「最近疲れやすい」「肩こりが辛い」などの不調に悩んでいる方は、ビタミンB12が不足しているのかもしれません。
あまり聞きなれない栄養素であるビタミンB12も、大きく不足すると日常生活に支障をきたす恐れがあります。
今回はビタミンB12について理解を深め、欠乏症になった時の辛い症状を緩和する強い味方ビタミンB12の薬剤「メチコバール」と市販薬について解説していきます。
ビタミンB12について
まずは基礎知識として、ビタミンB12とはどんなものなのか分類や作用、不足するとどうなってしまうかを確認していきましょう。
ビタミンB12とは
ビタミンB12は、5大栄養素の中でも微量栄養素に位置付けられているビタミン13種類のうちの1つで、ビタミンB群に属している栄養素です。
水に溶けやすい性質がある水溶性ビタミンの一種で、過剰に摂取しても尿とともに排出されますが、摂取量が少ないと欠乏症を引き起こす恐れがあります。
ビタミンB12は別名「赤いビタミン」「抗貧血ビタミン」「神経のビタミン」などと呼ばれ、造血作用や神経を修復する作用があります。
ビタミンB12の1日の平均摂取推奨量は成人で2.4mcgとごく微量なうえに、魚介類・肉類・卵などの身近な動物性食品に含まれているため、一般的な食生活を送っていれば1日の平均摂取推奨量を満たしているケースがほとんどです。
不足すると
ビタミンB12が不足すると、次のような症状が起こると言われています。
- 貧血
- 手足のしびれ
- 精神・認知の機能異常
ビタミンB12が不足すると、赤血球の細胞骨格をつくることができず、巨赤芽球性貧血となる恐れがあります。
巨赤芽球性貧血になると疲労感や顔面蒼白になり、重症化すると息切れやめまいも生じるようになります。
また、ビタミンB12には末梢神経を修復する作用があるため、不足すると肩こりや眼精疲労の症状、手足が痺れるなどの末梢神経の異常を感じる可能性があります。
さらにうつ病や記憶障害、認知症などの精神や認知に関する機能に問題が生じることもあるため注意が必要です。
このように、ビタミンB12の不足は様々な症状を引き起こす可能性があるのです。
不足しやすい人
ビタミンB12は体内で合成できないため、食物やサプリメント、薬剤などで体外から摂取するしか身体に取り入れる方法がありません。
ただし、魚や肉、卵などの動物性食品に豊富に含まれているため、通常の食生活を送っていれば基本的に欠乏することはないとされています。
しかしながら、動物性食品を避けた食生活を送るベジタリアンやビーガンなどの菜食主義者や菜食主義者の母乳を栄養源とした乳児、胃の切除手術を行ったり胃や小腸の疾患があったりする人などはビタミンB12が不足する可能性があります。
このような場合には、ビタミンB12が配合されたサプリメントや薬剤を飲んで、欠乏症を予防したり治療したりしていくのです。
ビタミンB12の薬剤メチコバールとは
メチコバールは有効成分であるメコバラミンという補酵素型ビタミンB12を配合したエーザイが販売している薬剤です。
同じ成分の他社製品も含めると、顆粒・錠剤・カプセルなどの剤型があり、錠剤には250μgと500μgが存在します。
メコバラミンは光で分解されてしまう性質があるため、遮光性のある赤いシートに包まれているのが特徴です。
効果
メチコバールは手足の神経痛に適応する薬剤で、通常のビタミンB12よりも末梢神経障害に対する効果が高いのが特徴です。
手足の痺れや末梢神経痛の他、貧血やめまい、耳鳴りなどを改善する目的で使用されることもあります。
ただし、メチコバールは栄養素の1つであるビタミンB12であるため、即効性についてはほとんど期待できず、貧血の治療で服用した場合でも約6週間飲み続けることで回復するとされています。
しかしながら、飲み続けても効果が感じられない時には、ビタミンB12の欠乏以外が原因である可能性があるため、医師や薬剤師に相談してください。
また、ビタミンB12の欠乏がある高齢者の認知症については、メチコバール投与では改善が見られないケースが多いとのデータもあります。
認知症の治療については研究が進められていますが、現段階ではメチコバールの認知症の治療効果は実証されていません。
副作用・禁忌
メチコバールをはじめとするビタミンB12の薬剤を服用すると、食欲不振や悪心、嘔吐、下痢、発疹などの副作用が起きる可能性があります。
ただし、ビタミンB12のような水溶性ビタミンは身体に蓄積せずに尿で排出される特徴があるため、副作用が起きる可能性は非常に少ないと言われています。
また、メチコバールの飲み合わせで注意が必要な薬は特にありません。
妊娠中でも使用できるため、妊婦腰痛や手根管症候群などの末梢神経障害の改善に使用された実績もあります。
ただし、メチコバールは構造中にコバルトを含むため、コバルトアレルギー患者は使用を避ける必要があります。
ビタミンB12の処方薬とおすすめの市販薬
ビタミンB12の処方薬は有効成分メコバラミンを配合したメチコバールをはじめとした処方薬と、ビタミンB12を含んだ市販薬が販売されています。
ビタミンB12の処方薬
ビタミンB12の処方薬にはエーザイのメチコバールやハイコバール、沢井製薬やトーワなどから販売しているメコバラミンなどの商品があります。
これらは処方薬なので、手に入れるためには医療機関で医師に処方してもらう必要があります。
ビタミンB12の市販薬
メチコバールと全く同じ成分の市販薬は販売されていませんが、ビタミンB12が配合された薬剤は市販されています。
例えば、処方薬のメチコバールを製造しているエーザイからは「ナボリンS」、アリナミン製薬からは「アリナミンEXプラスα」、佐藤製薬からは「ユンケルB12アクティブα」が販売されています。
ナボリンSは、ビタミンB12の他に筋肉疲労を和らげるビタミンB1、血行を促進するビタミンE、メコバラミンの働きを助ける葉酸が配合された薬剤で、目の疲れや肩こり、腰痛の改善に効果があるとされています。
アリナミンEXプラスαは、ビタミンB12に加えて抗疲労成分フルスルチアミン、神経機能に携わるビタミンB6、他にもビタミンEやビタミンB1・B2なども配合しており、疲れがたまった目や肩、腰の辛い症状に効く薬剤です。
また、ユンケルB12アクティブαはビタミンB12やビタミンEに加え、軟骨に弾力性や保水性をもたらすコンドロイチン硫酸エステルナトリウムを配合しており、腰痛や手足の痺れ、神経痛の緩和などに効果的な薬剤です。
これらビタミンB12が配合された市販薬は、薬局やドラッグストア、インターネットなどで購入することが可能です。
ビタミンB12の欠乏を防ぐために
ビタミンB12が欠乏すると貧血や手足のしびれ、精神・認知の機能異常などが現れてきます。
ビタミンB12の不足を招かないためにも、日々の生活で注意を払うことが大切です。
バランスの良い食事をとる
ビタミンB12は魚介類や肉類、卵などの動物性食品に多く含まれています。
魚介類であればアサリ・しじみ・カキなどの貝類、肉類であれば牛・豚・鶏問わずレバーにビタミンB12が多く含まれています。
また、動物性食品ほどではないですが、焼きのりや青のり、あおさなどの海苔にもビタミンB12が含まれています。
ただし、昆布やワカメなどの他の海藻類にはほとんど含まれていないので注意しましょう。
サプリメントや薬剤を活用する
ビタミンB12が動物性食品に多く含まれていることから、ベジタリアンやビーガンなどの菜食主義の方はどうしても摂取量が少なくなります。
また、ビタミンB12は胃で消化し、複合体に再合成されて身体に吸収されるため、胃に病気を抱えている方や胃を切除した方はビタミンB12が不足しやすくなります。
このような方たちが食事だけでビタミンB12を充足させることは難しいかもしれません。
菜食主義の方はサプリメントを利用したり、胃に病気を抱えている方はかかりつけ医に相談したりしましょう。
サプリメントや市販薬であれば、薬局やドラッグストア、インターネットで購入することが可能です。
医療機関を受診する
ビタミンB12欠乏の症状は胃炎や胃がん、脳の病気など他の病気の症状と重なるものがほとんどです。
そのため、違和感が現れた時には自己解決せずに、まずは医療機関を受診することをおすすめします。
症状によっては血液検査や神経内科の診察、MRIなどの検査を行い大きな病気が隠れていないことを確認する場合があります。
大きな病気の可能性がなく、ビタミンB12欠乏症と診断されればメチコバールなどのビタミンB12を補う薬剤が処方されるでしょう。
ビタミンB12の薬剤は造血作用や末梢神経の修復を促す効果がある
ビタミンB12は水溶性ビタミンのB群に分類され、別名「赤いビタミン」「抗貧血ビタミン」「神経のビタミン」などと呼ばれる栄養素です。
造血作用や末梢神経を修復する作用があり、欠乏すると貧血や手足の痺れ、精神・認知の機能異常を引き起こす恐れがあります。
ビタミンB12欠乏症を治療する処方薬として有効成分であるメコバラミンという補酵素型ビタミンB12を配合したメチコバール、市販薬には他の成分も配合された「ナボリンS」や「アリナミンEXプラスα」などが販売されています。
また、ビタミンB12は一般的な食事生活を送っていれば不足することはほとんどありませんが、ベジタリアンやビーガンなどの菜食主義者や胃に病気を抱えている方は不足しやすい傾向にあるため注意が必要です。
医療機関や市販薬を上手に利用しながら、体調を整えていきましょう。