α遮断薬
- α遮断薬の作用機序と特徴
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α遮断薬は、交感神経系のα受容体を遮断することで血管を拡張させ、血圧を下げる効果を持つ降圧薬です。
主にα1受容体を選択的に遮断する薬剤が高血圧治療に用いられます。
α遮断薬の主な作用機序は以下の通りです。-
末梢血管抵抗の減少
α1受容体遮断により、動脈や静脈が拡張し、末梢血管抵抗が低下します。 -
心臓への前負荷と後負荷の減少
静脈の拡張により心臓への還流量(前負荷)が減少し、動脈の拡張により心臓の拍出に対する抵抗(後負荷)が減少します。 -
前立腺平滑筋の弛緩
α1受容体は前立腺にも存在するため、α遮断薬は前立腺肥大症による排尿障害の改善にも効果があります。
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- 代表的なα遮断薬とその使用
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主なα遮断薬には以下のようなものがあります。
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プラゾシン
糖尿病や脂質代謝異常のある場合に用いられることが多く、喘息、排尿障害、レイノー症状にも効果があります。
海外では不安、PTSD、パニック障害などにも処方されます。 -
ドキサゾシン
アドレナリンの作用を抑えることで血圧を下げる薬です。 -
ウラピジル
プラゾシンと同じく糖尿病や脂質代謝異常、喘息、排尿障害、レイノー症状などに使われます。
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- α遮断薬の副作用と注意点
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主な副作用には以下のようなものがあります。
- 起立性低血圧(特に投与初期や増量時に注意が必要です)
- 失神(急激な血圧低下により起こる可能性があります)
- 頭痛
- めまい
- 倦怠感
- 鼻閉
- 勃起障害(稀)
初回投与時や増量時は就寝前に服用し、翌朝はゆっくりと体を起こしましょう。
急激な体位変換を避け、めまいや失神に注意します。
高齢者は特に起立性低血圧のリスクが高いため、慎重に使用します。 - α遮断薬は高血圧治療の第一選択薬ではない?
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実は、現在のガイドラインでは、α遮断薬は高血圧治療の第一選択薬としては推奨されていません。
大規模臨床試験において、α遮断薬で心不全の発症リスクが増加したという結果が得られたためです。しかし、α遮断薬は以下のような場合に有用な選択肢となります。
- 他の降圧薬での血圧コントロールが不十分な場合の追加薬
- 前立腺肥大症を合併する高血圧患者
α遮断薬は、その特徴的な作用機序と副作用から、それぞれの患者の状態や持病などを考慮して使用することが大切です。
特に、起立性低血圧のリスクが高い高齢者や、前立腺肥大症を合併する患者では、慎重な投与と経過観察が必要です。
他の降圧薬との併用や、生活習慣の改善と組み合わせることで、血圧管理をより効果的に行えるようになるでしょう。
医師と相談しながら、最適な治療を見つけていく必要があります。
α遮断薬として使われる医薬品成分
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- ウラピジル
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