硝酸薬(速効性)

硝酸薬(速効性)の概要

速効性硝酸薬は、主に狭心症発作時の即時的な症状緩和に用いられる薬です。
血管平滑筋を弛緩させ、冠動脈を拡張することで心筋への酸素供給を増やします。
同時に末梢血管も広がるため、心臓への前負荷と後負荷を減少させ、心筋酸素需要を低下させます。
この二重の作用により、狭心症発作時の胸痛を迅速に緩和します。

主な速効性硝酸薬

主な速効性硝酸薬に、ニトログリセリンがあります。
薬効分類名は経皮吸収型・心疾患治療剤、薬剤名はニトログリセリン経皮吸収型製剤です。

ニトログリセリン舌下錠は、最も一般的な速効性硝酸薬です。
舌下に投与すると、口腔粘膜から速やかに吸収され、1-2分で効果が現れ始め、約5分で最大効果に達します。
効果持続時間は20-30分程度です。

ニトログリセリンスプレーは、舌下錠と同様の効果を持ちますが、より簡便に使用できます。
特に高齢者や手指の不自由な患者に適しています。

硝酸イソソルビドも速効性硝酸薬の一つで、ニトログリセリンと同様に使用されますが、効果の発現がやや遅く、持続時間がやや長いのが特徴です。
狭心症の発作、いわゆる心臓発作が起きたときに、緊急の治療薬として持ち歩いている方もいます。

使用方法と注意点

速効性硝酸薬は、狭心症発作時に即座に使用します。
通常、ニトログリセリン舌下錠の場合、1回1錠を舌下に投与します。
これらの薬剤は予防的に使用することもあり、労作性狭心症の患者では、労作前に使用することで発作を予防できることがあります。

使用上の注意点として、起立性低血圧のリスクがあるため、座位や臥位での使用が推奨されています。
また、頭痛や顔面紅潮などの副作用が現れることがあります。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬(シルデナフィルなど)との併用は禁忌であり、重篤な血圧低下を引き起こす可能性があるため、絶対に避けなければなりません。

臨床的位置づけ

速効性硝酸薬は、狭心症の急性期治療において中心的な役割を果たします。
その即効性と確実な効果から、狭心症患者の緊急時の対処法として不可欠です。
ただし、速効性硝酸薬はあくまで対症療法であり、根本的な冠動脈疾患の治療には、生活習慣の改善、長時間作用型の抗狭心症薬の使用を考慮する必要があります。

速効性硝酸薬の適切な使用方法と、その限界については患者も知っておく必要があるでしょう。
特に、繰り返し使用しても症状が改善しない場合や、使用頻度が増加している場合には、基礎疾患が悪化している可能性があるため、速やかに医療機関を受診することをおすすめします。