花粉症の鼻づまりが辛い時に使用する点鼻薬には様々な種類があり、その成分・作用はそれぞれ異なります。
なかでも血管収縮薬が配合された点鼻薬は即効性が高く、辛い症状をすぐに改善してくれる薬剤です。
今回は血管収縮薬の作用や副作用、薬剤の種類について解説します。
長期間使用には注意が必要な血管収縮薬を上手に使っていくためにも、正しく理解していきましょう。
血管収縮薬とは
血管収縮薬は点鼻薬の他、点眼薬や内服薬、麻酔薬としても使われている薬剤です。
即効性の高い薬剤ですが、使いすぎると逆に症状が悪化する薬剤性鼻炎を引き起こすデメリットもあるので注意が必要です。
ここでは、まず血管収縮薬の作用と副作用を確認していきましょう。
作用と効果
血管収縮薬は、拡張した毛細血管を収縮させて充血を取る効果がある薬剤です。
点鼻薬であれば鼻粘膜の毛細血管を収縮させて鼻づまりを改善させる効果があり、点眼薬であれば拡張した血管を収縮させて充血を取り除く効果があります。
主な血管収縮成分にはナファゾリン塩酸塩・テトラヒドロゾリン塩酸塩・オキシメタゾリン塩酸塩・フェニレフリン塩酸塩などがあります。
どれも血管収縮作用と即効性が高いのが特徴で、鼻づまりに点鼻すると数分で改善するケースもあるほどです。
ただし、血管収縮薬による症状改善は対症療法であるため、病気を治癒する効果がないことは覚えておきましょう
また、点鼻薬、点眼薬以外にも片頭痛に効果を発揮するトリプタン系の血管収縮薬もあり、片頭痛の原因の1つと考えられている一度収縮した脳血管の過剰な拡張を抑えて痛みを和らげる効果があります。
片頭痛が辛い時には、このトリプタン系血管収縮薬の他に、イブプロフェンなどの消炎鎮痛剤、エルゴタミン製剤なども検討するとよいでしょう。
副作用と禁忌
血管収縮薬は強い血管収縮作用と高い即効性が特徴の薬剤ですが、長期間使用を続けると鼻づまりや充血がかえってひどくなってしまう薬剤性鼻炎を引き起こすデメリットがあります。
そのため、常時使用するのは避け、症状が強い時にピンポイントで使用する程度にとどめておくとよいとされています。
また、副作用には吐き気などの消化器症状、めまい、血圧上昇などが起きる可能性があります。
禁忌とされているのはメトヘモグロビン血症や高血圧、動脈硬化、心不全などの患者さん、糖尿病の方などです。
副作用や禁忌は薬剤の主成分によって異なるため、それぞれの薬剤の用法を確認してから使用してください。
血管収縮薬の種類一覧
血管収縮薬には点眼薬や点鼻薬以外にも様々な剤型が存在し、成分もそれぞれ異なります。
主な血管収縮薬の種類を一覧表にまとめると次のようになります。
一般名 | 剤型 |
---|---|
ナファゾリン塩酸塩 | 点眼薬、点鼻薬 |
オキシメタゾリン塩酸塩 | 点鼻薬 |
キシロメタゾリン塩酸塩 | 点鼻薬 |
フェニレフリン塩酸塩 | 点眼薬、内服薬、点滴薬、注射薬 |
テトラヒドロゾリン塩酸塩 | 点眼薬、点鼻薬 |
プソイドエフェドリン塩酸塩 | 点鼻薬、内服薬 |
トラマゾリン塩酸塩 | 点鼻薬 |
このように、血管収縮薬は成分によって用途が異なるのが特徴です。
ここからは、各成分の作用や注意点、市販で買える薬剤について紹介していきます。
ナファゾリン塩酸塩
ナファゾリン塩酸塩には点眼薬と点鼻薬があります。
点眼薬には目の血管を収縮させて結膜の充血を取る効果があり、佐藤製薬株式会社の「ノアールNアルファ」やテイカ製薬株式会社の「アイカフーン」などが市販薬として販売されています。
一方、点鼻薬は鼻の中の血管を収縮させ、うっ血や炎症を抑えることで鼻づまりを解消する効果があり、市販薬には佐藤製薬株式会社の「ナザールスプレー」や第一三共ヘルスケア株式会社の「新ルル点鼻薬」などの商品が販売されています。
効果が高く即効性がありますが、長期間使用するとかえって鼻づまりがひどくなる薬剤性鼻炎を引き起こす点には注意が必要です。
ここぞという時に短期間で使用していくとよいでしょう。
オキシメタゾリン塩酸塩
オキシメタゾリン塩酸塩は点鼻薬に使用される成分で、下鼻血管の収縮効果があります。
以前は医療用の処方薬しかありませんでしたが、現在は佐藤製薬株式会社の「ナシビンMスプレー」が市販されています。
オキシメタゾリン塩酸塩もナファゾリン塩酸塩と同様に高い効果と即効性がある成分ですが、長期間使用すると余計に鼻づまりがひどくなってしまう薬剤性鼻炎が起きる可能性がある薬剤です。
用法用量を守り、頻?に使用しないように気をつけましょう。
キシロメタゾリン塩酸塩
キシロメタゾリン塩酸塩は点鼻薬に使われる成分で、アドレナリン受容体を刺激して血管を収縮させる作用があります。
薬局やドラッグストアで販売されている市販薬はありませんが、海外で使用されているゼンティバ社の「オトリビン点鼻薬」であれば個人輸入代行で購入することが可能です。
キシロメタゾリン塩酸塩も長期間使用により薬剤性鼻炎を引き起こす可能性があるため、使い過ぎないように注意してください。
フェニレフリン塩酸塩
フェニレフリン塩酸塩は点眼薬に加え、内服薬や点滴薬、注射薬と幅広い剤型で使用されている成分です。
フェニレフリン塩酸塩の点眼薬は瞳を開く効果があるため主に眼底検査に使用されています。
内服薬としては鼻の辛い症状を改善する鼻炎薬として興和株式会社の「コルゲンコーワ鼻炎ソフトミニカプセル」が市販されていたり、注射薬としては急性低血圧やショック時の補助治療として医療機関で使用されていたりします。
テトラヒドロゾリン塩酸塩
テトラヒドロゾリン塩酸塩は、点眼薬と点鼻薬に使用される成分です。
市販薬として販売されている点眼薬の千寿製薬株式会社「マイティアV」には結膜充血を取る効果があります。
ただし、テトラヒドロゾリン塩酸塩が配合された点眼薬を必要以上に使用すると異常な眩しさを感じたり、かえって充血してしまったりする可能性があるので注意してください。
また、点鼻の市販薬には大正製薬株式会社の「パブロン点鼻JL」や、ロート製薬株式会社の「アルガード鼻炎クールスプレーa」があり、鼻粘膜の腫れや充血を抑えてくれます。
こちらも長期間使用し続けると薬剤性鼻炎を引き起こしてしまう恐れがあるので注意しましょう。
プソイドエフェドリン塩酸塩
プソイドエフェドリン塩酸塩は、点鼻薬や内服薬に使用される成分です。
市販の点鼻薬のアリナミン製薬株式会社「コールタイジン点鼻液」にはプソイドエフェドリン塩酸塩に加えて、テトラヒドロゾリン塩酸塩が配合されており、鼻づまりや鼻水などの症状を改善します。
ただし、点鼻薬は薬剤性鼻炎を引き起こす可能性があるため、長期間使用は控えてください。
また、市販の内服薬である大正製薬株式会社の「パブロン鼻炎カプセルSa」などの鼻炎薬にもプソイドエフェドリン塩酸塩が含まれ、鼻粘膜の充血や腫れを抑えてくれます。
トラマゾリン塩酸塩
トラマゾリン塩酸塩は点鼻薬として使用される成分で、交感神経を刺激し鼻粘膜の充血と取って鼻づまりを緩和させる効果があります。
トラマゾリン塩酸塩も長期間の使用によって薬剤性鼻炎を引き起こす可能性がある薬剤です。
血管収縮薬を使用していない点鼻薬
ここまで説明してきたように血管収縮薬は高い効果と即効性がある反面、長期間使用することによって、かえって鼻づまりがひどくなる薬剤性鼻炎を引き起こすことが懸念される薬剤です。
辛い症状がある方には血管収縮薬が必要となるかもしれませんが、症状が比較的軽い方であれば血管収縮薬が配合されていない点鼻薬を使用するのも1つの手段です。
ここでは血管収縮薬を使用していない点鼻薬を解説します。
ステロイド点鼻薬
ステロイド点鼻薬に配合されているステロイド成分は、アレルギー症状に対して高い抗炎症効果を発揮する薬剤です。
鼻づまりはもちろん、鼻水やくしゃみなどの症状にも効果が期待できます。
ステロイド点鼻薬は症状が軽い段階から使用することで、ピーク時の症状が抑えられるとされています。
ステロイド点鼻薬の市販薬には佐藤製薬株式会社の「ナザールαAR0.1%C」や、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン株式会社の「フルナーゼ点鼻薬」があります。
ステロイドと聞くと不安を覚える方もいるかもしれませんが、ステロイド内服薬に比べて全身に吸収されにくいうえに、吸収されても分解されやすい成分を使用しているので過度な心配は不要とされています。
抗アレルギー点鼻薬
抗ヒスタミン成分であるケトチフェンフマル酸塩やクロルフェニラミンマレイン酸塩、クロモグリク酸ナトリウムなどが配合された抗アレルギー点鼻薬は、ヒスタミンの働きを抑えて鼻水やくしゃみを緩和する効果があります。
これら抗ヒスタミン成分と他の成分を複数配合しているケースが多いのも特徴です。
ただし、抗ヒスタミン成分には眠気を催す副作用がある点には注意が必要です。
使用後の運転や機械操作は避けるか、眠気が起きると困る場合には抗ヒスタミン成分が含まれていない点鼻薬を選ぶようにしてください。
血管収縮薬は効果的であるが副作用に注意
血管収縮薬は主に目の充血を改善する点眼薬や、鼻づまりを解消する点鼻薬に使用されており、様々な種類があります。
血管収縮薬が使われている点鼻薬を使用すると数分で効果が現れる即効性と高い効果が期待できますが、その反面、長期間使用を続けるとかえって鼻づまりがひどくなる薬剤性鼻炎を引き起こす恐れがある点には注意が必要です。
このような理由からも症状が軽い場合には、ステロイド点鼻薬や抗アレルギー点鼻薬などの血管収縮薬が使用されていない点鼻薬を検討してみましょう。
ただし、抗アレルギー点鼻薬には眠くなる副作用があるため、運転や機械操作をする時には避けてください。
血管収縮薬に限らず、薬剤の作用・副作用はきちんと理解し、正しく使用していきましょう。