「アレルギー性鼻炎はどうやって起こる?」
「アレルギー性鼻炎はどうやって治せばいい?」
このような疑問を持っている人は少なくないのではないでしょうか。
本記事では、アレルギー性鼻炎が起こるメカニズムを徹底解説。
アレルギー性鼻炎に対する治療法や、簡単にできる重症度のチェック方法も紹介します。
アレルギー性鼻炎に悩まされる人にとって必見の内容です。
ぜひ最後までご覧ください。
アレルギー性鼻炎が起こるメカニズム
アレルギー性鼻炎の原因を簡単に言うと、免疫機能の過剰反応です。
アレルギー性鼻炎が起こる過程では「感作」と「誘発」という2つの反応があり、様々な物質・細胞が関与しています。
その結果として、アレルギー性鼻炎の症状が起こるのです。
それぞれの反応はどのようにして起こっているか、メカニズムを詳しく見ていきましょう。
感作
外部から何らかの物質が侵入し、感作の反応が始まります。
侵入してきた物質を抗原(アレルゲン)と呼びますが、この段階では抗原がどのようなものか不明です。
そのため、私たちの身体は抗原から身体を守ろうとします。
ここで登場するのが、私たちの身体にいる「Th2細胞」と「B細胞」です。
抗原の侵入を感知したTh2細胞が、B細胞に向けて「IL-4」や「IL-13」などの物質を放出。
そして、IL-4やIL-13が届いたB細胞は「形質細胞」に変化します。
B細胞から変化した形質細胞は、IgEという物質を作ります。
IgEは抗原に結合する能力を持っており、抗原から身体を守るために最前線で戦ってくれる存在です。
なお、IgEは抗原に特異的であり、他の物質には結合しません。
次に登場するのが、「マスト細胞」です。
マスト細胞には「Fc受容体」という場所があり、形質細胞が作ったIgEがFc受容体に移動します。
ここまでが感作の反応です。
誘発
再び同じ抗原が侵入してきたら、誘発の反応の始まりです。
抗原を感知したマスト細胞が、Fc受容体にいるIgEを使って、抗原を捕まえにいきます。
イメージとしては、飛んできたボール(抗原)を、野球選手(マスト細胞)が、グローブ(IgE)で取りにいっている感じです。
IgEが抗原と結合するとマスト細胞が刺激を受け、「ロイコトリエン」や「ヒスタミン」といった物質を放出します。
これらの物質が体内で作用するために、アレルギー性鼻炎の症状は発生しているのです。
症状
アレルギー性鼻炎の代表的な症状は、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりです。
このうち、くしゃみと鼻水はヒスタミンの作用により起こり、鼻詰まりはロイコトリエンの作用により起こっています。
アレルギー性鼻炎の症状がひどくなる原因は、抗原への暴露の増加です。
何が抗原になっているのかは個人差がありますが、抗原になりやすい代表的な物質として以下が挙げられます。
- 花粉
- ダニ
- カビ
- ペットの毛
その他、環境要因や生活習慣もアレルギー性鼻炎の悪化に繋がります。
具体的には、大気汚染や空気の乾燥、ストレスや睡眠不足などです。
アレルギー性鼻炎をほっておくと、感作と誘発の反応が反復されます。
その結果、鼻の粘膜がより過敏になったり、不可逆的に肥厚したりすると考えられています。
合併症として、慢性副鼻腔炎・気管支喘息・アレルギー性結膜炎を引き起こす恐れもあり、早めの治療が大切です。
アレルギー性鼻炎の治し方
アレルギー性鼻炎の治し方として、主なものは以下の3つです。
- 薬物療法
- アレルゲン免疫療法
- 手術療法
それぞれの治療法について詳しく解説します。
薬物療法
アレルギー性鼻炎の治療の中心は薬物療法です。
作用するメカニズムが異なる、様々な治療薬が開発されています。
主なものは以下の通りです。
- ケミカルメディエーター遊離抑制薬…マスト細胞からヒスタミン・ロイコトリエンなどの物質が遊離するのを抑制
- 第一世代抗ヒスタミン薬…ヒスタミンの作用を抑制、主にくしゃみ・鼻水に効果的
- 第二世代抗ヒスタミン薬…ヒスタミンの作用を抑制、第一世代より副作用が軽減
- 抗ロイコトリエン薬…ロイコトリエンの作用を抑制、鼻詰まりに効果的
- 抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬…アレルギー反応に関与している「プロスタグランジンD2」や「トロンボキサンA2」という物質の作用を抑制、鼻詰まりに効果的
- Th2サイトカイン阻害薬…Th2細胞の働きを阻害し、形質細胞によるIgE産生を抑制
- ステロイド薬(点鼻薬)…くしゃみ・鼻水・鼻詰まりに高い効果、副作用ほとんどなし
- ステロイド薬(内服薬)…くしゃみ・鼻水・鼻詰まりに高い効果、副作用があるため短期間のみ使用
- 点鼻用血管収縮薬…鼻詰まりに効果的、即効性があるものの使い過ぎると逆効果
- 生物学的製剤…IgEとマスト細胞の結合を阻害
アレルギー性鼻炎に対して、さまざまな市販薬も出回っています。
Amazonの売れ筋ランキングをもとに、内服薬・点鼻薬の人気製品を紹介します。
- アレジオン20(エスエス製薬/内服薬)
- アレルビ(皇漢堂製薬/内服薬)
- パブロン鼻炎カプセルSα(大正製薬/内服薬)
- ナザール「スプレー」(佐藤製薬/点鼻薬)
- ナシビンMスプレー(佐藤製薬/点鼻薬)
- スットノーズαプラス点鼻薬(奥田製薬/点鼻薬)
アレルギー性鼻炎の軽い症状に対して市販薬を使うのは有効です。
ただし、症状がさらに悪化したり、薬剤を使い出してから副作用が生じたりした場合は、早めに医療機関を受診してください。
アレルゲン免疫療法(抗原特異的減感作療法)
アレルゲン免疫療法では、アレルゲン(抗原)のエキスを少量から投与していきます。
身体の反応を見つつ次第に投与量を増やしていき、身体をアレルゲンに適応させようとする治療法です。
代表的なアレルゲン免疫療法として、アレルゲンを皮下に注射する「皮下免疫療法」が行われています。
また、2010年代半ばには、アレルゲンを舌の下に投与する「舌下免疫療法」が登場しました。
舌下免疫療法は、スギ花粉症やダニ抗原によるアレルギー性鼻炎に対して保険適用となっています。
アレルゲン免疫療法のメリットは、長期的に症状を抑えられる可能性がある点です。
薬物療法が対処療法にとどまっている一方で、アレルゲン免疫療法ならば完治も期待できます。
ただし、アレルゲン免疫療法ではいくつかの副作用が報告されています。
主な副作用は以下の通りです。
- 口の中の腫れ、不快感、かゆみ
- 唇の腫れ
- 喉の不快感
- 耳のかゆみ
重大な副作用として、アナフィラキシーが起こる可能性も否定できません。
アナフィラキシーとは、医薬品や食物などに対して急激なアレルギー反応が発生している状態です。
蕁麻疹などの皮膚症状、腹痛などの消化器症状、呼吸困難などの呼吸器症状、場合によっては意識の混濁などが起こり得ます。
安全かつ効果的にアレルゲン免疫療法を行うため、医師と十分に相談したうえで治療を進めてください。
手術療法
手術療法は、アレルギー性鼻炎がかなり重症の場合に行われます。
代表的な手術法は、レーザー手術や後鼻神経切断術などです。
アレルギー反応が繰り返され、鼻の粘膜が不可逆的に変化してしまうと、薬剤が効かなくなる場合があります。
そのようなケースでは、手術療法以外に選択肢がありません。
手術するしかない状態を避けるためにも、アレルギー性鼻炎に対する治療は早めに行いましょう。
アレルギー性鼻炎の重症度をチェックする方法
アレルギー性鼻炎の重症度は、症状の強さにより簡単にチェックできます。
まず、1日あたりの平均くしゃみ回数、もしくは1日あたりの平均鼻かみ回数を計算してください。
以下が回数ごとのスコアです。
- 21回以上…A
- 11~20回…B
- 6~10回…C
- 1~5回…D
- 0回…E
続いて、鼻詰まりの状態を主観でスコアリングします。
- 一日中完全に詰まっている…5
- 鼻詰まりが非常に強く、一日のうち口呼吸の時間がかなりある…4
- 鼻詰まりが強く、一日のうち口呼吸が時々ある…3
- 口呼吸は全くないが鼻詰まりがある…2
- 鼻詰まりがない…1
以上2つのスコアを組み合わせて、アレルギー性鼻炎の重症度を判断します。
- A-5,A-4,A-3,A-2,A-1,B-5,C-5,D-5,E-5…最重症
- B-4,B-3,B-2,B-1,C-4,D-4,E-4…重症
- C-3,C-2,C-1,D-3,E-3…中等症
- D-2,D-1,E-2…軽症
- E-1…無症状
アレルギー性鼻炎の重症度分類は、治療に用いる薬剤の選択に役立ちます。
例えば、2020年に保険適用を受けた新しい治療薬である「ゾレア」は、最重症・重症の患者さんのみに用いられます。
アレルギー性鼻炎についてよくあるQ&A
アレルギー性鼻炎についてよくあるQ&Aを紹介します。
気になる疑問を解消しましょう。
Q.アレルギー性鼻炎に急になる可能性はある?
アレルギー性鼻炎に急になる可能性はあります。
これまでくしゃみ・鼻水に苦しんで経験がなかった70代の方が、突然アレルギー性鼻炎になった事例もあるようです。
Q.アレルギー性鼻炎を自力で治す方法はある?
アレルギー性鼻炎を自力で治す方法はありません。
症状が悪化する前に、薬物療法やアレルゲン免疫療法を行いましょう。
Q.アレルギー性鼻炎で食べてはいけないものはある?
アレルギー性鼻炎の患者さんが食べてはいけないものはありません。
しかし、揚げ物・脂身の多い肉・アルコールは、アレルギー反応の悪化を引き起こす可能性があります。
食べ過ぎ・飲み過ぎには注意しましょう。
スギ花粉が原因でアレルギー性鼻炎が発生している人は、トマトの食べ過ぎにも気をつけてください。
トマトに含まれるアレルゲンとスギ花粉のアレルゲンの構造が似ているため、口のかゆみや喉の不快感などの症状が起こり得ます。
Q.アレルギー性鼻炎と花粉症の違いは?
アレルギー性鼻炎は一年中症状が続く通年性と、特定の時期だけに症状が出る季節性に分けられます。
主にハウスダストとダニが原因となる通年性に対して、季節性の原因はその時期だけに飛散している花粉です。
つまり、花粉症とは季節性のアレルギー性鼻炎を指しているのです。
日本のほとんどの地域では、スギ花粉症が最多であると報告されています。
まとめ:アレルギー性鼻炎を早めに治療して悪化を防ごう
アレルギー性鼻炎は感作と誘発によって生じ、くしゃみ・鼻水・鼻詰まりを引き起こします。
症状の悪化を防ぐためには、早めの治療が欠かせません。
アレルギー性鼻炎に対する薬物療法には多くの種類があり、効果がそれぞれ異なります。
長期的にアレルギー反応を抑えたいならば、アレルゲン免疫療法も一つの選択肢です。
アレルギー性鼻炎の重症度は簡単にチェックできます。
症状に苦しんでいる人は、早めに医療機関にかかりましょう。