喘息治療に使用されるテオフィリン製剤とは一体どんな薬剤なのかご存知でしょうか。
また、テオフィリン製剤と似た薬剤として、テオドールやテオロング、ユニフィルが使用されるケースもあり、どんな違いがあるのか混乱してしまうかもしれません。
今回は、テオフィリン製剤の効果や副作用などの解説と、同じような作用がある先発医薬品とジェネリック医薬品を紹介していきます。
薬剤の特徴を理解し、効果的に使用できるよう知識を深めていきましょう。
テオフィリン製剤とは
テオフィリン製剤は、テオフィリンを主成分にした先発薬テオドールのジェネリック医薬品です。
テオフィリン徐放錠と呼ぶこともあるテオフィリン製剤と同じ成分が配合された薬剤は、様々なメーカーから多様な剤型で商品化されています。
ここでは、テオフィリン製剤の効果や用法・用量、副作用、禁忌、飲み合わせについて解説していきます。
効果
テオフィリン製剤の主成分であるテオフィリンは、気管支を広げる体内物質であるcAMPがPDEという酵素によって別の物質に変換されてしまうことを阻害し、体内のcAMP濃度を高めて気管支を広げてくれる作用があることから、主に喘息や気管支炎の治療に使用されています。
さらにテオフィリンは低濃度でも抗炎症作用があるため、喘息の発作だけでなく、吸入ステロイド薬以外のキサンチン系薬剤の長期管理薬としても選択されてきました。
ただし、テオフィリンは量が少ないと効きにくく、逆に多すぎると副作用が出やすい特徴を持ち合わせる投与する量が難しい薬剤です。
使用する際には血中濃度を測りながら、個人に合った量が用いられるよう医師が判断します。
用法・用量
テオフィリン製剤の血中半減期は約8時間であり、効果は12~24時間続くとされているため、基本的には1日2回、朝と就寝前に大人は1回2錠・小児は1回1~2錠服用します。
症状によっては1日分の薬剤を1回で服用するように医師から指示を受けるケースもあります。
ただし、テオフィリン製剤は効きにくく、副作用や中毒症状が出やすい性質の薬剤のため、個人の判断で勝手に増減したり、回数を減らしたりするのは避け、必ず医師の指示通りに服用するようにしましょう。
副作用
テオフィリン製剤の副作用には、吐き気・腹痛などの胃腸症状や、頭痛・めまいなどの精神症状、動悸・脈拍数の増加などの循環器症状が現れる場合があります。
また、テオフィリン製剤は長年にわたって使用されてきた薬剤ではありますが、実は使い方を誤ると危険な劇薬に指定されている薬剤です。
誤って大量に服用すると血中濃度が上昇して、心拍数の増加や不整脈、けいれんなどの症状が現れるテオフィリン中毒を引き起こし、最悪の場合死に至るケースもあります。
これらの症状は薬剤の量が合っていない時にも、見られることがあります。
特に子どもや高齢者、肝臓に疾患がある方は、中毒症状が出る危険性が高いので、注意して使用していきましょう。
そして、違和感が現れた場合には、速やかに医師や薬剤師に相談してください。
禁忌
テオフィリン製剤は、キサンチン系薬剤で重篤な副作用が現れたことがある方や、12時間以内にアデノシンを使用する方への投与は禁忌とされています。
また、腎臓や心臓、肝臓、甲状腺に疾患がある方やてんかんがある方、高齢者や小さな子ども、妊娠している可能性がある方は、病状が悪化したり、副作用が強く出たりする可能性があるため、慎重に投与する必要があります。
これらの患者さんがテオフィリン製剤を服用する時には血中濃度のモニタリングを行い、体調を確認しながら使用していきます。
飲み合わせ
テオフィリン製剤と併用禁忌とされている薬剤は先ほど紹介したアデノシンですが、他にも飲み合わせに注意が必要となる薬剤は非常に多くあります。
例えば、他のキサンチン系薬剤や、中枢神経興奮薬、交感神経刺激剤などを始めとした薬剤に加え、マオウやセイヨウオトギリソウなどの漢方薬も併用注意とされています。
薬剤については、ここでは説明しきれないほど併用注意のものが多いので、テオフィリン製剤が処方された時には、医師や薬剤師に常用薬との飲み合わせについて確認しましょう。
また、食べ物でも飲み合わせに注意が必要なものがあります。
例えば、カフェインはテオフィリン製剤の作用を強めて副作用を引き起こしやすくするため、紅茶・緑茶・ウーロン茶・コーヒーを飲むのは避けるようにしましょう。
逆にタバコはテオフィリン製剤の作用を弱めるため、喫煙者には非喫煙者よりの1.5倍量の薬剤が処方されるケースがあります。
この場合、喫煙者がテオフィリン製剤を服用中に禁煙をした時には、薬剤の血中濃度が上がりすぎて、副作用が強く出る恐れがあります。
そのため、テオフィリン製剤を服用中に喫煙状況に変化があった時には医師や薬剤師に相談するようにしてください。
テオフィリンの先発薬とジェネリック医薬品一覧
テオフィリンを主成分とした薬剤はテオフィリン製剤以外にも複数の商品が販売されています。
テオフィリンが主成分の先発薬とジェネリック医薬品を一覧表にまとめると次のようになります。
分類 | メーカー | 商品名 |
---|---|---|
先発薬 | 田辺三菱製薬 | テオドール錠50mg テオドール錠100mg テオドール錠200mg テオドール顆粒20% |
大塚製薬 | ユニフィルLA錠100mg ユニフィルLA錠200mg ユニフィルLA錠400mg |
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日医工 | ユニコン錠100 ユニコン錠200 ユニコン錠400 |
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ジェネリック医薬品 | 沢井製薬 | テオフィリン徐放錠50mg「サワイ」 テオフィリン徐放錠100mg「サワイ」 テオフィリン徐放錠200mg「サワイ」 テオフィリン徐放ドライシロップ小児用20%「サワイ」 |
鶴原製薬 | テオフィリン徐放錠50mg「ツルハラ」 テオフィリン徐放錠100mg「ツルハラ」 テオフィリン徐放錠200mg「ツルハラ」 |
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サンド | テオフィリン徐放カプセル50mg「サンド」 テオフィリン徐放カプセル100mg「サンド」 テオフィリン徐放カプセル200mg「サンド」 |
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東和薬品 | テオフィリン徐放U錠100mg「トーワ」 テオフィリン徐放U錠200mg「トーワ」 テオフィリン徐放U錠400mg「トーワ」 テオフィリン徐放DS小児用20%「トーワ」 |
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高田製薬 | テオフィリンドライシロップ20%「タカタ」 | |
エーザイ | テオロング錠50mg テオロング錠100mg テオロング錠200mg |
テオフィリンを主成分とした薬剤には、テオフィリンという言葉がつく以外にも、様々な名前のものが存在します。
さらに剤型も錠剤・カプセル・顆粒など様々で、子ども用に作られたものもあります。
テオドールはテオフィリンを主成分とした薬剤の先発薬で、錠剤と顆粒の剤型があります。
基本的な効能はこれまで解説してきたテオフィリン製剤と同じで、気管支の炎症を抑えたり、炎症を起こして狭くなった気管支を広くしたりします。
テオドールの効果は12~24時間持続するため、1日2回を朝と就寝前に服用するのが一般的ですが、症状によっては1日1回の服用と医師から指示を出されるケースもあります。
一方、同じく先発薬のユニフィルとユニコンは、効果持続時間が24時間と長いため、服用は1日1回です。
これら先発薬のジェネリック医薬品がテオフィリン徐放錠やテオロングです。
先発薬よりも安価で同じ効果が期待できますが、薬剤の形状や含まれている添加物が異なる可能性がある可能性もあります。
ジェネリック医薬品に変更する時には、これらのことも考慮して選択するとよいでしょう。
喘息でテオフィリンはハイリスクか?
これまでテオフィリン製剤やテオフィリンを主成分する薬剤について解説してきましたが、テオフィリンはハイリスク薬に指定されている薬剤であるため、使用には十分注意を払う必要があります。
ハイリスク薬とは副作用や事故に関して特に注意が必要とされる薬剤で、専門家による管理が必須です。
テオフィリンは、薬剤の効果が現れる域と中毒症状が現れる域が近い治療有効域が狭くコントロールが難しい薬剤であることから、ハイリスク薬に指定されています。
現在は喘息についても研究が進み、テオフィリン製剤以外にも様々な効果・効能を持ち合わせた薬剤が開発されています。
どの薬剤も副作用と背中合わせですが、効果のあらわれ方には個人差があります。
治療の時には先入観で方法を制限せず、医師とよく相談しながら上手に喘息をコントロールしていくことが重要と言えるでしょう。
テオフィリン製剤は喘息の症状を緩和させる薬剤
テオフィリン製剤はテオフィリンを主成分とした気管支の炎症を抑え、気管支を広げる効果がある薬剤です。
そのため、発作時だけでなく、喘息の長期管理薬としても使用されてきた背景があります。
しかしながら、テオフィリンは効き目が現れる域と中毒症状が現れる域の幅が狭く、量をコントロールするのが難しい特徴がある薬剤です。
長年使われてきた実績のある薬剤ですがハイリスク薬に指定された劇薬でもあります。
副作用や中毒症状のリスクをできるだけ減らすためにも、医師の指示を守り適切に使用していく必要があります。
また、禁忌や飲み合わせに注意が必要となるものも多いので、持病や常用薬がある時には必ず医師や薬剤師に伝えてください。
例えば、タバコはテオフィリン製剤の効き目を弱める作用があるため、喫煙者と非喫煙者で薬剤の量が変わってきます。
途中、喫煙者が禁煙を始めた時には、そのままの量では効きすぎてしまう可能性があるため、医師に申し出ることを忘れないでください。
テオフィリン製剤には先発薬や他のジェネリック医薬品など、剤型、効果時間が異なる薬剤が多数販売されています。
薬剤についての知識を蓄え、自分に適した薬剤を選択していきましょう。