抗真菌薬(ポリエン系)

抗真菌薬(ポリエン系)の種類

ポリエン系抗真菌薬は、真菌感染症の治療に使用される薬剤群です。
真菌の細胞膜に作用して殺菌効果を発揮します。
主に重症の全身性真菌感染症の治療に用いられますが、一部の薬剤は局所用としても使用されます。

ポリエン系抗真菌薬には、主に以下の薬剤があります。

  • アムホテリシンB
    最も古くから使用されているポリエン系抗真菌薬
    広範囲の真菌に対して効果がある
    静脈内投与が主な使用方法
    重症の全身性真菌感染症の治療に使用

  • ナイスタチン
    主に局所用として使用される
    口腔カンジダ症や膣カンジダ症の治療に効果的
    経口投与でも全身への吸収はほとんどない

  • ナタマイシン
    主に眼科領域で使用される
    真菌性角膜炎の治療に用いられる

これらの薬剤は、真菌の細胞膜に含まれるエルゴステロールに結合して作用します。
この作用により、真菌の細胞膜に穴が開き、細胞内容物が漏出して真菌が死滅します。

ポリエン系抗真菌薬と他の抗真菌薬の比較

ポリエン系抗真菌薬、特にアムホテリシンBは、他の抗真菌薬と比較していくつかの特徴があります。

  • 抗真菌スペクトル
    非常に広範囲の真菌に効果がある

  • 殺菌作用
    多くの抗真菌薬が静菌的であるのに対し、殺菌的に作用する

  • 耐性
    耐性菌の出現が比較的少ない

  • 副作用
    特に腎毒性が問題となる

  • コスト
    リポソーム製剤は高価だが、従来の製剤は比較的安価

  • 使用経験
    長年の使用実績がある

これらの特徴により、ポリエン系抗真菌薬、特にアムホテリシンBは、重症の全身性真菌感染症の治療において重要な選択肢となっています。
しかし、副作用のリスクもあるため、使用には慎重な判断が必要です。

ポリエン系抗真菌薬の副作用

ポリエン系抗真菌薬、特にアムホテリシンBには以下のような副作用があります。

  • 腎機能障害
    最も重要な副作用で、定期的な腎機能検査が必要

  • 発熱、悪寒、戦慄
    投与中や投与直後に起こることがある

  • 電解質異常
    特にカリウムやマグネシウムの低下

  • 貧血
    長期投与で起こることがある

  • 肝機能障害
    まれに肝酵素の上昇が見られる

  • 消化器症状
    吐き気、下痢、腹痛、食欲不振など

  • 皮膚症状
    発疹、痒み、紅斑、蕁麻疹など

これらの副作用に対しては、以下のような対策が取られます。

  • 十分な補液
  • 電解質補正
  • 前投薬(解熱鎮痛薬や副腎皮質ステロイドなど)
  • リポソーム製剤の使用(腎毒性が軽減される)

ナイスタチンは局所使用が主であるため、全身性の副作用は少ないですが、まれに消化器症状や過敏症状が現れることがあります。