今や糖尿病の薬剤はたくさんありますが、その中でも「フォシーガ」は、糖尿病だけでなく心臓や腎臓も守る薬として使用されています。
さらに、フォシーガの効能として体重減少の効果も現れることがわかり、ダイエットの薬剤としても処方されるようになりました。
当記事では、フォシーガの4つの効能を解説します。
さらに正しい飲み方や注意点まで解説しているため、ぜひ参考にしてください。
フォシーガとは?
総称名 | フォシーガ |
---|---|
一般名 | ダパグリフロジンプロピレングリコール水和物 |
薬効分類名 | 選択的SGLT2阻害剤 |
会社名 | アストラゼネカ |
主な種類と薬価 |
・フォシーガ錠5mg 169.9円/錠 ・フォシーガ錠10mg 250.7円/錠 |
フォシーガ(SGLT2阻害剤)は、糖尿病の選択薬の一種であり、腎臓に働くことで余分な糖を尿と一緒に排出し、血糖値を下げる効果があります。
しかし、現在は糖尿病だけに効く薬剤ではなく、腎臓や心臓の保護、体重減少などの効果もあります。
普通血液中の糖分は、腎臓の糸球体(しきゅうたい)と呼ばれる場所で、身体にとって余分なものとそうでないものが判別され通過する仕組みです。
判別されたものが尿として尿細管を通る際に、さらに身体にとって必要な成分を再吸収されます。
しかし、SGLT2阻害剤は尿細管での糖の吸収を抑えて、そのまま尿と一緒に出すことで血糖値を下げるメカニズムとなっています。
これらの仕組みにより、体内の水分量の調節やその他の様々な作用の働きで、心不全や腎臓病が改善されるのです。
フォシーガの4つの効能
フォシーガは主に以下の4つの効能があります。
- 血糖値を下げる
- 心臓を守る
- 腎臓を守る
- 体重を減らす
一つずつ詳しく解説していきます。
①血糖値を下げる
糖尿病の患者さんがフォシーガを内服することで、血液中の過剰な糖を尿と一緒に排出でき、血糖値を下げることができます。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、これらの違いは、インスリン(血糖を一定の範囲内で収める役割)の分泌量の違いです。
1型糖尿病はほとんどインスリンが分泌されなくなりますが、2型糖尿病の場合は、インスリンが出にくくなる病気です。
フォシーガは、インスリンの代替薬ではないため、インスリンの投与は継続的に行う必要があります。
さらに、フォシーガはインスリンに対し依存性はないため、インスリン抵抗性(インスリンは分泌されているが効きにくい状態)にも効果的です。
②心臓を守る
フォシーガは、慢性腎不全の人の心臓への負担を軽減し、心機能が改善されることで症状の進行を遅らせることができます。
また、心不全による再入院のリスクを減らす効果もあると言われています。
慢性心不全の人がフォシーガを飲むことで、改善する理由は以下の通りです。
- 利尿作用により身体の余分な体液が排出
- 血圧の低下
- 炎症の抑制作用
- 心臓の繊維化(硬くなる)防止
そもそも、慢性心不全とは、心臓が身体に必要な量の血液を十分に供給できない状態のことです。
フォシーガは、糖の再吸収を阻止し、尿と一緒に排泄するため体内の余分な水分が減少することで、心不全の症状である浮腫などが改善します。
また、心不全は心臓に負荷がかかることで、心臓が硬くなり炎症が起こりやすいです。
しかし、フォシーガは心臓の線維化や損傷の原因である酸化ストレスを軽減させる作用があるため、心臓の収縮力が改善され、心機能が向上します。
③腎臓を守る
フォシーガは、慢性腎臓病の進行を遅らせる効果があります。
慢性腎臓病とは、長期間にわたり腎臓の機能が徐々に低下する病気です。
腎臓の機能は、血液をろ過し、不要な物質や水分を尿として排泄する役割を持っており、進行して悪化すると腎不全に陥ります。
慢性腎臓病の人がフォシーガを飲むことで、改善する理由は以下の通りです。
- 腎の保護作用
- 利尿作用により身体の余分な体液が排出
- 血糖のコントロール
- 炎症抑制
- 心血管の保護
元々、糖尿病の人は腎障害を併発している人が多いため、血糖をコントロールするフォシーガを飲むことで腎障害の進行が遅くなります。
また、フォシーガは抗炎症作用を持っており、腎臓の炎症や腎臓にかかる負担を軽減するため、腎臓の機能を保護してくれます。
フォシーガは、2020年に糖尿病を患っていない腎臓病の患者さんに対し、効果があることが判明し、2021年9月より腎臓病のみを患う患者さんにも保険適用となりました。
④体重を減らす
フォシーガの有効成分である「ダパグリフロジン」には、尿から糖質を排出させて中性脂肪(体脂肪)が貯留するのを防ぐため、ダイエット効果があります。
元々は、糖尿病の治療薬として服用されていましたが、体重が減少する効果があることが判明したため、ダイエットの薬剤としても使用されるようになりました。
フォシーガをダイエット目的として使用するメリットは、食事量を変えることなく体重減少が見込めることです。
糖質制限と同じ効果があり、脂肪が付きにくい体質になるため、リバウンドしにくい点もポイントです。
フォシーガを飲んで、約半月~1ヵ月で効果を実感する人が多く、さらにダイエット効果を高めるには、適度な運動をおすすめします。
軽いウォーキングなどの有酸素運動を行うことでより健康的に痩せることができます。
フォシーガの正しい用法・容量について
疾患 | 容量・用法 |
---|---|
1型糖尿病 |
・成人には5mgを1日1回経口投与 ・必ずインスリンの投与と併用する ・効果があまり感じられない場合は、経過観察しながら10mg1日1回に増量可能 |
2型糖尿病 |
・成人には5mgを1日1回経口投与 ・効果があまり感じられない場合は、経過観察しながら10mg1日1回に増量可能 |
慢性心不全 慢性腎臓病 |
・成人には10mgを1日1回経口投与 ・適切な対応が行える環境で、最初は5mgを1日1回から投与を開始し、経過観察しながらインスリン量を調整した後、10mg1日1回に増量 ・5mg1日1回では慢性心不全や慢性腎臓病に対する有効性は確認されていない |
ダイエット |
・1日1回 5~10mgを服用 ・朝服用すると夕食時でも効果が持続しやすい ・利尿作用があるため就寝前は服用を控える |
フォシーガは、飲むタイミングは特に決められていませんが、利尿作用があるため就寝前に飲むのはおすすめできません。
飲み忘れた場合は、飲む予定だった薬剤はすぐに内服してください。
もし、次の服用期間まで半日以上ある場合は、一回分飛ばして通常の服用予定の時間に飲みましょう。
フォシーガ服用中の4つの副作用
ここまでで、フォシーガの効能や飲み方を解説してきましたが、副作用に関しても気になっている人は多いのではないでしょうか。
副作用はそれぞれ頻度が不明なものもありますが、以下の4つです。
- 尿路感染・性器感染
- 低血糖症状の出現
- 脱水症状の出現
- ケトアシドーシス
一つずつ解説していきます。
尿路感染・性器感染
フォシーガを飲むことで、尿路感染や性器感染を起こす可能性があります。
もしこれらに感染すると、腎盂腎炎、外陰部及び会陰部の壊死性筋膜炎(フルニエ壊疽)、敗血症などの重篤な感染症になることもあります。
感染が起きる理由は、糖を含んだ尿を出すことで、そこから雑菌がわき、感染してしまうのです。
感染した場合は以下の症状がみられます。
- 排尿時の痛み・灼熱感
- 陰部の痛み
- トイレが近い
- おりもののにおいが強くなる、色が変わる
これらの感染は、フォシーガの副作用の中でも5%と最も発生頻度が高いです。
排泄後は、ウォシュレットで洗浄するなど清潔感を保つようにしましょう。
低血糖症状の出現
フォシーガを飲むことで、まれに低血糖症状がみられる場合があります。
特に以下の人は注意が必要です。
- 栄養不良の状態
- 飢餓状態
- 不規則な食事を摂取している状態
- 食事量が足りていない又は衰弱状態
- 筋肉を使う激しい運動を行う場合
- 過度にアルコールを摂取している人
特に低血糖の際は、めまいによるふらつきや動悸、脱力感などがあるため、運転する人や高いところで作業する仕事の人は注意してください。
低血糖症状が現れる頻度としては不明と言われています。
もし、急に低血糖症状になった場合は砂糖を含む飲料水やブドウ糖を摂るようにしましょう。
脱水症状の出現
フォシーガは、利尿作用があるため、身体の中の体液が減少し、稀に脱水症状を起こす可能性があります。
脱水症状が起きた場合の症状は以下の通りです。
- 喉が異常に乾く
- めまいがする
- 疲れやすい
- 食欲が減る
特に高齢者は、口渇に気づかずに脱水症状を起こしやすいため、喉が乾く前から適度に水分補給を行う必要があります。
脱水症状の出現頻度は、不明瞭と言われています。
ケトアシドーシス
ケトアシドーシスとは、体内でケトン体が過剰に生成されることで、血液中に蓄積し、酸性のケトン体が血液中に増える状態です。
ケトン体が増えることにより、正常な代謝機能を妨げ、様々な臓器に影響を及ぼすのです。
特に以下の症状が現れた場合は注意してください。
- 食欲減少
- 嘔吐
- 腹痛
- 悪心
- 喉の異常な乾き
- 倦怠感
- 呼吸困難
- 意識障害
上記の症状がみられた場合は、ケトアシドーシスを発症している可能性があるため、すぐに服用を中断し、医療機関へ受診してください。
ケトアシドーシスの発生頻度は不明と言われています。
また、1型糖尿病患者は、特に発症しやすいため上記のリスクを理解しておくことが大切です。
要注意!フォシーガが禁忌の人
フォシーガの服用が禁忌の人は以下の通りです。
- フォシーガの成分に過敏症の既往歴がある人
- 重症ケトーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡がある人
- 重症感染症、手術の前後、重い外傷がある人
過敏症がある人は、フォシーガを飲むことでアレルギー反応が起きる場合があります。
フォシーガの処方を受ける前に、アレルギーの有無や持病などの情報は伝えておきましょう。
フォシーガはどこで購入できる?
フォシーガが手に入る方法としては主に以下の3つがあります。
- 病院での処方
- 個人輸入の通販サイト
- オンラインでの処方
フォシーガは、医薬品であるためドラッグストアなどの市販では購入できません。
そのため、医師の診察や相談を受けることができる病院で処方してもらうのがおすすめです。
しかし、糖尿病などの治療目的で処方してもらう場合は保険適用になりますが、ダイエット目的であると自由診療となり、料金が高くなるため注意してください。
フォシーガに関するよくある質問
ここでは、フォシーガに関してよくある質問について解説していきます。
Q.フォシーガの副作用で死亡することはありますか?
極めて死亡する確率はまれですが、ゼロではありません。
フォシーガは、糖尿病ネットワークのニュースによると、2014年の5月に発売され、4ヵ月後の9月までで死亡例は3人との報告が挙がっています。
Q.フォシーガ10㎎は体重減少に効果がありますか?
フォシーガをダイエット目的で使用する場合、5mgの処方で十分な効果を発揮します。
容量を増やす場合は、1・2型糖尿病の人が効果が不十分な場合や、慢性心不全・慢性腎臓病の人は10mgが治療用量と言われています。
ダイエット目的でフォシーガを使用する人は、10mgは服用しないようにしましょう。
Q.フォシーガで何キロ痩せれますか?
個人差はありますが、1ヵ月で約1~2㎏の減量が期待できます。
フォシーガを飲むことで、糖の排出量は1日あたり約200~500kcalです。
1ヵ月間フォシーガを飲み続けることで、6,000~15,000kcalの消費ができます。
体重1kgの減量には、約7,200kcalの消費が必要であるため、単純計算で1ヵ月約1~2㎏の減量が可能です。
フォシーガは使用目的に合わせて正しく内服しよう
フォシーガは主に以下の4つの効能があります。
- 血糖値を下げる
- 心臓を守る
- 腎臓を守る
- 体重を減らす
フォシーガの飲み方や容量に関しては、疾患や目的によって異なるため、正しい飲み方を把握した上で服用するようにしてください。
また、まれにフォシーガを飲むことで、脱水症状や低血糖症状などの副作用を起こす場合があります。
副作用が起きた場合でも正しい対処が行えるように、まずは医師からの診察を受けて、病院で処方してもらうことをおすすめします。