5-FU軟膏、正式にはフルオロウラシル軟膏(読み方:フルオロウラシルなんこう)は、様々な皮膚疾患の治療に使用される薬剤です。
この軟膏は、主に皮膚がん、ボーエン病、コンジローマ、イボなどの治療に用いられます。
しかし、近年、一部の市場で販売が中止されていることもあります。
ここでは、5-FU軟膏の塗り方や効果、副作用、使用方法、販売中止の理由などについて詳しく説明します。
5-FU軟膏の基本情報
5-FU軟膏は、塗るがんに効果がある薬剤です。
表在性の皮膚がんに対して有効で、皮膚がんの初期段階で使用されることが多いです。
このように、5-FU軟膏は通常、皮膚がんの治療に使われますが、その他の用途で使われることもあります。
例えば、一部でイボの治療に良いとされていることもありますが、皮膚科によっては処方しないところもあります。
その理由は、イボに効果があるとする論文と、ないとする論文があるからです。
5-FU軟膏の塗り方と使用方法
では、5-FU軟膏の塗り方を見ていきましょう。
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患部を清潔にする
まず、患部をぬるま湯で洗い、乾かします。 -
軟膏の適用
指先や綿棒を使って、患部に薄く均一に軟膏を塗り、薬剤を塗った部分をサランラップの様な防水フイルムでカバーしましょう。
塗布後、手をよく洗ってください。 -
適用頻度
通常、1日1回から2回、医師の指示に従って適用します。 -
使用期間
治療期間は疾患の種類と重症度によりますが、一般的には数週間~数ヵ月間です。
治療期間中は定期的に医師の診察を受けましょう。
薬剤を塗った部分をサランラップなどでカバーするのは、患部での効果を高める目的と同時に、正常な周囲の皮膚への付着を防ぐ目的があります。
5-FU軟膏は健康な皮膚にも影響を及ぼすからです。
この方法は閉鎖密封療法(ODT)と言われ、5-FU軟膏を使う際には一般的な方法となります。
5-FU軟膏の副作用
フルオロウラシル軟膏の使用に伴う副作用には、以下のようなものがあります。
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局所的な皮膚反応
発赤や腫れ、痛み、かゆみ、乾燥、潰瘍などの症状が現れることがあります。 -
全身性の副作用
非常に稀ですが、フルオロウラシルが全身に吸収されることにより、全身性の副作用(吐き気や嘔吐、下痢など)が発生することがあります。
副作用が強い場合や異常が見られた場合は、速やかに医師に相談することが重要です。
5-FU軟膏の販売中止の理由
近年、一部の市場で5-FU軟膏の販売が中止されていることがあります。
その理由としては、以下のような要因が考えられます。
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安全性の懸念
一部の地域では、安全性の問題から販売が中止されることがあります。 -
代替薬の登場
より効果的で副作用の少ない新薬が開発された場合、旧薬が市場から撤退することがあります。 -
製造コスト
製造コストや供給チェーンの問題により、販売が中止されることがあります。
協和キリン株式会社が販売中止
2020年2月には、協和キリン株式会社が「5-FU錠50協和」「5-FU錠100協和」「5-FU軟膏5%協和」(20g)の販売中止についての案内を出しました。
以下、PDFからの抜粋です。
「このたび弊社では、抗悪性腫瘍内服剤「5-FU 錠 50 協和」「5-FU 錠 100 協和」および抗腫瘍外用剤「5-FU 軟膏 5%協和」の一部包装規格につきまして、諸般の事情により 2020 年 5 月末日、弊社在庫終了をもちまして販売を中止させていただくこととなりましたので、謹んでご案内申し上げます。」
このように、理由は不明で5-FU 軟膏が販売中止になる事態があったのですが、2022年10月14日には、「公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会」が以下のような声明を出しています。
公益社団法人 日本婦人科腫瘍学会の通常販売開始
「協和キリン株式会社が製造販売しております抗悪性腫瘍剤「5-FU注250mg/1000mg」〔一般名:フルオロウラシル〕の供給制限が起こっておりましたが、この度、増産対応等で安定供給に必要な在庫数量の確保の目途が立ち、5-FU注の特約店への限定出荷を解除し、通常出荷を再開になったとの連絡がありました。」
「増産対応等で安定供給に必要な在庫数量の確保の目途が立ったから」という理由で、通常販売は再開されています。
5-FU軟膏の入手方法
フルオロウラシル軟膏は、医師の処方が必要です。
市販で売っていないので、必要であれば病院へ行く必要があります。
尖形コンジローマと5-FU軟膏
尖形コンジローマは、性行為により伝播する性感染症の一つです。
ヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus:HPV)により感染するといわれており、女性患者が多いものの、パートナーの男性にもうつることがあります。
尖形コンジローマの治療には、外科療法以外に5-FU軟膏を使用する治療も行われています。
しかし、保険適用がないことや、びらんや潰瘍などの副作用があることなどから、日本初の尖圭コンジローマ治療薬であるイミキモドなどが使われることが多いようです。
ボーエン病に対する治療薬
5-FU軟膏は、ボーエン病に対する治療薬としても広く使用されています。
ボーエン病は皮膚がんの一種で、症状が皮膚の一番外側だけに留まっている早期段階の状態です。
病気の進行はゆっくりで、高齢の方によく発生する特徴があります。
ボーエン病の治療薬として使う5-FU軟膏は、1日1回か2回、病変部に塗布し、3~4週続けます。
治らなければさらに続けます。
この1クールの治療で治る可能性は約48~83%と幅があります。
皮膚にでんぷうができる原因
でんぷう(皮膚真菌症)は、カビが皮膚に感染することで発生します。
湿度の高い環境や免疫力の低下などが原因となることがあります。
でんぷう菌は元々皮膚に常在しているカビなので、夏に汗で蒸れるなどして発症することがあります。
以下は、でんぷうができやすい人の特徴です。
- 高温多湿な環境で働いている方
- 糖尿病、低栄養の方
- ステロイドを使用している方
- 妊娠している方
特に、20代から中年男女に多いそうです。
適切な衛生管理や生活習慣の改善が予防に役立ちます。
イボの治療方法
上記で、5-FU軟膏はイボには使われる時と使われない時があると述べました。
では、イボには5-FU軟膏の他にどのような治療薬が使われるのでしょうか。
イボの治療の基本となるのは、液体窒素を使う治療です。
これを冷凍両方と言います。
液体窒素は-196度にもなり、イボに当てることで細胞を破壊します。
液体窒素療法は、通常数回行います。
しかし、長期間放置されたイボや、固いイボは医師でも苦労するそうです。
効果を上げるために利用されるのは、以下のような方法です。
炭酸ガスレーザー
炭酸ガスレーザーを使う場合は、局所麻酔を行います。
イボを焼いて取ってしまう方法です。
イボを取り残すと再発する可能性があるため、腕が確かな医師を見極める必要があります。
イボはぎ手術
こちらも、局所麻酔を行ってイボをメスやハサミで取っていきます。
物理的な方法ですが、頑固なイボに対する治療法となります。
オキサロール軟膏外用
角化症治療薬のオキサロールは、5-FU軟膏の使い方と同様に塗った後サランラップなどで密封します。
しかし、これだけでは固いイボは取れないため、前述の液体窒素も併用することが多いです。
皮膚を健康に保つ方法
では最後に、皮膚を健康に保つ方法をご紹介しましょう。
普段私たちの皮膚にいるカビから病気になることもあるとわかりましたよね。
清潔にしていれば良いのですが、具体的にはどのようなケアが必要なのでしょうか。
1. 体内から皮膚を健康に
健康な皮膚を維持するためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。
特に以下の栄養素が重要です。
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ビタミンC
コラーゲンの生成を助け、皮膚の弾力を保ちます。
柑橘類やキウイ、ピーマンなどに多く含まれています。 -
ビタミンE
抗酸化作用があり、皮膚の老化を防ぎます。
ナッツ類やアボカド、植物油に多く含まれています。 -
オメガ3脂肪酸
皮膚の保湿を助け、炎症を抑えます。
サーモンやマグロ、チアシードに豊富です。
2. 適度な保湿
皮膚の乾燥を防ぐために、適度な保湿が必要です。
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保湿剤の使用
お風呂やシャワーの後、まだ皮膚が湿っているうちに保湿剤を使用することで、皮膚の水分を閉じ込めます。 -
室内の湿度管理
冬場は特に空気が乾燥しやすいため、加湿器を使って室内の湿度を保つことが大切です。
3. 日焼け対策
紫外線は皮膚の老化や皮膚がんの原因となります。
適切な日焼け対策が必要です。
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日焼け止めの使用
外出する前にSPF30以上の日焼け止めを塗り、2時間ごとに再塗布すると効果が保てます。 -
帽子や長袖の衣服
長時間日光を浴びる場合は、帽子や長袖の衣服で肌を保護しましょう。
4. 十分な睡眠
睡眠中に皮膚の修復と再生が行われます。
質の良い睡眠を確保することが重要です。
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規則正しい睡眠習慣
毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整えてください。 -
快適な寝具の使用
肌に優しい素材の寝具を選び、快適な睡眠環境を整えましょう。
5. 適切なスキンケア
日常のスキンケアも皮膚の健康維持には重要です。
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優しい洗顔
強い洗顔料を避け、肌に優しい成分の洗顔料を使用します。
顔をこすらず、優しく洗います。 -
角質ケア
過度な角質ケアは逆効果です。
週1~2回の軽い角質ケアを行いましょう。
まとめ
5-FU軟膏(フルオロウラシル軟膏)は、皮膚がんだけでなく、ボーエン病やコンジローマ、イボなどの治療に使用される薬剤です。
適切な使用方法と医師の指示に従うことで、効果的な治療が期待できるでしょう。
しかし、副作用や販売中止のリスクも存在するため、使用前に必ず医師や薬剤師に相談し、添付文書をよく読んでから使用することをおすすめします。