5-HT3拮抗薬
- 悪心・嘔吐や過敏性腸症候群に効く5-HT3拮抗薬
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5-HT3拮抗薬は、セロトニン受容体の一種である5-HT3受容体に特異的に作用する薬剤群です。
これらの薬剤は主に制吐薬として使用され、化学療法や放射線療法に伴う悪心・嘔吐の予防や治療に広く用いられています。
5-HT3拮抗薬の開発は、がん治療の副作用管理において大きな進歩をもたらしました。また、5-HT3拮抗薬は過敏性腸症候群の患者に処方されることもあります。
過敏性腸症候群とは、日常的に便秘や下痢を繰り返す症状で、痛みが酷く生活に支障をきたすこともあります。
下痢型と便秘型、またこれらの複合型があります。
以前はストレスが原因と考えられていましたが、ストレスを受けていない睡眠時にも痛みの発作が起きるなどしていることもあり、現在では過敏性腸症候群の定義が変わってきています。 - 代表的な5-HT3拮抗薬
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主な5-HT3拮抗薬には、以下の薬があります。
- オンダンセトロン
- グラニセトロン
- トロピセトロン
- ラモセトロン
これらの薬剤は、化学構造や薬物動態に若干の違いがありますが、基本的な作用機序は同じです。
一般的に、これらの薬剤は経口投与や静脈内投与で使用されます。 - 抗がん剤による悪心・嘔吐にも効く
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5-HT3拮抗薬の主な適応症は、抗がん剤による悪心・嘔吐の予防と治療です。
特に、シスプラチンなどの高度催吐性抗がん剤による急性期の悪心・嘔吐に対して高い効果を示します。また、放射線療法に伴う悪心・嘔吐にも有効です。
さらに、一部の5-HT3拮抗薬は術後悪心・嘔吐の予防にも使用されています。これらの薬剤の有効性は非常に高く、適切に使用すれば80-90%の患者で悪心・嘔吐を抑制できるとされています。
しかし、遅発性の悪心・嘔吐に対しては効果が限定的であり、他の制吐薬と併用することもあります。 - 5-HT3拮抗薬の副作用
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5-HT3拮抗薬の副作用の比較的軽微で、重大な副作用が起こることは稀です。
一般的な副作用としては、以下が挙げられます。- 頭痛
- 便秘
- めまい
5-HT3拮抗薬に限らず、薬には多少の副作用が発生する人がいます。
しかし、5-HT3拮抗薬の登場は、がん治療の質を大きく向上させたことに変わりはないでしょう。化学療法や放射線療法に伴う悪心・嘔吐は、患者のQOL(生活の質)を著しく低下させ、治療の継続を困難にする要因となっていました。
しかし、5-HT3拮抗薬の使用により、多くの患者が快適に治療を継続できるようになったことを思えば、副作用より薬の効果に着目したいところです。