスを少量塗布して皮膚反応を確認する検査で、血液検査はアレルゲンに対する抗体量やアレルギーの有無をチェックする検査です。
スキンテストと血液検査を両方行うことで、より正確にアレルギーについての判断ができるとされています。
アレルギーの検査結果が出たあとは、アレルギー対策の指導が行われます。
アレルギー対策と予防の方法のアドバイスを受けることで、上手に生活していく方法が学べるでしょう。
メントールアレルギーの対策方法
アレルゲンによるアレルギーを予防したり、反応を抑えたりすることで、快適に生活することが可能です。
ここではメントールアレルギーにフォーカスした対策方法を紹介していきます。
原因物質を避けて生活する
まずアレルギー対策として最も重要なのが、アレルギーの原因となるアレルゲンに触れたり吸い込んだりしないように配慮することです。
メントールアレルギーであれば、メントールが配合された食品や外用薬を避けてください。
メントールが配合された外用薬には、歯磨き粉や化粧品、かゆみ止めや湿布などがあり、スーッとした清涼感があるのが特徴です。
また、表記で確認する場合はメントールだけでなく、メントールが成分として含有されているミントやハッカの製品も避けるようにしましょう。
アレルゲンフリーの製品を使用する
ハーブ製品の中にはアレルゲンフリーの製品も存在します。
アレルゲンフリーの製品を選ぶ時には、生産過程でアレルゲンが混入していないものを選ぶことが重要です。
アレルゲンフリーの製品は少量を使用して問題ないことをテストしてから使用すると、より安全に使用できるでしょう。
室内環境を整備する
アレルギー疾患には、メントールアレルギー以外にも、アレルギー性鼻炎や花粉症、気管支喘息など様々なものがあります。
一度アレルギー疾患を引き起こすと、続けて他のアレルギーが次々に発症してしまうアレルギー・マーチを起こす可能性が出てきます。
このアレルギー・マーチを引き起こさないためにも、生活環境を整えて良い状態を保つことが大切です。
生活環境の整備としてまず対策したいのが、ダニや埃、カビなどのアレルゲンになり得る物質を排除していくことです。
これらを完全に排除することは不可能なので、神経質になりすぎる必要はありませんが、換気や掃除、洗濯などを定期的に行って生活環境を整えるとよいでしょう。
ダニもカビも乾燥に弱いため、湿気を増やさないよう工夫すると効果的です。
さらにダニはフンや死骸もアレルゲンとなるため、布団を干した後は掃除機で吸い取ることが大切です。
また、洗濯も有効なので、寝具カバーやクッションはこまめに洗うことをおすすめします。
メントールアレルギーかもと感じたら使用を中止しよう
ミントやハッカに含まれている成分の1つであるメントールにはスーッとした香りに加え、冷感刺激や防虫・忌避効果などがあり、かゆみ止めや虫よけスプレーに使用されています。
しかし、メントールを使用すると赤みやかゆみ、くしゃみや鼻水などが出る場合にはメントールアレルギーの可能性があるため、使用を控えてください。
もし、アレルギー症状の疑いがある時には医療機関でアレルギー検査を行い、早めに対策を取るようにしましょう。
また、アレルギー症状を抑えるためには生活環境を整えることも大切です。
洗濯や掃除を行い、清潔な環境で生活できるよう身の回りを整えていきましょう。