女性の健康課題に目を背けていませんか?
子宮や卵巣の病気は自覚しにくいこともあり、特に若い世代にとってはイメージしにくいかもしれません。
しかし、なかには不妊や流産に繋がる黄体機能不全という病気が潜んでいる可能性があります。
黄体機能不全は、子宮の黄体からでる黄体ホルモンが十分に分泌されなくなる病気で、月経不順や不正出血などの様々な症状が出現します。
もし、黄体機能不全になってしまったら「どうやって治すのか?」「妊娠できた人はいるのか?」まで気になりますよね。
そこで本記事では、以下についてお話します。
- 国民の女性の健康課題に対する関心
- 生理に関連する子宮や卵巣の病気
- 黄体ホルモンが少ない人の特徴
- 黄体機能不全のセルフチェック方法や診察、治療方法
女性の健康課題に目を向ける大切さや、若い世代にもなりやすい子宮や卵巣の病気についてもお伝えしますので、ぜひ最後までお読みください。
女性の健康課題に対する関心
内閣府が18歳以上の男女に女性の健康課題への関心について調査したところ、全体で「関心がある」と答えた人の割合は半分に至りませんでした(2019年7月時点)。
特に18~29歳は「関心がある」と答えた人が35.9%と、年齢別で最も低いことがわかります。
若い世代にとって、女性の健康課題に対する関心は少ないのかもしれません。
また、健康課題の項目別の割合を見ると「子宮や卵巣などの病気」「月経に伴う心身の状態の変化」の関心はそれぞれ37.4%、29.1%と4割を下まわっている状態です。
子宮や卵巣、生理が関連する病気のなかには、若い頃から対処しなければ不妊の原因に繋がるものもあります。
若いからといってあまり他人事と思わず、身体に潜んでいる可能性のある病気の存在や対処法を知るべきでしょう。
生理に関連する子宮や卵巣の病気
若い世代でも起こることのある生理に関連する子宮や卵巣の病気は、月経不順や無排卵性周期症、機能性子宮出血、黄体機能不全が挙げられます。
どれもホルモンバランスの乱れが主な原因で、過激なダイエットやストレス、不規則な生活、過度な運動によって起きやすいです。
それぞれ詳しくみていきましょう。
月経不順
一般的に、正常の生理周期日数(25~38日)に当てはまらないものは月経不順と定義されます。
月経不順の原因はホルモンバランスの乱れのほか、子宮や卵巣、甲状腺の病気によって起こる可能性もあります。
月経不順のなかでも、特に続発無月経(生理が3周期以上こない状態)は、将来の生活習慣病や骨粗鬆症の発症リスクを高める危険な状態です。
「生理の間隔が短かかったり、長かったりして周期がバラバラ」「3~6ヵ月以上生理がこない」などの特徴がある場合は、自己判断で放置しないようにしましょう。
無排卵性周期症
無排卵性周期症は生理がきているにも関わらず、排卵が伴わない状態を指します。
生理周期が不順で、基礎体温が正常な変化(低温期と高温期の二相性)を示さない場合に疑われます。
無排卵性周期性は初経が始まって1~2年間に多く、成長に伴って正常な排卵がくることも少なくありません。
しかし、症状がそのまま続くと、妊娠したい時期に妊娠できなくなる可能性も高くなります。
また、無排卵性周期症は、多のう胞性卵巣(※)などが原因で起こることもあるので、症状が続く場合は原因を調べてもらうことが大切です。
(※)多のう胞性卵巣
両側の卵巣が腫れたり袋状の病変が多数起きたりして、男性ホルモンの分泌が増す病気です。
生理の異常や不妊、多毛、男性化、肥満などの症状が出現します。
機能性子宮出血
機能性子宮出血は子宮に明らかな病気がないにも関わらず、生理や妊娠以外で出血する病気です。
原因はホルモンバランスの乱れがほとんどで、血液の疾患などでも起こることがあります。
出血の量が少なく期間も短い場合は、治療せずに症状の経過をみていくだけで十分です。
しかし、血の塊がでる、長い間出血が続くなどといった場合は、貧血になる可能性があるので止血処置が必要になります。
止血のために選択される治療はホルモン療法や止血剤、手術(命の危険に関わる場合)などです。
すぐに妊娠希望でない場合はピルを内服してホルモンバランスを整えることもあります。
黄体機能不全
卵巣にある黄体から分泌されるホルモン(黄体ホルモン:プロゲステロン)の分泌不全により、子宮内膜が正常なタイミングで成熟しにくくなる病気です。
黄体機能不全の主な症状は、月経不順や不正出血、不妊、流産です。
これらの症状は、子宮内膜が排卵の時に十分な厚さにならないことが原因で起こります。
黄体機能不全が起きたら「具体的にどうなるのか?」「妊娠できるか?」など疑問や不安を持つ方もいるでしょう。
次に症状の特徴についてお話ししていきます。
黄体ホルモンが少ない人の特徴は
黄体ホルモンが少ない人の特徴は、以下をご覧ください。
- 短い間隔で生理がくる
- 不正出血が起こりやすい
- 生理前に胸が張らない
- なかなか妊娠できない
- 流産を繰り返す
正常の生理周期では、排卵日(生理の約14日前)が過ぎると妊娠の準備をするために黄体ホルモンの分泌が増える特徴があります。
黄体ホルモンの分泌が増えると、女性の身体は排卵後から生理開始の直前まで基礎体温を高い状態に維持しながら、子宮内膜を安定させます。
しかし、黄体ホルモンの分泌が少なければ、排卵後の基礎体温が高い状態で維持されなくなるので、子宮内膜を安定した状態に保てません。
早い段階で子宮内膜がはがれ落ちるため、生理周期が短くなったり、不正出血が起こったりするわけです。
また、子宮内膜が十分な厚さにならないため、受精卵が着床しなかったり、受精卵に栄養がいき届かず流産が生じたりします。
黄体機能不全のチェック方法
黄体機能不全の症状を自分でチェックする方法は簡単です。
正しい方法でおこない、はやめに専門医に相談すれば、改善に繋がるかもしれません。
詳しく見ていきましょう。
基礎体温
黄体機能不全が起きていないか自身でチェックするためには、基礎体温を毎朝測って経過を確認する必要があります。
以下の手順でおこないましょう。
- あらかじめ枕元に0.01単位まで測定できる体温計(婦人体温計など)を準備しておき、朝に目覚めた時に寝たままの姿勢で検温します。
体温計の感温部を舌の裏側の付け根に当てて、舌で抑えます。 - 口を閉じて結果がでるまで待ちます。
検温が済んだ後は、基礎体温表に記録します(アプリケーションで自動送信できるものもあります)。 - 生理開始日から次回の生理日までの基礎体温を見て、体温が低い時期(低温期)と体温が高い時期(高温期)が一定の期間で示されているか確認します。
黄体機能不全が起こると基礎体温が上がりにくくなるので、高温期が低温期より短かったり、高温期が消失していたりします。
基礎体温表によるチェックは、正しい方法で測定できれば視覚的にもわかりやすく、簡単におこなえる方法です。
不妊・流産
妊活をしているのに1年以上妊娠しなかったり、妊娠しても流産を繰り返したりする場合は、黄体機能不全が起きていないか疑いましょう。
黄体ホルモンが十分に分泌されない間は、子宮内膜が成熟しないため妊娠率が下がり、不妊や流産が起こる可能性が高まります。
心当たりがある場合は一度婦人科に受診し、検査してもらうことが大切です。
黄体機能不全の診察と治療方法
黄体機能不全の症状が疑われた場合「どうやって治すのか?」「改善方法は?」と気になる方もいるでしょう。
黄体機能不全は、以下の方法で診察と治療を進めていきます。
検査方法
医療機関で黄体機能不全の検査を受ける時は、事前に記録した基礎体温表を持っていき、専門医に見てもらいましょう。
基礎体温表が以下の状態であれば、黄体機能不全が起きている可能性が高いです。
- 高温期が12日未満
- 高温期の途中で基礎体温が下がる
- 高温期の基礎体温が36.7未満もしくは低温期との差が0.3未満
黄体機能不全の診断は基礎体温のほか、体内の黄体ホルモンの量や子宮内膜の状態によっても判断されます。
これらを検査する方法を詳しく見ていきましょう。
黄体ホルモンの測定
高温期の5~7日後(黄体中期)に血液検査し、黄体ホルモンの量を測定します。
血液検査の結果で黄体ホルモンが10ng/ml未満であれば、黄体機能不全の可能性が高いです。
子宮内膜の評価
子宮内膜の状態は、高温期の5~7日後に細胞の採取や超音波検査によって確認されます。
確認した子宮内膜の厚さや形態が正常でない場合は、黄体機能不全が疑われます。
治療方法
黄体機能不全が不妊や流産の原因になることを知ると、実際に治るのか不安になりますよね。
以下の治療法は有効性が確立されていませんが、不妊治療の場面でも妊娠率を上げるために扱われている方法です。
黄体補充療法
黄体補充療法は、体内に黄体ホルモンを補充する改善方法です。
排卵前後に内服薬や注射をおこない、黄体ホルモンを投与します。
排卵後の黄体ホルモンを増加させて、黄体機能不全の症状が治ることを期待します。
黄体機能刺激療法
黄体機能刺激療法は、黄体ホルモンの分泌を促す治療です。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)というホルモン製剤の注射を数日から1週間ごとにおこない、黄体からホルモンが分泌されることを期待します。
不安を感じた時は婦人科を受診
「生理周期がバラバラ」「不正出血が続く」「なかなか妊娠できない」など、少しでも不安な症状があれば婦人科を受診しましょう。
受診に抵抗があったり、忙しさで受診を後回しにしたりすることもあるかもしれません。
しかし、症状を放置すると取り返しのつかない状態になる可能性があります。
早めに受診することで潜んでいた病気がみつかり、症状の改善に繋がるかもしれません。
まとめ
以下の症状が続く場合は子宮や卵巣の病気が潜んでいる可能性があります。
放置せずに早めに婦人科に行って相談しましょう。
- 不規則な生理周期
- 不正出血
- 正常でない基礎体温
- 不妊や流産
これらの症状は、黄体機能不全や無排卵性周期症などの病気にかかっている可能性があります。
妊娠率が下がったり、将来の生活習慣病や骨粗鬆症の発症リスクが高まったりするので放っておくのは期間です。
過激なダイエットやストレス、不規則な生活、過度な運動などでも生じやすいので注意しましょう。
女性の健康課題に関心をもって、安心できる生活を送れるようにしてはいかがでしょうか。