喘息と気管支炎は、呼吸器系に影響を及ぼす病気です。
両者は症状が似ていることから混同されがちですが、異なる病態を持っています。
それなら、治し方も違ってくるのでしょうか。
この記事では、喘息と気管支炎の違い、治療法、症状、併発の可能性、大人と子どもにおける影響などについて詳しく解説します。
また、これらの病気が人にうつるか、悪化した場合のリスク、さらには死亡率についても触れていきます。
喘息とは
喘息は、慢性的な気道の炎症によって引き起こされる病気です。
気道が過敏になり、狭くなることで呼吸が困難になります。
主な症状としては、次のようなものがあります。
- 咳:特に夜間や早朝に悪化することが多い。
- 喘鳴(ぜいめい):呼吸時にヒューヒューと音がする。
- 息切れ:軽度の運動でも息切れを感じる。
- 胸の圧迫感:胸が締め付けられるような感覚。
喘息の原因は完全には解明されていませんが、遺伝的要因と環境的要因が関与しているとされています。
アレルゲン(ダニや花粉、ペットの毛など)、大気汚染、煙草の煙、運動、ストレスなどが発作の誘因となります。
気管支炎とは
気管支炎は、気管支の炎症を特徴とする病気で、急性気管支炎と慢性気管支炎の2種類があります。
急性気管支炎は通常、ウイルス感染が原因で一時的なものであり、慢性気管支炎は長期間にわたる喫煙や大気汚染によって引き起こされることが多いです。
急性気管支炎の症状には、次のようなものがあります。
- 咳:乾いた咳から始まり、後に痰を伴う咳に変わることが多い。
- 痰:白色や黄色の痰が出る。
- 発熱:軽度の発熱を伴うことがある。
- 喉の痛み:喉の不快感や痛みを感じることがある。
一方、慢性気管支炎の症状は以下の通りです。
- 慢性的な咳:3ヵ月以上続く咳。
- 痰:毎日のように痰が出る。
- 呼吸困難:長期間にわたる気道の炎症が原因で呼吸が困難になる。
急性気管支炎の主な原因はウイルス感染であり、風邪やインフルエンザウイルスが一般的な原因です。
細菌感染による場合もありますが、こちらは稀です。
慢性気管支炎の主な原因は喫煙であり、大気汚染や有害な粉塵、化学物質に長期的に晒されることなども関係しています。
喘息と気管支炎の違い
では、喘息と気管支炎の違いをまとめてみましょう。
病態の違い
喘息
慢性的な気道の炎症と気道過敏性が特徴。
発作的に症状が現れることが多く、アレルギーが大きく関係する。
気管支炎
気管支の炎症が主な特徴であり、急性の場合は一時的、慢性の場合は長期間にわたる。
症状の違い
喘息
喘鳴や息切れ、夜間や早朝の咳が特徴。
気管支炎
咳や痰が主要な症状で、急性の場合は発熱や喉の痛みを伴うことがある。
診断方法の違い
喘息
呼吸機能検査(スパイロメトリー)や気道過敏性試験、アレルギー検査が行われる。
気管支炎
医療面接と身体診察、必要に応じて胸部レントゲンや痰の検査が行われる。
喘息と気管支炎の治療
喘息の治療法
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吸入薬
吸入ステロイド薬や長時間作用型β2刺激薬(LABA)が主な治療薬です。 -
経口薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬やテオフィリンなど。 -
発作時の治療
短時間作用型β2刺激薬(SABA)を吸入して症状を緩和します。 -
環境管理
アレルゲンの除去や環境の改善が重要です。
気管支炎の治療法
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急性気管支炎
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対症療法
咳を和らげるための鎮咳薬や去痰薬が用いられます。 -
感染対策
ウイルス性の場合は抗生物質は不要ですが、細菌感染が疑われる場合は抗生物質が処方されることがあります。
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慢性気管支炎
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禁煙
最も重要な治療法は禁煙です。 -
薬物療法
気管支拡張薬や吸入ステロイド薬が使用されます。 -
リハビリテーション
呼吸リハビリテーションを行うことで症状の改善が期待できます。
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喘息と気管支炎の併発
喘息と気管支炎は併発することがあります。
慢性気管支炎患者が喘息を発症するケースや喘息患者がウイルス感染により急性気管支炎を起こすことがあります。
このような場合は治療が複雑になるため、専門医の診察が必要です。
どうやって治すのか提示してもらえます。
喘息と気管支炎の経過と予後
では、喘息と気管支炎、それぞれの経過と予後はどのように違うのでしょうか。
どのくらいで治るかは個人差があるため、医師に相談しましょう。
喘息の経過と予後
適切な治療と環境管理により、喘息の症状はほとんどの患者さんでコントロールが可能です。
悪化のリスクとしては、適切な治療を受けない場合に重篤な発作を起こし、呼吸困難や死に至ることがあります。
喘息による死亡率は先進国では減少傾向にありますが、世界的には年間約25万人が喘息に関連して死亡しているとされています。
気管支炎の経過と予後
急性気管支炎では、多くの場合数週間以内に自然に回復しますが、咳が数週間から数ヵ月続くことがあります。
慢性気管支炎は長期間にわたる気道の炎症と痰の分泌が続くため、適切な治療と管理が必要です。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の一部として扱われることが多いです。
慢性気管支炎が悪化すると、呼吸不全や肺高血圧症などの合併症を引き起こすことがあります。
また、慢性気管支炎やCOPDに関連する死亡は、世界的には年間300万人以上と推定されています。
喘息と気管支炎の大人と子どもにおける影響
喘息や気管支炎の大人と子どもへの影響はどうなっているのでしょうか。
同じ病名でも、大人と子どもでは原因に違いはあるのでしょうか。
大人の喘息と気管支炎
成人喘息はストレスや職業性アレルゲン、喫煙が誘因となることが多いです。
仕事や日常生活に大きな影響を及ぼすことがあり、継続的な治療と管理が必要です。
一方、成人の急性気管支炎はウイルス感染が主な原因で、慢性気管支炎は喫煙が大きな要因です。
子どもの喘息と気管支炎
子どもの喘息はアレルギーが大きく影響しており、家庭内のアレルゲンや環境要因が重要であることが多いです。
治療の他、アレルゲン管理が必要です。
子どもの急性気管支炎はウイルス感染が原因で、特に冬に多く見られます。
慢性気管支炎の原因の多くは喫煙のため、子どもであれば慢性気管支炎は基本的にはないと言えます。
喘息と気管支炎の予防と管理
次に、喘息と気管支炎の予防と管理について見ていきましょう。
それぞれの原因が異なるので、予防方法も違ってきます。
喘息の予防と管理
喘息の予防と管理に必要なのは、家庭内のダニやペットの毛、花粉などのアレルゲンを減少させることです。
自分がどんなアレルギーを持っているかは、病院で検査をすればわかります。
しかし、仮にアレルギーを持っていなくても、不衛生な環境で過ごすことは健康に良くありません。
特に呼吸器を守るためにも、清潔な環境になるよう掃除を心がけましょう。
具体的には、エアコン使用前にエアコン内を掃除したり、布団を定期的に洗うなどの対策があります。
エアコンは、エアコンクリーニングの専門業者にお任せすると安心です。
エアコンを使う時期が来る前に依頼すると良いでしょう。
市販のエアコンクリーニングスプレーも売っているため、カビ予防などに使用してみてください。
布団の清潔さを保つには、干して乾燥させることが大切です。
人は、寝ている間に汗をかきます。
その汗を布団が吸い込んでしまうので、乾燥させて湿気を逃がすようにしましょう。
また、空気中の汚れに関しては、空気清浄機の使用や禁煙が効果的です。
気管支炎の予防と管理
喫煙は気管支炎の主な原因であるため、禁煙することが最も重要な予防策です。
タバコは依存性が高いため、止めるのは大変かもしれませんが、「百害あって一利なし」です。
禁煙を補助してくれるアイテムは市販でも販売されていますし、病院で禁煙サポートを受けられるところもあります。
また、ウイルス感染を予防するためにこまめに手を洗い、公共の場ではマスクを着用すると気管支炎の予防に効果があります。
喘息と気管支炎は人にうつる?
喘息は感染症ではないため、他人にうつることはありません。
一方、急性気管支炎はウイルス感染が原因であるため、咳やくしゃみを通じて他人にうつることがあります。
特にインフルエンザや風邪が原因の場合は注意が必要です。
喘息と気管支炎の悪化と死亡率
喘息が悪化すると、重篤な発作を起こし、呼吸困難や呼吸停止に至ることがあります。
一方、気管支炎が悪化すると、肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの重篤な合併症を引き起こすことがあります。
重篤な喘息発作やCOPDの悪化によって死に至ることもありますが、適切な治療を受けていれば確率は低いです。
世界的に見ると、喘息に関連する死亡は年間約25万人、COPDに関連する死亡は年間300万人以上とされています。
しかし、医療が日本よりも発展していない国の数値も含むため、日本国内では適切に処置されていればそこまで怖がる必要はありません。
まとめ
喘息と気管支炎には似ているところもありますが、異なる特徴もある呼吸器系の病気です。
それぞれに特有の症状、原因、治療法があります。
場合によってはこれらが併発し、治療が複雑になることがあります。
喘息は慢性的な気道の炎症と過敏性が特徴であり、気管支炎は急性または慢性的な気管支の炎症が特徴です。
大人と子ども、どちらでも症状を発症する可能性があります。
しかし、適切な治療を受ければ症状をコントロールし、生活の質を向上させられます。
喫煙の禁止、アレルゲンの除去、適切な薬物治療、定期的な医療チェックを心掛けるようにしましょう。