皮膚癌とは、皮膚に生じる悪性腫瘍の総称であり、主に基底細胞癌や有棘細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)など様々な種類が存在します。
治療方法は、皮膚癌のステージによって手術や薬剤、放射線治療などが選択されます。
当記事では、皮膚癌の概要や治療方法、治療薬の種類を解説していくため、知識を深めて適切な治療選択に役立ててくださいね。
皮膚癌とは
皮膚癌とは、皮膚に生じる悪性腫瘍の総称のことを指し、様々な種類の皮膚癌があります。
種類は以下の通りです。
- 基底細胞癌
- 有棘細胞癌(扁平上皮癌)
- メラノーマ(悪性黒色腫)
- 乳房外パジェット病
- 皮膚血管肉腫
- 皮膚付属器癌
- メルケル細胞癌
- 隆起性皮膚線維肉腫
- 皮膚のリンパ腫
この中でも特に、「基底細胞癌」「有棘細胞癌」「メラノーマ」は、日本国内では、3大皮膚癌として知られています。
ここでは、3代皮膚癌の生存率や皮膚癌のステージを解説していきます。
皮膚癌で死亡する?生存率について
皮膚癌は、身体の皮膚の見える場所にできやすいため、内臓癌などと比較すると早期発見しやすいです。
そのため、早期発見の段階で治療ができるため、全体的に生存率は高いと言われています。
一方で、癌とは言っても痛みなどの症状がほとんど現れないことにより癌が進行した状態で、治療を受ける人も数多くいます。
皮膚:国立がん研究センター がん統計によると、2019年に皮膚癌と診断された25,247例に対して、2020年の死亡数は1,707人と発表されています。
5年生存率は、約94.6%です。
皮膚癌の全体の生存率がわかったところで、種類ごとの生存率を見ていきましょう。
種類 | 5年生存率 |
---|---|
メラノーマ(悪性黒色腫) | 31.9%~70.6% |
有棘細胞癌 | 34%(癌が転移している場合) |
基底細胞癌 | 死に至ることは滅多にない 25%の確率で再発のリスクあり |
メラノーマは皮膚癌の中で最も転移しやすい癌です。
転移の有無や範囲によって異なるため、生存率に大きな幅が見られます。
有棘細胞癌の場合、転移が起きる前に治療を行うことで、通常は治癒すると言われています。
しかし、転移している場合だと5年生存率は約34%です。
基底細胞癌の場合、死に至ることはほとんどなく、治療は成功する可能性が高いと言われています。
しかし、基底細胞癌になった人で、5年以内に25%の確率で再発するリスクがあるため、毎年皮膚の診察を受けることが大切です。
皮膚癌のステージについて
皮膚癌は、進行度によりそれぞれステージが決められています。
ステージによって治療法や生存率が変動してくるため、大切な役割があります。
ステージIでは、表皮のみに留まっている状態です。
ステージIIは皮膚の深層に侵入していますが、リンパ節には転移していない状態です。
ステージIIIになると、リンパ節にも転移が見られるようになります。
最後のステージIVでは、遠隔転移している状態です。
皮膚癌は早期発見が重要!セルフチェックしよう
皮膚癌は早期発見が大切ですが、どのような症状が見られると病院を受診したらよいのでしょうか。
チェック項目は以下の通りです。
- 湿疹や傷が治らない
- ホクロが短期間で形や色、大きさが変わってきた
- 顔面の茶色のシミが黒色に変化していないか
- ホクロから汁や血が出ていないか
これらの症状に一つでも当てはまれば、一度病院を受診することをおすすめします。
皮膚癌の3つの治療法について
皮膚癌の治療法はいくつかありますが、皮膚癌の種類やステージによって選択されます。
主な治療法として手術療法、化学療法、放射線治療があり、それぞれ特徴があります。
ここでは、それぞれの治療法の特徴を解説していきますね。
手術療法
手術療法は、皮膚癌の最も基本的な治療法であり、特に初期や局所に限られた癌で第一選択されやすいです。
病変が小さい場合は、局所麻酔で、大きい場合は全身麻酔で行われ、主な手術方法としては、切除手術やモース手術があります。
手術では、再発しないようにしっかりと病変を切り取る必要があります。
そのため、正常に見えても、癌細胞が浸潤している可能性があれば、広範囲で切り取ることもあるそうです。
表皮のもっとも浅い部分のみであれば根治しやすく、取り除く範囲も狭くなります。
切除術は、再発予防のために広範囲で切り取る手術です。
一方でモース手術は、顕微鏡を用いて段階的に腫瘍の除去を目指します。
モース手術は、特に顔などの見た目が重要な部位に適していると言われています。
化学療法
化学療法は主に進行癌や再発癌に対して抗癌薬を使用し、全身に広がる癌細胞を攻撃します。
主に有棘細胞癌や血管肉腫に行われる場合が多いです。
薬剤は血液を通じて全身に行き渡り、見えない癌細胞にも効果を発揮することが可能です。
しかし、化学療法には吐き気や脱毛、免疫力の低下などの副作用が生じることがあります。
最近では、副作用を軽減する薬剤や治療法の開発が進み、薬剤耐性の問題も改善されてきています。
これにより、患者さんのQOL(生活の質)を保ちながら治療を進行できるようになりました。
化学療法の効果は人により異なりますが、副作用を最小限にしながら、治療効果を発揮できるように適切な治療法が検討されます。
放射線治療
放射線治療は、体外から高エネルギーの放射線を照射し、癌を死滅させる方法です。
放射線治療は局所の癌に照射するため、周囲の健康な細胞に対する影響を最小限に抑えることができます。
主に、手術後の残った癌細胞の死滅や、手術が難しい部位の治療、さらには痛み緩和のための緩和医療にも利用されます。
放射線の量や照射回数は患者さんの病状に合わせて調整され、適切な治療が計画されます。
放射線治療後は、定期的なフォローアップが必要となり、早期の再発発見や治療が重要です。
皮膚癌の治療薬
皮膚癌の治療方法が把握できたところで、ここでは治療薬を詳しく解説していきます。
治療薬にもいくつか種類があり、皮膚癌の種類によっても選択される治療薬は異なります。
ぜひ、参考にしてください。
化学療法薬
先でも解説しましたが、化学治療薬は抗癌剤を使用し治療する方法です。
主に、有棘細胞癌や血管肉腫などが該当します。
癌の種類 | 薬剤の種類 |
---|---|
有棘細胞癌 | シスプラチン、ドキソルビシン、フルオロウラシル |
血管肉腫 | パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリン |
フルオロウラシルは、有棘細胞癌や基底細胞癌、ボーエン病、パジェット病などの治療に用いられる外用薬です。
通常、1日1~2回患部に塗布し、閉鎖密封療法(ODT)を行うことが望ましいとされています。
閉鎖密封療法とは、塗布した患部の上からサランラップを貼り付け、その上をテープで固定し患部を保護する方法です。
免疫チェックポイント阻害薬
免疫チェックポイント阻害薬とは、メラノーマ(悪性黒色腫)に対して行われる治療方法です。
これは比較的新しい治療法で、特定の抗体が見られる癌細胞に効果が高く現れると言われています。
治療効果の現れは、他の治療方法より遅いですが、治療効果の持続は長い間効く点が特徴です。
主な種類は以下の通りです。
- ニボルマブ
- ペムブロリズマブ
- イピリムマブ
免疫療法は、癌細胞を死滅させ、再発のリスクを軽減します。
一方で、副作用もあり、疲労、発熱、皮疹などがあり、場合によっては自己免疫疾患を引き起こすこともあります。
これらの副作用は、人によって異なるため、十分な管理が必要です。
分子標的薬
分子標的薬は、日本で約25%の確率でBRAF遺伝子変異が現れる人にしか使用できない薬剤です。
分子標的薬の特徴として、効果は比較的早期に現れるのですが、使用していくうちに薬剤に耐性ができ、効き目が無くなることがあります。
効き目が無くなった場合は、他の薬剤へ変更する必要があるため、医師と相談しながら決めていきます。
分子標的薬の主な種類は以下の通りです。
- ダブラフェニブ
- トラメチニブ
- エンコラフェニブ
- ビニメチニブ
- ベムラフェニブ
分子標的薬も比較的新しい薬剤で、従来の治療法と組み合わせることで、治療効果の向上が期待できます。
このように、新薬の研究開発は、皮膚癌の治療に革命をもたらす可能性があるのです。
皮膚癌の治療に関するよくある質問
ここでは、皮膚癌の治療でよくある質問をまとめました。
皮膚癌の治療は日帰りできますか?
特に初期のステージの皮膚癌であれば、日帰り手術が可能な場合もあります。
多くのクリニックでは、局所麻酔を用いた日帰り手術を提供しています。
しかし、腫瘍の種類、大きさ、患者さんの健康状態により手術の内容は異なるため、医師との相談が必要です。
皮膚癌の末期の症状はありますか?
皮膚癌の末期症状は、癌の種類や進行度によって異なりますが、一般的に以下のような症状が見られることがあります。
- 病気の部位の色の変化
- 病気の部位の痛み
- 転移による症状(リンパ節の腫れ・呼吸困難・体重減少)
- 全身の倦怠感
- 食欲不振
上記の症状は、皮膚癌が進行した場合に現れる症状であるため、注意深く病変の観察が必要です。
皮膚癌は血液検査でわかりますか?
皮膚癌は、血液検査で診断することはほとんどありません。
皮膚癌の診断は主に、
- 主治医による視診
- 画像検査(ダーモスコピー)
- 生体組織検査
これらの検査が一般的です。
皮膚癌は早期発見が重要!定期的な皮膚検診を
皮膚癌とは、皮膚に生じる悪性腫瘍のことで、主に基底細胞癌、有棘細胞癌、悪性黒色腫(メラノーマ)など様々な種類が存在します。
治療方法は、皮膚癌の種類やステージによって異なります。
その中でも、皮膚癌治療薬は、進行が進んだ癌や再発した癌に使用されることが多く、見えない細胞癌にも効果を発揮できます。
まずは医師の診察を受けて、正しい治療薬を選択し、癌治療を進めて行ってくださいね。
また、治療を行った後も、皮膚癌の再発リスクも十分にあり得るため、定期的な皮膚検診を行い、健康維持に努めましょう。