カルバペネム系抗生物質

カルバペネム系抗生物質の特徴

カルバペネム系抗生物質は、抗生物質の中で最も強力な部類に属する薬です。
この抗生物質は、多くの種類の細菌に対して効果を示し、特に他の抗生物質が効かないような重症感染症の治療に用いられます。

カルバペネム系抗生物質は、β-ラクタム系抗生物質の一種で、ペニシリンやセフェム系抗生物質と同じ仲間です。
しかし、その構造的な特徴により、より広範囲の細菌に対して効果を発揮します。

  • 非常に広い抗菌スペクトル
  • 多くの耐性菌にも効果がある
  • 体内での安定性が高い
  • 組織への浸透性が優れている

これらの特性により、カルバペネム系抗生物質は「最後の砦」と呼ばれることもあります。

カルバペネム系抗生物質の薬剤名と適応症

カルバペネム系抗生物質が使用される主な感染症には以下のようなものがあります。

  • 壊疽
  • 敗血症
  • 肺炎
  • 腹腔内および尿路感染症
  • 他の抗菌薬に耐性をもつ感受性菌による感染症

症状に応じて、以下のようなカルバペネム系抗生物質が使われます。

カルバペネム系抗生物質にはいくつかの種類があり、それぞれ特性が異なります。

  • イミペネム/シラスタチン
    最初に開発されたカルバペネム系抗生物質。
    シラスタチンは腎臓での分解を防ぐために併用されます。

  • メロペネム
    イミペネムよりも腎毒性が低く、中枢神経系への移行性が高いのが特徴です。

  • ドリペネム
    グラム陰性菌に対して特に強い効果を示します。

  • エルタペネム
    1日1回の投与で済むため、外来治療にも使いやすい特徴があります。

カルバペネム系抗生物質は通常、点滴で投与されます。
経口投与では胃酸によって分解されてしまうためです。
点滴投与により、確実に必要量の薬剤を体内に届けられます。

使用上の制限

カルバペネム系抗生物質は、その強力な効果ゆえに使用に制限があります。
通常、軽度の感染症や外来で治療可能な感染症には使用せず、重症感染症や他の抗生物質が効かない場合に限って使用されます。
不必要な使用による耐性菌の出現を防ぐためです。
カルバペネム耐性菌の出現は世界的な問題となっており、この貴重な抗生物質の効果を維持するためにも、正しい使用が求められています。

カルバペネム系抗生物質は、現代医療において重要な役割を果たす強力な感染症治療薬です。
その広い抗菌スペクトルと強力な効果により、多くの重症感染症患者の命を救ってきました。
しかし、耐性菌の出現を防ぐためにも、適切な使用を心掛けなければいけません。
感染症の治療を受ける際は、医師の指示を守り、分からないことがあれば遠慮なく質問することが大切です。