塩類下剤

塩類下剤の作用機序と種類

塩類下剤は、浸透圧を利用して腸管内に水分を引き込み、便を軟化させる薬です。
腸管からほとんど吸収されない塩類や糖類を含んでおり、服用後に腸管内で高い浸透圧を形成します。
その結果、体内の水分が腸管内に移動し、便の量を増加させると同時に軟化させます。

代表的な塩類下剤には以下のようなものがあります。

  • 硫酸マグネシウム
    古くから使用されている塩類下剤で、速効性があります。

  • クエン酸マグネシウム
    比較的穏やかな作用を持ち、味も改善されています。

  • リン酸ナトリウム
    強力な下剤効果を持ち、主に大腸内視鏡検査の前処置に使用されます。

  • 酸化マグネシウム
    緩徐に作用し、制酸作用も併せ持つため、便秘症と胃酸過多に用いられます。

これらの薬は通常経口投与で使用されますが、一部は浣腸液としても利用されます。
作用発現時間は薬によって異なりますが、多くは服用後数時間以内に効果が現れます。

塩類下剤は、その作用機序から比較的安全性が高いとされていますが、長期連用や過剰使用は避けるべきです。

塩類下剤は何に効く?

塩類下剤が処方されるのは、以下のようなケースです。

  • 慢性便秘症
    生活習慣の改善や食事療法で改善が見られない場合に使用されます。

  • 周術期の便秘予防
    手術後の腸管機能回復を促進するために用いられます。

  • 薬剤性便秘の改善
    オピオイド鎮痛薬などによる便秘の対策として使用されます。

  • 大腸内視鏡検査の前処置
    腸管内を清浄にするために強力な塩類下剤が用いられます。

  • 便秘性腸閉塞の治療
    軽度の腸閉塞に対して、塩類下剤による腸管内容物の軟化が有効な場合があります。

塩類下剤は、その即効性と比較的安全な特性から、多くの臨床現場で第一選択薬として使用されています。
特に、高齢者や妊婦など、強力な刺激性下剤の使用が困難な患者に適しています。

塩類下剤の副作用と使用上の注意点

塩類下剤は比較的安全な薬ですが、適切に使用しないと様々な副作用が生じる可能性があります。
主な副作用には以下のようなものがあります。

  • 電解質異常
    特にマグネシウム製剤の過剰摂取は、高マグネシウム血症を引き起こす可能性があります。
    特に腎機能障害のある患者で顕著です。

  • 脱水
    過剰な水分喪失により、脱水症状が現れることがあります。
    高齢者や小児では特に注意が必要です。

  • 腹痛や腹部膨満感
    腸管内の水分増加に伴い、一時的な不快感が生じることがあります。

  • 下痢
    用量が過剰な場合や個人の感受性が高い場合に生じる可能性があります。

  • 腸管への依存
    長期連用により、自然な排便反射が低下し、薬剤への依存が生じる可能性があります。

とはいえ、上記の副作用の中には発現が非常に稀なものもあります。
安全性が高い薬なので、あまり心配せず効果に期待しましょう。